愛のラッキーカムカム大作戦 ((C)立花晶)


 私、美樹原愛。女の子の友達は多いけど、男の子と話すのは苦手なんです。
 気になる彼を詩織ちゃんから紹介してもらったけど、これからいったいどう
しよう…。


「そういう時は、手紙で自分の想いを伝えるといいですよ」
「でも、私文章力ないし…」
「私が代筆してあげましょうか?」
「本当?ありがとう未緒ちゃん!」
 可愛い便箋に、未緒ちゃんはすらすらと書き込みます。
『貴方から落ちた3枚の翼は天を統べるヴィオラの旋律なのでしょう。
 私は発酵した檸檬の瞳のように貴方に慟哭するのです。』
「ちょっと文学的にしてみました」
「…ありがとう」
「そして結びの言葉は『ときめきときめき!』これで決まりです」
「そ、そうなの…」
 彼の机に入れたその手紙は、とってもウケてました…。


「やっぱり手作りのお弁当が一番だと思うな」
「でも私料理も得意じゃないし…」
「大丈夫、根性さえあればなんとかなるわよ!」
「そ、そうかな」
「頑張って!」
 沙希ちゃんからレシピをもらうと、私は頑張ってその通りにお料理しました。
「あ、あの…」
「あれ、美樹原さん。これからお昼?」
「は、はい…あの…」
「それ、巷で噂の虹弁だね。虹野さんに作ってもらったの?」
「あの…失礼します…」


「OK!恋の悩みなら私にまっかせなさーい!」
「…なんとなく予想はつくんだけど」
 彩子ちゃんはおもむろにマイクを取り出します。
「やっぱり歌に気持ちを乗せて贈るのがベストね。さあレッツシング!」
「えっ?でも…恥ずかしいし…」
「それじゃ仕方ないわね。ネバーマインド。私が代わりに歌ってあげるわ」
「本当?ありがとう彩子ちゃん」
 いきなり目の前で彩子ちゃんの熱唱を聴かされて、公くんは呆然としていました。
「あー、すっきりした」
「歌いたかっただけね彩子ちゃん…」


「おーほほほほ!そんなことをしても無駄よ」
「か、鏡さん…」
「しょせん男なんてものは外見しか見てないのよ。美しさを磨くのが一番の早道ね」
「で、でも…私、鏡さんみたいに奇麗じゃないし…」
 急に鏡さんの愛想が良くなりました。
「あら、あなただって捨てたものじゃなくってよ。
 そうね、とりあえず髪型を変えるというのはどうかしら?」
「か、髪型ですか?」
「そう、そのうっとうしい前髪を上げて…ほら可愛い!」
 鏡さんに保証されて、私はおでこを出したまま公くんのところに行きました。
「あの…」
「えっ?君だれ?」
「‥‥‥‥ひどすぎます」


「大変だね。恋って難しいよね」
「望ちゃん…そのお花は?」
 望ちゃんの手には、きれいなお花がありました。
「シクラメンの花言葉は、『内気な心』…。これを贈って、メグの心をわかって
もらうんだ」
「え?…でも、そのお花って望ちゃんが育てたのじゃ…」
「なんだかメグを見てると他人事とは思えなくってさ。頑張りなよ!」
「あ、ありがとう…」
 望ちゃんに感謝しつつ、私は公くんの教室に向かいました。
「あの…、これ、どうぞ…」
「え?いいの?」
「は、はい…」
「ありがとう。これで教室がきれいになるよ」
 公くんは花瓶にお花をさしました…。


「ふふふ…どうやらこの私の出番のようね!」
「いえ、いいです…」
「大丈夫、この紐緒マシーンは完璧よ。私に任せておけばなんら問題はないわ」
「で、でも…」
 紐緒さんはまったく耳を貸さず、私を公くんの教室までひきずっていきました。
「げえっ!紐緒さん、その機械は!?」
「この娘に頼まれたのよ」
「ち、違います!」
 サングラスをかけて、機械のスイッチを入れる紐緒さん。あたりを真っ白な
閃光が包みます。
 数瞬後、私が目を開けると、そこには消し炭になった公くんがいました。
「実験は成功だわ」
「なんの実験ですか…」
「また何かあったら私に言いなさい。それじゃ失礼」
 何があっても紐緒さんにだけは言うまいと、心に誓う私でした。


「それならば、手編みのマフラーなどを贈るのが、よろしいですよ」
「ゆかりちゃん、教えてくれる?」
「そうですねぇ、一緒に編みましょう」
 あみあみあみ…。
「ねえゆかりちゃん…」
「はい?」
「もう3mぐらいになってるんだけど…」
「まぁ、ぼーっとしていて、止めるのを忘れてしまいました」
「‥‥‥‥‥」
 せっかく編んだものなので、公くんにプレゼントすることにしました。
「あの…、これ、受け取ってください…」
「ありがとう…毛糸の一反もめん?」
「さ、さようなら…」


「だーめだめ、そんなんじゃ!もっと過激にいかなきゃ!」
「そ、そうかな…」
 夕子ちゃんの言うとおり、ちょっと地味だったかもしれません。
「もうちょっと流行なんかも気にしてさ、目立つ女の子になろうよ」
「そ、そうよね…」
「とりあえず今の流行は…」
「今の流行は…?」
「『ヘソ出しルーーック』!ヘソさえ出せば男はイチコロよ!」
「ええええええっ!?」
 夕子ちゃんは私の制服のすそをまくると、安全ピンでとめました。
「ほーら目立ってる目立ってる」
「は、恥ずかしい…」
 男の子たちの視線が私に突きささります。
 そして公くんは…呆れたような声で言いました。
「おなか出してると、風邪引くよ」
「…うわあああああん!」
 私は公くんの前から逃げ出しました。
「あっ、めぐ…公くんのバカ!」
「は?」


「もう恥ずかしくて公くんと口きけない…」
「うん…、その気持ちわかるな」
 見晴ちゃんはしみじみ言うと、私にとっておきの作戦を授けてくれました。
「彼に体当たりして自分を印象づけるの。ついでに抱きついたりしちゃえば
一石二鳥かな」
「かえって嫌われるんじゃ…」
「そう…他の人のアドバイスは聞けて、私のは聞けないんだ…」
「ああっ、見晴ちゃんいじけないでぇ〜」
「どうせ私は隠れキャラですよーだ」
 はっ!そうこうしているうちに公くんが!
 私は覚悟を決めました。
「えーいっ!」
 ドン
「うおっ!?」
 どんがらがっしゃーん
「愛ちゃん、階段で体当たりしちゃまずいよ…」
「ご…、ごめんなさいっ!」


「ああもう尼寺に行くしかないかも…」
 と、あきらめかけていた私ですが。
「メグ、今までよく頑張ったね」
「詩織ちゃん…」
「あとは私にまかせてね。私から公くんに、メグと付き合うように言っておくから」
「でも…もう嫌われちゃったし…」
 落ち込んでる私に、詩織ちゃんは優しく微笑んでくれました。
「大丈夫よ。公くんの弱みは色々と握ってるの」


 こうして私は友達のおかげで彼氏ができました。
 みなさんもいかがでしょうか。


                            <END>



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