タコの2.『逃亡?!』


タッタッタ.....
路地裏を走る2人の男.....
「ハァハァハァ...イッチぃぃ。もう身体が重くて走れねぇ。」
「ハァハァ..ダッチの兄ぃ。(キョロキョロ)もう大丈夫ですかねぇ。」
へたり込む2人。
「しかし、まさかあんな騒ぎになるとはなぁ。」
「そうですねぇ。俺達が味見したときは何ともなかったんですけどねぇ。」
「カタギの腹にゃ合わなねぇって事なのかぁ?」
「さぁ?」
「出汁の元は完璧だったんだがなぁ」
「ですねぇ。兄ぃ」
「あ、しまった。出汁といえばアザラシを置いて来ちまったっ。」
「う..あの出汁のアザラシから、俺達のことバレねぇですかねぇ。」

焦る2人。

「とりあえず、組に戻って兄貴に相談しよう」

路地裏から出た二人の前に車が1台。

キキキキキーーーーーーッ。

「おっとゃ、あぶねーじゃねーか。」
「何処に目を付けて運転してやがるんだぁ。あ?」

車のドアが開く。
中から出てきた男を見て....二人声を合わせて

「あ....グッチの兄貴ぃぃぃ〜」

「おうおう、二人ともなんかヘマやっちまったらしーじゃねーか。」

「グ...グッチの兄貴ぃ〜。すんまへん。」
声を合わせてしょぼくれる二人。

「ま、悪気があってやったことでもねーからな。」
車のドアを開けながら....
「これを見な。」

「あ...これは」
そこにはグルグル巻きにされた象アザラシが1頭。

「ちゃんと、回収しておいたから、足がつく心配はねぇ。安心しな。」

「あ...兄貴ぃ〜」
「さすがはグッチの兄貴だぁ〜一生付いていきますぜぇ。」
涙を拳でぬぐう二人。

バタン。車の助手席側から、素敵な女性が....

「あ...姉さん」
息をのむ二人。

「久しぶりだね二人とも」
「へい、姉さんこそ、ますますお綺麗に....」
「トモッチの姉御ぉ。相変わらず脚線美がまぶしいですぜ。」

「そんな当たり前の事を聞きに、わざわざこのあたしが出向いた訳じゃないんだよ。」
「へっ?!」

「たこ焼きに....たこ焼きに....なんでマヨネーズを添えなかったのかい?」
「えっ....」

「たこ焼き、お好み焼き、困ったときにはマヨネーズ。これは常識だろうに。違うのかいっ。」
「いいや、違いません違いません。その通りでございます。」

「大体、この『タマゴッチ』印の卵で作ったマヨネーズがあれば、こんな騒ぎにならなかったって言ってるんだよっ。」
「はっ....姉御ぉ。申し訳ありません〜。」

土下座する二人。

「わかったなら、これからは気を付けるんだよっ。」
「はい〜っ。」

バタン。車に乗り込むトモッチの姉御。

車に乗り込もうとしたグッチの兄貴、思い出したように...

「あ、そうそう、今晩の店の準備をしておいた。大阪桜ノ宮だ。しっかり気張って稼ぎや。」
車に乗り込むグッチの兄貴。

「グッチの兄貴ぃ...何から何まで、ホントにすまないっす。」
「グッチの兄貴ぃ...一生付いていきますぜぇ。」

ウィーーーン。助手席の窓が開く。
「そうだ、二人とも。今日は雨だって聞いたから、これはアタシからの差し入れだよ。」

包みを受け取る二人。早速あける。中から出てきたのはカッパにビーチサンダル。
「これで雨の中でも大丈夫。しっかり頑張るんだよっ。」

「ト...トモッチの姉御ぉ〜。(T-T)」

車が去る。残された二人と1頭。

「さて、大阪桜ノ宮まで行くか。イッチ。」
「ハイな、ダッチの兄ぃ。急いで仕込みが必要でっせ。」

路地裏に降る雨の中、カッパを着たダッチとイッチのふたり組、象アザラシ一頭引きずって、今日は大阪桜ノ宮。
明日はいったい何処の街。

きっと明日には貴方の街へ。
「たこ焼き屋 るーさー&かんばやし商店」漢方薬をお忘れなく。

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