<でも一応パンの話をする>
「ということで甘口いちごパンが行方不明なのよ」
「甘口いちごパン! ごっつ気合いの入ったネーミングやなぁ」
「何がどう気合いなのかわからんが…」
「もしかしてさっきから匂ってるのはそれなんか?」
「まあ、よく気付かれましたね。いかにもこのパンです!」
「とっても鼻がよろしいんですねっ」
「そんな甘ったるい匂いプンプンさせてれば誰だって気付くわよ…」
「ジュルリ」
「(ジュルリ!?)」
「あのー、なんでしたら召し上がります?」
「おっ、ええんか!? ほないただきまーす!」
「あっ、ちょっと待…!」
「ごちそうさま。普通の味やな」
「あーあ…。はぁ、アルザで普通の味ならどのみち一般人には食えないってことね」
「と、とにかくこれでパンが狙われる心配もなくなりましたしっ! きっと前の2つのパンも同じように誰かが食べてくださったのでしょう。これにて事件解決ですねっ」
「いいんかいそれで!」
「んん、でもなんかパンの中に紙切れみたいなんが入ってたで。食べてもうたけど」
アルザがそう言ったときだった。 ザザザッ! 通りの向こうで茂みの動く音に、あたしが振り返ると慌てて走り去っていく人影が! しかもマントにフード!
「ああっ! み、見たっ今のっ!?」
「? 何だ?」
「見ておりませんでした」
「すごく怪しいヤツがいたのよっ!」
「まだ言ってるのか。もう話は終わったんだ」
「この街に怪しい人なんていませんっ!」
「そんなーーっ!」
依頼人が降りてしまった!
<BAD END>