暴れるモンスターあればとことんぶちのめし!
輝くお宝あれば無理矢理ひとりじめ!
大胆不敵!電光石火!
勝利は俺のためにある!!
パロディSS:スでいりャーズNEXT
彼の名は史上最強の美青年魔道士デイル・マース。自己意志クラゲ男ルーファス・クローウンとともに今日も気ままな旅を続けていた。
「うむうむ、さーて今日もひと暴れするかぁ!」
「何ですかその自己意志クラゲ男ってのは…」
「つまり俺の奴隷という意味だ」
「‥‥‥‥‥」
「ちょーっと待ちなぁ!」
学園裏の森を歩いていた2人の前に唐突にぞろぞろと現れる盗賊たち。その中で頭らしい男がデイルにナイフを突きつける。
「昨日俺たちのアジトを荒らしたのはてめえだな!」
「んーそんなこともあったかな」
「先輩いい加減にしてくださいよっ!」
「はっはっはっ、俺は盗品を保護したんだよ」
「しゃらくせぇ、やっちまえいっ!」
「わーーっ!お、お前ら気持ちはわかるが命が惜しければやめた方がいいぞっ!」
ルーファスの必死の制止にも関わらず殺到する盗賊に、デイルのサングラスがニヤリと光る。
「せ、先輩!その、穏便に…」
「悪人に人権はなぁぁぁいっ!」
絶叫して詠唱を開始するデイル・マース!
グラサンよりも昏きもの
部の赤字より紅きもの
時の流れに埋もれない
偉大なる俺様の名において
我ここに 自分に誓わん
俺の前に立ち塞がりし
すべての馬鹿野郎どもに
この俺様の力もて
等しく滅びを与えんことを!
「ルーファ・スレイーーーブ!」
「あぎゃあーーっ!」
ルーファスをも一撃で倒すという黒魔法最大の奥義後輩斬(ルーファ・スレイブ)。一瞬にしてあたりは焦土と化し、盗賊たちは黒こげのまま転がるように逃げていった。
「盗賊いびりはスカッとするなぁ」
「間違ってる…。人間として何か間違ってる…」
この男魔法の腕は一流でありとあらゆる魔術に通じる魔法オタクだが、それを世のために役立てる、などということは決してない。趣味は盗賊&後輩いびりというとんでもない奴。またの名をロバーズキラー、破壊の帝王、エンガチョ魔道士、あるいは軍隊ガニもまたいで通ることからガニまたデイルと呼ばれていた。
「呼ばれとらんわ!」
これはそんな彼の偉大な足跡を記した物語である。(わけない)
「お待ちなさいっ!」
「誰だっ!?」
突然の声に上を向くと、木の枝の上に立つ少女の姿が見える。
「盗賊を倒すこと自体は正義の行いと認めましょう。しかし自分のストレス発散のため不必要に大きな魔法を使うなどそれすなわち悪!今すぐ改心するならよし、さもなくばこのソーニャ・エセルバートが正義の鉄槌を下します!」
「何だありゃ」
「さぁ…」
「とうっ!」
かけ声とともに少女は木から飛び降り、デイルとルーファスは思わず感嘆の声を上げる。が
べちっ
その甲斐なく顔面から地面に落ちるソーニャ。
「おい…大丈夫か?」
一応心配する2人だが、ソーニャは何事もなかったようにひょいと起き上がるとびしっと指を突きつけた。
「ふっ、なかなかやるわね!」
「何もしとらんぞ」
「たとえ世間は騙せても、わたしのこの目はごまかせないわ!正義の炎がわたしたち一人一人の胸に燃えているかぎり、あなたの企みが実現する日は永遠にないと思いなさい!」
「何も企んでないよ。なぁルーファス?」
「心の底から同意しかねます」
「冥壊屍と崩霊裂どっちがいい?」
「どっちも嫌です!」
横暴を絵に描いたようなデイルにソーニャの拳がぶるぶると震える。
「たとえあなたにどれほどの力があろうとも、悪の栄えたためしはないのよ!あなたが悪事を働かないよう見張らせてもらいます」
「おいおい…」
「さあ行きましょう、正義のために!」
「変な奴が入ってきちまったなぁ」
「(あんたが言うかい…)」
こうして3人パーティとなった一行。さらに新たな仲間、人間と犬の合成獣(キメラ)であるマックスが
「オレは犬じゃねぇ!」
…出演拒否したので、結局3人のまま旅を続けることになった。
「色気のないパーティのできあがりだな」
「今度は誰だ?」
「俺は獣神官レジー。ま、さすらいのプリーストってとこさ」
「ケダモノ神官ね」
「…なにか恨みでもあるのかソーニャ」
「そう思うのはあなたが悪だからよ!」
「横やりを入れるんじゃあない。で、何の用だ」
ニヤリと笑ってレジーが語りだしたのはこの世界のどこかにあるというクレア・バイブル(異界黙示録)の話。それを手にしたものは究極の魔法ギガ・スハイブを完成させ、世界を破滅させるほどの力を得るという。
「って先輩になんてこと教えるんだよぉぉぉっ!」
「とある人の依頼でね」
「誰よその非常識な人は!」
「(ちっちっちっ) それは秘密だゼ」
考え込んでいたデイルだが案の定拳を突き上げると高らかに宣言した。
「よし!クレア・バイブルを探しに行くぞ!」
「ああっやはし!」
「レジー!案内しろ!」
「はいはい、人使いが荒いこって」
「ああなんて事なのいきなり世界の危機がやってくるなんて。しかしこういう時こそわたしの正義の血が騒ぐのよ!見てなさいデイル・マース。あらゆる悪に待ち受けているのは破滅の暗闇だけなのです…って人を置いていかないでよ!」
同じころ某所にて水晶玉でこの様子をうかがっている人物がいた。
「くっ、この世を混沌に変えてなるものか…。お前たち!今すぐデイルを討ち取るのだ!」
「フッ、あんな奴この俺の敵ではない!」
「ヒャッハハハハハ〜〜〜〜ッ!」
かくして一行を次々襲う刺客たち。しかし魔族のカイルも、無貌のシャドウも所詮はデイルの敵ではなかったりする。
「ラグナ粉砕バット!!」
「ぐはぁぁぁーーーっ!」
「きゃーーっデイル様強いっっ!」
「やあメリッサ君ではないかね」
「メリッサもお供しますぅ〜」
「ああ、また事態が悪い方向へ…」
「まーまーまーまー。さ、ここがクレアバイブルの場所だぜ」
「何よ、書庫じゃない」
「ここへ案内するのが俺の役目…ぐはぁ!」
いきなり背後から辞書の角で殴られるレジー。激痛に苦悶する彼の後ろから現れたのは魔竜王マーガレット、もとい生徒会長だった!
「どうやらここが君たちウィザーズアカデミーの墓場のようだ」
「大人しくやられる我々ではないぞ!」
「書庫で暴れたら駄目ですよぉっ!」
「どうあがこうが君たちの運命は…ああっ!」
小さな影が動き、お返しとばかりに今度は会長が背後から眼鏡を奪われる。奪ったのは意外にもメリッサ。
「ほほほのほー!墓場だったのはあなたみたいね生徒会長!眼鏡を外せば即人格チェンジよん」
「ううっ。私、私…(しくしく)」
「メリッサ君!?まさか君が黒幕かぁぁっ!」
「そのとーりっ!美少女メリッサ・イスキアは仮の姿、その正体は冥王(ヘルマスター)めりっちゃよ!」
「レジーお前もグルかっ!」
「いやぁ、俺は単なるモテる男だから辛い立場でね」
「わけのわからんことを…」
メリッサが書架から古びた本を取りだし、デイルに向けて捧げ持つ。
「さーこのクレア・バイブルに記された究極呪文を発動させるのよ!破滅こそ我が望み、混沌こそ我らの使命!」
「ホンネは?」
「ただ見てみたいだけー♪」
「だ、駄目ですよ先輩!あの呪文は制御に失敗したら本当に破滅です!」
「そうまで言われるとやりたくなるなぁ」
「お待ちなさいっ!」
やっぱり響くソーニャの声。姿が見えないと思ったらわざわざ本棚に登っていた。
「悪の手先に身を落とし、天の道理に背きし者よ!汚れた刃でわたしの正義、砕けるものなら砕いてみなさい!」
「何が言いたいんだか…」
「とうっ!」
ごちっ
今度は天井に頭をぶつけてそのまま床に落下する。思わず沈黙する一同の間をぬって駆け寄ったメリッサがソーニャの顔にマジックペンを突きつけた。
「さあさあギガスハイブを使わないとこの人の命はないわよ!」
「う、うう。わたしのことは構わないで。正義のために死ぬなら本望、これで世界が平和になるなら…」
「バカだなぁソーニャ君、俺がお前を見捨てるわけがないじゃないかっ」
「顔がにやついてるわよデイル・マース!」
「ソーニャ君のためにもここはギガスハイブを放たねば!」
「あなたって人はぁぁ〜〜〜!」
「せ、先輩考え直して!」
ルーファスの制止も無視され、ついにデイルは最終呪文の詠唱に入った。
部長よりなお昏きもの
歴史よりなお深きもの
混沌の社会 ただよいし存在
金色なりし破壊魔王
我ここに 汝に願うわけじゃないけど
我ここに 汝に誓うわけでもないけど
俺の天才を理解しない
すべての愚かなる者に
あんたら全ての力もて
等しく滅びを与えんことを!
「ギガ・スハイーーーブ!」(重廃部斬!)
「うわああもう駄目だぁぁぁ!」
周囲が金色の光に包まれ、床に出現した魔法陣から異形の者達が現れ出る。はに丸、死神博士、なんだかわからないものetc…。
「誰なんだおまえは?」
「長靴をはいたカニとでも呼んでください」
「はっはっはっ、彼らこそ万物の先輩…。金色の魔王、ロード・オブ・OB連だ!」
「なんてもの呼び出すんですか!」
「せ、世界の破滅だわ…」
「するとこのクレア・バイブルって…」
「うむ、ウィザーズアカデミーのOB名簿だ」
アカデミーの伝統で仮装したOBが次々と登場し、そのうち何人かが突如デイルを取り囲んだ。
「デイルきっさまぁぁ〜〜!」
「よく俺たちの前に顔を出せたな!」
「うはははは、先輩たちまた俺に勝てない勝負を挑む気ですか」
この男OBにも恨まれてるらしい。
「今日こそ殺す!」
「あああっやめてくださいこんな場所で!」
そして始まる魔法合戦。案の定重廃部斬は暴走し、破壊と混沌があたりを覆った。
「わーいメリッサもまーぜてっ…ぐはぁぁぁ!」
ヘルマスターめりっちゃは金色の魔王の力により塵と消える。もはや誰にも止めることはできなかった。
「廃部だな、ルーファス・クローウン」
「あああ会長まで復活してるし!」
「なに、廃部?」
「それはまずい」
暴れるだけ暴れたOBたちは、気が済んだのかぞろぞろと引き上げる。破壊の限りを尽くされたはずの書庫は気がつくと元通りになっていた。
「魔法で直していったのか…。万物の先輩は気まぐれらしいぜ」
今まで隠れてたレジーがもっともらしく解説し、デイルもうんうんと頷いた。
「俺はこうなることを予想してたんだよ」
「ウソおっしゃい!やはりあなたは悪だったわ!」
「くっ、ウィザーズアカデミーめ…」
結局アカデミーを廃部にはできず、エリザ生徒会長は無念のまま任期を終えることになった。しかし彼女を継ぐ者がいる。再度アカデミーの破壊を企てるものが…。
「汚れたアカデミーは浄化する!次はこのカイン・レイナードが相手なのだよ!」
「ええいしつこい奴らめ」
そしてシスティナに下された神託、世界の破滅の予感とは?暴かれたアカデミーの過去の罪。闇を撒く者の生け贄になったカインに対し、短い時を生きる部員たちに勝算はあるのだろうか!次回作「スでいりャーズTRY」にレディ〜〜・ゴー!
「見てくれないとまた暴れちゃうぞ!」
「(嫌すぎる…)」
<END>