タコの9.『ど根性』


「ふぁぁぁぁ。今日もいい天気やなぁ。ダッチの兄ぃ。」
「ホンマ、秋晴れって感じや。イッチ。」
「あ、ちょっと天かすがなくなりそうや、ちぃーと仕入れに行って来やす。」
「おう、気ぃ付けてなー。」

足早なイッチの目の前に、マムシが1匹。

「お、マムシやぁ。こんなところで珍しいなぁ。
冬眠の前の仕込みに行くんやろか。俺っちと同じやな。
ま、いきなりマムシ見たんで、今日はきっとええ日やな。
なんせ、マムシ組やからなー。へっへっへ〜。」

と浮かれたイッチが、小石に躓き....
「おっとっとっとっとっとっと....イテッ!☆」
ぐにゅ。

「いったったった、転んでしもうた。なんか潰したような気ぃーしたけど、気のせいやな。さ、急がんと間にあわん!」
急ぐイッチ。

「ダッチの兄ぃ。お待たせ。」
「おう、イッチ、早かったなぁ。お、どうしたんや、その傷?」
「はぁ、ちょっと転んでもうて。」
「気ぃつけなあかんで。」
「はぁ。兄ぃ、えろうすんません。」
たこ焼きを焼き始める二人。

ふと気づいたダッチ。
「お..おい、イッチ。なんか焼いてる側からな、たこ焼きなくなっておらん?」
「え?ホンマや。なんでやろ?」
キョロキョロする二人。

「おっかしいなぁ。誰もおらへん。」
「なんでたこ焼き無くなるんやろ?」
「この間の二人組でもなさそうやし....」
「なぁ。なんでやろ???」
気を取り直して、再び作り始めるイッチ。

「ん?イッチ。何時からそのシャツ着とるんやっけ?」
「はぁ?このシャツでっか......」
とシャツを見たイッチ..........

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!いつの間にかマムシがぁぁぁぁぁぁっっっ。」
驚くイッチ。

「うわぁぁぁって、そのシャツ組で売っていたんか?」
「いや、兄ぃ。さっきまでは無地のシャツだったんでさぁ。」
「え?」
「あ....そういえばさっき......ぐにゅ...って.....」

「お取り込み中の所、申し訳ありません。」

「え?イッチなんか言うたか。」
「兄ぃこそ。」
キョロキョロする二人。

「ここ、ここです。シャツ見てくださいな。」

「おーーーーーーーーシャツのマムシがしゃべっとるぅぅぅ。」

「僕、マムシのグロ吉っていいます。どうもさっきイッチさんが転んだときに、潰されてシャツの中に取り込まれたようです。」
「んな、アホな。」
「って言われても、実際そうなんですから。ついでにしゃべれるようにもなったようですし。」
「いくらイッチが、ヒロシって名でも、サングラスをしているからっていうてもなぁ。そこまで漫画のような事が....」
「実際、起きてます。」
「はぁ。そりゃどーも....」
「ま、コレもなんかの縁かと思います。以後よろしく。あ、たこ焼きごちそうさま。美味しかったです。」
「な..なんやて?売り物のたこ焼きぃ食べたんは.....」

「え?誰が売り物のたこ焼きに手ぇ付けたって?」
と二人の背後から声が......

「げーーーーーーーーーっ。これはグッチの兄貴。」
「実は兄貴、カクガクシカジカ。」
「おう、このシャツのマムシがかぁ?動かないやないか?あ?」
「そんな...アホな....」
「おい、グロ吉。」
しーーーーーーーーーーーん。

「そ....そんなぁ。」
涙目の二人。

というわけで、平面マムシのグロ吉君が、新たに仲間に加わりましたとさ。

目次に戻る