【注意】
このSSはCD『勇者指令ダグオンII 〜スペシャルドラマ1〜「選挙で激突!トライダグオン」』のそのまんまのパクリですので、元ネタを知らない方でも楽しめると思われます。(をい)




そーにゃんの生徒会大作戦






「へっへっへっ、いいじゃねえかよ嬢ちゃんよぉ」
「あ、あのっ、やめてくださいっ…」
「ちょっとくらい付き合えよぉ」
 学園の片隅で、今日も不幸な病弱少女ミュリエル。しかし彼女の危機に颯爽と、竹刀片手に青い影が舞い来る!
「そこまでよ!」
「な、何だぁてめぇは」
「か弱い女の子に暴力で不埒な真似をする虫けらめ。見逃すわけにはいかないわ!」
「ざけんじゃねぇ!」
「痛い目に遭いたいらしいな!」
「どんとせい、ふぉーおあふぁいぶっ!」(Don't say four or five.=四の五の言うな)
 竹刀をびしっ、と突きつけると、すぐさま呪文を唱え始める。
「ホーリーファイアをウィンドコールで増幅おまけにサンダーブリット!!」
「ひぎゃぁーーっ!!」
 ちゅどーーん
「ふっ、このソーニャ・エセルバートに楯突こうなどとは愚かな奴ね」
「あ、ありがとうソーニャっ」
「大丈夫だった?ミュリエル」
 ほっとして涙目になってるミュリエルの頭をよしよしと撫でながら、転がってる不良を眺めてため息をつく。
「まったく、最近この学校の風紀は乱れる一方だわ!」
「そ、そうね…」
「何か手を打たないとね…。断固として!」
「ソーニャ…?」
 その後Skill&Wisdomに吹き荒れることになる嵐を、ミュリエルだけがなんとなく予想していた。

 ウィザーズアカデミーで活動するソーニャだが、委員会活動も真面目に行っている。彼女が所属するのは当然の如く風紀委員会、しかも委員長である。
「それでは諸君! 月例の風紀委員会を始めるわよっ」
「はっ!委員長。まずはデイル・マースの件ですが…」
「…その件はみんな熟知してるから後でいいわ。それ以外には?」
「それでは報告します」
 委員たちは一人ずつ立ち上がると、それぞれ報告を読み始めた。
「最近一部の学生に実に不適切な行動が見られます。特に1stのメリッサ・イスキア。手に負えない魔法は使うわ、ステッキは振るわ、言葉は乱れているわと手のつけようがありません」
「うむ、許せないわ!」
「次に同じく1stのチェスター・ボーヴェン。気が短くすぐに他人に喧嘩をふっかけ、あまつさえ校内で焚き火をするなど炎の民だからといって見過ごせるものではありません」
「まったくその通りよ!」
「やはり1stのラシェル・ヴァンシア。立ち入りが禁止されている洞窟に勝手に冒険に行き、さらに先日の調理実習では鍋をたたっ斬りました」
「まったくもってあの子はっ!」
「さらに1stのセシル・ライト」
「え、セシルまで!?」
「はい。時間限定のイチゴのショートケーキを買うため、昼休みに学校を抜け出しているとのこと。さらには学校の裏庭の一画を密かに占拠し、新種のイチゴを育てているそうです」
「でえーいどいつもこいつもっっ!!」
 怒りのあまり机をひっくり返すソーニャ委員長。このままではSkill&Wisdomはまさに無法地帯。早急に手を打たなくてはならなかった。
 そんな時ファー・トークで校内放送が。
『はーい、放送委員のアリシアお姉さんです。さて今年も生徒会選挙の季節がやって参りました。立候補の受付は明日から3日間。一体誰が選ばれるのかしら?とぉーっても楽しみね〜』
「生徒会…そうよ、この手があったわ! このわたしが生徒会長に就任し、校則を一気に改正するのよ! それしかなーいっ!」
 ソーニャの背後に真っ赤な炎が燃え上がる。委員たちのどよめきと拍手に囲まれつつ、彼女の使命感はいやが上にも高まるのだった。

 さて1stの通う普通学科棟。
「大変大変大変よーっ、ラシェルーっ!」
「あれメリッサ」
「聞いた!? あのソーニャ先輩が生徒会長に立候補しちゃったのよっ!」
「うん聞いたよ。とってもピッタリな役職だよね!」
「だーっ、このおバカ!」
「だ、誰がバカだよっ!」
「ええい、あんたじゃ話にならないわ。セシルとチェスターも交えて作戦会議みたいな〜!」
「さ、作戦会議ぃ〜?」

 そして学園そばの喫茶店。
「あれ、なんだ4人とも」
「マスターこそ、こんな所で何してんの?」
「金欠だからバイトしてるんだよ…」
「ふーん。あ、メリッサたちこれから大事な会議なんだから邪魔しないでね〜」
「変なこと企まなけりゃいいけど…。注文は?」
「激甘ワッフル」
「ジュース」
「いちごのショートケーキ」
「な、なんで俺が注文なんかしなくちゃいけねぇんだよッ!」
「‥‥‥‥‥」(白い眼)
「…栗ぜんざい」
 注文を取ったルーファスが立ち去ると、さっそく一同ひそひそ声で話し始めた。
「それで本当なのメリッサ? ソーニャ先輩が立候補したって」
「本当も本当、これで会長になったりしたらすっごく厳しい校則とか作ってくるわよぅ〜」
「あ、そうだったのか! それは確かに大変だよっ!」
「アンタ今ごろ気付いたの…」
「ああーどうしようどうしよう!」
「お待たせー」
 ルーファスが来たのでピタッと会話を止めて、それぞれ注文の品に手を伸ばす。
「さっきの話だけど」
「何が手があるの? セシル」
「誰か対立候補を立てたらどうかな。それが一番まともな解決法だと思うよ」
「うんうん、わかってるじゃなーい。それじゃセシルよろしくねっ」
「え? ボクは駄目だよ、選挙管理委員だもん」
「がぁーん。そういえばあんたそうだっけ…」
「そういうめんどくさい事はセシルがやれって押しつけたのメリッサじゃないかっ」
「じゃ誰が出るんだよっ。メリッサ?」
「ええー? メリッサ内向的だし、派手なこととか苦手だしー」
「よく言うよ…。それじゃチェスターだね」
「あれ、チェスターは?」
「全然セリフがないと思ったらいつの間にか消えてるよ。しかも栗ぜんざいは小豆ひとつ残さず食べ終わってる…」
「くーっ、逃げたわねっ。それじゃ残るはラシェルね」
「えーっ!? ボクそんなの無理だよっ!」
「将来冒険者になるならこれくらい平気だよ」
「だいたい会長になって何かいいことあるの?」
「そりゃもう、生徒会長といったら生徒の会長だからやりたい放題って感じ?」
「たとえば?」
「えーと…冒険を授業科目にするとか」
「ほんとっ!?」
「とーぜんよっ。それから…」
「学校を週休三日にしろ」
「チェスター!」
「あんたさっきはよくもっ」
「それより週休三日だぜ」
「し、週休三日…。なんか燃えるなぁ」
「そして極めつけはこれ、試験と宿題を全面的に廃止すんだよ」
「か、可能なの!? そんなにスゴいことが…」
「ラシェル…。出馬してくれるわね」
「試験と宿題の…。廃止…」(パァァァァ)
「じゃ、ラシェルの立候補届けはボクが出しておくね」
「冒険が授業科目…」
「大丈夫かよこいつ…」
「ちょっと不安だけどぉー。そのへんはメリッサが別の作戦を進めるーみたいな?」
 かくして第一回の作戦会議は終わった。


『Skill&Wisdomニュース、キャスターのアリシア・ヴィンセントと』
『彩霞真琴だ』
『生徒会長の立候補届けは先ほど締め切られましたぁ〜。えーと、立候補したのは?』
『うむ、2ndのソーニャ・エセルバート。前会長のエリザ・マーガレット。そして1stのラシェル・ヴァンシアの3名だな』
『放送委員会ではこの3人の選挙活動などもお伝えしていきます。楽しみにしててね、ふふっ』

 お昼の放送を聞きながら、学食へと向かうメリッサ。人でごった返す中でソーニャの姿を探す。
「あーっいたいた。ねー先輩。隣座っていい?」
「あらメリッサ…。別に構わないわよ」
「それじゃ失礼しまーす」
 内心ほくそ笑みながら腰かけるメリッサ。
「あっれー先輩、またA定食なの?」
「何よ、悪い?」
「メリッサなんて魔法コロッケに魔法ライスに魔法茶の名付けて魔法定食よっ」
「あそ…」
「それじゃいっただっきまーす」
 と、割り箸を割った瞬間にばさばさっと何かが落ちる。
「いっけなーい、本落としちゃったぁ」
 わざとらしく拾うところへ光るソーニャの目。
「メリッサ、その本ちょっと見せなさい」
「ええ〜? なんでソーニャ先輩に見せなきゃいけないの〜みたいな」
「いいから見せなさいっ!」
 はしっ!
「なになに、『部室の中の懲りない面々・ルーファス総受本』。こ、これはや○い同人誌! なんて破廉恥なッッ!!」
「ああ〜ん見逃してくださいぃぃぃ」
「馬鹿言いなさい、没収よ!!」
 まったく…とブツブツ言いながら、同人誌を懐に入れて歩み去るソーニャ。メリッサはしばらくしくしくと泣いていたが
「(ふふ…うまくいったわ)」キラーン

 廊下。
「どう?ラシェル」
「今そこの会議室に入っていったけど」
「もーばっちりって感じーみたいな。ソーニャ先輩とて健康な女の子、やお○に興味がないはずがないわ!」
「そうかなぁ…」
「絶対中で食い入るように見てるわよ。さ、ラシェルの出番よ!」
「うん、わかったよ! おーい、廊下をご通行中のみんなーっ!」
 ラシェルの元気な声に振り向く生徒たち。
「みんなもよく知ってるソーニャ先輩! 一見真面目で優等生なあの人の、隠された実態をこれからご覧に入れるよっ!」
「入れるわよ〜」
「ああ? ソーニャの実態だって?」
「おお神様、真実とはいかなるものなのでしょうか?」
「いいよメリッサ、会議室のドアを開けてっ!」
「おっけー!」
 ガラガラッ
「むっ」
 果たして中ではソーニャが机の上に本を広げている。
「何よ、あなたたち」
「ソーニャセンパイ。その本ボクたちに見せてもらうよっ!」
「そんな必要はないわ」
「あらぁ〜? 何か見られちゃまずい本なのかしらぁ〜ん?」
「ふっ、そういうことね…。いいわよ、勝手に見なさい」
「それじゃっ!」
「みんな、これがそーにゃんの正体よっ!」
 と2人が本をばっと広げたそこには!
=================================================
 正義仮面そーにゃん 第1話
『ウハハハハ。この世はこのデイル魔王様が混沌へと叩き落とすのだー』
『そんなことはさせないわっ』
 てやっ!
『悪は絶対に許さない! 正義の戦士仮面そーにゃん、ここに参上!』
 ビカァァァァ
『正義ビーーム!』
『ギニャーー!』
 そーにゃんの活躍によって秩序は守られた。だが規律を破る不心得者は後から後から沸いてくるのだ。頑張れそーにゃん負けるなそーにゃん、正義を証明するその日まで!
=================================================

「…何これ…」
「ふっ、やるだけのくされや○いはホワイトで塗りつぶし…。新たに法と正義の物語を描いてやったのよっ!」
「ま、負けたぁっ!」
「なんや、いつものソーニャやないかい」
「くっそー、なにかと思って楽しみにしたってのによ!」
「はっはっはっ、失望したよラシェル君」
「ああっ待ってぇ〜!」
 かくして作戦はあえなく玉砕に終わった…。

 場所は再び喫茶店。
「とゆーわけで、メリッサたちは新たな作戦を考えなくちゃいけないのよ!」
「何が新たな作戦だよ、や○い本作戦は見事に裏目に出ちゃったじゃないかぁ!」
「選挙管理委員として言うけど、ここのところソーニャ先輩の人気はかなり高まってるよ」
「みんなセンパイの怖さが分かってないよぉ〜」
「こうなったら『そーにゃんに恥をかかさせる作戦』。オバケの振りしておどかして、その様子を水晶玉に記録して支持者を幻滅させてやるのよっ」
「思いっきり失敗しそう…」
 セシルのつぶやきを無視して何やら手紙を取り出すメリッサ。
「まずはこの偽ラブレターで先輩をおびき出すのよ」
「偽ラブレター?」
「へぇ、読んでみてよ」
「もちのろんよ。(コホン)
『麗しのソーニャさん。僕はあなたにメロメロの男の子です〜みたいな。つきましては2人っきりでお会いしたいので、明日の夜9時にウィザーズアカデミーの部室まで来てください。おおソーニャアイラブユー、ホールミータイ、ホールミータイ』」
「さ、さすがはメリッサだね! ボクは思わず感動したよ!」
「やっぱメリッサって天才〜って感じ?」
「そうかなぁ…」
「じゃあこれを下駄箱に入れておくわよ!」
「うちの学校、土足だよ」
「あ、そっか…。それじゃチェス太郎、そーにゃん先輩のポケットにでも入れておくのよ!」
「何で俺が!」
「キミならできるよっ!」
「くっ…」
 今まで何もしてない負い目があるので、渋々手紙を受け取るチェスター。かくして悪魔の計画の準備は整ったのである。

 翌日、いよいよ立ち会い演説会が開始された。
『皆さんお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。今日の立ち会い演説会、司会を勤めさせていただきます選管のセシル・ライトです』
「セシルって司会だったんだね。ところでチェスター、ラブレターは?」
「お、おう。一応上着のポケットに入れておいたぜ」
「これで完璧ねっ」
『それでは演説を始めさせていただきます。まずはソーニャ・エセルバートさん。どうぞ』
 水を打ったように静まる体育館で、ソーニャが壇上に進み出る。
「Skill&Wisdom2年、風紀委員のソーニャ・エセルバートです。皆さん、ここは生徒の自主性を重んじたとても素晴らしい学園です。この自由はわたしたちの手で守っていかなくてはいけません。なのに一部に!自由の意味を履き違え、最低限の規律も守らずやりたい放題やっている恥ずべき連中がいる始末。まったくもって許しがたいわ!」
「レジー、あんな事言われてるぞ」
「やだなぁ、先輩の事でしょ?」
「コホン、失礼。とにかくこんな状態では健全な学園生活などというものは成り立ちません。非力なわたしですけど、少しでも母校の役に立ちたいと思い立候補しました。清き一票をよろしくお願いします!」
 うおーーーパチパチパチパチ
『ありがとうございました。続いてエリザ・マーガレットさん、どうぞ』
 出てきたのは眼鏡なしバージョン。
「前期は暖かいご支援ありがとうございました。でも私、まだやり残したことがあるんです。それが終わるまでは引き続き会長を続けたいです。出しゃばりだって言われちゃいそうですけど…ぐすっ…。ご、ごめんなさい。とにかくご声援よろしくお願いします」
 うわーーーパチパチパチ
「おいおいルーファス、お前なに見とれてるわけ?」
「だ、だって卑怯だよあの涙は…」
「バカモン、『やり残したこと』って絶対ウィザーズアカデミー撲滅だぞ…」
『では最後にラシェル・ヴァンシアさん。どうぞ』
 元気に走ってくるラシェル。
「真っ赤なヒーロー・ラシェルだよっ!みんな燃えてるかぁっ!?」
 おー
「なんだなんだ、元気がないぞっ。んー…ニューヨークへ行きたいかぁぁぁっ!!」
 おおおぉぉぉーーー!!
「よし、元気だねっ。ボクの公約はとにかくすごいよ! まず第一に宿題の廃止! 第二に試験の廃止! 第三に学校を週休三日にするんだぁぁぁっ!!」
 どよどよ
「ボクが会長になったら学校はパラダイスだよっ!」
「いいわよー!ラシェルー!」
「よーし、ついでだから一曲歌うよっ! 『青いバンダナなびかせてー! 冒険求めてやってくるぅー!』」
 ラーシェルラシェル、ラシェルちゃんー!
「『お祭りチェーンジだ ラシェルでゴー!』 みんな、応援よろしくっ!」
 パチパチパチパチ
 大盛況のまま演説会は終わった。

 その後、ウィザーズアカデミー部室。
「ソーニャ殿、見事な演説でした」
「ありがと」
「ソーニャさんにはきっと神様のご加護がありますよ」
「そうね、何にせよ…ラシェルみたいな滅茶苦茶な公約なんて断じて通しちゃいけないわよっ!」(ゴゴゴゴゴ)
 燃えてるソーニャの胸ポケットから、何か紙のようなものが見えているのにミュリエルが気付く。
「ねえソーニャ、そのポケットの…」
「ん?(ガサガサ)こ、これってラブレター!? …ななななんてふしだらなっ!この部室で会いたいって…一度意見してやる必要がありそうね!」

 数分後、ルーファスの教室。
「よー、ルーファス」
「なんですデイル先輩」
「今日の夜9時に部室に集合だ!」
「え!?ち、ちょっと何でそんな時間に!」
「もう決定済みだ」
「あーっ俺の意志って一体ーっ!」
 実はソーニャの言葉も、果てはメリッサたちの作戦も全部この人には筒抜けだったのだ。
「(はーっはっはっ。面白くなりそうじゃないか)」

 夜。
「いい? シンシア」
「ふみ?」
「だからっ、メリッサたちがソーニャ先輩おどかすからぁ、この水晶玉に記録しといてってば」
「なんで?」
「またたびあげるからっ」
「わーい、シンシアやるー」
「もう、セシルもチェスターも来ないんだもん」
「選管は中立なんだってセシルは言ってたよ。チェスターは逃げたんだろうけど…」
 とにかくもう後には引けない。白い毛布をかぶると、ラシェルとメリッサは部室の中でソーニャが来るのを待ちかまえた。

 ギー

「(来たっ)」
「まったく、こんな時間に何しようってんだよデイル先輩…」
「(ええーっ!?)」
「(な、なんでマスターが来るのよーっ)」
「(ボクに聞かれたって知らないよっ)」
「ん?」
 何か気配を感じて振り返るが誰もいない。逆に入り口の方から、何者かの足音が近づいてくる。
 部室の前で立ち止まると扉を開けて…
「さあ! 誰なのこんなふざけた手紙をよこしたのは‥‥‥って‥‥マスターっ!?」
「あれソーニャ」
「え、じ、じゃあこのラブレターってマスターが…。こここ困りますっ! 何考えてるんですかぁぁっ!」
「は?」
 なんか知らんが真っ赤になって狼狽するソーニャに、ルーファスの方は意味不明である。
「そ、そりゃマスターだって健康な男子ですからそういう事もあるかもしれませんけどっ! わたしですよわたしっ! いいんですかっ!? あーっもう自分でも何言ってるかわからないーっ!!」
「わからないのはこっちだよ…」
「(どうすんのよぉ〜)」
「(ええい、ままよっ) お化けだぞーー!!」
「げ」
「なにっ!?」
「ひゅーどろどろどろ」
「ほほほのほー」
 突然の事態に、かえって冷静さを取り戻したソーニャ。
「誰よ一体っ。てやっ!」
「ぐはっ!」
「とうっ!」
「いてっ!」
 どこからか取り出した竹刀で、お化け2人をあっさりと打ち据える。
 即座にシーツを剥いで、中から出てきたのは…
「ラシェルにメリッサ!?」
「ふーんそう…。すべてあなたたちの仕業だったわけね…」
「ち、ちょっと待ってよっ! ルーファスセンパイ呼んだのはボクたちじゃないよっ!」
「可愛い後輩の話をきいて〜」
「おだまりっ!!」
 バシーン!と床を叩くソーニャの目はもはや微塵も容赦してくれそうにない…。
「落ち着けよソーニャ…」
「マスターは引っ込んでてくださいっ!」
「とりあえず床叩くのはやめろって。古い部室なんだから…」
 まったく古くて汚い部室である…。大きな音に驚いたのか、カサカサと家庭内害虫が出てきた。
「ひっ!?」
 一瞬にして真っ青になるソーニャ。
「ゴ、ゴキッ、ゴキブっ」
「ソーニャ?」
「いっ…いやぁぁぁーー!!」
「ち…ちょちょちょとっと抱きつくなっ!」
 カサカサカサカサ
「うわぁぁーーん不潔ーーーっ!!」
「ソソソーニャってばあああっ!嬉しいけど後が怖いよーなっ!!」
「うーん、意外な弱点だね」
「感心してる場合じゃないわよ! スキャンダルよスキャンダルぅ、シンシア、ちゃんと撮ってるっ!?」
「うん、とってるよぉ」
「何ですってっ!?」
 はっと我に返るが時すでに遅く、一部始終は水晶玉に記録されてしまった。
「シシシンシア! それをよこしなさいっ!」
「シンシア、パスパース!」
「ぱーす」
「こらぁっ! 待ちなさいってば!」
「あっゴキブリ」
「きゃーーーっ!!」
「ほほほのほー」
「ごめんねセンパイっ!」
「あああ…」
 がっくりと膝をつくソーニャと、2人きりで途方に暮れるルーファスを残し、運命の夜は更けていった…。

 ぴんぽんぱんぽん
『投票を目前にして、ソーニャちゃんの一大スキャンダル!』
『こういう事はあまり公表したくはないのだが、真実を伝えるのが放送委員ゆえ…』
『ふふっ、マコちゃんも本当はこういう話好きなんじゃない?』
『ば、馬鹿を言えっ!』
『はーい映像です。なんとあのソーニャちゃんが!3rdのルーファスくんと!夜の部室で熱い抱擁を交わしてるわぁ〜!あーあ、2人とも隅に置けないわねぇ』
『軟弱な…。ルーファスは後で根性を叩き直してやらねばならんな』
『そういうわけで特報でした〜。それじゃ皆さん、開票後にまた会いましょうねぇ〜』

「ふー、ソーニャセンパイには悪いけどこれも明るい学園生活のためさっ。ボク勝てるかなぁ」
「とりあえずソーニャセンパイさえ落ちればそれでいいわよん」
「えーっ、ひどいよ」

 そして開票後。
『マコちゃん!決まったわよ新会長!』
『いいから早く発表しろ』
『せっかちな人ねぇ。開票の結果Skill&Wisdomの新生徒会長は…1stの、ラシェル・ヴァンシアさんに決定しましたっ』
「やったぁぁぁーーーー!!」
「おめでとぉぉーーーー!!」
 思わず抱き合うラシェルとメリッサ。
「それじゃ宿題と試験は廃止ねっ」
「そうだね! 学院長に掛け合って絶対に廃止しちゃうよっ!」
「それは無理だよ」
 突然現れたセシルに、きょとんとする2人。
「選挙管理委員会から通達します。ラブレターなどを使ってソーニャ先輩を陥れたのは明らかに選挙違反。よってラシェルの当選は無効!」
 ガガーーン
「ち、ち、ちょっ…」
「ごめんね、だってやっぱり良くないよこーいうの」
「う、裏切り者ーーっ!」
「そ、そうだわ。メリッサたちがやったって証拠はどこにあるのよ!」
「あ〜ら、証拠ならあるわよ」
 アリシアと、水晶玉を持ったシンシアが現れた。
「うふふっ、実はシンシアちゃんに頼んで、ここ数日のあなたたちの行動はすべて記録させてもらったの」
「たの〜」
「シンシアぁーーっ!」
「だってまたたびくれるっていうんだもん…」
「その水晶玉よこしなさーいっ!」
「ち、ちょっとやめなさい2人ともっ」
 ガラッ
 ひゅぉぉぉ…と開いた扉から寒風が吹き込んでくる。
「見苦しいわよ…。ラシェル、メリッサ」
「うるさいなぁっ。って、げげっ、ソーニャセンパイ」
「お陰様で落選したわ…。でもね…地獄への道連れよ…。断固としてあなたを当選させるわけにはいかないわ…」
「あ、あの、あのねセンパイっ」
「この恨み…思い知るがいいっ!ふふふふふ、ふはははははっ、はーっはっははははははっははははっっ!!!」
「ひぃぃぃいいい〜〜〜〜!!」
 ちゅどーーん!

 かくしてその年の会長選挙はラシェルが失格、次点のエリザ前会長が今期も勤めることになりましたとさ。
「かくなる上は…アカデミーの風紀取り締まりを一層厳しくするまでよっっ!!」

 ということでウィザーズアカデミー。
「チェスター! 学園内で火を使うことは禁止!!」
「てめぇふざけんなっ!」
「メリッサ! 怪しげな魔導書は全部没収!!」
「ひどすぎるぅー!」
「ラシェル! 落ち着きを身につけるため3時間正座!!」
「そんなぁぁっ!」
「セシル! イチゴ畑は即刻始末しなさいっ!!」
「なんでボクまでーーっ!!」
「それからそこの柱の影で笑ってるデイル・マース! あなたは以後学園に立ち入り禁止よっ!!」
「なにーーっ!?」
「どいつもこいつも許さないわよぉぉぉぉっ!!」
 竹刀を振り回しつつ、風紀の嵐をごうごうと吹かせるソーニャ。涙を流すラシェルとメリッサは、今さらながらに深く深く後悔するのであった。
「あーんこんなことなら素直にソーニャ先輩を当選させとくんだったっ!」
「少なくともこれよりはマシだったよぉー!」
「正義の人ソーニャ・エセルバート、ここにありーー!!



<END>






後書き:
 ソーニャってカイだよねーという誰でも思いつく発想から出てきたネタです。話の展開もそのまんま(^^;(SSじゃないよな…)
 本編は今一つだったダグオンですが、周辺のアンソロジーやドラマCDは抜群に良いです。WH同様個性的なキャラと学園生活で、面白さが出しやすいんでしょうね。山海高校行ってみたい…。

# ちなみにウィズハのやおいもダグオンのやおいも持ってます>私

【おまけ】
ソーニャ 「きぃーっ、何でこの私があんな男のために苦労しなくちゃいけませんのっ!」
システィナ「駄目ですよソーニャさん、スマイルスマイルですぅ〜」
デイル  「ラ〜ブ&ピィ〜ス!」
(毎週トライガンを見ながら「ああ…ソーニャ」とか思ってたのは私だけじゃないはずだっ)

(1998/11/11)


感想は
感想は一行感想板へお願いします。

図書館に戻る
アカデミーに戻る
プラネット・ガテラーに戻る