○○(開かずの教室か…) ○○(あれ? 鍵がかかっていない…) ○○(中は真っ暗だ…) ○○(あれ? 今、女の子がいたような…。 き、気のせいだよな…)
○○(開かずの教室…) ○○(この間のあれ、なんか気になるな…) ○○(鍵は……かかってない…) ○○「誰かいるのか?」 ○○(ふう…) ○○(やっぱり、なにもいないな。 この間のはやっぱり目の錯覚だよな…) ○○「!」 ○○「あわわ…出たっ!」 ○○「はあ、はあ、はあ、はあ…」 ○○(びっくりした…) ○○(いったいなんだったんだろう…)
○○(開かずの教室に幽霊が出るってうわさ、 本当だったのかな…) ○○(この間のあれが本当に幽霊? ま、まさかな…そんな非科学的なことが…) ○○(も、もう一度、確かめてみるか…) ○○「幽霊、いるなら出てこいっ!」 ○○(………) ○○(やっぱり、なにもいないか…) 女の子「あのう、呼びましたか?」 ○○「わっ!」 ○○「てててて…」 女の子「あっ、大丈夫…ですか?」 ○○「あわわわわ…」 女の子「あっ、逃げないでっ! なにもしませんから」 ○○「しゃ、しゃべってる…」 ○○「き、きみはいったい…」 女の子「あの…なんに見えます?」 ○○「そ、そりゃ、身体も透けてるし…」 ○○「ゆ、幽霊じゃ…」 女の子「やっぱり、そうですよね」 ○○「………?」 ○○「ほ、本当に幽霊?」 女の子「ええ、たぶん…」 ○○「こ、ここでなにを?」 女の子「それがよくわからないんです」 ○○「そ、そうなんだ…」 女の子「気づいたら、幽霊になってて…」 ○○「なにも覚えてないの?」 女の子「はいっ」 女の子「あの…わたし、 もう死んじゃってるんでしょうか?」 ○○「さあ…」 ○○「でも、それってうちの制服だよね」 女の子「そう…ですね」 ○○「ってことは、 うちの学校の生徒だったのかな」 女の子「はあ」 ○○「でも最近、生徒が死んだ なんて話ないよな…」 女の子「そうですか…」 ○○「きっと、その内、成仏できるよ」 ○○「じゃあね」 女の子「あの…」 ○○「なに?」 女の子「また、来てくれませんか?」 ○○「えっ?」 女の子「他の人はわたしのことが 見えないみたいだし…」 ○○「………」 女の子「だから…退屈なんです」 ○○「た、退屈?」 女の子「はい。だから、話相手になってください」 ○○「………」 女の子「だめ…ですか?」 ○○「…わかったよ。時々寄るよ」 女の子「本当? やったぁっ!」 ○○「じゃ、じゃあね…」 女の子「はいっ、また今度」 ○○(………。 夢じゃないよな…) ○○(まさか、おれは取りつかれたんじゃ…?」
○○(あれは夢じゃなかったのかな…) ○○(なにもいない…。 やっぱりあれは夢だったんだ。よかった) 女の子「いらっしゃ〜いっ!」 ○○「わっ! やっぱり本当だったっ」 ○○「い、いきなり出てくるなよ。 びっくりするだろっ!」 女の子「エヘヘ、うれしくって、つい」 ○○「きみは…そういえば名前は?」 女の子「さつきです」 ○○「さつきちゃんか…って、ちょっと待て」 さつき「なんですか?」 ○○「なんにも覚えてないって 言ってなかったか?」 さつき「そうなんですよ。 どうしてこうなっちゃったか、 ぜんぜんわからないんですよね〜」 ○○「それなのになんで名前はわかるんだ?」 さつき「あっ、それはなんとなくです」 ○○「…なんとなく…ね」 ○○「で、さつきちゃんはいつ頃から、 ここで幽霊やってるの?」 さつき「えっと〜、に、2週間ぐらいです」 ○○「2週間か…」 さつき「なにかわかりました?」 ○○「ぜんぜん」 さつき「そうですか…」 ○○「おれなりに調べてみるよ。じゃあね」 さつき「えっ、もう帰っちゃうんですか?」 ○○「また今度ね」 さつき「はい…」
女の子「ちょっと、ちょっと」 ○○「えっ?」 ○○「わあっ!」 さつき「ど、どうしたのっ! な、なに?」 ○○「な、なんでこんなところにいるんだよ」 さつき「大丈夫、大丈夫。 他の人には見えないみたいだから」 ○○「だからって…」 さつき「だって、退屈なんだモン」 ○○「…だったら、 おれから見えないところへ行ってくれ」 木地本「○○、おまえなにひとりで ブツブツ言ってんだ?」 ○○「き、木地本…」 さつき「じゃあね〜」 ○○「おっ、おい、待てよっ!」 木地本「なんだ? 俺はどこへも行かないぞ」 ○○「あっ…」 木地本「どうしちゃったんだ? おまえ。 この頃、なんか変だぞ」 木地本「なんか悪いもんでも食べたのか?」 ○○「いや…」 ○○「最近、ちょっとゴタゴタがあって 疲れてるんだよ。きっと…」 木地本「そうか。それならいいけどな」 木地本「ちゃんと夜は寝た方がいいぞ、ははは」 木地本「じゃあな」 ○○「ああ」
○○「さつきちゃん、いる?」 さつき「はいは〜い」 さつき「待ってたんだ、聞いて、聞いて」 ○○「幽霊に待たれても あんまりうれしくないけど…」 さつき「夢を見たの」 ○○「へえ〜、夢を……… って、幽霊って寝るの?」 さつき「ちゃんと寝てますよ。 夜更かしはお肌によくないんだから」 ○○「そ、そう…」 さつき「夜って、みんな帰っちゃうでしょ、 だから、退屈で退屈で…」 ○○「それはわかったから、夢の話は?」 さつき「ああ、そうだ。 病院でわたしが寝てるの」 ○○「えっ」 さつき「それでね、窓から、海が見えたの」 ○○「それって…現在のさつきちゃんの姿 なのかな…?」 さつき「わかんない」 ○○「海の見える病院か…。確か、 臨海広場の近くに病院があったな…」 ○○「その病院にこころあたりがあるから 今日、ちょっと行ってみるよ」 さつき「本当? わ〜い」 ○○「他には?」 さつき「他に? う〜ん…」 ○○「きっと、さつきちゃんの夢が、 現在のさつきちゃんとの接点なんだよ」 さつき「う〜ん…」 ○○「なにか他にないの?」 さつき「…ほら、夢って、 朝起きると覚えてないってこと多いよね」 ○○「確かにそうだけど?」 さつき「だから、後はぜんぜん覚えてないの」 ○○「…そうか」 ○○「ま、仕方ないか」 さつき「ごめんね」 ○○「とにかく、病院だけでも調べてみるよ」 さつき「うん。お願いしますっ!」 ○○「じゃあね」 さつき「ばいば〜い」
○○(確かこの辺りに病院が…。 あっ、あれか。行ってみよう) ・ ・ ・ 病院では、詳しいことは教えてもらえなかったが、 ずっと意識不明の女の子が入院していることは なんとか知ることができた。 きっとその娘がさつきちゃんに違いない。 でもどうすれば元へ戻れるんだろう…。
○○「わっ!」 さつき「どうかした?」 ○○「いきなりいるとさすがにびっくりするよ」 ○○「病院のことなんだけど、 様子を見に行って来たよ」 さつき「病院? それなんだっけ?」 ○○「さつきちゃんが、 夢で見たっていう病院のことだよ。 忘れちゃったの?」 さつき「ああ、そういえばそうだったね」 ○○(大丈夫かな…) ○○「詳しくはわからなかったけど、 どうやら、さつきちゃんらしい娘が 入院しているらしいよ」 さつき「ほえ〜」 ○○「その娘は2週間くらい前から 意識不明なんだってさ」 さつき「そうなんだ〜」 ○○「2週間くらい前から、 ここにいるって言ってたよね」 ○○「だから、その娘がさつきちゃんと見て まず間違いないだろう」 ○○「でも、どうしたらいいのか…」 さつき「そうだっ! また夢みたよ」 ○○「えっ、どんな夢?」 さつき「え〜とね、ペンダントを探してるの」 ○○「ペンダント? それって大事なものなの?」 さつき「わかんない」 ○○「どんなところで探してる?」 さつき「う〜ん、よくわからない…」 ○○「そのペンダントの形とかは?」 さつき「あっ、それは覚えてる」 さつき「え〜と、三角かな…。 真ん中に赤いのがついてて…」 ○○「三角で真ん中に赤いのか…」 ○○「それだけじゃ、探しようがないな…。 きっと、それもなにかさつきちゃんに 関係していると思うんだけど」 ○○「まあ、今日のところは、さつきちゃんが 生きているとわかっただけでも よしとするか」 さつき「そうね、よかったね」 ○○「おいおい、人事みたいに言うなよ。 きみのことだろ?」 さつき「あっ、そうか」 ○○「じゃあね」 さつき「うん、いろいろありがと」
○○「さつきちゃん?」 ○○「………」 ○○(…また、どこか ウロウロしてるんだな…) ○○(まあ、進展があったわけじゃないし…。 また今度にするか) 高林「やあ、○○君」 ○○「わっ」 ○○「た、高林…」 高林「どうしたんだい? ここは…開かずの教室だよね?」 高林「幽霊でもいたかい?」 ○○「………」 ○○「……おまえ、科学部だよな?」 高林「そうだけど?」 ○○「ゆ、幽霊っていると思うか?」 高林「ん〜、いてもおかしくはないな」 ○○「そ、そうなのか?」 高林「すべてが科学で 解明されたわけじゃないからね。 まだまだ未知のことはたくさんあるよ」 ○○「じゃあ、生き霊は?」 高林「生き霊? それもありうるな」 ○○「その生き霊が なにかを探してるって言ったら?」 高林「なんだい、それ? ゲームかなんかの話かい?」 ○○「ま、まあ、そんなところだよ」 高林「生き霊なら、まだ死んでないんだから、 そのキーとなるアイテムを見つければ 解決できるんじゃないのかな」 ○○「そうか…」 ○○「ありがとう、高林」 高林「?」
○○「さつきちゃんっ!」 ○○「…あれ? さつきちゃん?」 ○○「いるんだろ? さつきちゃん」 ○○「………」 ○○(いなくなっちゃったのか…?」 さつき「ああ、来てたんだ」 ○○「さつきちゃん!」 ○○「ああ、よかった…」 さつき「どうしたの?」 ○○「呼んでも答えないから、 いなくなっちゃったのかと思ったよ」 さつき「ちょっと、トイレに行ってたの」 ○○「トイレへ?」 さつき「そうよ」 ○○「幽霊もトイレへ行くんだ…」 さつき「幽霊だって人間なんだから、 あたりまえでしょ」 ○○「幽霊だって人間?」 ○○「そんなことより、 例のペンダントのことだけど、 たぶん、それが見つかれば元へ戻れるよ」 さつき「本当?」 ○○「…た、たぶん」 さつき「でも…」 ○○「でも?」 さつき「元へ戻った時…、 幽霊だったこと、覚えてるかな?」 ○○「さ、さあ…」 さつき「朝、起きると思い出せない夢みたいに すっかり忘れてそうだよね」 ○○「………」 ○○「そんなこと心配する前に、 ペンダントの行方を考えなくちゃ」 さつき「そうですねぇ〜」 ○○「う〜ん」 さつき「う〜ん」 ○○「…ここで考えてても始まらないよ。 いろいろ探してみるよ。あてはないけど」 さつき「うん、お願い」
○○(あれ? このテーブルのペンダントは…) ペンダント 君子「ああ、お兄ちゃん、お帰り」 ○○「君子、このペンダントは?」 君子「拾ったの、なんか気になって」 ○○「拾った? どこで?」 君子「臨海広場の方だよ」 ○○「臨海広場! もしかして…」 君子「あれ? お兄ちゃん、持ち主知ってるの?」 ○○「えっ、ああ…」 君子「じゃあ、返しといてくれる?」 ○○「わかった、おれから返しとくよ」 君子「お願いね」 ○○(このペンダント…)
○○(・・・・・) ○○(そうだっ! ペンダントを…) ○○「さつきちゃんっ! 見つけたよペンダント!」 ○○「………」 ○○「さつき…ちゃん?」 さつき「はいは〜い」 ○○「あっ、いた」 さつき「どうしたの? 日曜日なのに」 ○○「ほら、ペンダントを見つけたんだ!」 さつき「あっ、これ、夢と同じ…」 ○○「うちの妹が偶然拾って来たんだよ」 さつき「そうなんだ…」 ○○「あれ? うれしくないの?」 さつき「ううん、うれしいよ」 ○○「でも…あんまりうれしそうじゃ…」 さつき「元に戻っても あなたのこと覚えてるかな?」 ○○「え?」 さつき「なんか、全部覚えてないような 気がして…」 ○○「まだ、そんなこと言ってるのか」 ○○「元に戻れるんだから、 そんなことどうだっていいじゃないか」 さつき「でも…」 さつき「いろいろしてもらったのに、 忘れちゃったら、お礼もできないし…。 それに…」 ○○「お礼なんかいいんだよ」 さつき「でも…」 ○○「おれさ…もうすぐ引越しで転校するんだ」 さつき「えっ?」 ○○「だから、今学期が終われば もうここには来られないんだ」 さつき「………」 ○○「おれがここにいるうちに なんとかしたいんだよ」 さつき「ありがとう…」 ○○「れ? 気のせいか、 さつきちゃんの身体が 薄くなってるような…」 さつき「あっ、本当…」 ○○「もしかして、ペンダントが 見つかったから、元に戻れるのかも」 さつき「ど、どうしよう」 ○○「なんにも心配することないよ。 きっと、これで元どおりだよ」 さつき「でも、それじゃ…わたし…」 ○○「…じゃあ、もしもおれのこと覚えてたら、 終業式の日に臨海広場へ来てよ」 さつき「終業式の日に臨海広場ね、わかった」 さつき「わたし、あなたのこと絶対忘れないっ!」 さつき「さよならは言わない、わたしは…」 ○○「さつきちゃんっ!」 ○○「行っちゃったか…」