パロディSS:虹野料理を食べに行こう
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
評判の虹野沙希の料理を味わうため、公と好雄は招かれて虹野家へと出かけていった…。ようこそ来訪者!
「今日はちょっと凝ってディナー形式にしてみたの。作りたての料理を食べていってね」
「いやーなんか悪いっスねーっ」
「虹野さんの料理は世界一ィィィ!と評判だもんなぁ」
「そ、そんなことないよ。でもそこまで言うなら食らわせてやらねばならん!しかるべき料理をッ!」
「は?」
「べ、別に。それじゃテーブルに座っててね」
虹野家の中庭に案内された2人は白いおしゃれなテーブルについた。台所から沙希がスープの皿を持ってやってくる。
「わたしは人が幸せになれる料理を求めて世界を旅してきたの…。中国の漢方料理も習ったわ…。アマゾンの「薬使い師」にも修行したわ…。アフリカの山野草も研究したわ…」
「(虹野さん…いつ学校行ってんだ?)」
「そしてわたしは気づいたの。おいしい料理を作るには『死の覚悟』が必要なり!」
「(オーッノォーッ信じらんねーーーッ!)」
「さ!それじゃゆっくり味わっていってね」
にこっと笑った沙希は料理の続きを作るべく台所へ引っ込む。その気迫に押された2人はたじたじとスプーンを口に運ぶが…。
「ンっまーーーーいッ!!」
同時に叫んで後は黙々と飲み続ける。それほどに沙希の料理はうまかったのだ。
「こいつはグレートだぜーーッ。確実にうまい!そう花京院の髪型はステキカットだってことくらい確実だッ!」
「な、なんか俺涙まで出てきたよ…」
「おいおい好雄〜。何も泣くこたねーだろーがよぉーっ」
「な、なんか止まんねーよぉ〜」
「お…おいッ!」
異常に気づいた公があわてて立ち上がる。既に好雄の足元は涙で池になっている。
「君が泣くまで調理するのをやめないッ!」
「はッ!」
振り返っても誰もいない…。今沙希の声が聞こえた気がするのは気のせいか!?
「いやーなんか泣いたらスッキリしたぜーーっ」
「よ、好雄…。お前大丈夫なのか?」
「公よぉ〜〜っあんなにうまいスープ飲めば涙の池くらいできるよぉ〜〜」
「そうかよぉ〜〜」
なんとなく疑惑の芽生えた公に、沙希が変わらぬ笑顔で次の皿を持ってくる。
「さっ!料理を続けましょうか…」
その運ばれてきた『娼婦風スパゲッティー!』の辛そうな赤に、思わず好雄は顔をしかめた。
「ゴメン虹野さん、俺辛いのってダメなんだわ。いや別に虹野さんの料理の腕がどうこうというんじゃなくて」
「この虹野沙希容赦せん!」
「うぐぅ!?」
無理矢理スパゲティを口に突っ込まれた好雄はゴロゴロと地面をのたうち回る。
「お…恐ろしい!俺は恐ろしいッ!」
「好雄!」
「何が恐ろしいって公!辛さが苦痛じゃないんだ。快感に変わってくんだぜーーッ!」
いつのまにか至福の表情となった好雄が、残ったスパゲッティを一気にかきこんだ。ズバズルー
「うーーまーーいーーぞーー!!」
食べた好雄が火を吹き、天は裂け地はひび割れ大阪城は崩壊した。しかも一瞬後には何事もなかったように元に戻っていた。
「ンンンンいい言葉だ。その絶叫を…
聞きたかったわ早乙女くん!!」
沙希は満足そうに微笑むと、再び台所へ戻っていく。
「おい好雄…この料理あやしくないか…?」
「ああ、新手のスタンド使いって感じだな…。だがただのトウガラシかもしれん…」
「じゃなくて、涙が池になったり口から怪光線が出たことだよ!怪しいだろッ!」
「そうかなぁーっ。昔のマンガではよくあることだぜ。普通だよォー」
「フツゥーッだとォーっケェーーッ!」
そしてメインディッシュのグツグツ煮込んだビーフシチューが運ばれてきた。
「虹野さん!この料理の材料は!?」
「いう必要はありません」
「調理法はッ!?」
「いう必要はありません」
「『言えない』という答えが多いな」
「ウソをついても構わないのよ…。でもわたしは正直者だからウソをついたりしないの」
立ち去る沙希を呆然と見送り、はッ!と振り返ると好雄が料理を食べている。
「幸せだァ〜〜ッ!幸せの味だよォ〜〜ッ!」
「よ…好雄ッ!」
「うッ!」
不意に手の動きを止めた好雄の目が爛々と輝き出す。
「メラメラとやる気がわいてきたぜッ!『正しいことの白』の中に俺はいる。公、あしたって今さッ!」
「これで決まりだな、どう考えても異常な料理だ!根性なしの好雄がこんなことを言い出すはずがない。虹野沙希何をたくらんでるのかわからんが…。このビーフシチュー、なにか入ってるなッ!
美術部奥義『色素分解』!!」ズキューーン!
「えーーっもっ…もったいない…。も…もっと食いたかったのにィ〜〜っ」
「その『ビーフシチュー』を!分解して材料までもどすッ!」バン!
ドリュンドリュンと三原色に戻っていく肉と野菜と果物の影から謎の声が聞こえてくる。
『根性よ!』
『根性よ!』
『根性よ!』
「な…なんだって『根性』!?この料理、根性を煮込んでいるなッ!」
証拠をつかんだ公が猛然と台所へ駆け込んだ。
「虹野さ…アヒィィィ!」
返事の代わりに飛んできたのは1本の出刃包丁だった。公の頬をかすめ飛び、柱へと突き刺さる。
「のぞき見に入ってきたのね主人くん!ただじゃあおかないわ。覚悟してもらいますッ!」ドドドドドドド
血走った目で走ってくる沙希の手にはなにやら白い物体が握られている。俺はここで死ぬんだな。公はそう思った。恐怖はなかった。沙希の手が振り下ろされた。
「ここでは!『石けん』で手を洗いなさいッ!」
「!?」
意外それは薬用石けん!!
「て、手を洗えと言ったのか?(わ…笑っていいものか?)」
「そりゃ当然!調理場は清潔でなくてはいけないのよ!」
後ろでは好雄が輝いた目で天を仰いでいる。それはもはやただのナンパ野郎の好雄ではなく。
「実に!スガスガしい気分だッ。歌でもひとつ歌いたいようないい気分だッ!」
「そう、よかった…。わたしは料理を楽しんでもらってそして元気になってもらうのが最高の喜びで最大の幸せなの」
「に…虹野さん!君の目的はいい料理を食わせようと…ただそれだけなのか?」
指をふるわせて尋ねる公に、沙希はきょとんと目を丸くする。
「料理人にとってほかに何があるっていうの?それがわたしの生きがいよ。私の望むすべてなの…。
でもね!主人くんッ!あなたは非常識よ、手を洗わないでいろんなとこ触ったでしょ!おめーはわたしを怒らせた。これでこの台所全部の床や台所や柱きれいに拭き直してもらいます!」
ぞうきんとバケツを押しつけられて、もはや公に返す言葉はない。
「す…スンマセン悪かったっス!でも俺一人でやるの?(包丁投げるかフツーッ)」
「当たり前でしょ早く!わたし残酷ですわよ!」
かくして一件落着。公は台所の掃除をしながら、デザートを食べた好雄の絶叫を聞く羽目となったのであった。
「天使のような料理人だぁ〜虹野さんはよぉ〜〜っ!俺は虹野さんのような料理人がいるきらめき高校に通うことを誇りに思うよぉ〜〜っ!」
「クッソ〜〜好雄の奴結局いい目にしか会わなかったのか。虹野さんに爆弾つけたあげくこんなことしてる俺の立場は?」
「やれやれだわ」
チャンチャン♪
<To be continued>(ウソ)
元ネタ:「ジョジョの奇妙な冒険」33巻ほか