ワイはダッチや。
そう、いつもイッチと一緒にたこ焼き屋でタコ焼き焼いとる、ちょっと渋めのええ男の方や。
え?太い方?ちゃうちゃう。「ぽっちゃり系」とか言い方あるやろ。
プリン体?ちゃうちゃう。プリン体には気をつけにゃいかんけどな。
ま、前置きはそのくらいにしとこ。
それに気づいたんは、ある日のことやった。
ワテらの仕事っちゅーのは夕方からっていうのが相場や。
その日も、イッチとシャツの中のマムシのグロ吉と、店の準備をしていたんや。
「なぁ、ヒロシぃ〜。今日もたこ焼き売れるといいなぁ〜」
とグロ吉。
「グロ吉よぉ。そのヒロシっちゅーのは、なんとかならんやろか?」
とイッチ。
「え〜っ。どうしていけないんだよぉー。だってヒロシはヒロシじゃんかぁ。」
「ヒロシって呼ばれるとやな、なんかカエルの物語のような気がしてなぁ。」
「ふーん。おいらは若いからわかんねーや。ま、ヒロシが嫌なら何て呼べばいいわけ?」
「イッチでいいわ。」
「ふーん。じゃ、そうするよ。」
「グロ吉ぃ。頼むからたこ焼きのつまみ食いは勘弁してや。」
「わかったわかった。でも余ったら食っていい?」
「まあ、余ったらな。」
そんな一人と一匹の会話を頬笑ましく聞きながら、ワイも仕込みをしていたその時や。
「やけにまぶしい日の入やなぁ。」
とふと顔を上げようとしたとき、ワイは...ワイは気づいたんや。
「....ん....こっちは東やんか...」
そう思い顔を上げた視線の先には、おてんと様は無く、強烈な光を放つ物体が動いていたんや。
そう、それは屋台の影で仕込みをしているイッチの頭に、西日があたって反射していたんや。
そうそう、絵にするとな、こんな感じやったんや。
これをワイはな「日本の日の入」って名付けたんや。
もちろん、グッチの兄貴やトモッチの姉御には、事細かに状況を説明して大ウケや。
トモッチの姉御は腹膜炎おこしそうやったとか言ってたわ。
イッチにはナイショやで。
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