AIR・感想
○非ネタバレ感想
- システム
Kanonはクソでしたが、今回はリターンキーでの進行&文章の読み返しができるようになりました。これなら文句なし。
しかし取説に書かれていないため、読み返し機能はネットで知るまで気づかなかった…。
- キャラ
今まで以上に精神年齢が低くなっている(^^; 全員それなりに好きですが、最初のうちはかなり引きました。
3人の中で佳乃はいまいち個性が薄く、元々観鈴とかぶってる上に、観鈴が後から色々判明するのに比べそういうこともないので、「水で薄めた観鈴」に成り下がりました。3人しかいないんだから、3人全く異なる性格にすべきじゃないかなぁ。
往人はかなり面白い。クール気取ってる中で時々ボケるのが笑えます。おいおい、と思える行動もありましたが、長森シナリオや舞シナリオのように嫌悪感を覚えるほどのものはなかったため、キャラとしての評価は浩平や祐一より上です。
- シナリオ
細かいギャグはONE並に笑えました。
シリアスの方は…泣かせの部分がしつこくて押しつけがましい。全体的に冗長で、「もっとシェイプアップできるのに…」と思える部分が多々ありました。
テーマ的にも共感したり、何かを考えさせるようなものは無し。メイン部分の骨がちょっと好きになれない題材で、どうにもはまれませんでした。(好みの問題なのでどうしようもないが)
個人的にはONE>MOON.>Kanon>AIRです。
Kanonは色々アラはあったけど、真琴シナリオは文句なしに良かったからなー。今回は「これが見られただけでも買ってよかった」と思えるほどの話はありませんでした。
以下、シナリオに関するネタバレ。
○ネタバレ感想
輪廻転生話は好きじゃないのです〜。
そういう人間が書いた感想ですので、読みたくない方は引き返してください。
改行代わりの飛鳥武蔵
「前世も来世もあるか! きさまもこの武蔵も命はひとつだ!!
今この時に立っている命がすべてのはずだ!
そのたったひとつの命がほろべばすべてはおわるのだ!!」
「な…ならば武蔵よ… きさまはなぜこの戦場へきた…
戦いをこばむはずのきさまが
なぜみずからこの地へやってきたというのだァーーッ!!」
「いったはずだ 命は一度きり たったひとつだと…
聖剣のためでもない だれのためでもない
たったひとつの自分の命をまもるためにオレは この戦場へきたのよ!!」
(車田正美『風魔の小次郎』)
- DREAM観鈴シナリオ
個人的にはあれで終わりでも良かったかも(^^;
人形使いという設定が唯一意味を持った箇所じゃないでしょうか。子供たちに教えてもらうあたりは良かったなー。観鈴に笑ってほしいというのも。(結果は不発だったけど)
同じ死ぬでも、主人公がヒロインを助けるため死ぬなら王道でグー。
話自体はさすがに背景が分からないので、「なんか言葉だけで進めてるな」と、この時は思いました。まだ前フリだったのか。
- DREAM美凪
「おはこんばんちは」のあまりの寒さに引きましたが、慣れてくると愉快なキャラでした。(ギャグキャラとして) 『猪名川でいこう』の長谷部彩みたいだな。
で、母親に忘れ去られるあたりまでは良かったのですが…
『夢』
『永遠に続くもの/終わりがあるもの』
またそのネタかい! もうええっちゅーねん!!
ONEとKanonやってなけりゃ楽しめただろうよ…。Keyはもう夢ネタは使うな。
バッドED…美凪のダメ人間ぶりは良い。けど「甘えるな」なんて言うくらいなら最後まで逃げを許すなよ〜。一緒に連れてく時点で甘えさせてるじゃん。
グッドED…冗長ー。『夢が覚める云々』ですぐ展開が読めるので、尚更そう感じました。少なくとも母親と食事した後は、すぐにクライマックスへ繋げるべきじゃないかなぁ。
とはいえ別れのシーンには来るものがありました。CG切り替えが良い良い。静かに幕を閉じるのも○。
が、最後は思いっきり蛇足。せっかくきっぱり夢から覚めたのに、どうしてこんな中途半端なもの入れるかなぁ…。すぐに代用品が見つかったんじゃ消えたみちるも浮かばれねえ。
「たとえ、どんなに離れていようと、俺たちの間を隔てるものは、空気だけだということを」という台詞は良いです。唯一「AIR」というタイトルの意義を感じた部分。今目の前にある空気も、地球の裏側と繋がってるんだよなぁ…。
- DREAM佳乃
これまた相撲の寒さに引きました。夏なのに寒すぎるよ…。
話としては
『羽根に残っていた白穂の残留思念が奇怪な行動を取らせていた(往人の首を絞めたのは、白穂が子供の首を絞めた行動が”たまたま運悪く”再現されてしまった)』
+『母や姉に迷惑をかけているという意識があり、母のいる空に行きたかった』
ということでいいんでしょうか?
前者は単なる巻き込まれ事故でしかないし、後者もそんな深刻に思い詰めるほどの事とは思えないな…。(少なくとも手首切るほどには) 事件起こさないと話が作れないから無理矢理起こしたって感じです。
バンダナと魔法も大して話に絡まず残念。『空へ行きたい』というのは悪くないので、あんな手首切る方法じゃなく、もうちょっと明るい方法で目指してくれれば爽やかなシナリオになったのに。
本題より、霧島医院での日常生活の方が楽しめました。花火やら流しソーメンやら。
- SUMMER
長い〜。読むだけの上に、基本的に設定説明話なのでなおさらそう感じます。キャラはまあまあ。
金剛峰寺とか、歴史好きな人には良かったかもしれませんが、個人的には変に現実的になったせいでちょっと冷めました。『空にいる少女』が本当に物理的な意味で空中に固定されているとは思わなかった…。(もうちょっと夢のある話かと思ってた。風の精霊とか)
いくら時の権力者が記録を破棄したからって、生物の種一つが痕跡も残さず消えられるものか?
説明会話からすると
空に縛り付けられる … 封術。百年後に消える。
心を寄せる者が死ぬ … 神奈の母にかけられた呪い。癒される時間が足りないので、消えない。
魂を受け継いだ者が死ぬ … 翼人の魂が、人間という器に入りきらないための現象。
という3つの要素があるようですね。分かりづらいなぁ…。
- AIR
前半は往人で笑えたのでよし。法術焼きそばとか…。
晴子さんが出ていった理由を知って一瞬感動。が、よくよく考えれば何で理由を話して出ていかなかったんだ? ぬか喜びさせる事にはなるかもしれないけど、見捨てられたと思った観鈴のショックよりはマシだろうに。
つーか、親権の交渉なんて別に後でもいいだろ、娘が病気で倒れてるのに…。この行動を見る限り、観鈴のことを本当に考えているのかいまいち疑わしく、その後のハマリ具合10%減。
カラスの正体にはびっくり。
晴子さんが戻ってきてからがまた長い…。目先を変えても、要は「晴子さんはこんなにも観鈴を想っているのだ!」という話ばかりなので、進むに従って冷めます。
そして晴子さんも言っているように、やっぱり家族ごっこだと思うわ。普通の親子はああまでベタベタしないだろ。あの二人が本当の家族になるには、まだまだこれからだったと思います。
結局晴子さんの観鈴への個人的な愛情、それもただひたすら純粋という単純なものなので、悪いとは言いませんが「テーマは親子愛」と言うには表層的すぎました。テーマならもう少し深く突っ込んでくれ〜。
母親の大変さに諦めかけるところくらいでしょうか、考えさせられたのは。
で、ゴールシーン。
「がんばってよかった…」「観鈴ーっ!」 目を閉じる観鈴。挿入歌。
ひと昔前のドラマか何かかよ…。
演出過剰すぎ。さすがに冷めるわ。娘が死ぬときにあんなにペラペラ喋る奴いねえよ!
真琴みたいな静かな終わりの方が好きだなぁ…。
そして挿入歌が終わったとき、既に晴子さんは立ち直ってました。
…いや、立ち直ること自体はいいんだけど。あれだけ引っ張ってアンタそんなあっさり…。
敬介も、娘が死んだんだよ? 「やっぱり病院に入れれば良かったんだコンチクショー!」くらい言うかと思ったよ…。なんでそんなに物分かりいいんだよ…。
ラストは思わせぶりが度を越していてかえって萎え。解釈に労力を払う気力が湧きませぬ。情報が少なすぎて何言っても推測にしかならんし。
いずれにせよ「神尾観鈴」とは関係ないですね。転生して新たに生まれ変わったとか言うなら、それこそ栞シナリオ並のご都合主義ハッピーエンドだろ。
で、後味の悪さだけが残り、正直クリア直後は「なんだ、色々な設定も、要はキャラ殺して泣かすためのものか」という感想でした。
後から理由を色々考えてみたんですが…
死ぬ理由が理不尽
病気で死ぬとか、木から落ちて死ぬなら納得はできます。(死んでなかったが) 人間の姿と引き替えに死ぬのも、まあ代償なく人間になれるわけがないから分からんでもない。
『前世が翼人だったため死にました』
なんだよそりゃぁ…。
神奈が悪いわけじゃないけど、私が観鈴だったら翼人を恨むよ…。普通の人間にしてみれば理不尽な災難以外の何物でもないもんな。
そもそも密教の呪いがなければ神奈が星に記憶を返して終わりだったんだから、観鈴は平安時代のワケわからん坊主どもの尻拭いをさせられたようなもんですな。ひでえ話だ…。
死ぬ意義の乏しさ
それでも友のため大事な人のため命を散らすとか、死なないと人類が滅亡するとかなら死ぬのも仕方ないと思うよ。
「今後、魂を受け継いだ誰かが死ぬのを防ぐ」というのは…もちろん無意味とは言いませんが、そのために観鈴自身が死ぬんじゃ割に合わないよなぁ…。もうちょっとマシな方法はなかったのか? 転生しないようどこかに封印するとか。
「星に記憶を返す」に至っては、その意義がまったく不明。
> 憎しみや争いで空が覆い尽くされた時。
> この星は嘆き悲しみ、あらゆるものを生み出した己を忌むことでしょう。
とは言っていたが、なら別に記憶なんて返さなけりゃいいじゃん…。何も返さなければ何も起こらないんだし。
翼人の存在自体が
> この星はまだ、歩きはじめたばかり。
> だから、わたしたちはここに生まれた。
という、説明になっていない説明でしか語られず、結局この種族が何のために存在したのか、どうして星の記憶を継ぐ必要があったのかも分からない。なのでどうにも観鈴は「つまらんもののために死んだ」という印象が強い。
運命に従うだけ
選択の余地はなく、元々死ぬしかなかったとしよう。
だとしたらつまらん話だなぁ…。どうにもならないまま始まり、どうにもならないまま終わるとは。
せめてフィクションの中くらい「運命は自分の手で切り開くもの!」という思考を持ちたいよ。
「幸せな記憶」
MOON.ではこんなこと(ネタバレ)言ってたのに…。
そもそも幸せか不幸かなんてのは結果として後からついてくるものであって、「幸せで”なくてはならない”」なんてのは何か違う気がするけどなぁ…。
幸福だろうが不幸だろうが、自分で決めた道を自分の足で歩む人生にこそ意味があると思うので。
キャラ描写の薄っぺらさ
ラスト付近の観鈴はまるっきりただの駒でした。
翼人の使命のための駒&泣かせるシナリオのための駒。
これから死ぬのに、なんでそんなに落ち着いてんの?
恐怖とか葛藤とかないの?
ストーリーを重視するのはいいけど、キャラを軽視して「人間」を描けてないんじゃしょうがないだろ。
前作までは個人レベルの話で、七瀬シナリオは七瀬の話だし、舞シナリオは舞の話だし、郁未だって途中色々あったけど結局は郁未の話だった。
今回のこれは観鈴の話じゃないよな…。観鈴自身が成長したわけでも何かしたわけでもない。友達ができないのも外的要因、家族ができたのも外的要因(晴子さんの一方的な愛情)、死ぬのも外的要因。どないせいっちゅーねん。
それでも話が凄ければ文句はなかったけど、親子愛は一方的な愛情ドラマ、翼人の話は三流ファンタジー程度にしか思えませんでした。
MOON.やONEは「辛くても生きていく話」だったのに、AIRは「幸せに死ぬ話」でした。何だかなー。
人形使いの設定にほとんど意味がなかったのと、ヒロイン同士の横の絡みがほぼ皆無だったのも残念。
麻枝氏ということで期待しすぎました…。次からはデフォ買いは避けよう。
○良かった点
・鳥の詩
・クリアするとタイトルが変わり、シナリオが生まれる仕掛け。素直に「おお!」って感じ。
・マサルネタ(笑) 「キュピーン」「コンチクショー!」の他、「コ、コクワガタっ!?」も「モ…モンテスキュー!?」のパロディでしょうね。(すごいよ!!マサルさん1巻)
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【裏葉】「母君さまにかけられた呪(しゅ)もまた、時を経た強固なものでございました」
【裏葉】「それは翼人に心を寄せる者を弱らせ、やがては死に至らしめます」
【裏葉】「母君さまとの別れの折、呪いもまた神奈さまに引き継がれました」
【裏葉】「神奈さまを空に捕らえている封術は、いつか朽ちる日も来ます」
【裏葉】「神奈さまの魂は地上に戻り、輪廻(りんね)を繰り返すことになりましょう」
【裏葉】「しかしながら、呪いは消えることはございません」
【柳也】「しかし、神奈はいつか地上に降りてくる」
【柳也】「人として輪廻転生すれば、呪いもそこで終わるはずだ」
【裏葉】「翼人と人は、異なるものでございます」
【裏葉】「神奈さまの魂を人が宿すことは、小さな器に海の水を移すようなもの」
【裏葉】「注ぎおわるより早く、器は割れてしまいましょう」
【裏葉】「神奈さまの魂は、癒される間さえなく輪廻に戻りましょう」
【裏葉】「それに…」
【裏葉】「この先神奈さまが地上に降りられることがあるとしても…」
【裏葉】「早くともそれは、百年ものちのことでございます」
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MOON. ラスト付近のネタバレがあります。
由依「晴香さん……憶えてないんですか……?」
酷な質問だったか。
だが由依はそれを聞いた。
晴香「いろんなことがあった。ただそんな気がするだけ」
由依「とても……心が痛むことだったんですね」
晴香「そう。心に深い傷が残るようなこと」
晴香「でもいいのよ」
晴香「私はそれを憶えていない。だからいいのよ、
どんなことがあったんだとしても…」
由依「そう……でしょうか…」
晴香「そうなのよ。どんな辛い過去があってもね、
それを知らなければ生きてゆける」
晴香「ただ刹那、悲しいだけよ」
由依「そんなので…いいんでしょうか」
晴香「なにが言いたいのよ…」
由依「思い出さないままいた方がいい真実なんて…
実はないんじゃないですか」
晴香「どうして…」
由依「だってそれは…なんていうか…うまく言えないけど…」
由依「その事実を受け止めた上で生きてゆかないと…
自分勝手だって…そう思う…」
晴香「………」
由依「すべてを受け止めて、自分の中で整理して、
心の奥に閉まっておかないといけないんじゃないかな…」
由依「自分の過去の一部を一切閉じこめるって、
その周囲に居た人たちの存在ってものも一緒に
閉じこめてしまうわけで…」
由依「そんなものを伏したまま、のうのうと生きてゆくなんて…」
声が震えていた。でもうまく喋ろうと、由依は頑張る。
由依「すごく自分勝手。自分に甘えてる」
由依「正直に生きるってすごく…辛いけど……」
由依「でもそれが人の強さなんだと思う…」
最後の方はほとんど涙声だった。
晴香(この子と一緒にいたら…)
晴香(私の記憶喪失の真似事だって、いつか終われる日が
来るのかもしれない)
晴香(そのときは、良祐……あなたのために泣いてあげられるわね)
辛い記憶でも、自分の記憶であるなら捨ててはいけない、というのがこの話でした。
AIRで連発されていた「幸せな記憶」って一体なんなんだろう。
観鈴一人の個人的な幸福感さえあればそでいいのか? 地球上には辛い思いをしている人だって大勢いるのに、それは無視か?
それより何より、今まで翼人の魂を受け継いだばかりに死んでいった、多くの罪もない人たちはどうなるんだ?
観鈴は幸せに死ねたからまだいい。その人たちは友も家族も奪われ、不幸と無念の内に死んでいったんだろ?
それを無視して「星の記憶は永遠に幸せでなくてはなりません」とか寝言をほざいているこの物語には嫌悪感すら覚えるっつーねん。
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