「ねぇメグ、どうしても部活入らないの?」
「う、うん…。だって…」
「よかったら一度美術部に見学においでよ。見るだけでいいから」
「で、でも…」
「…少なくとも、そうやって毎日ワラ人形を眺めてるよりはいいと思うな…」
「(ワラ人形は女の命だもん…)」



すごいよ!!彩子さん −セクシーアーティスト外伝−



「まだ誰も来てないみたいね。メグ、見学に来てくれるかな…」

♪ダバディ〜ダビドゥビダァ〜
 あんたァ〜〜セクシーじゃぁぁ〜〜〜ん〜〜…
 泣くなァ〜〜見晴ちゃァん〜〜…
 恋のォ〜〜フラフップ〜〜…
 (セリフ)あんたもう…徹夜はやめなはれ…

「な、なにこの歌は!?(かっちょわるーーー!)」
 ガラッ
「ビューティフル、素敵な絵ね 」(キュピーン)
「え?あ、ありがとう。あなたも見学者?」
「イエース。私も絵が好きで、たまに描いてるんだ」
「へぇ、今度見せてよ」
「駄目よ。私の絵はめそ…ゲフッ、ゲフン!な、なんでもないわ」
「そ、そう?(め…めそ…!?「めそ」って何?「めそ」って何ー!?)」
「あ、私は片桐彩子っていうの」
「わ、私は藤崎詩織。よろしくね」
「藤崎さんね。なにかニックネームがほしいかな…」
「え、そう?(気さくでいい人みたいね…)」
「んー…
 『げろしゃぶ』か…『フーミン』ね…!」
「エエーーッ!?」(ダガーン!)
(ど…どっちもかなりイヤだけど…
 『げろしゃぶ』だけは絶対にダメよ…!
 『げろしゃぶ』はダメーーー!!!)
「やっぱー、『げろ」
「(ビクゥ!) フーミンがいいわ!」
「え、フーミンがいい?」(チッ)
「うん!フーミンてすごく気に入ったわ!すごくセンスがいいよ!」
「(センスがいい…)(ピクッ)私もそー思ってたのよーー!
 ウフフフフ、今日からユーはフーミンよ。気に入ってもらえて嬉しいわフーミン!
 フ〜〜〜ミィ〜〜〜〜〜ン!!」
「(ち…違う…。何か違うわ…。
 いい人そうで何か違うーーーー!!)」
「ところでフーミン…この絵、ちょっとだけ手を加えさせてもらっていいかしら」
「え?い、いいけど…」
「Thank you so much. どうしても気になるのよね…ヒゲがないと」
「ヒゲーーー!?」(ガビーン!)
「フゥー、いいヒゲかいた!」
「(なんで静物画にヒゲをーーー!?)」
「フフーン、驚いているようね…ジスイズ『セクシーアート』よ!」
「せ…セクシーアート!?(むちゃくちゃあやしいーーー!)」
「そう、見る者のインパクトだけを追求した最強の画法。かつて室町時代にレオナルド・ダ・ビンチが創始したと言われているわ…。つまりは最初が大事、案ずるより産むが易し、ヒゲ長き小学生に勝るものなし…ということね」
「(な…何言ってるの…?)
 あ、そ、そういえばユニークな髪型ね」
「ああ、これはね…。私にとってはかけがえのないものなの…」
「え?」
「あれは夏の暑い日だったわ…
 私は面倒だったので髪をしばらずに寝た…
 それで起きたらこうなってた…

 …てなことがあったのよ」
「ええーーー!!?(ガビーン!)
 そ、それってただの寝ぐせじゃないーーー!!」
「そうだけど?」
「どうやったらそんな寝ぐせができるのよーーー!!」
「フフ…まァまァ。いいじゃないのそんなことは!」
「‥‥‥‥‥‥。ほ、他の人たちまだ来ないのかな」
「ああ、それなんだけどね」
「え」
「実は、あなた以外の美術部の人たちと私のセクシーアートとどちらが上か勝負したんだけど、みんなあっさり私に負けて、自信をなくして絵をやめてしまったのよ」
「エエーーッ!!?」(ガビーン!)
「ま、細かいことは気にしない!ネバーマインド!」(HAHAHAHAHAHA)
「じ、冗談じゃないわよ!私まだ入部したばかりなのよ!!?」
「………ソーリー…ごめんなさい、私のせいで…」
「い、いいよ別に…(よけい不気味だーーーっ!!)」
「でもドントヲーリー、ちゃんと新しい部員は用意してあるのよ」
 ズルズル
「そ、その人は!?」
「あ、彩ちゃんっ!わたしもう野球部のマネージャーなんだけどっ!」
「サッキー、あなたそれでも女の子なの…?
 『女なら…やってやれ!』よ!!」
「お…女ならやってやれ…!!?(ガーーン)
(な、なんて根性のある言葉なの…。何をやるのかよくわからないあたりがまた根性があるわ…。目が覚めたで彩ちゃん!あんた…あんたホンマにスッキリや!)」
「(ど…どうでもいいけどなんで関西弁なのよーーー!!)」
「彩ちゃん…あたい、もう泣いたりしないよっ!」
「OK!私たち3人でセクシーアート部の設立よ!」
「(入れられてるーーーー!!)」
 ガラッ
「あの…、こ、こんにちは…」
「メグッ!?来ちゃダメっ!」
「あ、あの、失礼しますっ」
「あっウェイト、ちょっと待って!」
 ポトリ
「!!!」
「ワラ人形!?」
「あ、あの…(ど、どうしよう、見られちゃった…。また変な人と思われる…)」
「な、なんてステキなワラ人形なの!」
「え…そ、そうですか?」
「イエス、実にソウルフルだわ!ぜひうちの部に入ってくれない…?」
「(メグーーー!?)」
「あ、あの…。私でよければぜひ入らせていただきます…
 ワラ人形部に!」
 『ワラ人形』と『あら、人魚』はよく似てる…
 だがそんな事はどうでもよかった…





 そして部ができて数日後

「さて、みんな集まったわね…。今日は大事なことを決めなくてはいけないわ」
「は、はあ…」
「返事は英語ーーー!」
「ラ、ラジャー!」
「セクシーアーティストたるもの礼儀を知らなくてはノンノンよ。
 返事は『ラジャー』『ウオンチュウ』『クリナップクリンミセス』のどれか!」
「ウ…ウオンチュウ!(クリナップ…?)」
「ところで大事なことって?」
「フフーン…これよ!」バーーン

            セクシーアート部のきまり事

・部の主だい歌(ブルース)
・部の決めゼリふ(トレンディさをえん出)

 決定済み 部長(私)


「何ーーー!!?」(ガビーン!)
「あの…、重要ですね」
「どこがーー!!!」(ガビーン!)
「どうでもいいことばかりじゃない!」
「そんなこと決めてどうするの!!?」
「いえ…それは違うわ…。昔からいうでしょ…
 『早起きは…
  眠くて辛い…』」(キラーン)

「もう、彩ちゃんたら…かっこつけちゃって…」(グスッ)
「なぜ泣くーーーー!!?」
「それじゃみんながまとまったところで主題歌ね。題は『ときめき』よ。
 とりあえず私がカラオケボックスで録音したのを聞いてくれる?」
「‥‥‥‥‥‥」

 ガチャッ


 ♪ダバサ〜〜

  サバディ〜〜〜
  サバダッササンサンサバディ〜〜〜

  バグかい?
  プレステかい?
  あ〜〜〜もう…
  歌うぞこら!
  走るのかい?
  え?

  崩壊かい!!?


  まずいだろ 崩壊は!
  ああ!やめろ!!
  あ…!?
  あ…なんだ…
  そうそう それならよし…


  目つきがいいな
  ヘイ コアラ…
  セクシーアート部…




「‥‥‥‥‥‥」
「どうかな?」
「わかるかーーっ!!」(ホゲーン!)
「『プレステかい?』よりも『初版かい?』の方がいいかしら」
「だからわからないって!」
「あの…、『目つきがいいな』よりも『笑うとき 歯グキを出すな』の方が…」
「メグっ!?」
「う…じ、実はわたしも…
『崩壊かい?』よりも『メディアミックスかい?』の方が…」
「虹野さんまで!
 (み…みんないったい何しゃべってるのーーー!?)」(ガビーン)
「OK!いい歌になりそうね。それじゃ次は決めゼリフよ。
 いかにしてトレンディさを演出するかがポイントよ。たとえば…

 『 Oh! It's tlendy!』」

「(スペルが間違ってるーー!!)」(ガビーン!)
「うん、すごくいい決めゼリフね!」
「あの…、トレンディですね…」
「‥‥‥‥‥‥」
「あ、それじゃわたしも
『ずっと風邪、引いていたいな…』っていうのはどうかな?」
「イマイチ!」
「それは30点以下ね…」
「え!?」
「ふだん根性根性言ってるわりにね…」
「本人から根性が感じられないです…」
「ええ−!!?(ガビーン)
 い、いいのわたしなんて…どうせ料理と人気しか取り柄ないのよ…ダメダメ人間の代表なんだわ…」
「さりげなく自慢してるーーー!!」「合格!!」
「え、ほ、ほんとに?」
「That's great! この調子でナイスな決めゼリフを決めるわよ!」
「は、はいっ」

『わ…わ・た・し』
「ダメダメ!そんなのは三流のやることよ!」
『お弁当!』
「大切なのは呼吸なのよーーー!!」
『あの…あの…』
「声が小さーーーーい!!
 Stand up! 立ちなっさい!そんなことじゃ明日の大会には勝てないわよっ!」
『カバディ!
 カバディ!カバディ!』

 ‥‥‥‥‥‥‥

「あ、あの…、決まりませんね…」
「なんか途中から違うことやってたような…」
「Nh- これじゃらちがあかないわ。仕方ないわね…
 決めゼリフはもう………自由!!」

 !!!!(ピシャーン)

(だったら……

 やらすなよ……)


 そして

「OK…みんな用意はいい?」
「オ、オーライ」
「それじゃ最後のおさらいよ。Let's start!」


 ♪ダバサ〜〜〜

「グッ!モーニング エブリワン!」

  サバディ〜〜〜
  サバダッササンサンサバディ〜〜〜

  バグかい?
  初版かい?
  あ〜〜〜もう…
  歌うぞこら!
  走るのかい?
  え?

  メディアミックスかい!!?


「よし!!ここで決めゼリフ!!」
『あの…』
『根性よ!』
『あっ…ううん、なんでもないの』
『マーベラス!!』
 バァァァァァァァァァン キラキラキラキラ

  まずいだろ メディアミックスは!!
  ああ!やめろ!!
  あ!?
  あ…なんだ…
  そうそう それならよし…

「(はっ!)」

  笑うとき 歯グキを出すな
  ヘイ コアラ…
  セクシーアート部…


「うっ!?」
 ガタガタガタ・・・

 (ま…まずいわ…
 い…今ちょっとだけ… 楽しかった…!)

 自分の中に新たに生まれた感情を必死に否定するフーミンこと藤崎詩織だった…





<END> 




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”G”山口さん作!(ありがとうございます(^^)/)
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