裏話的なもの
・プロトタイプ
μ'sのファイナルライブ後に、以下のような話を考えていました。
秋葉原でのSUNNY DAY SONGの後、一人たそがれる穂乃果。
そこへ参加者のスクールアイドルが声をかけてきた。
「大成功やったな、高坂穂乃果。私は大阪に帰らせてもらうで」
「わざわざ大阪から来てくれたんだ! 嬉しいなあ、ありがとね」
笑顔の穂乃果に対し、その少女はいまいましげな視線を向ける。
「今はすっかりお前らの時代やけど、いつまでも泰平が続くと思わんといてや。
次のラブライブでは、全国のグループがお前らに挑むんや。首を洗って待っときや!」
「え……」
「ん?」
一瞬きょとんとする穂乃果に、大阪の少女は怒りのあまり指を突きつける。
「おい……私たちはまだ二年生なんやで!
まさか最後までやり遂げた、とでも思ってるんとちゃうやろな!」
「ご、ごめん。そうだよね。そうだよ……。
私にはあと一年あるんだ! 本当の最後までやり遂げないと!」
「ふん、分かればええねん。私は大阪代表の〇〇!
私たちの戦いはこれからやで!」
そして大阪のメンバーや関西各県のスクールアイドルなども妄想していたのですが、そのうちにサンシャインの放送が始まり、二年経って二期も終わりました。
今さらμ's時代の話を書いても仕方ない。しかし妄想は結構形になっていたので、捨てるのは惜しい。
なのでサンシャインの後の時代に移し、一年間を書くことにしたのがラブライブ! WEST!!です。
「穂乃果はまだやり遂げてないだろ」というツッコミは、海未ちゃんに移りました。
・作品の目的
①原作では曖昧だったラブライブの大会をきちんと書きたい
②百合を書きたい
③関西ならではのスクールアイドルを書きたい
④関西の各スポットを出してセルフ聖地巡礼したい
・一年生の関係について
五人の一年生は、それぞれ以下のような位置づけでした。
花歩 … 後輩担当
夕理とつかさ … 百合(恋愛)担当
姫水と勇魚 … 友情担当
しかしこれだけでは横の関係が物足りない。もうひとつ何かほしい。
せや! つかさと姫水でライバル百合にしよう!
ということで、この二人の関係は完全に後付けで、当初はあくまでライバル。
つかさ→姫水の気持ちは「なんか気に食わないアイツ」程度でした。
それが話を考えている間に大きくなり、いつの間にか本気の恋になり、話の主目的である全国出場も担うことになり、と予想外に膨らんだ結果が本編になります。
割を食ったのが夕理で、当初はバレンタインでつかさと結ばれる予定でした。
しかしつかさ→姫水が本気になった以上、それではつかさが尻軽になってしまう。
↓
姫水が引っ越した後にくっつくことにしよう。
夢のような時間は終わり、ずっと近くで想ってくれてた子にようやく目が向くのだ。
↓
何だか姫水がいなくなった途端に乗り換えたみたいで感じが悪い……。
夕理が微笑んで、つかさがドキッとする、くらいで終わらせよう。
↓
それだってつかさから姫水への気持ちが完全に消えてしまうようで忍びない……。
一応は付き合うけど、未来は未定という終わり方にしよう。
と、どんどん後退していき、結局つかさと結ばれないまま作中の時間は終わることになりました。
ただ一番動かしやすくて出番も多かった夕理なので、逆に贔屓にならずバランスが取れたかなと……。
・アドリブ部分
上記の夕理とつかさ以外は、概ね当初の構想通りに進み、構想した通りに終わりました。
ただ骨組みだけ決まって中身がなかった部分も多く、文化祭で校内を周るシーンなどはその場で考えました。
柚や香流はその話を書き始めた時点では存在せず、思いつきで追加したキャラです。
特に大きいのが32話「最後の欠けた輪」で、元々は夕理と姫水は疎遠のまま終わる予定でした。
(全員が仲良しというのも逆に嘘くさいのでは、という理由で)
でもつかさの恋が終わった1/15からバレンタインまで、構想では空白で何もイベントがない。
「三週間後」とかやってもいいんですが、ここまで割と充実したカレンダーでやってきた以上、今さらそれは避けたい。
なので穴埋めとして急遽作ったイベントが、姫水と夕理の接近になります。
結果的には仲良し五人組になれたし、最後に光も出せたので良かったと思います。
・この作品がここで終わる理由
もう一年やっても同じような展開になるとか、これ以上は気力が続かないとかもありますが。
晴の言うように、新入部員が10人は来るというのもあります。
状況を考えればそれが自然だし、『トラブルで部員があまり入らず』という展開は最初にやったので二度とできない。
かといって小説としては、10人も新キャラ出して話の中で動かすのは不可能です。
ただ続きを書いてくださるありがたい方がいるなら、晴の台詞は無視していただいて構いません。
・張っただけで回収しなかった伏線
花歩が立火にお弁当を作る(16話①) → 書かれてないけど2,3回作った。
ゴルフラが他の部活から叩かれる(16話⑤) → 「じゃあお前たちは五百万をもらって有効に使えるのか」という論法で不満を封じた。
花歩がキン肉マンの続きを読みに行く(21話⑤) → 書かれてないけど泊まりや寄り道で全巻読んだ。
忍から小都子へのホワイトデー(33話④) → 書かれてないけど盛大に贈られた。
・ネタはあったけど書かなかった話
晴がリボンをつけてない理由 → 装飾品は無駄だから。学年の判別も、部活以外で他人と関わらない自分には不要だから。
桜夜が遠い住女を選んだ理由 → 自由な校風だから。
生徒会主催の部費予算会議 → 立火と晴が大いに主張してぶんどってくる予定だったが、入れるタイミングがなくて没。
立火がAO入試を受けるが落ちる展開 → 盛り上がらないので没。
桜夜がネット質問箱で「後輩が生意気なんです!」と相談して、今どき年功序列かと逆に叩かれる → 兄で代用。
名古屋で桜夜が住む近くの熱田神宮に太郎太刀、次郎太刀がある → 終盤に刀剣乱舞ネタを入れるのもどうかと思い没。
つかさ(地区予選前)が勇魚に「姫ちゃん連れてくのにお勧めの場所ある?」と聞かれるが、渋谷109くらいしか思いつかない。東京人に109って! → 入れるタイミングがなくて没。最終的に空港へ連れて行った。
大阪国際女子マラソン(1/27) スタート/フィニッシュが長居公園なので花歩は見に行く → 姫水から夕理へのアタック真っ最中で、話がぶれるので没。
・メインキャラの生まれた経緯
モデルといっても当然そのままコピーはしていないので、叩き台くらいにお考えください。
<立火>
上にある通り当初はプロトタイプ用のキャラで、典型的な大阪ライバルでした。(ミスター味っ子の一馬や、はじめの一歩の千堂のような)
一方で私生活でのモデルはガールフレンド(仮)の豊永日々喜のような大阪娘で、今よりだいぶ萌え寄り。
今の性格になったのは桜夜が生まれてからで、女の子らしい桜夜との対比として男前になりました。
<桜夜>
「美少女だけどアホ」というコンセプトほぼ一本のキャラ。
原作が先輩禁止だったので、この作品では先輩後輩関係を書きたいというのもあり、先輩風を吹かせるようになりました。
姫水との関係は当初は余り物同士という感じでしたが、事あるごとに機会を見つけて描写を追加したので、最終的には他の三人の先輩に劣らなくなったかと。
ツインテールなのは名前繋がりでシスプリの咲耶から。
<小都子>
三年生がああなので、優しい良心キャラもいた方がいいということで生まれたキャラ。
モデルはガールフレンド(仮)の川上瀬莉。お茶好きなのもここから。
(その後堺市の設定になって利休と繋がったのは偶然)
髪型はできれば「私の百合はお仕事です!」の果乃子風な、こんな感じにしたかったのですが、当時のコイカツにはなかったのでお団子になりました。
地味で尖った部分がないので、実際動かすとなると一番苦労しました。
関連するエピソードを神無月に集めて、元は姫水と勇魚だけの予定だった千早赤阪へも同行させて、何とか主役ができたかという感じです。
<晴>
群馬大会編は扱いきれないという理由で三人+一人に絞ったので、今度こそラブライブらしく九人グループを書きたい、というのがまずありました。
しかし単純に九人では面白くないし、集合絵でハンコ顔にしたくないので、一人を三白眼のマネージャーに。
群馬大会編での細雨という軍師ポジションが、話を進める上で非常に有用だったのもあります。
モデルは銀英伝のオーベルシュタイン。あるいは戦記物によくある、冷静だけど主君に忠義を尽くす軍師キャラ。
一人で趣味に興じるところは孤独のグルメのゴローさん。
ゆるキャンは放映前だったので、しまリンは入ってません。
<花歩>
普通で常識人でツッコミ役という、割と定番のキャラ。
モデルは大勢いますが、敢えて言うならゆるゆりのあかりとマサルさんのフーミン。
「普通」については原作で既に千歌っちがいるので、どうしようか迷ったのですが……
でも千歌の普通コンプレックスが結局どうなったのか、原作ではよく分からないままだったので、花歩はそこにこだわるキャラにしました。
(梨子が「普通じゃない本当の怪獣に」と言った以上は、普通でなくなったということなんだろうけど)
立火とは一番王道の先輩後輩関係という位置づけです。
<夕理>
コンセプトは「意識高い系スクールアイドル」。
最初は本当にそれだけで、つかさとはただの友達でした。
しかし当時ちょうど「リズと青い鳥」の上映が始まりまして、依存百合いいよね……となったことから百合担当に。
つかさへの恋がなかったら夕理ではなかったので、のぞみぞ様様です。
花陽、ルビィの系譜のスクールアイドルマニアですが、その二人とは毛色を変えようと、教条的に好きな方向にしました。(結局後で勇魚が追加されたけど)
<つかさ>
上記の通り、当初は単なる夕理の友達で、保護者ポジションでした。
スロウスタートが放映中だったため、そのときの性格は栄依子に近い感じ。
姫水に恋したことで余裕が消え、性格もかなり変わりました。
部活に冷めてるのはハイキューの月島蛍がモデル。
しかし本気になる理由が「競技の楽しさに目覚める」ではそのまんまなので、他にないか悩みましたが、姫水とライバル百合になることで自動解決しました。
いわゆるキャラが勝手に動く状態に、一番近かったのがつかさです。
<姫水>
コンセプトは「完璧超人」。モデルは藤崎詩織。
部活ものとしてはスラムダンクの流川のような、勝利に説得力を持たせるためのスーパールーキーになります。
東京からの転校生なのは梨子とかぶりますが、大阪出身の出戻りということで差別化はできるかなと。
離人症は何から思いついたのか記憶にありません。現実に存在する精神病なので気を付けましたが、変なことを書いてませんように。
役者なのもしずくとかぶってますが、当時の虹ヶ咲は開店休業状態だったため、まあいいやと進めました。
その後にオードリーで大女優な桜坂しずくが誕生したので、今だったら別の職業にしてたかも。
<勇魚>
コンセプトは「大阪のおばちゃん」。
ただ、おばちゃん感があったのは最初の方だけで、後半は普通のいい子になってしまったような……。
その結果として小都子の次に動かしにくいキャラでした。もっと勇魚視点の話を増やせばよかったかなという後悔もあります。
自己犠牲を厭わないのはFateの士郎がモデル。
Aqoursのファンも一人は入れようということで、浦の星の雰囲気に一番親和性がありそうな勇魚が選ばれました。
キャラ作りの際に七人までは割とすんなり決まりましたが、最後の姫水と勇魚は割と難航し、一時は七人のまま始めようかとも思ったほどです。
ようやく決まった後に「そういえば幼なじみがいない! ラブライブなのに!」と気付いて幼なじみになりました。
・反省点
恵→桜夜の想いは設定自体は最初からあったのですが、使うか迷っていたため描写が薄めに。
結局終盤の31話でやっぱり使うことにしたため、自分で読み返しても唐突感があります。
もっと前から匂わせるんだった。
・苦労した点
セリフが誰のものか分かるようにすること。
小説の教本では「口調や語尾で差をつける」「そもそも一場面に大勢出さない」というのが鉄則とあります。
が、姫水以外は全員大阪弁だし、ラブライブである以上は九人の場面が多くなるしで、かなり難儀しました。
台本形式だったらどれだけ楽だったかと思ったこともあります。
しかし初めての長編で二年近く書いて、苦しいときもありましたが楽しかったです。
改めて、ありがとうございました。