「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく」
「部活は雛だ」
「卵はOBだ」
「OBの殻を破らねば、部活はつぶれて死んでいく」
「OBの殻を破壊せよ」
「部活を革命するために!」

 ちゃららっちゃららら〜(くるくる回るバラ〜)



少女革命システィナ





「午後の授業はサボるかな…」
 ジャネットが呟きながら歩いていると、ふとS&Wのバラ園の中で言い争う声が聞こえた。たしか同級生のシスティナ・マーレイと、もう1人は顔にバンソウコウの男。それだけなら黙って通り過ぎたところだが、いきなり男が少女の頬を張り飛ばす。
 パン!
「何故だ!何故神様のことしか書かない!?交換日記なら少しは俺のことも書け!」
「申し訳ありません」
「今日の日記は書き直すように」
「はい、ルーファス様がそうおっしゃるなら」
「だいたい…」
「おい!」
 べきぃ!
 呼ばれて振り向いたルーファスの顔面にいきなり鉄拳制裁が飛んできた。
「ぐはぁー!」
「まったく見下げ果てた奴だね。そっちの娘、大丈夫かい?」
「バラが…」
 ジャネットの声に耳も貸さずルーファスを見つめる少女。見るとルーファスの胸にあったバラの花がはらはらと散っている。
「ああっバラがぁーー!おまえなんてことを!」
「な、なんだよ大袈裟なやつだな」
「ご機嫌よう、ルーファスセ・ン・パ・イ」
「シ、システィナーーーっ!」
 いきなりルーファスに冷ややかな視線を投げたかと思うと、システィナはにこにことジャネットのもとへ駆け寄った。
「決闘の勝者であるジャネット様と私はエンゲージされました。今後私はジャネット様のものです」
「はぁ!?」


『かしらかしら、ご存じかしら』
「昔戦争で両親を亡くした女の子の前に王子様が現れて、いつまでもその気高さを失わないようにって銀の指輪をくれたんだ」
「そうにゃの?」
「そうだっ、どんなときも強く生きなくちゃ!でも王子様かぁ、えへへ」
「あのねあのね、おうじさまよりおさかながいいー」
「もう、ロマンがないなぁ。ロマンはとっても大事なんだよ!」
「そうにゃの?」
「ところでなんの話だったっけ?」
「ふにゃ?」
『かしらかしら、ご存じかしら?』


 案の定システィナはジャネットの寮に押し掛けてきた。
「ジャネット様、お掃除終わりました」
「人の部屋を勝手にいじるんじゃないよ!」
「わかりました、ジャネット様がそうおっしゃるなら」
「あ〜の〜な〜」
 頭を抱えるジャネットにシスティナは平気な顔でにこにこしている。
「だいたい決闘で勝った奴の言いなりになるなんて、お前それでいいのか?」
「だって私は薔薇の花嫁ですから」
「だから何なんだよそれは!」
「神様のお導きです」
「…もういいよ」
 さすがSkill&Wisdom、変な連中が多いと自分を納得させるしかない。部屋の中で帽子かぶってるし。


 学園創設当初より続くウィザーズアカデミー。実は校内で唯一のデュエリスト(決闘者)サークルでもある。
「さて諸君、例によって世界の果てからの手紙がやってきた」
 WAの支配者、デイル・マースがおもむろに口を開く。
「ルーファス、おまえ決闘に負けたそうだな」
「な、何かの間違いだ!」
 S&W1強い女性でその実すごい不良(笑)の真琴と、デイルにいつも勝てないルーファス(愛に生きる男)が話す中、セシルが魔法ストップウォッチを止める。
「3分12秒です。でもシスティナ先輩って家庭的でおしとやかでボク憧れるなぁ」
「もうっセシルったら信じられないってカンジ?ねぇデイルさまぁ〜〜」
「はっはっはっ、落ち着きたまえよメリッサ君。とにかくジャネット・エーティカ。彼女については色々調べる必要があるようだ。それでは解散!」
 わけのわからないままアカデミーの会議は終わった。謎の集団なのだ。


「ジャネット様は女の子なのになぜ自分をオレなどと呼んでらっしゃるのですか?」
「う…。そ、それはだな。笑うんじゃないよ?」
「ジャネット様がそうおっしゃるなら」
「オレは守られるお姫様よりかっちょいい王子様になりたいんだ!」
「あははははは」
「お前なぁぁぁぁっ!」
「申し訳ありません」
「‥‥‥‥‥‥。システィナって誰か友達は?」
「はい、ここに」
『くぇぇぇ〜〜〜〜』
「(なんか頭痛がしてきた…)」
 と、そこにセシルとメリッサが遊びに来る。
「こんにちはシスティナ先輩!一緒に勉強しましょう!」
「メリッサシスティナセンパイとお近づきになりたくてー、みたいな」
「ふぅん、友達ができてよかったじゃないか」
「ジャネット様がそうおっしゃるなら」
 和気あいあいとみんなが魔導書を広げる中、メリッサの心の中に黒い策謀が渦巻いていた。
「システィナセンパイ、ちょっとその帽子見せてくださぁい」
 とか言って帽子を奪い取るメリッサ。こっそり帽子にサンドワームを忍ばせて…
あ〜〜れ〜〜〜(ちゃらり〜〜)
 サンドワームよ!サンドワームだわ!この人帽子の中にサンドワームを飼ってるわッッ!」
「なんだって!見損なったよシスティナ!」
「ボク、幻滅しちゃいました!」
 非難の雨に涙を浮かべてじっと耐えるしかないシスティナ。メリッサの勝利の高笑いが部屋に鳴り響く!
「ほーーっほっほっほっ!どかーんとこれまでねシスティナ・マーレイ!この学園のアイドルはこのわ・た・し、みたいなー」
 ↑
「なーんてことになるのよ。名付けて『システィナったら帽子にサンドワーム飼ってる変な娘大作戦』!」
「何か言った?メリッサ」
「なんにもっ。あ、システィナセンパイ帽子見せてね」
 とか言って無理矢理奪い取り、背後にサンドワームを隠し持ちつつそっと帽子をひっくり返す…

『ムフッ!』


きいいいややあああああああ!!!
「どうした?メリッサ」
「バ、バ、ババババイト親父ぃぃぃ!!」
「オレもそんなところで飼うのはやめろって言ってるんだけどね」
「でも可愛いです。なんだかシスティナ先輩らしいなぁ」
「またあとで遊びましょうね、バイト親父さん」
「ムフッ」
 にこやかにバイト親父をしまうと帽子をかぶるシスティナ。あわあわわと腰の抜けたメリッサは第2第3の作戦も忘れてしまった。
「あ、あはははは。びっくりしたらお腹すいちゃったぁ」
「それでは私がなにか作って参りましょう」
「システィナ先輩の料理ですか?うわぁ、楽しみだなぁ」
 かき氷。
「しょう油と砂糖をかけるとあずき味になるんです」
「なかなかいけますね!」
「メリッサ、しょう油取ってくれよ」
「‥‥‥‥‥‥。もうこんなとこイヤーーー!」
「おいっメリッサ!?」
「やっぱりたこ焼きの方が良かったのでしょうか…」
 半泣きになりながら寮を飛び出したメリッサに、いきなり土煙を上げてなにかが突進してきた。
「暴れマックスだぁーーー!」
「暴れマックスが出たぞぉーーー!!」
「え…きゃぁぁぁぁ!」
「誰が犬だぁーーー!」
 誰かに犬呼ばわりされたらしく暴走してるマックス。これも美人薄命かとメリッサが目を閉じたその時!
 カーン!
 ゴングと共にボクサー仕様のデイル・マースが現れた!
ギャラクディカ・マ○ナムーー!!」 BAGOOOON!!
「ぐはぁっ!!」
 必殺の右に沈むマックス。うるうると目を潤ませたメリッサがデイルに抱きついた。
「はっはっはっ大丈夫かねメリッサ君」
「やっぱりメリッサにはデイルさましかいないわっ!みたいなー」
「さすがデイル先輩だなぁ」
「デイル・マース。侮れない奴だね」
 その頃システィナは魔導書の隅にパラパラマンガを書いて1人で笑い転げていた…。

 さて自分の部屋に手紙が来ているのを見つけたルーファス。
「世界の果てからか…」
 読んだルーファスは大急ぎでバラ園へ行く。
「何でしょう、ルーファス先輩」
「システィナ!…そういえば今日は交換日記の日だったはずだが」
「ジャネット様が『惰性でやるなんて相手に失礼だろ』とおっしゃるのでゴミ箱に捨てました。今の私はジャネット様の思うがまま」
「くっそぉぉぉぉ!!ってそれどころじゃない、決闘広場に来るんだ!」
「やめてくださいルーファス先輩!」
 同じころ、ジャネットは何者かのファー・トークを受けていた。
『システィナが神隠しにあったよハハーン』
「何だって!?」
 まさかと思いつつも決闘広場に駆けつけると、なぜかルーファスが噴水に頭を突っ込んで気絶していた。(普通死にます)
「おい、しっかりしろよルーファス!」びびびびび
「う、うーん…。はっ、システィナは!?」
「聞きたいのはこっちだ!」
「まさか!」
 決闘広場のバラの門をくぐり、長い階段を走っていく。絶対、運命、黙示録♪
 行き着いた先ではシスティナがドレスを着て待っていた。おまけに空には逆さまになったお城が浮いている。
「な、なんなんだよこれは!」
「どもどもー」
「そうだ、よく考えたらまだ一度もきちんと決闘してなかった!勝負だジャネット!」
「お、おい…」
 問答無用でどこからか剣を抜くルーファス。さらにシスティナも自分の胸から剣を取り出す。引田天功もびっくりだ。
「さあジャネット様、『部活を革命する力を!』と叫んでください」
「別にそんなもの革命したくない…」
「でぇやぁーーー!」
 聞く耳持たないルーファスが剣を振りかざし、あわててジャネットが後ずさる。
「待っていてくれシスティナ!必ず君をこの男女から救い出してみせる!」
「誰が男女だ!」
「そして永遠があるというあの城へ2人で…!」
 そんなルーファスにシスティナの暖かい声援が飛んだ。
「ジャネット様がんばってー」
ガビーーン!
「あ゛」
 ベキ
 ルーファスがガビーンとなってる間についついジャネットのカウンターがもろに入る。
「お、おい、大丈夫か?」
「違う、システィナと2人であの城へ行くのは俺だ。そして部活を革命する力を…。どんなにOBが暴れようが生徒会が意地悪しようがつぶれない永遠の部活を!」
「結局それかい!」
 り〜んご〜んり〜んご〜ん。鐘が鳴り響く中真っ白に燃え尽きるルーファス。合掌。

 ガチャ
「俺です」
 デイルは何者かとファー・トークしていた。
「ええ、手紙は俺が出したんです。そう、あなたの名前でね。演出ってやつですよ。ルーファスは部室掃除1ヶ月の処分ということで。ハッ、まさか。本当に優しいOBがいると思ってる奴はバカですよ」 ガチャ
 デイルは誰と話していたのか?世界の果てとは?それらはすべて謎のままである。なぜって本編でまだ謎だから…。
「絶対運命、黙示録」
「何か言った?」
「いいえジャネット様。(たらったらったらったうっさぎっのダンスっ♪)」



<END>




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