暁の女神に願いをかなえてもらえなかった主人公とカイルは、再度長旅を経てすごすごとパーリアの街へ戻ってきた。既に路銀も尽き泊まる場所もなく、仕方ないのでロクサーヌの家に泊めてもらうことになる。
「(ロクサーヌの家かぁ…。あいつの謎が少しはわかるかもな…)」
「(ククク…作詞作曲の極意を盗めるかもしれん!)」
それぞれの思いが交錯する中、吟遊詩人はふと立ち止まるとさわやかに微笑んだ。
「やあ、着きました。ここが私の家ですよ」
ロクサーヌの指し示したのは一見普通の民家…。ただ違ったのはすっぽりと白い布に覆われていたことくらいだろうか。
「(なんで布がーーーー!?)」(ガビーン)
すごいよ!!ロクサーヌ 〜セクシーバード外伝〜
「お、おじゃましまーす」
「フン、中は普通の家か…」
「はっはっはっ、さっきのはただの遊び心ですから。んふっふふふふ〜〜ん」
怪しげな鼻歌を口ずさみながら家に上がったロクサーヌは、ふとテーブルの上のメモに目を留める。
ロクサーヌへ
ちょっと出かけてくるわよ
あそこにね…
フィリー
○今日は3回ね!
「な、なんとフィリーはあそこですかーーー!!」
「あ…あそこ…!?」
「くぅっ、行きたかったような行きたくなかったような…あそこ」
「ロ、ロクサーヌ…あそこってどこさーー!?」
「さてと今日は3回ですか…」
「(聞いてるのかー!?)」
見ると部屋の真ん中に、模様の描かれた古そうな壷が台の上にどでんと置いてある。
「コレ…もしかしてメイヤーの?」
「ええそうですよ。よくご存じで」
言うそばからロクサーヌは壷に近づくと、いきなり台ごと回し始めた。ぐる〜りぐる〜りぐる〜り…3回。
「よし!!」
「(何がーーー!?)」(ガビーン)
「さて…仕事も終わったしお茶でも淹れますか!」
「あ、ああ…(仕事だったのか…)」
「フ、フン。なかなか気がきくではないか」
「それでは…」
いきなりリュートを取り上げると、大音響でかき鳴らし始めるロクサーヌ。
「♪ライラライライライ〜ラライラライラライ〜」
「なぜ歌うーーーー!!?」(ガビーン)
「おや、私をからかうおつもりですか…?
昔の人がこんなことを言っていました。働かざる者食うべからず。
歌、歌わざる者…お茶飲むべからず!」
歌、歌わざる者お茶飲むべからず…
「(語呂がわるいーーー!!)」
「ま、まあ吟遊詩人だしな」
「う、うむ。仕方ねぇ、ここは聞いてやるぜ!」
「ウフフフフ…それではご静聴よろしく」(ポロロン)
いかにも怪しげに微笑むと、ロクサーヌはゆっくりとリュートをつまびき出す。
よろしくチャンプテーマソング
♪セプテンバーチャンプ
来月からチャンプ
オレのたいようがあついから
モリモリウォーウォー
アグレッシブにチャンプ
おやごさんにチャンプ
オレのたいようがあかいから
モサモサウォーウォー
「わからーーん!!」(ガビーン)
「ええとですね…。これは『よろしく』を『チャンプ』に置き換えたことでますます意味不明になったのが面白いところでして…」
「一度ハズしたネタをもう一度わかりやすく説明しているーー!!」(はぶーーっ!)
「ええいもういい!くだらねぇ歌ばかり歌いやがって!!」
わりと期待して真面目に聞いていたカイルが失望のあまり怒鳴りちらす。しかしロクサーヌは落ち着いて諭すように言った。
「いや…それは違いますね。昔から言うでしょう…。
『男なら…特撮ソング!』」
「お…男なら特撮ソングーーー!!」(ガビーン!)
(な…なんてことだ。まったくその通りだ!オレは表面的なことにばかりとらわれて男の証を捨てたも同然…。ああ、オレはなんてバカなんだ…。魔族のクズともいうべきだめ魔族の代表だ…)
はらはらと涙を流したカイルは、唖然とする主人公の前でがっくりと膝をつく。
「ワ…ワイがアホやってん…。せやけど言われてせいせいしたわ…。ホンマにスッキリや!」
「(ど…どうでもいいけどなんで関西弁なのさーーー!)」
「ハハハハ…。あなたは今から生まれ変わったんですよ。
それではあだ名をあげましょう。今までと違う新しいあなたにふさわしい最高のあだ名…」
バカイル!
そのままだった。
<END>