タコの12.『初夢? ショートショート』


「初夢?」の「いち」

ふと気がつくと、目の前にグロッチがニヤニヤしとった。
「へっへっへぇぇぇぇ〜。」
「ん?グロッチなんか用かぁ?」
「へっへっへ。今日はなイッチの兄ぃが出汁になる番や。」
「なに言うてんのや。」
「へっへっへ。これでワイは晴れて年季が明けて故郷に帰るんやぁ〜。」

ふと気がつくと、俺っちはグツグツ煮立った鍋の中に入れられていたんや。
「さ、イッチの兄ぃ。覚悟しいや。」
「うわぁぁぁぁあああああああああああああああああああっっっっっっっっっ」

がばっ!!
汗びっしょりで目覚めたイッチであった。
「そうや、年末から扁桃腺腫らして熱だして寝とったんやった。ううっ、正月から縁起が悪い。もいっぺん寝なおそ。」


「初夢?」の「に」

ふと気がつくと、ダッチの兄ぃが包丁もってこっちにやってきた。
「へっへっへ、イッチぃ。良い手足しとるやないかぁ?」
「へ?ダッチの兄ぃ。何いうとりますやん。」
といいつつ手足を見れば....
俺っちタコになってるやん!!
「へっへっへ、この手足1本から、何人前のたこ焼き出来るかのぅ。覚悟はええか?」
「ウソやろっ。兄ぃ!ウソって....」
スパッ!!
「うわぁぁぁぁあああああああああああああああああああっっっっっっっっっ」

がばっ!!
再び汗びっしょりで目覚めるイッチ。
「そうや、年末扁桃腺切って膿み出したんやった。けど手足は切ってへん。縁起悪いからもいっぺん寝よ。」


「初夢?」の「さん」

じゅ〜じゅわわわわぁぁあぁ〜。
「ん?暑い...熱いやんか。」
ふと気が付けば....
俺っち、タコ焼きになって焼かれているやん!!

「やっぱ、たこ焼きは、外がこんがりパリッとで、中はとろぉ〜りジュ〜シ〜やないとあかんな。」
「ほんまほんま。そうやなぁ。ブッチぃ。」
「あ、このたこ焼き、イッチの兄ぃそっくりと思わんか?チョッチ。」
「ほんま、似とるやん。特にこのソースの焦げ具合がイッチの兄ぃの皮膚の色みたいやなぁ〜。」
正月早々仲むつましい夫婦である。
「オイオイ。俺っちや!俺っち!聞こえへんのかぁ〜。俺やぁ〜イッチや〜。食わんといてくれぇ〜。」
が、全く聞こえていないようである。
「そろそろ、このイッチの兄ぃもどきのたこ焼きもこんがり食べどきやなぁ。」
「ほんまやなぁ〜。ブッチぃ。」
「ほな!」
プスッ!パクッ!!
「うわぁぁぁぁあああああああああああああああああああっっっっっっっっっ」

がばっ!!
みたび、汗びっしょりで目覚めるイッチ。
「いかん、この間、写真加工した罰かもしれん....。今度こそええ初夢みるでぇ!寝なおそ。」

目次に戻る