「やあ、おはよう。
『何だよ、伊集院。
「今日はバレンタインだね。
君にはかなわないが、
僕も少々もらったよ。
『そうかよ、
良かったな。
「ほら見たまえ。
まだあの程度さ。
『‥‥‥‥。
「そんな事はないだろうが、
帰りに鞄が空いていたら、
言ってくれたまえ。
『何でだよ。
「僕のをほんの少しだけ
分けてあげるよ。
それじゃあ、また。
はーっ、はっはっはっ…。
『‥‥‥‥‥‥。
「やあ、おはよう。
『何だよ、伊集院。
「今日はバレンタインだね。
毎年の事だが、
全く参ってしまうよ。
『そうかよ。
良かったな。
「ほら見たまえ。
今年もあれだ…。
『‥‥‥‥。
「処分に困ってるんだ。
よかったら半分持って
いってくれないか？
『いらねえよ。
「欲しかったら
いつでも言ってくれたまえ。
それじゃあまた。
はーっ、はははははは…。
『いい加減にしろよ。
「やあ、おはよう。
『毎年、うるせえぞ。
伊集院。
「そんなに怒ることは
ないじゃないか。
『怒りたくもなるぜ。
毎年これじゃ…。
『‥‥‥‥。
「まあそうひがまないで
くれたまえ。
ははははは…。
『‥‥‥‥。
「公君。
ちょっと、校舎裏に
来て欲しいの。
『ああ、いいよ。
「よかった。
それじゃ、すぐに来てね。
（チョコレートなら
ここで渡せばいいのに、
恥ずかしがっちゃって…。）
『おーい。
詩織ぃ、きたぞー。
（こんな所で、もしかしたら、
チョコレート以外にも…？）
「あのね、
紹介したい女の子がいるんだ。
ちょっとここで、待ってて。
（はぁ…。
詩織の用じゃないのか…。
でも、紹介したい
女の子って誰だろう…。）
「でもぉ、恥ずかしい…。
やっぱり、いいよぉ…。
「何言ってるのよ。
せっかくのチャンスじゃない。
勇気を出さなきゃ。
（何か、向こうで話し声が
聞こえるぞ。）
「あの…。
『は、はい？
「わ、私…、
美樹原愛といいます。
こ、これ、
受け取ってください…。
『あ、ありがと。
『ありがたく…。
あれ、
走って逃げちゃったよ。
「ごめんなさい、あの娘
とっても恥ずかしがり屋なの。
メグ、ちょっと待って！
（恥ずかしがり屋ねぇ…。
でも、可愛かったな。）
「あの…。
これ…、どうぞ。
『あ、ありがとう。
「それじゃ…
失礼します。
（これは、義理だろうな…。）
「あの…。
こ、これ…。
あの…。
受け取ってください…。
『あ、ありがとう。
嬉しいよ。
あっ、美樹原さん。
「は、恥ずかしい…。
『真っ赤な顔してたな…。
よっぽど恥ずかし
かったのかな…。
「こんにちは。
『あっ、古式さん。
どうしたの？
「つまらない物ですけれども、
よろしければ、どうぞ。
『あ、ありがとう。
（何か、ご挨拶回りみたい。
やっぱり、義理かな…。）
「主人さん。
これ、お口に合うかどうか
わかりませんが、
よろしければ、どうぞ。
『あ、ありがとう。
でも、随分大きな
チョコだね。
「ボーッとしていて、
気がついたら、
たくさんのチョコを
溶かしてしまいまして…。
『古式さんの手作りなの？
「それは、開けるまでの
秘密です。
では、失礼いたします。
『そ、それじゃ。
（さっき溶かしてたって
言ったのになぁ…。）
「主人君。
チョコレートよ。
『あ、ありがとう。
「勘違いしないでね。
義理よ、義理。
『別にいいけど。
（どこから見ても、
義理にしか見えん。）
「あっ、主人君。
チョコレートよ。
『あ、ありがとう。
「バレンタインは大変だわ。
たくさんの人に配らなきゃ
いけないから…。
『あれ？
これみんなのと違うよ。
「た、たまには、
そういうのも
いいんじゃないかしら？
『俺だけ、特別なの？
「いいじゃないの。
忙しいから、
もう失礼するわ。
『慌てて、
行っちゃった気がする…。
（何にしても特別は良いぞ。）
「あっ、
主人君。
はい、義理チョコよ。
『あ、ありがとう。
（何も、
はっきり言わなくても…。）
「あっ、
公ちゃん
はい、これ。
『チョコレートだね。
あ、ありがとう。
嬉しいよ。
「ぎ、義理よ、義理。
でも、ちょっとだけ
義理じゃないの。
『何言ってんだか
わかんないよ。
「そ、それじゃ
さよなら。
『何だろ、
あんなに慌てて…。
「あっ、公ちゃん。
はい、チョコレート。
『あ、ありがとう。
でも、一個十円のだね。
「私、今びんぼーなの。
ごめんね。
『別にいいけど。
（どこから見ても、
義理にしか見えん。）
「あっ、公ちゃん。
はい、チョコレート。
『あ、ありがとう。
これ、有名なあの店の
チョコじゃないか。
「えっ、わかる？
流行に敏感ね。
『よく買えたね。
「朝５時から
並んだんだからね。
『俺にくれるために、
わざわざ、そんな事を…。
「やっぱり、渡すなら
このぐらいしないと…。
『ありがとう、嬉しいよ。
「それじゃ、
急ぐから…。
（何だか、すごく嬉しいぞ。）
「主人君、
チョコレートよ。
『ひ、紐緒さんが俺に？
嬉しいな。
ありがとう。
「これを食べて出た症状を
レポートで提出してね。
それじゃ、失礼。
『な、何が
入ってるんだろう？
「あっ、
公君これ、実験のついでに
作ったからあげるわ。
『あ、ありがとう。
嬉しいよ。
「大丈夫だとは思うけど、
手足がしびれたときは
すぐ言いなさいよ。
『どうして？
「ちょっとだけ、
特別な思いを
こめてあるのよ…。
『特別な思いは
嬉しいんだけど…。
「それじゃ、失礼。
（何が、
入ってるんだろう…？）
「がらじゃないけど、
はい、チョコレート。
『あ、ありがとう。
（これは義理かな…。）
「私、不器用だから、
上手にできなかったけど、
これ…。
『チョコレートだね。
ありがとう。
嬉しいよ。
「本当に、
上手じゃないから、
見て笑わないでよ。
『そんな、一生懸命
作ってくれたんだろう。
絶対笑わないよ。
「それならいいけど。
それじゃ、絶対食べてよ。
『はいはい。
残さず食べるよ。
（それにしても、清川さんの
手作りチョコって
すごく嬉しいなぁ。）
「これ、チョコレートです。
どうぞ。
『あ、ありがとう。
（これは義理かな…。）
「あっ、主人さん。
これ、受け取って
ください…。
『あ、ありがとう。
嬉しいよ。
「あの…、中に…。
『中に何？
「い、いえ。
何でもないです。
し、失礼します。
『中に…、何だろう。
ごそごそ
「あれ、中に紙が入っているぞ。
これは如月さんの書いた
詩じゃないか。
どれどれ…。
（な、なんか
照れちゃうな…。）
「はい、チョコレート。
手作りなのよ。
『あ、ありがとう。
（でもこれ、みんなと同じだ。
やっぱり、義理か…。）
「あっ、公君。
これ、チョコレート。
『あ、ありがとう。
でも、どうしたの？
眠そうだね。
「このチョコレートを
作るのに、朝まで
かかっちゃって…。
「あ、朝まで？
それじゃ、勿体無くて
食べれないね。
「でも、食べてもらいたいから
心を込めて…。
あっ、も、もう行くね。
『あっ、虹野さん？
行っちゃった…。
（それにしても、朝までか…。
最高に、嬉しいぜ。）
「公さん
お兄ちゃんの友達だから
チョコレートあげる。
「あ、ありがとう。
優美ちゃん。
「あっ、公さん
これ、チョコレートです。
『あ、ありがとう。
嬉しいよ。
優美ちゃん。
「これ以外のチョコレートは
貰ってもいいけど、
絶対食べないで下さいね。
『えっ？
う、うん。
「ホント？
絶対約束だよ。
それじゃあ。
（軽はずみな
約束しちゃったかな…。）
「あっ、公君。
はい、チョコレート。
『あ、ありがとう。
（小さいな、
これは義理かな…。）
「あっ、公ちゃん。
これ、形が悪いかも
しれないけど…。
「あっ、公ちゃん。
さっきはごめんね。
友達に頼まれて…。
『別にいいよ。
「これ、形が悪いかも
しれないけど…。
『あ、ありがとう。
嬉しいよ。
「ちょっと学校では、
恥ずかしくて
渡せなかったの…。
『どうして？
「だって…、
特別な想いをこめた
チョコだから…。
『えっ？
それって…。
「そ、それじゃ、また。
『特別な想いか…。
（今日は、
一個も貰えなかったよ。
寂しいなぁ…。）
（あまり貰えなかったけど、
こんなもんかな。）
（まあ、このぐらい貰えれば、
いいほうかな。）
（わりと多くもらえたな。
結構人気あるみたい。）
（たくさん貰えたな。
俺って、すごいんじゃない。）
おまけ（ないない）
「やあ、
やはり一個も貰えなかった
ようだねえ。
『何だよ、
大きなお世話だ。
「…この僕に電話ばかり
しているから、
そういうことになるのだ。
「だが安心したまえ！
約束通り、
僕のをほんの少しだけ
分けてあげよう。
『いらねえって言っただろ。
「（むか）
取り押さえろ！
「はっ、レイ様。
『な、何だおまえら！
は、離せぇ！
「この僕が作…じゃなかった、
めぐんでやろうと言ってるんだ。
さあ食え食えーーーッ！
『うげごうが。
「ふ、礼はいらん。
それじゃあまた。
はーーーっはっはっはっ…
『あのなあ！
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