そんな夕理の内心を知ることもできず、小都子はまだ少し逡巡していたが……

「うん……そうやね」

 吹っ切ったように、少し遠くへ視線を向けた。

「欲しいものがあるなら、そのためにちゃんと戦わないとね」

 夕理は思わず顔を上げる。
 今までどこかぼんやりしていた小都子の姿が、急にクリアになって夕理の目に映った。
 それくらい、意外な相手から意外なことを言われた。

「……先輩は、欲しいもののために戦ったことがあるんですか」
「ここに入学するとき、親と少しね。まあ、よくある話や」
「そう……なんですか」

 失礼ながら、地味で影の薄い先輩だと思っていた。
 まだ知り合ったばかりだけれど、優しくて温和なだけの人だと。
 そんな彼女でも戦ったことがあるのだという。

 それなら――
 自分にも、意志さえあれば戦えるのかもしれないと思った。


<第6話「あなたに依存しないために」 パート1「好きを減じる」>