・この作品は「リトルバスターズ!」の世界及びキャラクターを借りて創作されています。
アイコン劇場のテキストだけ抜き出したものです。時間のある方はアイコン劇場の方をご覧ください。







美魚「リトルバスターズ!のエンド後の話です。重大なネタバレを含みますので、未クリアの方はお引き返しください」
美魚「CLANNADのネタも多少含みますので、ご承知おきください」
美魚「それでは、ごゆっくりどうぞ…」


 部屋の真ん中で、鈴が小さくなって縮こまっている。
 それをぐるりと囲む男たち4人。
 傍から見るとただならぬ光景だけど、もちろんいじめているわけじゃない。
真人「なあ…黙ってちゃわかんねぇだろ?」
謙吾「何か、相談があるんじゃないのか?」
鈴「………」
恭介「やれやれ…こいつは時間の無駄だな。戻るとするか」
理樹「ま、待ってよ恭介。ね、鈴。とにかく話してみてよ」
鈴「うん…」
鈴「実は、こまりちゃんが…」
真人「小毬が?」
鈴「こまりちゃんが……男に走りそうなんだっ!」
四人『………』
恭介「なんだ? 今まで小毬が女に走っていたという事実でもあるのか?」
理樹「そんなわけないでしょ…。単に彼氏ができそうとか、そんな話だとき思うよ」
謙吾「とにかく、詳しく話してくれないか」
鈴「ううう…わかった。思い出したくないけど、やってみる…」


 あれは今朝の昇降口でのことだ…。
鈴「こまりちゃん、おはよう」
小毬「りんちゃん、おはよ〜」
小毬「今日はいい曇りだねっ。綿あめが空いっぱいに開がってるみたいな、そんなステキな天気だよねっ」
鈴「よくわからんが、こまりちゃんはいつも前向きだな」
鈴「あたしも見習わないといけないな」
小毬「そんな、照れるよ〜…あれ?」
 ガサガサ
鈴「なんだ? 下駄箱に手紙?」
小毬「だ、誰からだろ〜」
鈴(はっ。人の手紙をのぞき見なんてしちゃだめだ)
小毬「うわーっ。うわーっ」
鈴「こ、こまりちゃん? 何の手紙だったんだ?」
小毬「ふえ!? そ、そんなの恥ずかしくて言えないよ〜」
鈴「え…」
小毬「えへへ〜、でも最高に嬉しいよ〜。るんらら〜」
鈴「こまりちゃん…」
葉留佳「ラブレターデスネ!」
クド「わふーっ」
鈴「うわぁっ!?」
葉留佳「いやー、こまりんにも春が来たかー。ちっくしょう曹竄ワしいZE!」
クド「すぷりんぐ・はず・かむ、なのですーっ」
鈴「ま、待てっ、そうなると決まったわけじゃないだろ。断るかもしれないじゃないかっ!」
クド「でも、大変喜んでらっしゃいましたよ?」
鈴「ううう…」
葉留佳「あーあ、これでこまりんとの付き合いも終了かな」
鈴「な、なんでそうなるんだっ!」
葉留佳「ハハーン? 鈴ちゃんはお子ちゃまだねぇ。男ができたら女の女情なんて紙っぺらデスヨ、紙っペら」
クド「そうなのですかぁ、残念ですねぇ…」
鈴「そんなわけないだろっ! こまりちゃんに限ってそんな…」
葉留佳「んじゃ何? せっかくできた彼氏をほっぽって、私らに付き合ってくれるとでも?」
鈴「そ、それはっ…」
クド「寂しいですけれど…。ここは小毬さんを応援して差し上げるのが、本当の友達ではないでしょうか」
鈴「う…」
鈴「うっさいぼけーっ! そんなもん知るかーっ!」
クド「り、鈴さーーんっ!」
葉留佳「若いのう、ふぉっふぉっ」

鈴「…というわけだ」
謙吾「まったく、三枝の奴は相変わらずロクなことを言わんな」
鈴「そこでおまえたちに相談したい!」
鈴「どうすれば、あたしとこまりちゃんは友達でい続けられるんだ!?」
真人「って言われてもよぉ…」
鈴「おまえらは全員あほだけど、友情のことなら詳しいと思うんだ!」
恭介&真人&謙吾『友情!』
 急に、三人の目が光った気がした。
 がっし、と真人が僕と肩を組んでくる。
真人「おう、そういうことなら任せとけ。何しろ俺と理樹の絆は校内一、いや日本一と言っていいレべルだからな」
謙吾「待て、それは聞き捨てならんな」
 あれ、なんだか妙な雲行きに…。
謙吾「単に同室になっただけで日本一の絆とは笑止千万。理樹も内心では迷惑しているに違いない」
真人「何だとてめぇ。やるってんのかよ…」
謙吾「いいだろう。どちらが理樹の一番の親友か…。ここらではっきりさせるのも悪くあるまい」
理樹「あのー、もしもし」
恭介「ふっ。せいぜいそうやって、二号の座を争っていればいいさ」
真人&謙吾『なにっ!』
恭介「お前らが何をほざこうが、理樹が一番懐いているのはこの俺! これは紛れもない真実なんだぜ!」
美魚「一人の美少年を取り合う、三人の熱き男たち…」
美魚「アリです」
理樹「とりあえず、なんで西園さんがここにいるのか聞きたいんだけど…」
美魚「理樹と男連中の別れ&鈴と小毬の別れ >>> 男女間の個別エンディングな時点で、このゲームの方向性は決まったようなものです」
理樹「まあ確かに、世間の評価はそんな感じだけどさ…」
理樹「え、ちょっと待って!? それじゃ僕の相手って男ばかりなの!?」
美魚「諦めてください……ホモ野郎」
理樹「なんでそんなに嬉しそうなのさ!」
真人「とにかく、てめぇらに理樹は渡さねぇぜ!」
謙吾「男が絡むと、男の友情なんて脆いものだな」
理樹「いや、なんか意味わかんないから!」
恭介「まあ冗談はこれくらいにして」
理樹「タチの悪い冗談やめてよっ!」
鈴「おまえ、さっきからツッコんでばかりだぞ」
鈴「そんなだと筋肉が親友の馬鹿みたいに、ツッコミが親友になってしまうぞ」
真人「ははっ、馬鹿はどっちだよ。ツッコミが親友になるわけねぇだろ。筋肉じゃあるまいし」
理樹「もういい…。もうツッコむまい…」
鈴「えーい。そんなことより、あたしとこまりちゃんの仲はどうなるんだっ!」
恭介「ふっ。少しは成長したと思っていたが、気のせいだったようだな。鈴」
鈴「な、なにっ…」
恭介「人に頼る前に、少しは自分で何とかしろ!」
鈴「ううう…。そ、そのとおりだ…」
鈴「わかった、おまえたちには頼らない。あたし一人で何とかする」
恭介「え…まじ?」
恭介「い、いや、そこまで一気に成長しなくてもいいんじゃないか?」
真人「何がしたいんだ、てめぇは」
理樹「何だかんだでシスコンだよね…」
謙吾「まあ、相談に乗るくらいはいいだろう。最後に決めるのは鈴だとしてもな」
理樹「そうだよね。結局、鈴はどうしたいの?」
鈴「自分でもよくわからん…」
鈴「こまりちゃんにとっての一番になりたい…っていうのは、さすがに自分でも厚かましいと思う…」
真人「遠慮なんかしたって仕方ねぇだろ」
恭介「欲しいものがあるなら、全力で手に入れなくちゃいけない」
謙吾「恋愛をも越える友の絆…それを追い求めることに、何の問題がある」
鈴「そ…そうか、そうだな!」
鈴「よし、こまりちゃんは誰にもわたさないぞ」
理樹「それでいいのかなあ…」
恭介「ふっ、要するに…」
恭介「リトルラブラブハンターズ、再び出動というわけだな!」
謙吾「友情なのにラブラブはまずくないか?」
恭介「じゃあ、リトルフレンドハンターズ」
理樹「メルヘンなのか好戦的なのかよく分からない名前だね…」
恭介「さて、ここに四人の友情専門家がいるわけだが…」
恭介「鈴、お前は誰に助言を求めるんだ?」
真人&謙吾『!!!』
鈴「え…あたしが決めるのか?」
 なんか真人と謙吾が、わざとらしく咳払いしている。
 でも、鈴がそんな様子に気づくわけもなく。
鈴「それじゃあ、り…」
恭介「おーっと、待ちな鈴!」
恭介「理樹に聞こうというんだろう。確かに、一番まともそうではある」
恭介「だがな、実際に助言を求めてみろ…。さぞかし無難な答えしか返ってこないだろうぜ!」
理樹「えらい言われようだね…」
鈴「でも確かにそんな気がするぞ」
理樹「僕のイメージって…」
鈴「うーん、それじゃあ」
 鈴が選んだのは…。

 恭介
 謙吾
 真人




真人「…え、オレ?」
 選ばれた真人が一番驚いていた…。
鈴「不本意だけど、この中であえて選べば、こいつが一番こまりちゃんに近いと思う。不本意だけど…」
謙吾「くっ、なんという屈辱だ…」
恭介「みんな、俺は旅に出る」
真人「へっ、なんとでも言いやがれ。オレこそが最も頼れる男なんだよ!」
鈴「ただし、筋肉ネタは禁止だ」
真人「うわぁぁぁーっ! オレの発言の九割が封じられたーっ!!」
理樹「小毬さん相手に筋肉も何もないでしょ…」
謙吾「どうなんだ? 筋肉以外に、何か案でもあるのか?」
恭介「ないなら俺と代わってもらおうか」
真人「ま、待て、ちょっと待て。それはつまりだな…」
真人「弁当だよ! 『明日から俺に手作り弁当持ってこい』とだな」
恭介「それ、前と同じネタじゃないか」
謙吾「と言うか、鈴の方が作って持っていくべきなんじゃないのか?」
理樹「そうだよね、お菓子とか持っていけば喜ぶかも」
鈴「そう言われても、お菓子なんて作ったことない」
鈴「真人。言い出しっぺなんだから、手伝ってくれ」
真人「おう、いいぜ。頼れるオレに任せておけよ」
恭介「真人がお菓子作り…」
謙吾「始まる前から終わっている感じだな…」


鈴「こまりちゃん! ホットケーキを作ってみたんだ、食べてくれ」
小毬「わ、ほんとっ? 嬉しいなー…うっ!」
小毬「な、なんだか色も臭いも形も独特だね…」
鈴「真人に手伝ってもらったんだ。きっと大丈夫だ」
真人「おう、ちゃんとプロテインも入れておいたぜ」
 げしっ
真人「いてぇーーっ!」
鈴「そんなものいつ入れたんだおまえはーーっ!」
真人「そーいうてめぇだって、カツオ節入れてたじゃねーーかっ!」
鈴「ホットケーキなんてお好み焼きみたいなものだろ。お好み焼きにはかつぶしをかけるだろ」
小毬「………」
 さすがに小毬さんが気の毒すぎる…。
理樹「えっと…。二人とも、まず自分たちで味見したらどうかな」
鈴&真人『それもそうだ!』
 パクパク
 バタリ
 返事がない。ただのしかばねのようだ…。
小毬「ふ、ふええええ!?」
理樹「ごめん小毬さん、全部忘れて…」
 次へ

鈴「謙吾が一番まともそうだ」
謙吾「ふっ、まあ俺に任せておけ」
恭介「内心ショックだ…」
真人「くそう、この借りはいつか返すぜ…」
謙吾「友情を深める、か…」
謙吾「やはり、人生について語り合うのが一番だろう」
 出た、ロマンティック大統領。
謙吾「心の奥底までさらけ出しながら、互いに酒を酌み交わす…」
謙吾「それでこそ、友情も深まるというものだ」
鈴「うむ、わかった」

鈴「こまりちゃん、酒をくみかわそう」
小毬「ふええ!?」
謙吾「待て待て待てーーっ!」

謙吾「貴様は未成年だろう、馬鹿者!」
鈴「おまえがやれと言ったんだろう、ばかっ」
謙吾「いや、確かに言ったが、ものの例えであってだな…」
理樹「もう少し青少年らしい例えにしようよ」
恭介「無理なら代わってやっても構わないぞ」
謙吾「い、いや待て。青少年らしい例えだな…」
謙吾「そうだ、河原だ!」
謙吾「夕日の射す河原で互いに殴り合う。そして力尽き『やるな』『お前もな』…これだ!」
鈴「うむ、わかった」

鈴「こまりちゃん、河原で殴りあおう」
小毬「ふええ!?」
謙吾「待て待て待てーーっ!」

謙吾「すまん、すべて忘れてくれ」
鈴「あんがい頼りにならないな」
謙吾「ぐっ…。切腹したい気分だ…」
真人「無駄にロマンティックなんだよ、てめえは」
恭介「無駄にロマンティックでもいいじゃないか、ロマンティック大統領だもの」
理樹「意味わかんないからさ…」
 次へ

鈴「じゃあ、きょーすけ」
恭介「はっはっは。やはり頼りになるのは兄というわけだな、妹よ」
鈴「うわっ、はなせぼけーっ!」
謙吾&真人『くそう…』
理樹「それで、どう小毬さんと仲良くなるの?」
恭介「ああ、それはもちろん…」
恭介「トラウマの解消だ!」
謙吾「は?」
恭介「相手の持つトラウマを解消することで、好感度は最大限までアップする」
恭介「まあ、ギャルゲーの半分くらいはそんなシナリオだからな」
理樹「なんかギャルゲーって十年前から進歩してないよね…」
鈴「なんで理樹がそんなことを知ってるのかは、ツッコまないでおいてやる。それで、こまりちゃんのトラウマってなんだ?」
恭介「それは、理樹が一番詳しいだろう」
理樹「まあ知ってるけど…。喋っていいのかなあ」
鈴「おまえだけこまりちゃんの秘密を知ってるのか。ずるいぞっ」
恭介「ここは言ってみろ。でないと話が進まない」
理樹「恭介がそう言うなら…」
 小毬さんとお兄さんの悲しい過去を、僕はかいつまんで話した。
鈴「知らなかった…。こまりちゃんにそんなことが…」
真人「脳天気そうに見えて、そんな過去があったのかよ。くそう、泣けるぜっ」
謙吾「しかし、理樹が解決したんだろう?」
理樹「そこがよく分からないんだよね。あの世界のことが有効だったのか、それとも無かったことになってるのか」
鈴「なら、そっとしておこう。下手をすると、こまりちゃんの傷をえぐることになるじゃないか…」
恭介「だが、もし解消されていなかったらどうする? 生き物の死や血を見ることなんて、これからの人生でいくらでもあるぞ」
恭介「その度にトラウマが発動して、小毬は壊れることになる」
鈴「うう…」
謙吾「まあ、それとなく慎重に探ってみるしかないな」
鈴「ん…わかった」


小毬「りんちゃん、話ってなにかな〜?」
鈴「う、うん…」
 さて、うまく探れるかどうか…。
鈴「その…」
小毬「うん?」
鈴「ええと…お兄さんのことはもう大丈夫なのかっ!」
 むちゃくちゃ直球だーー!
鈴「あああ。いや、今のはなしでっ」
小毬「ふえ? もしかして理樹君に聞いた?」
鈴「り、理樹はわるくないんだっ。あたしが無理矢理聞き出して…」
小毬「ごめーん。あれ、作り話」
 …はい?
小毬「ほら、あの時は理樹君を成長させろって恭介さんに頼まれてたから」
小毬「でも私って暗い過去とかないし、しょうがないからがんばって考えてみました〜」
 ええええええ。
恭介「やるな小毬。ギャルゲーのシナリオライターになれるぜ…」
理樹「ちょっとちょっとーっ!」
理樹「あ」
 思わず飛び出していた…。
小毬「………」
小毬「見なかったことにしよう〜」
理樹「しないでよっ!」
小毬「聞かれなかったことにしよう〜」
理樹「全部聞いたよっ!」
小毬「おっけ〜?」
理樹「小毬さんなんか黒いよっ! ていうか小次郎さんは!?」
小毬「あんなお爺さんがいたらステキだよね〜」
理樹「いやいやいやいやいや」
鈴「ええと…。つまり、こまりちゃんに悲しいことはなかったのか?」
小毬「うん、そうだよ〜」
鈴「それならよかった…。理樹もよろこべ」
理樹「そりゃ良かったかもしれないけどさ。苦労して絵本を作った僕は一体…」
恭介「貯金下ろして庭を作った朋也に比ベたら、大したことじゃないだろ」
理樹「前作の話はするなぁぁぁぁ!」
恭介「うーむ、しかし困ったな…。小毬は、何か悩みとかはないのか?」
小毬「え、悩み? えーとね、えと…」
小毬「…ちょっとお菓子の食べ過ぎで、体重が増えちゃったかなぁ。あ、あはは…」
鈴「ダイエットしろ」
小毬「うわはぁぁーーんっ!? あっさり言われたーーっ!」
鈴「なんでだ…。悩みを解決するよう答えたのに…」
理樹「いや、そりゃ解決はするだろうけどさ…。身も蓋もないでしょ…」
恭介「そこは『こまりちゃんは太ってないよ』という選択肢を選ぶべきだったな」
恭介「いや、『あたしも一緒にダイエットする』がいいか?」
理樹「どっちにしろセーブしてなかったから、今頃遅いよ…」

鈴「やっぱり、最初から理樹に聞けばよかった」
恭介&真人&謙吾『無念…』
理樹「うーん、そうだねぇ」
理樹「やっぱり女の子のことだし、女の子に聞いた方がいいんじゃないかな?」
真人「うわー無難」
謙吾「というか丸投げじゃないか」
理樹「いいでしょ別にっ!」
恭介「まあ、せっかく出来た女友達だ。こういう時こそ頼りにしてみろ」
鈴「そ、そうだな…」
理樹「それで、誰に相談するの?」
鈴「うーん…」
 鈴が選んだのは…。

 クド
 来ヶ谷
 葉留佳
 美魚




理樹「うん、クドがいいだろうね」
鈴「一番こまりちゃんに近いし、一番まともそうだ」


 ということで、クドに話してみたんだけど…。
クド「わふー…。お話は分かりましたが…」
理樹「クド?」
クド「そのう…。やはり女の子としては、好きな人ができたら、そちらを優先するのが自然ではないでしょうか」
鈴「そ、そうか…」
 クドは恋愛優先なのか…。ちょっと意外だ。
クド「すすすみませんっ。そのですね、たとえ彼氏さんができても友達は友達ですし、多少優先度が下がるだけのわけで…」
鈴「いいんだ…。クドがそう言うなら、そうなんだろう」
鈴「あたし、今まで女の子の友達がいなかったから、そういうのがわからなくて…。ごめん」
クド「鈴さん…」
理樹「ま、まあ、クドの言うことにも一理あるし、気にしなくていいと思うよ」
鈴「もしかして、クドにはもう、そういう人がいるのか?」
クド「はわわわわわっ!? い、いえあのですねっ」
クド「そのう…。みんなが私を笑う中で、一人だけ笑わなかった人がいまして…」
鈴「そうか…。それは好きになっても仕方ないな」
鈴「…ん?」
鈴「あたしは、クドを笑ったことなんて一度もないぞ」
クド「え…はい、そういえばそうですね」
鈴「なんてことだ、クドが好きなのはあたしだったのか…」
クド「わふぅぅぅぅ!!?」
鈴「気持ちはうれしいが、あたしにはこまりちゃんが」
クド「ちちち違うのですーっ! その、他にも笑わなかった方がいましてっ」
鈴「だれだ、こまりちゃんか」
クド「そういえば、小毬さんも私を笑ったりはしませんでした」
鈴「クドはこまりちゃんにぞっこんラブなのか…。あたしはどうしたらいいんだ…」
クド「いえですからそうではなくてーっ!」
クド「はっ、そういえば佳奈多さんも来ヶ谷さんも西園さんも恭介さんも宮沢さんも井ノ原さんも私を笑ったりはしませんでしたっ」
クド「三枝さんだけは大笑いしてましたが」
 葉留佳さ〜〜〜ん。
鈴「クド…いくらなんでも、相手が多すぎだろう」
鈴「ふしあなだ」
鈴「ちがった、ふしだらだ」
クド「ち、違うのです〜。私はふしだらではないのです〜」
クド「リキ、信じてくださいぃぃぃ(えぐえぐ)」
理樹「いや、分かってるから…。というか、何でこんな話になったのやら…」
 次へ

鈴「ここはあえて…はるかに相談する」
謙吾「正気か?」
鈴「あたしは無茶なことをしようとしているんだ。普通の相談相手じゃだめだと思う」
恭介「なるほど、理不尽をもって理不尽に抗するわけか」
真人「おおお、なんかカッコいいぜ…」
理樹「理不尽な結果に終わりそうだけどね…」


 そして葉留佳さんを探しに行って、校内を駆け回ること一時間。
鈴「やっと見つけた…」
葉留佳「ごっめーん。佳奈多のヤツから逃げ回っててさあ」
理樹「仲直りしたんじゃなかったの?」
葉留佳「だってあいつ、私に勉強しろとか言うんだよ!」
理樹「いや、そりゃ言うでしょ…。この前のテスト赤点ばっかだったじゃん…」
葉留佳「おにょれー理樹くんまでもヤツの味方かー。絶望した! なんでもテストの点で計る学歴社会に絶望した!」
理樹「将来苦労するのは葉留佳さんだからね」
葉留佳「りんりん、理樹くんが氷のように冷たいー!」
鈴(どうしよう…。友達なら、慰めてやった方がいいんだろうか…)
葉留佳「あ、『りんりん』って言うとパンダみたいだよね。なんか芸やってヨ」
鈴(一瞬でも慰めようなんて思ったあたしがばかだった…)
葉留佳「んで、何の用?」
 かくかくしかじか。
葉留佳「そっかー。私が女の友情は紙っぺら、とか言ったのが悪かったんだね」
葉留佳「牛乳を温めたときに上にできる膜、くらいの方がよかったカモカモ」
鈴「もっと破れやすいじゃないかっ」
理樹「で、それをアクリル板くらいの厚さにするにはどうしたらいいかな」
葉留佳「それは馬鹿騒ぎすることデスヨ!」
鈴「は?」
葉留佳「一緒に馬鹿をやれる友達を作れ、って春原も言ってた」
鈴「すのはらって誰だ?」
理樹「気にしなくていいよ…」

鈴「とりあえず、こまりちゃんを呼んできた」
小毬「なになに?」
葉留佳「よっしゃー。馬鹿をやるぞぉー」
鈴「具体的に何をすればいいんだ?」
葉留佳「え?」
葉留佳「………」
理樹「いつも変なことばかりしてるのに、いざ聞かれると思いつかないんだね…」
葉留佳「よ、よしっ。佳奈多の額に『肉』って書いてやろう」
小毬「わわっ。そ、そんなのダメだよ〜」
葉留佳「じゃあ笹にゃんの顔にヒゲを書いてやろう」
鈴「笹にゃんって誰だ?」
理樹「笹瀬川さんじゃない?」
鈴「ざざみか…。いくらあいつでも、理由もなくヒゲ書いたりしちゃダメだろう」
小毬「ねえ、はるちゃん。いたずらもいいけど、人に迷惑かけるのはいけないんじゃないかな」
葉留佳「う…」
鈴「こまりちゃんの言うとおりだ。はるかも少しは大人になれ」
葉留佳「………」
小毬「それじゃ私は行くね〜」
鈴「うん。時間をとらせてすまなかった」
小毬「ううん、気にしなくていいよ〜」
鈴「さすがはこまりちゃんだ!」
葉留佳「なんだい、こまりんこまりんって…」
鈴「ん?」
葉留佳「どーせ鈴ちゃんにとって、私なんて微妙な存在なんだーっ!」
鈴「(ぎくっ) そ、そんなことはないぞっ」
葉留佳「今ぎくってしたじゃんかーーっ!!」
葉留佳「はいはい、どーせ私は鼻つまみ者ですよー。鈴ちゃんなんて、こまりんがいればそれでいいんだねっ!」
理樹「なんでそんな話に…」
鈴「そ、それは確かに、はるかはうるさいし、あほなことばかりしてるが…」
葉留佳「そっ…か…。あ、あはは、そりゃ鈴ちゃんもそう思うよね…」
鈴「でも、はるかがいなくなったら、きっとすごく寂しいと思う。はるかが賑やかにしてくれるから、あたしもいつも楽しい…」
葉留佳「り、鈴ちゃん…。本当に…?」
鈴「友達に嘘なんてつくもんかっ!」
葉留佳「ぐすっ…。鈴ちゃ〜〜ん、大好きだぁ〜〜〜っ!」
鈴「どうしよう理樹…。こまりちゃんじゃなくて、はるかに懐かれた…」
理樹「まあ、喜んでおけばいいんじゃないかな…」
 次へ

鈴「くるがやなら、何でも解決してくれそうだ」
理樹「真面目に考えてくれればね」


唯湖「なるほど…。話は理解した」
唯湖「ふふ、鈴君もこちらの世界にやって来たか。おねーさんは大歓迎だぞ」
鈴「?」
理樹「いや、そんな怪しい話じゃないから」
唯湖「まあ鈴君、想像してみるがいい。小毬君が自分の胸に飛び込んでくるところを」
鈴「想像…」
唯湖「上目遣いで涙を浮かべながら、『私、りんちゃんのことが好き…。世界で一番大好き…』」
鈴「こ、こまりちゃん…(どきどき)」
理樹「そ、それより最初の話に戻そうっ!」
唯湖「うむ、そうだな…。やはり小毬君の前で、カッコイイところを見せるのが良いだろうな」
鈴「おお…。すごくなっとくできる意見だ」
唯湖「そこでお約束の、『女の子が悪者に絡まれている! そこへヒーローが颯爽と登場!』をやるとしよう」
理樹「それって誰かが悪者をやるんだよね? まさか僕…?」
唯湖「少年はむしろ絡まれるタイプだろう。ここは涙を飲んで、おねーさんが悪を演じてやろう。なーに、可愛い鈴君のためだ」
鈴「くるがや…。おまえはなんていい悪者なんだ…」
唯湖「はっはっは。よきにはからえ」
 絶対、楽しんでやってると思う…。


 ミッションスタート!
小毬「るんらら〜♪」
唯湖「待てい、コマリマックス!」
小毬「わあっ?」
唯湖「唐突だが、君の下着写真をこの携帯電話で撮らせてもらった」
小毬「ふええええ!? そ、そんなーっ!」
理樹「普通に犯罪だからさ…」
唯湖「ふはははは。泣くがいい、叫ぶがいい! その困った顔だけで、ご飯3杯は軽くいけそうだ」
小毬「う、うぇええええーーーんっ!」
理樹「来ヶ谷さん、すごく生き生きしてるね…」
鈴「そこまでだっ!」
小毬「りんちゃんっ!?」
鈴「こまりちゃんをいじめるな、くるがや! あたしが相手だ!」
 鈴まで、演技だってことを忘れているようだ。
唯湖「ほほう、面白い。おねーさんが相手してやろう」
鈴「くらえぼけーーっ!!」
唯湖「てやっ」
鈴「あうっ!」
唯湖「今のはメラゾーマではない、メラだ…」
理樹『ち、ちょっと来ヶ谷さん! 話が違うよっ!』
唯湖『分かってないな少年は。一度ピンチになってこそ盛り上がるというものだよ』
鈴「く、くそっ…」
小毬「りんちゃん…」
小毬「ゆいちゃん、もうやめてよ!」
唯湖「ぐっ…。ゆいちゃんと呼ばないでくれ…」
小毬「もーっ、いくらゆいちゃんでも、りんちゃんをいじめると許さないよっ。ゆいちゃんのことをずっとゆいちゃんって呼んでやるんだからっ」
小毬「ゆいちゃんゆいちゃんゆいちゃーーんっ!」
唯湖「ぐ、ぐああああーーーっ!!」
 ばたり
 悪は倒れた…。
小毬「りんちゃん、もう大丈夫だよっ」
鈴「こまりちゃん、かっこいい…」
小毬「りんちゃんのためなら、これくらい何てことないよっ」
鈴「こまりちゃん…」
 逆だーーー!!
 次へ

鈴「みおは頭がいいから、相談にうってつけだと思う」


 というわけで、西園さんのところへ。
美魚「百合は守備範囲外なのですが…。まあ、いいでしょう」
美魚「そうですね。考えてみると、鈴さんの性格は男性に近いかもしれませんね」
鈴「ん、そうか?」
理樹「性格はともかく、喋り方は男そのものだよね。恭介が嘆いてたよ」
鈴「よけいなお世話じゃ、ぼけっ」
美魚「ここはひとつ、自分を男性と思ってアプローチしてはどうでしょう」
美魚「そして神北さんは女装ショタ…。そう思えば、萌えられなくもありません」
理樹「意地でもボーイズラブに持っていく執念には、感動すら覚えるよ…」
鈴「そう言われても、何をすればいいのかわからん」
美魚「まず、一人称は『俺』です」
鈴「お、おれ?」
美魚「そして、この本に書かれている台詞を、神北さんの前で言ってください」
鈴「ふむふむ」
理樹「ちちちちょっと! 鈴に何を読ませてるのさ!」
美魚「直枝さんも読みたいですか? 男性の方に勧める内容ではないのですが…。でも、この世界に興味があるのでしたら…」
理樹「いえ、心の底から遠慮します…」


小毬「りんちゃん、どうしたの〜」
鈴「おれ、棗鈴」
小毬「………」
 小毬さんが固まっている。
鈴「えーと、なんだっけ…」
鈴「おれの目に映るのは、おまえだけだ」
鈴「大丈夫、何もかもおれにゆだねるんだ」
小毬「…………」
 小毬さんは全然大丈夫じゃなさそうだ…。
小毬「はっ」
小毬「え、えーと、何かのごっこ遊びかなぁ?」
鈴「うん、ボーイズラブごっこだ」
美魚「カットカーーット!」
 たまらず飛び出す西園さん。
美魚「鈴さん。喋ってしまっては駄目ではないですか」
鈴「駄目だったのか?」
美魚「当初の目的を忘れたのですか」
鈴「…忘れてた」
 おいおい。
小毬「なーんだ、みおちゃんと一緒に遊んでたんだ。びっくりしたよ〜」
美魚「神北さんには失礼しました。実は、この本の様なことをしようとしていたのです」
小毬「ふえ? 何の本?」
小毬「………」
小毬「ほわわーーっ!!?」
 小毬さんは茹でダコのようになって走り去っていった…。
鈴「こまりちゃん、何を慌ててたんだ?」
美魚「それより、鈴さんが平然としている方が問題です。面白くありません…」
 いやいやいやいや。
鈴「その本か? 男の裸なんて見慣れてるからな」
理樹「そ、そーいう誤解を招く発言はっ!」
鈴「なんだ? 小さい頃、男ども四人と一緒に川で遊んだりしただろう」
美魚「鈴さん…。なんてうらやま、というか、勿体ない…」
美魚「私は、あなたを許せそうにありません」
鈴「ええっ?」
鈴「ど、どうしよう。みおに嫌われた…」
理樹「まあ、これっぽっちも気にする必要はないと思うよ…」


理樹「ごめん、上手くいかなかったね…」
鈴「いや、みんなのおかげで良くわかった」
鈴「要するに、回りくどいことはするなということだな」
理樹「ごもっとも…」
鈴「やっぱり、こまりちゃんに直接言うしかないのか…」
鈴「理樹は、男友達から同じようなこと言われたらどうする?」
理樹「僕?」

恭介『理樹、彼女なんて作るな。ずっと俺と一緒にいろ』
真人『理樹、彼女なんて作んなよ。ずっとオレと一緒にいようぜ!』
謙吾『理樹、女は魔性だぞ。それより俺といつまでも共にいよう』

理樹「ごめん、かなり引く…」
 ガーーーン
鈴「そうか、こまりちゃんにも引かれるかもしれないな…」
理樹「ま、まあ小毬さんは優しいから、大丈夫じゃないかな」
鈴「でも…万一こまりちゃんに嫌われたら、あたしはどうしたらいいんだ…」
理樹「うーん…。どうしてそこまで小毬さんにこだわるの?」
理樹「いや、初めてできた女友達なのは分かるけどさ。それはクド達も同じじゃないか」
鈴「屋上…」
理樹「え?」
鈴「屋上のこと教えてくれたのは、あたしが初めてだって、言ってくれた」
鈴「一番のなかよしさんだって…」
理樹「鈴…」
鈴「わかってる。あのとき、生き残るのはあたしだけのはずだったから、そう言ってくれたんだろう」
鈴「でも、あたしはうれしかったんだ」
鈴「ずっと、こまりちゃんの一番でいたいって、そう思った…」
鈴「本当は、こまりちゃんの大勢いる友達の一人でしかないのかもしれないけど、それでもっ…」
理樹「そっか…」
理樹「その気持ちを、素直に小毬さんに言えばいいんじゃないかな」
理樹「彼氏とか一番二番とかは置いておくにしても、小毬さんのことを好きだって気持ちは、話せばきっと伝わると思うよ」
鈴「そうかな…」
鈴「…うん、そうだな」
鈴「やっぱり、理樹は頼りになるな」
理樹「いやあ、無難な回答だけどね」

鈴「こまりちゃん、大事な話がある」
小毬「え…。何かな?」
鈴「そ、その…」
 さて、言えるかどうか…。
鈴「あの、その…こまりちゃんは、手紙の男と付き合うのか?」
小毬「ふえ? 手紙の男って?」
鈴「ほ、ほらっ。今日の朝、下駄箱に…」
小毬「あの手紙、女の子からだよ?」
 ええええええ。
鈴「お、女の子でもいいのかっ!?」
小毬「え? もちろん嬉しいよ〜」
小毬「だって、私の絵本に感想をくれたんだもん」
 …はい?
小毬「ほら、この前のバザーで絵本を出したでしょ? 買ってもらえた上に、感想までもらえるなんて最高だよ〜」
 へたへた、と座り込む鈴。
小毬「り、りんちゃん? どうしたの?」
鈴「ど、どーもしない…」
小毬「それで、大事な話って何かな?」
鈴「あ…、う…」
鈴「な、何でもないーーーーっ!!」
理樹「あーあ…」
小毬「あ、理樹くん」
小毬「りんちゃんは可愛いよねぇ」
理樹「小毬さん、もしかして全部わかって言ってない?」
小毬「ふえ、何が?」
 考えすぎか…。
恭介「まあ、これに懲りず仲良くしてやってくれ」
理樹「うわ、いつの間にっ」
小毬「うん、私とりんちゃんはずっと仲良しだよ〜」
真人「にしても、なんで鈴はああまでお前にベタ惚れなんだよ」
謙吾「屋上でどうとかいう話だったな。一体どんなロマンティックな口説き文句を使ったんだ?」
小毬「ふええ? え、ええとね…」
小毬「女の子同士の秘密、かなっ」
 ズドドドドド
鈴「おまえら、変なことを言ってこまりちゃんを困らせるなっ!」
鈴「いくぞ、こまりちゃんっ」
小毬「り、りんちゃん待ってぇ〜」
真人「あいつら、楽しそうだなぁ」
謙吾「そう言うお前もな」
理樹「幸せスパイラル理論だね」
真人「あ?」
理樹「鈴が幸せなら、僕らも幸せ」
恭介「…まあ、俺たち全員の妹みたいなものだからな」
真人「けっ。あんなクソ生意気な妹なんか欲しくねーよ」
謙吾「などと言いつつ、もし鈴が結婚する時になったら、一番大泣きするのはお前だろうな」
真人「ば、ばっきゃろー。あんな奴、とっとと嫁にでも何でも行っちまえってんだ」
恭介「おいおい。お前みたいな大男がツンデレやっても、可愛くも何ともないぜ」
真人「ツンデレって何だ? 食えるのか?」
謙吾「つゆだくの親戚とでも思っておけ」
真人「そうなのか! 今度牛丼屋で頼んでみるぜ!」
理樹「真人もいい加減学習しようよ…」

鈴「ふー。ここまで来れば安心だ」
小毬「それでりんちゃん、大事な話は?」
鈴「うっ。だ、だから…」
鈴「…こまりちゃん、好きだ」
小毬「私もりんちゃん好きだよ〜」
小毬「…それだけ?」
鈴「う、うん…」
小毬「…えへへ〜」
鈴「な、なんだ? あたし変なこと言ったか?」
小毬「ううん、嬉しいんだよ」
小毬「りんちゃんが、私のお願い事を叶えてくれてるから」
鈴「あ…」

小毬『お願い事、ひとつ』
小毬『りんちゃんも、ちゃんと笑っていられますように』

鈴「…うん、叶えられた。こまりちゃんがいたから」
鈴「あたしも、願ってもいいか」
小毬「え?」
 ちりん
鈴「この鈴…。こまりちゃんの星みたいに、願い事、かけられるかな」
小毬「うんっ、きっと大丈夫だと思うよ。何をお願いするの?」
鈴「そんなの、決まってる」
 ちりん…

『こまりちゃんが、いつまでも笑っていられますように』
小毬「…ありがとう、りんちゃん」
 END

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