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「長谷川裕一インタビュー」ぱふ'94年12月号[2000/06/19]

連載10年!!大河SF「マップス」完結!!長谷川裕一緊急インタビュー

「でも自分の体感時間としては3年位なんですよ。それこそ宇宙に旅に出ていて戻ってきたら10年たっていた、という感覚(笑)」

リプミラ・グァイス

宇宙船リプミラ号の電子頭脳体で半有機合成人間。次第にゲンに惹かれていく。

十鬼島ゲン

直情径行の正義漢、明るく元気でちょっぴり女好き(…)という、少年まんがヒーローの鑑!!

STORY

2万年前に大宇宙を放浪していたという伝説の民族・"さまよえる星人"。彼らは"風まく光"と呼ばれる秘宝を残していた。宇宙海賊リプミラや地球人でさまよえる星人の子孫のゲン、ゲンのGFの星見たちは秘宝の謎を求めて大宇宙へと旅立つ。しかし彼らの前には銀河系を支配する強大なる敵・伝承族が立ちはだかるのだった−−。

長谷川裕一(はせがわゆういち)

本名は同じ漢字で"ひろかず"と読ませる。1961年4月25日生まれのB型。千葉県佐原市出身で、現在は同県四街道市在住。高校卒業後、知り合いの紹介で松田一輝のアシスタントとなり、3年後の1983年に『月刊少年チャンピオン』11月号の「魔夏の戦士」でデビュー。1985年より『SFアニメディア』(現『コミックNORA』)にて「マップス」連載開始。10年にも及ぶ大人気作品となる。少年まんがの王道というべきスケールの大きなSFストーリーの描き手として、男女問わず広い層のファンに支持されている。奔放なイマジネーションを駆使した作品世界は正に作者にしか描けない世界であり、貴重な描き手としてその輝きはいや増すばかりである。影響を受けたまんが家としては石森章太郎(現・石ノ森章太郎)や手塚治虫の名前が挙がり、また「レンズマン」「キャプテン・フューチャー」「火星シリーズ」といった海外のスペースオペラ小説も、自分の世界のベースになっていると語る。

最終回を描き上げてからまだ2日しかたっていない長谷川先生にJR千葉駅近くの喫茶店にてお話をうかがいました。10年に及んだ「マップス」完結の正に直後インタビューとなりました!!
−−10年間という長い連載をついに完結させた今の率直な心境を。
長谷川これだけ長くやっていたんだから、何か感慨があるだろうとみんなに言われるんですけど、正直なところまだあんまり実感がないんですよ。とりあえず無事に終われてよかったな、とは思っています。長いまんがって割とダラダラとしたかんじで終わってしまう場合が多いですから、その意味では一応まとまった形できちんと最終回までやれたのはめっけ物だなと思っています。
ただ本当にまだ終わったという気がしないんですよ。実はこの後も『コミックNORA』で「マップス」の番外篇的な読切をやる予定がありまして、まだゲンやリプミラと本当にお別れという気持ちになっていないんです。本当にもう二度と「マップス」を描くことはないんだな、ということにいつかなったとしたら、初めてそこで哀しい気持ちになるのかもしれませんね。
−−「マップス」連載スタート時のいきさつなど教えて下さい。
長谷川昔の話なのでもうハッキリ言ってしまって構わないと思いますが(笑)、「マップス」を最初に描いた『SFアニメディア』(コミックNORAの前身)はいつ休刊になってもおかしくないな、と思っていたので(笑)。ですから『SFアニメディア』が『コミックNORA』に発展して軌道に乗ってくるまでは、あまり先のことは考えていませんでした(笑)。『コミックNORA』になってから構想をある程度まとめました。その頃にコミックス9巻あたりの銀河統一会議までのストーリーを考えました。
今回描き上げたラストは二年ほど前に考えたもので、ほぼそのまま描いています。
−−「マップス」の中で描こうと考えていたことは全て描ききれた?
長谷川そうですね。私が「マップス」という作品で言おうと思っていたことは全て言いました。
ただエピソード的にはコミックス5〜6巻あたりの放浪編の頃の話のアイデアがまだいくつか考えてあったんですけど、それは展開の都合でとばしてしまいました。話の本筋とは少しズレたところでゲンたちがフラフラ旅をしていた頃ですね。これは実は読者から"伝承族との戦いはどうした!!"というおハガキを多数いただいてしまいまして、やっぱりストーリーの先を急いだ方がいいのかな、と。だから、それはまだ描きたいですし、描けと言われれば描けます。読切でやっていけたら、と思っているのですが。
−−「マップス」という作品のそもそもの発想は?
長谷川すごいですよ、なにしろリプミラ号のイラスト一枚しか最初はなかったんですから(笑)。『SFアニメディア』から何か描かないかと言われて、リプミラ号のデザインスケッチを一枚出して、こういうのが描きたいんですと言ったら、編集長が"いいじゃん、どんどんやってくれ"ということで通りまして、そこから話はどうしようかということで考え始めたというのが真相です(笑)。
−−スタート時からきっちりと構築されていたような印象があったのですが、そうでもなかったと?(笑)
長谷川初めから壮大な世界観が出来上がっていて、壮大な結末まで考えてあったというわけでは全然ないんですよ(笑)。割といきあたりばったり(笑)。
例えばガッハというケイ素生物が出てきますよね。あれを最初に編集部の人が見て"なんだ、こいつケイ素生物のくせに動きが早いな"と言ったんですよ。SFに詳しい人だったんでね。それで、そうか早いか、じゃあサイボーグにして加速システムがついていることにしよう!!とその瞬間にそういう設定になるんですよ(笑)。人のツッコミはムダにしません(笑)。
−−"風まく光"や"伝承族"といったネーミングの仕方が実に効果的で、わくわくさせてくれるのですが?
長谷川SFだとどうしてもカタカナが多くなりますけど、それだとどうしてもわけのわからない言葉が多くなりますよね。読んですぐに意味のわかる言葉がいいだろうということで、特に初期は漢字を多用しています。
−−主人公のゲンのキャラクターが、正に"少年まんがの主人公!!"というかんじで、たいへん魅力的です。
長谷川実は第一話を描いた時に、リプミラと星見はずいぶん苦労して時間をかけてデザインしたんですけど、ゲンは全くデザイン設定していないんですよ(笑)。登場した一コマ目でなんとなく描いて、そのまま進めていってしまったという(笑)。だからゲンに関しては工夫して、意識的に"王道を行く"キャラクターにしたわけではないんです。自然に何も考えずに主人公の男の子として描いたら、ああいうキャラクターになっていました。結局、私の資質がそうなんだということなんでしょうね。自然に描いたらゲンになっていました。
それと今にして思うと、当時は『機動戦士ガンダム』に代表されるようなリアルな人物設定のシリアスなSFアニメが主流でしたので、私はヘソ曲がりですから(笑)、人と違うことをやろうとして、ああいう主人公にしたような気もしないでもありません。こういう主人公でもいいんじゃない?という気分が無意識の内にあったかもしれないと、今にしてですけど、思います。
−−リプミラと星見のデザインで苦労したというのは?
長谷川素直に自分の好みの顔を描くとリプミラたちの顔にならないんですよ。ジャルナ王女やシスター・プテリスみたいな顔になっちゃうんですね。でも、いつまでもそればかりやっていてはいかん、ということで、意図的にリプミラたちの顔は別のタイプに作ろうとしています。だから、その分リプミラたちの顔は苦労しています。絵柄も安定しません(笑)。
−−思い入れの強いキャラクターは?
長谷川もちろん全員好きですけど、あえて挙げるとなると、ガッハとかエイブとか歌う流星とか、人間の姿をしていない奴が好きですね。あの連中は普通の人間にやらせたらちょっと恥ずかしいような演技をさせても大丈夫なんですよ(笑)。見た目とのバランスで少々無茶をやらせても大丈夫。だから、ずい分おもしろく使えるキャラクターなんです。
−−リプミラ号のアイデアについて。
長谷川メカもので、自分の乗っているメカが壊れている状況というのはピンチなわけです。ところがパイロットが無事でピンピンしているから、意外と読者にはその危機感が伝わらないんですよ。メカは壊れているけれども、言ってしまえばただそれだけのことですから。それで、何かメカの痛みと人間の痛みを直接的に結び付ける方法がなければいけないんじゃないか、と考えまして、演出上の必要から作った設定です。
−−不謹慎ですが、苦しむリプミラが色っぽいですね(笑)。
長谷川まあ、根が助平ですから(笑)。
−−それにしても、本当にたくさんのアイデアが詰めこまれています。
長谷川これは私が松田一輝先生(硬派まんがの巨匠)の下でアシスタントをさせていただいていた頃に思ったことなんですが、硬派まんがってスゴイですよね。普通の高校生が平気で車を持ち上げて投げちゃったりするじゃないですか(笑)。私は当時からSFが好きでしたから、これじゃあSFまんがが勝てるわけないよな、と思ったんです。まんがの場合は普通の世界を舞台にしていても、これ位のことを平気でやっちゃう。SFまんがは何としてもこの勢いを越えないと、決して人気を得られないだろう、と。
それは常に心の内にあって、今でも考え続けていることです。まんがの場合は普通のまんがでも相当なことをしちゃうんだから、SFまんがはそれの上をいくアイデア、それに負けないアイデアを出さないとダメだろう、と。ずっと意識し続けていることです。
−−そのアイデアはどのようにして出すものですか?
長谷川ケースバイケースですね。机の前でウーンと考えて出すことも多いですけど、そうやって出たアイデアは実はBクラスのことが多いです(笑)。やっぱり何かのはずみにピタピタッとパズルが合わさるみたいにして出てきたアイデアに比べると、鮮度が落ちるかな、と。
−−作者として思い入れのあるシーンはありますか?
長谷川特にと言われると…これがわからないな(笑)。ファンの反響が良かったという点で覚えているのは、初期の"歌う流星"という地味な話ですね。私はシブいファンが多いので(笑)。
−−銀河統一会議のあたりなど、たいへん好きなのですが?
長谷川そういってもらえると嬉しいですね。十人の魔物のメンツについてはずい分考えたんですけど、十人集まった時に今まで面識のない奴を何人か入れるというのは当初から考えていました。伝説の勇者だ!!とか言って集まってみたら、なんだ結局いつもの顔触れじゃないか、となってしまうとスケールがすごく小さくなってしまいますから。その点にはすごく注意していました。宇宙は広いんだから、まだ見ぬ強豪がいないと絶対おかしいよね?ということで。宇宙のスケール感、宇宙はすごく広いんだということを常に読者に感じてもらえるように、ずい分気を遣ったつもりです。
−−一貫してSFまんがを描いてきていますが?
長谷川まんがのまんがっぽさ、というものを追求していくと、私の場合は自然にSFまんがになりますね。"ウソなりの整合性"というのが好きなんです。だからSFなんじゃないかと思うんですけど。
例えば、私は単なる超能力戦というのは極力避けてきたんですよ。"どうしておれが負けるのだ""それはおれのパワーがお前のパワーを上回っていたからだ"みたいな、単純にこっちが上、理屈ナシ、みたいなものは、確かにそれでも話はわかるけど、でも私はやりたくないな、つまらないな、と思う。前提として、こちらはこれとこれとこれが出来て、相手はこれとこれが出来て、で、その組み合わせとしてこういう状況でこっちがこう戦えばこう勝つよ、というような部分。そういう戦い方の方がおもしろいと思うから。
だから、何故お前はSFが好きなんだ?と問われれば、SFが荒唐無稽であるからだし、では何故FTよりSFなんだと問われれば、そこに一抹の整合性があるから、なんだと思うんですよ。
もちろんFTも好きですけど、方則性がハッキリしていないと、例えば前の超能力戦と同じでなんでも魔法で片付いてしまうことになってしまいますので、気を付けたいですね。
−−「ダイ・ソード」はその点、枠がきちんと決まっていますね。
長谷川それで呼び出し回数を7回と決めたんですけどね。何でもアリではまずいかな、という部分で。
まんがの場合はどういうルールを設定するか、それをどう活用するか、そしてどこでそれを破るか(笑)。こう決まっていたけど、でもこうすればこうも出来るじゃないか、というのがすごく気持ちいい瞬間があるから、それをどこに配置するか。銀河障壁は越えられない、越えられないと言っておいて、どうやって越えるか。そういうことだと思うんですけど。
−−アイデアを考えるのは楽しい作業ですか?
長谷川そうですね、〆切さえなければ(笑)。でも、これだけ長い間やっていると、生活の一部になっているかもしれません(笑)。
−−自分自身でマンネリを感じることはありますか?
長谷川それはやっぱりありますね。ちょっとワンパターンで描いちゃったかな、とか反省することはあります。気付くのは描き終えた後ですけどね。
一番こわいのはキャラクターの行動パターンの先読みをされちゃうことなんですよ、読者に。こいつはこうするに決まっているからおもしろくない、と思われてしまったらおしまいなんです。こいつはきっとこうする、おれはそれを読みたい!!にさせなきゃいけない。それはこちらでうまく誘導してやるしかないわけですけど。そのキャラクターらしい行動をとってもらうと嬉しい状況を設定してあげればいいわけです。
−−この10年のSF界の流れについて。
長谷川見ていなかったというわけではありませんが、あまり意識はしていませんでした。私の場合は、特に「マップス」はレトロな部分が逆にオリジナリティーになっていたところがあったと思うので、付け焼き刃的に周りに合わせるよりは、このまま突っ走っちゃおうかな、みたいな気分もありました。
−−「マップス」の世界は長谷川裕一にしか描けない世界ですよね。
長谷川それはなるべく心掛けています。あのまんがはあいつにしか描けない、というのは最大の賛辞だと思っていますので、たいへん嬉しいです。
−−10年という時間をどう感じますか?
長谷川でも自分の体感時間としては3年位なんですよ。それこそ宇宙に旅に出ていて、戻ってきたら"もう10年たったよ"と言われてしまったような感覚(笑)。えーっ、おれ、そんなにウロチョロしてた?みたいな(笑)。
−−最後にファンへメッセージを。
長谷川本当に長いこと応援してくれてありがとう、という、これは本当に本当に正直な気持ちです。「マップス」は終わってしまいましたが、別にこれで長谷川裕一も終わってしまったわけではないので(笑)、「マップス」以上におもしろい作品をこれからも描きますので、そちらもお楽しみにということで、これからもよろしくお願いします!!

最新インフォメーション

  1. いよいよ完結巻となる「マップス」17巻は、2月7日(予定)に学研NORAコミックスより刊行。

  2. 12月26日発売の『コミックNORA』2月号に、インタビューでも語っている放浪編の頃のエピソードを描いた読切版「マップス」が掲載される。50P。

  3. 創刊された『少年エース』(角川書店)にて富野由悠季原作でガンダムものの「クロスボーン・ガンダム」を連載中。ちなみに"ガンダムものは自分のオリジナルの3倍時間がかかる"とは本人の弁。

  4. 『コミックコンプ』休刊で心配された「ダイ・ソード」の続きは、『少年キャプテン』(徳間書店)1月号(11月26日発売)より再開。新キャラも登場する。

  5. その他、まだ発表の予定は決まっていないが、忍者ものや変身ヒーローものにも挑戦してみたいとのこと。アイデアが頭の中にたくさんある、と力強い発言もあったぞ。お楽しみに!!


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