「あなた方の、そういうおちゃらけたMCが私は嫌なんです」
「まあまあ、これがうちのスタイルやから。ほな、そろそろ味わってもらうとしよか」
「大阪市三位の実力、甘く見たらあかんで!」
「私たちの歌が、天名さんの心に届きますように!」

 立火、桜夜、小都子はよく通る声を上げてから、すっとポーズを取って静止する。
 傍らでは晴がノートパソコンを手に、今まさに音楽を開始しようとしている。

 会場は、ところどころ雑草の生えた校舎裏。
 二つのパイプ椅子のみの観客席に、それぞれ一年生が座っている。
 うち部員の方は、期待と信頼に満ちた握り拳を作った。

(先輩たち、今朝も早くから練習してはったんや! 絶対に成功させてくれるはず!)

 もう片方は、既に冷めた顔である。

(アホらし。早よ終わらんかな……)


<第4話「空想は形になる」 パート3「墨俣一夜ライブ」>