パカパカパカパカパーン!
伝説の樹決戦の火ぶたは切って落とされた。自らの思いを伝えるため、上級生の立ちはだかる校舎内を突破せよ!急げ、本編のヒロイン早乙女優美!
ときめきファイト車田版
ゴングにかけろ
「見えた!あれが2年生の玄関か!」
緊張しているのか妙なことを口走る優美。しかし校舎の外に出ようとする彼女に、1つの影が立ちふさがった。
「な、なにぃ!?あなたは…」
文芸部の如月未緒!!(ザシャア!)
「きらめき高校でも1、2を争う頭脳を誇る如月先輩!し、しかしあなたは3次元の男には興味がなかったはず(笑)。な、なぜ…一体なぜだ…」
「フッ、もちろんあなたを止めるためです早乙女さん。あなたは自分が何をしようとしているのか分かっているのですか。3年生と2年生の間にはまさしく神と虫ケラほどの差があるのですよ」
未緒の静かな口調が優美を打つ。確かに自分の実力は3年生には遠く及ばないかもしれない。でも…。
「でも決してあきらめてはいけないんだ!優美、絶対先輩に告白するんだもん!」
「そうですか…。ならばもはや何も言いません。ただこれだけは忘れぬように。究極の想いはときめきセンシズであることを…」
「エ?ときめきセンシズ!?」
「そうです。人間の持つすべての感覚を超越した究極の想い。それに目覚めることができればあるいは…。がはぁ!!」
「如月先輩!?」
突如血を吐いて倒れる未緒。あわてて駆け寄る優美に、彼女はニコ…と微笑んだ。
「ど、どうしよう!すぐに医者を…」
「いえ、単なる寝不足です。実は今日が同人誌の入稿日でして…。
でもわたしは先輩としてあなたに何も残してやることができなかった…。だ、だがせめて…。せめて…」
「き…如月先輩ーーーッ!」
如月未緒。昭和55年2月3日生まれ。身長156cm。フィニッシュブロー貧血。
平成10年きらめき高校2年生の玄関において……
さらば如月…
眼鏡よ眠れ…!!
「うぅ…。先輩はそれを伝えるために自らをかえりみず来てくれたのですね…。
わかりました先輩!優美、必ずときめきセンシズに目覚めてみせます!」
涙を振り払い再び走り出す優美。彼女の戦いは今始まったばかりなのだ!
伝説の樹へ向かう優美はプールの横を通ろうとしていた。なぜ伝説の樹に行くのにプールの横を通るのか?それは聞いてはいけない疑問である。
ザザザザザザザ
「なにぃ!?ひとりでに水柱がふき上がるとは!」
そしてその頂上に立つあれは…
水泳部の清川望!!(ドドォォォォン)
「優美ちゃん、お前は何のために…。いや…もはやなにも聞くまい…」
「いかに相手が清川先輩でも必ずこの場は通り抜けてみせます!くらえ、ポニーテール流星拳!!」
マッハを越える無数の拳が望を襲う。しかし望は落ち着き払うと、左腕に装着したビート板をかざした。
「そう、プロレスを研究して身につけたのがこのポニーテール流星拳だったね。だがこのあたしには通用しない!」
「うっ!」
バァァァァン!優美のすべての拳が望のビート板によって防がれる!
「バ…バカな、優美の拳を受けてへこみもしないなんて…。あのビート板は一体!?」
「フッ、このビート板はそこらのビート板と同じじゃない。長い間きら校のプールの塩素を受け、ダイヤモンドをもしのぐ輝きと硬度を備えているのだ!
そして右の拳もまた同等の強さを持っている。くらえ!この清川望最大の奥義!!」
「な…なにぃこれはーーー!!」
廬 山 水 竜 波 !!
「うわぁぁぁーーーっ!!」
バシャァァァァン!!
望の拳を受け、なすすべなくプールの水面に叩きつけられる優美。これが3年生の実力なのか…。
「もはや立ち上がることもかなうまい。かわいそうだが仕方のないこと…」
「(うう…優美、こんなところで終わっちゃうの?
ううん、先輩が待ってるのにそんなわけにはいかない!燃え上がれ優美の想い!)」
「なにぃ!?」
力をふりしぼりプールからはい上がる優美。さすがの望も驚きを隠せない。
「くっ…ならばもはや容赦はせん!この清川望の全力をもって水竜波を放ってくれる!」
「いいんですか清川先輩」
「なに」
「先輩の左胸がガラあきになりますよ。そうすれば今度こそ致命傷です!」
「!」
望が廬山水竜波を放つとき一瞬だが左の拳が下がる。時間にしてわずか千分の一秒。しかしその間、望の心臓はガラあきになるのだ!
「バカな!一度受けただけで水竜波の弱点を見抜くとは。この早乙女優美という少女は…。ま…まさかあの…。
しかしそのわずかな隙をついて攻撃を成功させるなど万に一つもあり得ぬこと!受けてみろ廬山水竜波ーーー!!」
「見えた!ポニーテール流星拳!!」
BAGOOOOON!!
「な…なにぃ!?」
優美の流星拳が望の心臓にヒットし、そのままプールの金網に叩きつける。まさに一瞬の勝負は優美に軍配が上がった。
「き、清川先輩…」
「フッ…見事だ優美ちゃん。あたしの負けさ…。
だ、だがこの先のテニスコートで待ち受ける古式ゆかりには気をつけろ。奴はもっとも仏に近い女なのだ」
「そ…それは一体?」
「ひとつだけ教えてやる。決してゆかりの目を開かせるな」
「エ?古式先輩の目を?」
「そうだ。ゆかりの糸目が開かれたとき、その場にいるすべての者は息絶えるのだ…!」
礼を言って駆け去る優美を見送りながら、望はゆっくりと崩れ落ちた。
「さ…さようなら…。あ…あとは…たのん…だぞ…」
清川望。昭和54年12月3日生まれ。身長163cm。フィニッシュブロー内気な心。
平成10年きらめき高校プールにおいて……
さらばスイマー…
清川望よ…!!
「うわっ!」
「あの〜、いきなり飛びかかるのは行儀が悪いですよ〜。死肉に群がる餓鬼のようです〜」
優美の攻撃にも涼しい糸目笑顔で微動だにしないゆかり。まさしく彼女は仏に近い女なのか!
「わたくしの顔こそ引導代わりですので〜。迷わずあの世へ行ってくださいね〜」
「な…なにぃ!?古式先輩の手の中にハニワ!ハニワが燃焼している!」
「オーム!!」天 満 幸 福 !!
ゆかりの秘奥義によって吹き飛ばされる優美。頭からテニスコートに落ち、もはやピクリとも動かない。
「苦しんでる者にとどめをさすのが慈悲だとお母様がおっしゃってましたねぇ」
そう言って優美の息の根を止めるべく近づくゆかり。しかしその手を飛来した何かが打った。
「こ、これはメモ帳?これがわたくしの手を打ったのでしょうか?」
「そうだ!だが古式さん…。オレの妹をそこまでした以上その程度では済まないぜ」
「あなたは…」
フェニックス好雄!!(ド ン!)
「う、うぅ、好雄にいさん…」
「フッ…だらしがないぞ優美!公に告白しようというお前がこんなところで倒れていてどうする!」
突如現れた好雄に、ゆかりが驚愕の目を向ける。
「バカな、あなたは3年間振られまくり、最後の週にも誰も紹介できなかったはず。それが平気な顔で卒業式の日に現れるとは…」
「たとえ何度女の子に振られようと、不死鳥は灰の中よりふたたびよみがえるのだ。そして最後には女にもてる!このこまめなチェックでなーーーー!!」
炸裂する好雄の気遣い!しかしゆかりにとってはまるで涼風だ。
「くっ!オレのまめさが通用しないとは…」
「早乙女さん、あなたは多少は地獄を見てきた男…。ならばそれなりの姿になってもらう必要があるようです」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「な、なにぃ!古式さんの…」
「古式先輩の目が開いたーーーーっ!!」
カッ!!
「おとうさま〜〜」
ゆかりの声に応じてわらわらと現れた父&社員が周囲を取り囲む。まさしくこれは…
古式ゆかり最大の奥義! 天 父 宝 輪 !!
「この天父宝輪にかかった以上わたしを攻撃することも不可能。そしてまた逃げることも不可能。いわば天父宝輪は攻防一体の戦陣ともいえるのですよ〜!」
確かに周囲の殺気だった連中は攻撃するのも逃げるのも不可能のようだ。しかし好雄はフッと笑うと、気でも違ったのかいきなり優美をジャイアントスイングで振り回し始めた。
「好雄にいさん!?」
「ここはオレがおさえるといったはずだぞ優美…」
「す…するとあなたはわざと天父宝輪にかかったというのですか!お父様の攻撃を自分に向けるために!」
「さらばだ優美!最後まで優美らしく戦うんだぞ!!」
「に…にいさーーーん!!」
そのまま優美を体育館の茂みの方へ放り投げる好雄。一瞬の差で父と社員がいっせいに好雄に飛びかかった。
「オ…オレが死んだらな…。み…道端にうめてくれ…。
春にゃ菜の花秋にゃ野菊が咲いて…。き…きれいだぜ…フッ」
どかばきぐしゃ
早乙女好雄。昭和54年4月4日生まれ。身長167cm。フィニッシュブローいい人。
平成10年きらめき高校テニスコートにおいて……
さらば好雄…
ナンパ・チャンピオン…!!
「あのぅ〜、わたくしはどうしたらよろしいのでしょう?」
しばらく寝てた(笑)優美が起きあがると、空に好雄の顔が浮かんでいた。
(優美よ…人間がもし生まれ変わるなんてことが本当にできるのなら、この次に生まれ変わってきたときもおまえとはまた兄と妹だ…。かならずな…優美…)
「に…にいさん…」
しかし好雄の死を悲しんでいるヒマは今はないようだ。体育館の前では、赤い髪の女の子が敢然と立ちはだかっている。
バスケ部の藤崎詩織!(ガカァッ!)
「優美ちゃん…わたしはね…。ううん…なんでもないの…」
「詩織先輩!バスケ部で先輩に数々のことを教えられた礼はとても言葉ではいいつくせません…。だから言葉ではなく女の子としての行動でしめしたい!
それはあなたからさずかったものすべてをぶつけ、先輩あなたをたおすことだ!!」
「いいわ。ならばわたしもすべてをもってあなたにこたえ、確実にほうむってやろう!こい優美ちゃん!」
先手必勝!優美の体が高く舞い上がり、そのままバスケットボールを打ち下ろす。
「ナイアガラダンクーー!」
パァァァァァン!
しかしその威力は片手で止められてしまう!
「甘いわ優美ちゃん、ナイアガラダンクはもともとこのわたしがさずけたもの…。真のナイアガラダンクとはこういうものをいうのよ!」
「うっ!」
炸裂する詩織の部奥義。優美はなすすべなく植え込みに叩きつけられた。
「優美ちゃん、あなたがどうあがこうとわたしと彼との時間を手に入れることはできない…。それがわたしとあなたの決定的なちがいよ」
「あ…あの走馬燈のように浮かぶあれはーー!」
詩織の両腕が頭上で組み合わされ、アルバムの形をとる!
思い出エクスキューション!!
ドシャァン!
完全なる敗北をさとり、死すべし早乙女優美!!
詩織の最大奥義を受け地に這う優美。しかし立ち去ろうとする詩織は、数歩歩いてはっと振り返った。優美がふたたび立ち上がろうとしている!
「ゆ…優美ちゃん。あなた思い出エクスキューションを受けてなぜ…」
「たとえ時間の差はあっても、あなたの位まではかならず想いを高めてみせる。そしてあなたをたおす…!」
「ムダだと言ったはずよ!」
ガカァッ!
「な…なにぃ!?こ…これは…」
優美と詩織が同時にはなった想いが2人の中間でくすぶっている!後輩の優美が詩織と同じ位までの想いをはなったというのか!!
「よ…よくぞこのわたしの位まで想いを高めた…。しかし残念ながら、それでもわたしたちの思い出を越えることにはならないのよ。
さあ今度こそ確実にほうむってやるぞ。この藤崎詩織最大の奥義、思い出エクスキューションで!」
両腕を頭上で組む詩織。しかし優美の両腕もまた動く!
「な…なにぃ!?バ…バカなあの構えは…思い出エクスキューション!!」
「公先輩と過ごしたのはたった2年間だけど、それでも優美にとっては大事な思い出だもん!」
「おろかな!幼馴染みの思い出をしのぐことなどできん。それは身をもってわかるはず!
うけろ優美ちゃん、思い出エクスキューションの真髄を!!」
2人の両腕が振り下ろされる……
ガカァァァァァン!!!
空気が凍り付いたように動かない。しばらくして、詩織が満足そうに微笑んだ。
「み…見事よ優美ちゃん…。ま…まさしくあなたはこの詩織のすべてをうけついだ…」
その体がゆっくりと倒れていく。
(フッ…この世で好きだなんて言葉は言えそうにないわね…。悪いけどあの世でいつか会ったときにするわ…。あばよ……公くん………)
藤崎詩織。昭和54年5月27日生まれ。身長158cm。フィニッシュブロー思わせぶり。
平成10年きらめき高校体育館前において……
さらば藤崎…
スーパー・ヒロイン…!!
(し…詩織先輩。あなたは自分の命をかけて優美の想いを導いてくれたのですね…。
あなたから受けた数々のことは決して忘れない。いつか…いつかまたふたりで…。あのワックスのかかったバスケットコートに帰りましょう…。
ありがとう詩織先輩…。そしてさよなら…!)
「あ…あれが伝説の樹!」
ついに校庭まで辿りついた優美。しかし金髪の少女が一人蕭然と立っている。
「あのぅ、誰ですか?」
「わ、わたし伊集院です…」
「伊集院先輩に妹なんていたっけ?」
「いえ、伊集院レイ本人です…」
「なにい!」
伊集院を名乗るセーラー服の少女ははらはらと涙を流すと、伝説の樹を指し示した。
「さあ、早く行くのです。主人さんが帰ってしまいますよ(はぁ…はぁ…)」
「だ、大丈夫ですか伊集院先輩?なんだか苦しそう」
「わ…わたしのことはいいから早く!(はぁ…はぁ…)」
「は、はぁ〜〜い」
しかし優美が駆け出そうとした時だった。突如背後より嫌味な声がかかる。
「ま…待て…」
ピクッ
「だ…誰が…。誰が伝説の樹の下になど行かせるか…」
「エ?伊集院先輩…?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
(い…伊集院先輩の髪がひとりでに束ねられてゆく…。こ…これはいったい?)
「死ね早乙女優美ーーー!」
「うわぁぁぁーーーっ!」
優美を襲う光速拳!立ち上がった伊集院の体を男子の制服が覆う。その目はまさしく邪悪の化身…!
「な…なぜ…。なぜなんだ…?」
「フッ優美君。庶民の君に何もわかりはしない…。また知る必要もない!
さあ異次元へ飛んでゆけ!金持ちディメンジョン!」
「な…なにい!なんだこれはーーー!!」
優美の体がリッチで金ピカな空間へと飛ばされてゆく。
「そこで贅沢を味わい堕落するのだ!ウワーーッハハハーーッ! …うっ!」
ドシャァッ! 金持ちの世界に飛ばされる前に優美はそのまま地上に落ちた。見れば伊集院が頭を押さえて苦しがっている。
(もうやめるのです…。そんなことをしても主人さんは喜びません…)
「ええーい失せろ!貴様さえいなければとっくに主人君は僕のものだったのだ!それをおまえはことごとく遮ってきた。もはや邪魔はさせん!」
「伊集院先輩が一人でブツブツ言ってる…」
「黙れーーッ!さあ死の間際にしっかりと見届けろ。銀河の星々をも破壊するこの伊集院レイ最大の拳!」
「うおっ!」
ギャラクシアン高笑いプロージョンーーーーーー!!
ドーーーン!!
天と地をつんざく衝撃音があたりをつつむ…。もはや優美はあとかたもなく消えてしまったのか。
「うっ…。な…なにぃ!!」
しかし優美は生きていた!よろよろと立っているのがやっとの状態で、なおかつ伝説の樹へ向かおうとしている。もはや五感すべてを失いながら、自分の命が消えつくす最後の瞬間までも公に告白しようとしている…。
「(ま…まさしく彼女こそ主人君を愛する女の子…。そ…それにひきかえこの僕は…)
はっ!お…おのれいかせるか!その前に息の根を止めてやるぞ優美君!」
(さ…最後に一度だけでいい。優美の想いよ奇蹟を起こせ…)
ゴオォォォォォォン
「な…なにい。あの優美君の背後に浮かんだオーラは…。
あ…あれは藤崎詩織!いや詩織君だけではない。如月未緒に清川望に古式ゆかり…。きらめき高校すべての女生徒の想いが優美君のうしろに浮かんでいる!」
「い…伊集院先輩。優美は先輩から見たらガキかもしれない。でも今の優美はみんなの想いをはっきりと感じ取ることができるよ…」
「な…なんだと。それでは君は究極の想いときめきセンシズに目覚めたとでもいうのか…。
バカな、君がいくら想いを燃やそうと僕に通用しないのは立証済みのはず。くらえギャラクシアン高笑いプロージョン!!」
ウォォォォォォォォ
「(みんなが優美に勇気と力を与えてくれた。優美の想いよ、ときめきセンシズよ。今こそ究極まで燃え上がれ!)
そして今こそ告白する!先輩あなたの最期だ!!」
「な…なにぃこれはーーー!!」
優美弁彗星拳ーーーーーーーーーー!!!
ガカァァァァァァァン!!
星をも砕く優美弁の破壊力。吹き飛ばされた伊集院はそのまま頭から落下してついに沈んだ。か…勝った…!!
「う、うぅ…」
「伊集院先輩がもとの女の子の顔に戻ってる…」
「彼女は俗にいう二重人格者だったのですね」
「如月先輩!?」
「いちばん苦しんでいたのは伊集院さんだったのかもしれない。男と女のはざまで…」
さらに未緒に続いて詩織や好雄たちもぞろぞろと出てくる。
「みんな無事だったんですね!」
「フッ、こんなときに死んでられないものね」(笑)
「地獄の閻魔からはとうに嫌われている!」
「よ…良かった、本当に…。こ…これでもう…」
「あ…おい優美」
涙を流しながら走り出す優美。声をかけようとする好雄を、未緒が静かに押しとどめた。
「行かせてさしあげて下さい。彼女は今ふつうの少女に戻ったのです」
日の傾きかけた校庭で優美は走る。公の待つ伝説の樹へと。
「優美ちゃん…」
待ちに待ちくたびれた公はいい加減げっそりとしていた。
「俺もう帰ろうかと思ったよ…」
「ご、ごめんなさい。色々ありまして…。でもこの戦いで優美は成長したんです!」
「うっ!」
公の目の前で、優美の想いが急激に増大していく。
「燃え上がれ優美の想い!究極まで高まり、ときめきセンシズに目覚めさせてくれ!」
「な…なにぃ!まさしく銀河すべてを覆うような…。まさか優美ちゃんの想いがこれほどまでのものとは!
実は俺も優美ちゃんのことが」
「ホントですか!?優美、嬉しいです…。
で…でもちょっとつかれちゃった…。少しばかり休ませてもらいますね。す…少しだけです…。いいでしょ…ねえ……」
「ゆ…優美ちゃん…?」
早乙女優美。昭和55年5月16日生まれ。身長155cm。フィニッシュブローおんぶ。
平成10年きらめき高校伝説の樹において………
さらば……
黄金の高校生活……
長い間応援ありがとう
ポニーテールのヒロイン早乙女優美、ここに完全勝利完全告白達成!!
<P.S>
すやすやと眠る優美を背負いながら公が校門へと歩いていくと、見知った顔が祝福するように2人を出迎えていた。
「よっ、おめでとさん」
「なはははは…」
「なんだ優美のやつ、寝てんのか」
「こうして寝顔を見ていると、まだ純真な子供のようですねぇ〜」
しかし和気あいあいとした一同の中で、ひとり未緒が沈痛な声を出す。
「今はゆっくりと休ませてあげてください。すぐにまた彼女は新たな戦いへと立ち向かわなくてはならないのですから…」
「な…なにぃ。まさかそれは…」
「そう…。あのおそるべき受験戦争に!」
「そんなの思い出させないでください!」
公の背中で思わず叫んだ優美に、全員の視線がじろりと集まる。
「優美ちゃん…」
「狸寝入り…」
「あ、あは、あはははは。ふぇ〜んごめんなさい〜」
泣きまねして謝る優美。きらめき高校は今日も平和でしたとさ。
<END>