後書





「は〜い、これで二学期はおしまいでーす」
 終業式での校長の下らない話は寝て過ごし、通信簿も配り終えて、ひな子先生は実に晴れ晴れとした顔で宣言した。
「先生、やけに嬉しそうじゃねーか」
「うふふふ、わかるー? だって先生一年間いい子にしてたもん。今年こそはサンタさんが来てくれるはずよ!」
「…あのよ、その年でサンタって…」
「しっ! ダメよ子供の夢を壊しちゃ!」
 起立、礼、で解放。冬休みとクリスマスの開始に何人かの生徒が歓声を上げる中、乱馬は一目散に教室を出ていってしまった。
(何よ、慌てちゃって)
 まあ家に帰れば会えるので、先に気になっていた件を済ませることにする。
「ねえ右京、今日もお店開くんでしょ?」
「せやな。クリスマスやし8時か9時くらいまでやるわ」
「あたしも手伝わなくて大丈夫?」
「なに言うてるの、小夏が来る前は一人でやっとんたんやで。あかねちゃんは気にせんでクリスマスを楽しみぃや。家族で」
 家族、を強調する右京にあかねが苦笑していると、友人たちが声をかけてきた。
「ねーねー、あかねに右京。帰りにケーキ一口食べてかない?」
「いつものお店でミニケーキのバラ売りしてるのよ」
「おっ、ええなあ。最近ろくなケーキ食べてへんし…うわ、あかねちゃん怒らんといてっ」
 殴るふりをするあかねから大袈裟に身をかばう右京。そんなこんなで話はまとまり、女の子たちは教室を出ていく。
 右京があかねの耳に口を寄せて、冗談や、ちゃんと普通の味やったで、と小声で伝えた。あかねとしては嬉しいんだかそうでないんだか。

 店で売っているケーキは、当たり前だけど確かにおいしかった。
(で、でもあたしのだって素人にしてはなかなかよね)
 ケーキは『見ちゃダメ』という紙をかぶせて、家の冷蔵庫の奥に入れてある。あと数時間でお披露目の時がくるのだ。
 友人たちと別れて帰ろうとすると、商店街で女の子がこれまたケーキを売っていた。
「ケーキいかがですかぁ〜。安いですよぉ〜」
 …サンタ服に身を包んだ、おさげ髪の女の子が。
「おっ、誰だあの美少女?」
「きみ可愛いから二つ買っちゃおう!」
「ほんとっ? きゃ〜っ、うれしいっ」
「…乱馬…」
 つかつかと歩いていってから、そのおさげ髪を思い切り引っ張る。
「痛いじゃない、何すんのよぉ、ってあかねっ!?」
「こっちの台詞よ。何してんのよあんたはっ」
「う、うるへー。仕方ねーだろ、稼がなきゃなんねーんだから」
「何よ、そんなにお金ないの?」
「ないっつーか、なびきから借金してんだよ。早く返さないと利子が膨らむんだよ。お前なら分かるだろこの恐ろしさが!」
(ううっ、確かになんて恐ろしいっっ!)
 親指と人差し指と小指を立てておののくあかね。そんな事情では仕方あるまい…と「早く帰りなさいよ」とだけ言い残して立ち去った。自惚れかもしれないけど、自分へのプレゼントにお金を使ったのかもしれないのだし。
「きみ、買ってあげるからデートしない?」
「やだ〜っ、お客さんったらぁっ」(ぺしっ)
「……」

 帰宅してお昼を食べて、後は夕方まで手持ちぶさただ。
 空はいい天気で、ホワイトクリスマスとはいきそうもないが、星空というのもいいだろう。
「かすみおねーちゃん、何か手伝うことない?」
「そうねぇ。今年もツリーの飾り付けをお願いしていいかしら?」
「うん、任せといてっ!」
 去年はセンスが悪いだのなんだの散々な評価だったが、今年は名誉挽回してやろう。
 あかねは物置からツリーを引っぱり出して、居間に置く。そして苦闘数時間…出来上がったのは、去年と似たりよったりのものだった。
「ま、まあこんなのは気分の問題よねっ!」
 無理矢理納得していると、乱馬が帰ってきたらしく、玄関の方で八宝斉と話す声が聞こえる。
「よし乱馬よ、これから街へガールハントに行くぞい」
「一人で行けよ…。だいたい今日なんてカップルばっかだろ」
「何をぬかすか。カップルを無理矢理破局させ、あぶれた女の子をゲットするのがクリスマスというものじゃろうが!」
「モテモテ王国みたいなこと言ってんじゃねえよ同じ雑誌だからって!」
 わけの分からないことを叫んでいる乱馬は置いといて、あかねが台所を覗くと、かすみとのどかが料理に熱中していた。ちょっと自分のレベルでは入れそうにない。
 早雲と玄馬は将棋中。
 なびきは自室にこもりきりだ。こんな日でも勉強だろうか。もっとも、以前猛勉強中だと思ってコーヒーを持っていったら札束を数えていたので、あんまり当てにならないのだが。
「あかねちゃん。お醤油がなくなりそうだから、お使いお願いしていいかしら」
「あ、はーい」
 いつの間にか八宝斉とバトルになっている許嫁を横目で見ながら、あかねは軽く溜息をつき、コートを羽織って外に出た。


*   *   *


「ふっ、聖夜か…。まるでおら達のためにあるような催しだのう」
 眼鏡を頭に載せて格好良く決めてから、目の前の相手をがっしと掴む。
「シャンプー! プレゼントも用意したしレストランも予約しただ。今日こそはおらと過ごしてもらうだ!」
「柱に向かってなに喋てるかムース」
「ぬおっ!? いつの間にそっちに?」
「悪いけど、今日は乱馬と二人きりね。このお店も貸し切りよ。ムースは邪魔だからどこか行ってるよろし」
 しっしっ、と手を振るシャンプーに、目の幅の涙を流すムース。
「そ、そんな〜。なぜおらにばかりそう冷たいのじゃ〜」
「やかましいね。それじゃひいばあちゃん、乱馬を呼んでくるある」
「うむ、悔いのないようにのう」
 変な言葉に怪訝な顔のシャンプーだが、すぐに自転車に乗って出かけていった。
 隅でしくしく泣いているムースと、キセルをふかすコロンが猫飯店内に残る。
「もう日本に来てだいぶ経つか…」
「妖怪…もといおばば様…?」
「来年あたり、ワシらも中国へ帰る頃かのう」
 杖でムースをぽかりと殴ってから、煙を空中に吹くコロンだった。


*   *   *


(何とかこの日に間に合った…。1ヶ月前に出発しといて良かったぜ…)
 イブの街に現れたのは、頭にバンダナを巻いた一人の男。
「クリスマス! この言葉におれは苦い記憶しかねぇ…。いっつもいっつも一人でケーキを食うのが関の山で、女の子と過ごしたことなんか一度もねぇ…。だがっ!」
 そろそろ夕暮れという空を見ながら、拳を握る。
「今年は相手がいる! それもあかねさんとあかりちゃんの二人も! ああっ幸せすぎる自分が怖いぜっ!!」
「ママー、あのお兄ちゃん…」
「シッ! 見ちゃいけません!」
 わはははは、とひとしきり笑ってから、響良牙はさてと考え込んだ。
(問題はどっちを誘うかだ…)
 こんな日に二股をかける気はないので、プレゼントも一つしか用意していない。かといってどちらも捨てがたい。
「よし、クリスマスらしく神に決めてもらうことにしよう! 先に会った方を誘うことにするぜっ!」
「あれ、良牙くん」
「でえっ!?」
 お約束で、背後から声をかけてきたのはあかねだった。
(あ、あかねさん…。ふっ、わかったぜ神よ。これがおれの進むべき道ということかっ!)
 ぎし、と固まりながら、良牙は気さくを装って挨拶する。
「や、やあっあかねさん。メリークリスマス」
「うん、メリークリスマス。良牙くんはやっぱりあかりちゃんと過ごすの?」
「え゛」
 いきなりの一撃に、計画大狂いの良牙。『もしかして悪いこと聞いちゃったかしら』というあかねの顔が追い打ちをかける。
「ち、違うの?」
「いや、その、違わ…ないけど」
「よかったぁ。良牙くんのことだから一人寂しくクリスマスを過ごしてるんじゃないかって心配だったの。お友達がそんな目に遭ってるのって悲しいじゃない?」
「は…は…ははは…」
「でもこれで安心ねっ。あかりちゃんによろしくねーっ!」
 笑顔で手を振って駆け去るあかね。
 ひう〜、と良牙の脇を冷たい北風が吹き抜ける。
 肩を落とした彼の目に、一粒の涙が光った。
(旅に出よう…。しょせんおれのクリスマスなんてこんなもんさ…)
「良牙さまーっ!」
「なあっ!?」
 タイミングがいいのか悪いのか、ブタに乗った雲竜あかりが土煙を上げて走ってくる。
 大逆転のチャンスかもしれないが…いや駄目だ。ついさっきあかねを誘おうとしておいて、どの面下げてあかりに会えるのか。
「すまんあかりちゃん…。今のおれには君とクリスマスを過ごす資格などないっ!」
「え…?」
「許してくれっ!」
 涙をまき散らせて走り出そうとする良牙。
 しかしその前に、後ろからくすんくすんと泣き声が聞こえてくる。
「そう、そうですよね…。あかりがダメな子だから、良牙さまは嫌いになっちゃったんですね…」
「え゛!? い、いや断じてそういうわけでは…」
「カツ錦…。良牙さまのために編んだセーター、無駄になっちゃったね…」
「うっ」
「編んでる最中はあんなに幸せだったのにね…」
「うううっ」
 ぐさぐさぐさっ、と良牙の心に刃が突き刺さる。結局数秒間迷ってから…強引に笑顔を作った。
「い、いやだなぁ、冗談に決まってるじゃないか!」
「ええっ、そうだったんですかっ! ああびっくり」
(神よ、笑いたければ笑えっ! おれにはこんなあかりちゃんを一人にすることなどできんっ!)
 それに、やっぱり女の子とクリスマスを過ごしてみたいんだぁぁぁっ! という本音はとりあえず隠しておく良牙だった。


*   *   *


「クリスマス焼き、お待ち!」
 ソースでクリスマスツリーの絵を描いて、ヘラで弾いて皿に載せる。
 今日はセールで全品百円引。店内は満席で、小夏が注文にレジに皿洗いにと飛び回っていた。客が多い上に、ここ数日あかねがいるのに慣れていたので、なんだか忙しい。
「しっかし、見事にうちの学校の生徒ばかりやなぁ」
「うるせぇっ、イブだってのに他に行くところのないおれたちの気持ちが分かってたまるかっ」
「何が悲しゅうて男同士でお好み焼き食わなきゃならんのだ…」(お〜いお〜い)
「分かった分かった。まけとくから腹一杯食べや」
 苦笑する右京の言葉に歓声が上がる。これでも女の子の手料理を食べたことには違いない、と彼らは自分を納得させるのであった。
「右京さまー、千円札があと一枚しかありませーん」
 レジを売っていた小夏が声を上げる。
「部屋の金庫にあるから、手が空いたら取ってきてや」
「はぁーい」
 そういえば、とキャベツを刻みながら右京は考える。小夏のことだから、今までクリスマスなんて知らなかったんじゃないだろうか。
 初めてのクリスマスがこれでは、さすがに多少悪い気はする。
「なあ、小夏」
 後ろで皿を洗っている小夏に、背中を向けたまま話す。
「はい?」
「お前がなんも言わんからこき使ってるけど、どこか遊びに行きたいんやったら言うてもええんやで」
「いえいえそんなっ! クリスマスに右京さまといられるだけで小夏は幸せです。はぁ…しあわせ…」
(ええ子や…)
 ほろりと涙をこぼしてから、生地を鉄板に流し込んだ。
「でも…」
「ん?」
「私の幸せなんかより、右京さまの幸せの方がずっと大事です。私が願っているのはそれだけです。…右京さまは、本当にこれでよろしいのですか?」
「…ほんまにええ子やなぁ」
 ええんよ、うちは、と答えながらお好み焼きを焼く。
 どうせ他にできることなんてない。今は小夏を見習って、乱馬の幸せを願うことにでもしようか。
 ついでにあかねも。二人"で"幸せになることはさすがに恋敵としては願えないけど、二人"が"幸せであることくらいは願ってもいいだろう。



*   *   *


(プレゼントは…と)
 人がいないのを見計らって、あかねはみんなの分のプレゼントを、すぐ出せるよう居間のタンスに隠しておいた。
 今年は手作りは諦めた。去年乱馬に贈った手編みのマフラーは、結局一週間保たずに真ん中からちぎれてしまったから。まあ大事なのは贈りたいという気持ちだろう。手作りならケーキもあることだし。
 料理ができたとかすみに言われたので、なびきを呼びに行く。
「おねーちゃん、お皿出すの手伝ってよー」
「何よもう、受験生を働かせるわけ?」
「都合のいいときだけ受験生を持ち出さないっ」
 乱馬にも手伝わせて、テーブルの上に料理が並んでいく。チキンにローストビーフ、サラダにキッシュにちらし寿司…。
「いやあ、すごいご馳走だねぇ天道くん」
「そうだねぇ早乙女くん」
「今年はおばさまがいてくださったお陰で、こんなに豪勢にできたんですよ」
「あら、そんなことないのよ。かすみさんの料理の腕にはおばさんも舌を巻いたわ」
 そんな会話を横で聞きながら、あらためて二人を尊敬すると同時に対抗意識を燃やすあかね。あのケーキを見ればみんな見直してくれるはず!
「あ、ところでツリー立てたんだけど」
「あかね…。みんな触れるのも悪いと思ってスルーしてやってんだから、わざわざ掘り返すんじゃねーよ」
「どーゆー意味よっ!」
 と、玄関でチャイムが鳴り、みんなが顔を見合わせる。
(誰だろ、こんな時間に…。まさか)
「おお〜っ、シャンプーちゃんじゃぁ! スゥイート!」
 そう叫ぶ八宝斉の声と、遠くに蹴り飛ばされる音が聞こえてきた。
 はたして玄関に行くと、シャンプーが笑顔で立っている。
「乱馬、迎えに来たよ」
「ち、ちょっと待て」
「待つことないね。恋人たちがイブを過ごすのは当たり前よ。ロマンチックあるなー」
「説明してもらおうか乱馬くん!」
「乱馬、あなたまさか…」
 よろめいたのどかが、日本刀を鞘から抜き放つ。
「二股かけるなんていう男らしくないことをしているんじゃあ…!」
「ち、違うおふくろ誤解だ! シ、シャンプー、とにかく外で話そうぜ」
 あたふたとシャンプーの背中を押して、乱馬は外へ出ていった。閉じられた扉をなびきが親指で指す。
「いいの、放っておいて」
「知らないっ!」
 ふん、と背中を向けて…いつもならそのままへそを曲げるところだけど。
 考え直して、あかねは信じて待つことにした。大丈夫、ちゃんと戻ってくる。
(少しはあたしも成長しなくちゃね)
 乱馬の分のケーキも作ってあるんだから。


*   *   *


「悪いシャンプー、今は出かけられねえ。いやほら、おれの分の夕飯作ってもらってるし…」
「だったらそれ終わるまで待つよ。夜は長いね。大人のクリスマスいくらでも可能」
 にこにこと笑うシャンプーに、逃げ道を塞がれる。
 …いや、もういい加減、逃げようとする方が間違いなのだろう。
 こほんと咳払いして、乱馬は姿勢を正した。
「…シャンプー」
「うん」
「怒らねーで聞いてくれ。いや、怒っても仕方ねえ」
「……」
「俺は、お前と一緒にクリスマスは…」
「ら、乱馬。私ずっとこの日を楽しみにしてたよ。今日も朝から料理して、ご馳走いっぱい用意したよ」
「…過ごせねえ」
「中華料理が嫌なら他のもの作るよ。私、乱馬のためなら…」
「おれが一緒にいたいやつは…他にいるんだ」
「乱馬…」
「悪い」
「……」
「悪い!」
 陽は既に落ち、クリスマスの夜空には、星が少しずつ灯り始めている。
 静寂は、乱馬にとっては一時間にも二時間にも感じられた。
「…わかた」
 それでもとうとう、シャンプーは俯いたまま小声で言い…
 キッと顔を上げて、乱馬の頬を思い切り叩いた。
「もういい、乱馬なんて大嫌いね! 別了(ピエラ)!」
 涙目で叫んで、そのまま走り去っていく。
 追いかけたがる足を、乱馬は懸命に押しとどめる。『わ〜っ、待ってくれシャンプー!』なんて言って追いかけられた時期は、もう過去のものなのだ。
「しょーがねーよなー…」
 星が増えていく夜空に、乱馬が言ったのはそれだけだった。


*   *   *


「…おかえり、乱馬」
「…おう」
 座卓の周りにはみんなが座り、乱馬の着席を待っている。
 乱馬が腰を下ろし、早雲がシャンパンの入ったグラスを掲げた。
「えー、それでは家長であるわしが音頭を取らせていただきます。メリークリスマス!」
 メリークリスマース、の唱和とグラスの合わさる音。一口飲んで、あかねは立ち上がりタンスを開く。
「はーい、あたしからみんなにプレゼントがありまーす」
「おおっ、さすがあかねちゃんは気がきくのう」
「えへへ。小物だけどね」
 おばさまに、おじさまに、おじいちゃんに、と渡していって、続いて身内へ。
「はい、なびきおねーちゃん」
「サンキュ。まあタダでもらえるものはもらっとくわよ」
「もうちょっと素直にお礼言ってよ…。まったく乱馬みたい」
「なんでおれが出てくるんだよっ」
 そして最後に一つ残る。他より大きいのが少し恥ずかしいけど、一応ちゃんと相手の顔を見て渡す。
「…はい、乱馬」
「お、おう。悪いな」
「乱馬く〜ん。あかねへのプレゼントはいつ出すのかしら?」
「う、うるせーな。今持ってくるよっ」
 部屋へ飛んでいって、すぐさま包みを抱えて戻ってくる乱馬。
「ほらよ」
「あ、ありがと」
「じ、じゃあ開けるぞ」
「う、うん。あたしも」
 何となくいっせーのせで、二人同時に包みを開く。
 乱馬がもらったのは一揃いの靴、あかねがもらったのはオルゴールだった。
「へー、結構いい靴じゃねーか」
「わぁ…。嬉しい、ありがとう乱馬!」
「お、おう」
 珍しく素直なあかねと慌てる乱馬に、見ている周囲はついついにやにやしてしまう。
「いやあ、若い者はいいですなぁ早乙女くん」
「全くですなぁ天道くん」
「もう、お父さんたちはすぐそういうこと言い出すんだからっ!」
「あかねちゃん、これからも乱馬のことをお願いね」
「え、いえ、その、おばさま……はい」
 冷めないうちにいただきましょうか、というかすみの一言で、それからしばらくは食事タイムになった。
 食べ終わればケーキの出番。あかねの箸の進みが少し速かったのも、仕方のないことだろう。
 そして皿の上が大体片づき…
「ね、ねえ。そろそろケーキ持ってきてもいいかな」
 ――食卓に緊張感が走った。
「なんで緊張するのよっ!」
「そ、そうねあかねちゃん。いただきましょうか」
「なびきちゃんのために一生懸命作ったんだものね」
「おねーちゃん、何であたしに振るのよ…」
 何だかあかねまで緊張してきて、冷蔵庫から皿を持ってくる。
 昨日食べられたんだから大丈夫のはずだけど…何しろ今までが今までだし、一夜の間に凄い化学反応でも起こしてやいないだろうか。
「はい、どうぞ」
 テーブルに置かれたケーキを見て、一同に少し希望が浮かんだ。
「へー、ちゃんとケーキの形になってるじゃない」
「不器用なあかねが作ったとは思えねえぜ」
「…カットは右京がしてくれたの」
 ……。
 希望はあっさり潰えた。
「何よっ! なんで誰も手を出さないのよっ!」
「だってお前…」
「ちゃんと味見したってばっ!」
「そ、そうなの。それじゃおばさん、いただこうかしら」
 のどかが手に取ろうとして、慌てて乱馬が動く。
「いいっておふくろ。あかねのケーキなんかおれ以外の誰が食いたがるんだよ」
「いや乱馬くん、ここは家長であるこのわしが」
「いいわよ! あたしが自分で食べて証明してみせるから!」
 と、皆がケーキに向け殺到する中…
 ひょいと伸びた手が、素早く一片をつまみ上げる。
「ったく、元はといえばあたしのためなんでしょーが。あたしが食べなきゃ女がすたるってもんでしょ」
「なびきおねーちゃん…」
 口に運んでぱくり。
「うっ!」
 いきなり胸を押さえて苦しみだす。青くなるあかね。
「おねーちゃんっ!?」
「なーんて、ウソ」
「…も〜〜〜!」
「冗談よ。なんだ、結構おいしいじゃない」
「なに、本当かね!」
「あっ、汚ねえぞ親父一番大きいの取りやがって!」
 みんな反動で一気に手に取る。おいしい、頑張ったわね、と賞賛の声。あかねは思わず顔がほころんでしまう。
「ど、どう? 乱馬」
「ウッちゃんってすげえなあ。あのあかねをここまで鍛えるなんて…」
「どうしてそっちの方を誉めるのよっ!」
 文句を言いながら、あかねも自分の分を口に運ぶ。
 あんなに苦労したけど、食べるのは一瞬。
 それでも、作って良かったって心から思った。


*   *   *


 その頃…
「うふふふ、良牙さま早くぅ」
「あははは、待てこいつぅ。…いや、マジで待ってくれ…」
 カツ錦を全速力で走らせるあかりに、必死でついていく良牙。その先にあったのは、イルミネーション輝くビルの上にある時計台。そこで揺れる鐘だった。
「言い伝えがあるんです。クリスマスにあの鐘にお願いすると、どんな願い事でもかなうって…」
「あかりちゃん…」
「私、良牙さまと一緒に来たかったから…」
 頬を染め、そっと手を握り合わせてお祈りする姿に、良牙は心の中で慟哭する。
(なんて、なんて健気なんだ…。今まですまんあかりちゃん、おれは今こそ君一筋に生きることを誓う! そして必ず普通の男に戻って、君に告白してみせるぜ!)
「そ、それであかりちゃんは何を願ったんだい?」
「はいっ、良牙さまがいつまでもブタでいますようにって! そしてブタの良牙さまとずっと一緒にいられますようにって!」
 ぴし…
 石化した良牙の顔を、あかりが恐る恐る覗き込む。
「あの…。私、何か変なこと言いました?」
「いや、いいんだ…」(しくしくしくしく)
 幸せなんだかそうじゃないんだか段々分からなくなってきた良牙だった。


*   *   *


「シャンプ〜、どこじゃ〜」
 夜中の街を探し回っていたムースは、ようやく相手を見つけ出す。
「おおシャンプー! おらの話を聞いてほしいだ〜」
 街灯の下で俯いている彼女に駆け寄って…
 近づくにつれ、ようやく様子がおかしいことに気づいた。
「シャンプー…?」
「近づくなある!」
 初めて聞くようなシャンプーの声色。おそるおそる覗き込んで…事態を悟る。
「泣いて…おるのか…?」
 返事はない。
 かっと頭に血が上った。暗器を袖から覗かせて、走り出そうとする。
「おのれ早乙女乱馬! よくも…!」
 天道家の方角へ向かいかけたところで、地面に激突した。シャンプーの足がムースの裾を踏みつけていたのだ。
「何をするだシャンプ〜!」
「お前こそ何するつもりか」
「き、決まっておるだ! 早乙女乱馬を叩きのめして、首に縄をつけてでもシャンプーのところへ…」
「だからお前はアホな男ある! これ以上私を惨めにさせるつもりか!?」
 歩き出すシャンプーに、我に返ったムースが手を広げて懇願する。
「の、のうシャンプー。それだったらおらと…」
「乱馬がダメだったからって、すぐにお前に乗り換えるほど尻軽と違うね!」
「そ、そんな〜。シャンプー…」
 情けない顔でついてくるムースの前を、早足で歩いていくシャンプー。
(そうある…。あいつの所…)
 笑ってやろうと、シャンプーはそう考えた。
 立場的にはあいつだって同じなんだから。歩く先をその店へ変える。
 こんな思いをするのが自分だけじゃないと、そう思いたいだけだなんて認めようとはしなかったけど。


*   *   *


「さて、と」
 ケーキも綺麗に片づいた頃、なびきがおもむろに席を立つ。
 トイレかな? と思ったあかねだが、しばらくして廊下に見えたなびきは外出着姿だった。
「お、おねーちゃんどこ行くの?」
「九能ちゃんとこ。たかりに…もとい顔出しに行ってくる」
「ええー? そんな、今年で最後かもしれないのに…」
「もう十分でしょーが。この歳にもなっていつまでも家族団らんなんてやってらんないわよ」
 あかねが抗弁する前に、乱馬に声をかけるなびき。
「乱馬くん、小太刀になにか伝言ある?」
「な、なるべく刺激しねーように頼む」
「おっけー」
 そう言って、あかねが追いかけようと玄関に行ったときは、既に出ていった後だった。
 がっかりするあかねの肩に、かすみがそっと手を添える。
「照れ屋さんなのよ。なびきちゃん、こういう優しい雰囲気は苦手なの」
「かすみおねーちゃん…」
 そういうかすみもコートを着て、手にはラップのかかった皿を持っていた。
「私は東風先生のところに、少しおすそわけしてくるわね」
「う、うん…」
 東風先生大パニックだろうなぁ、なんて考えながら、出ていくかすみを見送る。
 居間では大人たちがお酒を飲んで大騒ぎしている。時計は7時半。
 少し考えてから、あかねも自室に入ってコートを羽織る。
「お前もかよ。どこ行くんだ?」
 階段から下りてくると、乱馬が廊下にいた。
「右京のとこ。やっぱり人手足りないと思うし」
「ならおれも…」
「バカ、旅に出て以来おばさまとクリスマスを過ごしたことなんてないんでしょ。十数年分、しっかり甘えなさいよ」
「な、なに言ってんだ。高校生にもなって…」
「あかねちゃん、出かけるの?」
 廊下に出てきたのどかに乱馬は飛び上がり、あかねは笑顔で答える。
「ケーキ作りを手伝ってくれた友達がいるんです。まだ高校生なのにお店開いてて、今日も働いてる。
 あたしなんかでもいれば手伝えると思うし、そうしたい気分なんです。クリスマスイブだもの」
「…そう、外は暗いから気をつけてね」
「はいっ、おばさま」
 乱馬はまだ何か言おうとしたけど、それを手で制して、あかねは冬の夜の下に出た。
 白い息が広がる中、空には満天の星。
 少し眺めてから、走り出す。行こう、あのお店へ。



 そして――
 座に戻るのどかに乱馬も続こうとしたところ、玄関の扉の隙間から誰かが手招きする。
 外に出てみると、なびきだった。
「なんだよ、出かけたんじゃねーのか?」
「乱馬くん、ケーキおいしかった?」
「は?」
「おいしかったわね?」
「ま、まあ、あかねにしちゃ頑張ったと思うけど…」
「じゃあちゃんとお礼を言っときなさい。心から」
 そこでようやくなびきの意図に気付いて、乱馬の顔がジト目に変わる。
「おめーが自分で言やいいんじゃねえか?」
「う、うるさいわね〜。細かいこと言ってんじゃないわよ。はいこれ」
「何だよ」
 手渡されたのは、折り畳まれた千円札二枚だった。
「特別に無利子無期限で貸してやるから、あかねに何か買ってやるのよ。いいわね!」
 言うだけ言って、なびきはそそくさと出かけていく。
 その姿が消えてから、乱馬は呆れたように腕を頭の後ろで組んだ。
「ったく、姉妹そろって素直でねーでやんの」


*   *   *


「毎度ありーっ」
 今は7時。いつもなら閉店する時間だけど、店内は相変わらず盛況だし、どうせ他にすることもないし、今日はもうしばらく開けるつもりだった。
 と、扉が開いて新たな客がやってくる。
「いらっしゃーい。…なんや、良牙やないか」
「お、おう」
「こんばんはーっ」
 その後ろから顔を出したあかりを見て、目を丸くする右京。隣の小夏に耳打ちする。
「世の中には変わった趣味の女の子がおるもんやなぁ」
「右京さま、失礼ですよっ。蓼食う虫も好きずきと言うじゃありませんか」
「何話してやがるてめえら…」
 とにかく席に案内して、水を出して、今度は良牙の方が右京に耳打ちした。
「実はツケで食える店がここしか思いつかなくてよ」
「ちょい待ち。なんでうちがお前にツケで食わせてやらなあかんねん」
「頼むっ。財布に三百円しかないって今さっき気づいたんだっ」
 ひそひそ話は漏れてしまったらしく、あかりが遠慮がちに声をかける。
「あの、良牙さま。お金なら私が…」
「いや、いーんだ! あかりちゃんは何も心配しなくていーんだ!」
「しゃあないやっちゃなー。今日のとこは顔を立てたる」
「すまん、恩に着る!」
 心底ほっとして、今頃になってあかりと向かい合って座っていることに気づく良牙。緊張しまくりの姿は傍目からは面白い。
 ただ当のあかりは、ブタ玉はブタが可哀想などと言って、右京にしばらく説教される羽目になった。


 数分後、扉が開き、再び知り合いがやってきた。
「ふ、ふんっ。こんな日も商売あるか。独り者は寂しいあるな」
 入ってくるなり、扉の所で腕を組んで憎まれ口を叩くシャンプー。
 けれどその目が少し赤いのを、右京は見逃さない。
「…だから玉砕するって言うたやん」
「なっ…! う、うるさいね。お前に関係ないね!」
「アホやなー」
「〜〜〜っ! 帰るある!」
「けどまあ、そういうアホは嫌いやないで」
 背を向けるシャンプーに、右京が何か投げつける。受け止められたそれは、焼きたてのお好み焼きだった。
「せっかくやから食べてき」
「…お前の同情なんか受けたくないね」
「何言うてるの。うちも同じ立場やねんで」
「そ…そういうことにしておくある」
 テーブルについて、もくもくとお好み焼きを食べ始めるシャンプー。ムースもこっそり入ってきてその向かいに座る。形だけならクリスマスのカップルだけど…
「のう、シャンプー…」
「今ヤケ食いで忙しいね! 後にするある!」
 といった感じで、ロマンチックにはほど遠かった。


 そして…


 扉が開き、三度目の知己の来訪は、右京は想像もしていなかった。
「あかねちゃん!?」
「こんばんはーっ」
 笑顔で入ってきたあかねは、店の一角に気づく。
「あれ? 良牙くんにあかりちゃん、シャンプーにムースまで」
「ああああかねさん!? これはその…」
「ん? なあに、良牙くん」
「いや…いや、何でもない」
 自己嫌悪気味に座る良牙の一方で、右京とシャンプーがあかねに詰め寄る。
「あかねちゃん、どうしてここにおんねん!」
「ま、まさかあかねも乱馬に振られたか? ということは乱馬の本命は別ね。あかねの姉か?」
「あー、そうかもしれへんなぁ。かすみさん狙いっちゅう方がまだ納得できるわ」
「ちょっとっ。黙って聞いてれば何を言い出すのよ!」
「冗談やて。で、何しに来たん?」
「何って…。まだお店やるんでしょ? また手伝おうと思って」
 あっさりと言うあかねに、右京は開いた口が塞がらない。
「あのなあかねちゃん、今夜はクリスマスイブやで…」
「そ、そうだけど、乱馬はお母さんと過ごしてるし、こういうクリスマスもありだと思うし…。め、迷惑だった?」
 どんな顔をしたらいいのか分からず、右京はそっぽを向く。少し黙ってから、ぼそりと言う。
「ケーキ…」
「え?」
「ケーキの評判はどやったん」
「…うん、好評だった。だからこれはそのお礼」
「さよか。それやったら断る理由もないな」
 あかねは嬉しそうに笑って、和服に着替えるために店の奥に入っていった。
「良かったですね、右京さま」
 小夏の言葉にも、どう答えたものやら。
 そして不思議そうなシャンプーの顔。
「あかねの考えてることが分からないね。アホある」
「せやな。あんたとは別の意味でアホやな」
「…私アホと違うね」
 …でも。
 一瞬だけ右京は思ってしまった。”あかねちゃんなら乱ちゃん渡しても納得できる”って。
 そうじゃない、まだ決着はついてないから、慌ててその考えは打ち消したけど。
 一瞬でもそう思った時点で、この延長戦の終わりはもう見え始めているのかもしれなかった。


 あかねの手伝いもあって回転はスムーズに進み、8時頃に閉店の札を出した。
 残っていた客も順次帰り、あとは良牙にあかり、シャンプーにムースだけ。
「あ、あの、あかりちゃんっ!」
「はいっ、良牙さま」
「い、いやその…。あの、あかりちゃんっ!」
「はいっ、良牙さまっ」
「だーっ! いつまで同じこと繰り返しとんねん!」
 シャンプーはシャンプーでヤケ食いしすぎて苦しくなり、ムースをおろおろさせている。
 右京は軽く息をついて、皿を洗っている二人に声をかけた。
「あかねちゃん、小夏、今日はしまいにしよか」
「はい、右京さま」
「ごめんね、結局あんまり手伝えなくて」
「ううん、十分やて」
 来てくれただけでものすごく嬉しい。
 そんな恥ずかしいこと、絶対口にはできないけど。
「よっしゃ、二人ともカウンターに座り。うちが最後に一枚焼いたる」
「え、いいの?」
「ああっ、お好み焼きを一枚食べられるなんて…。クリスマスってなんていい日なんでしょう」
「こらっ、うちが普段食わせてへんみたいやないかっ」
 鉄板に油を引き、シャンプーたちの分も含め七人分の生地を、その上に流そうとする。
 その、すんでのところで間に合った。
 八人目、最後の来訪者が扉を開いた。
「…乱ちゃん…」

「よう、ウッちゃん」
 軽く手を上げる乱馬。
 自分に会いに来たわけじゃないって分かってる。
 手が届く可能性は、もうほとんどないって分かってる。
 でも、嬉しかった。今日この夜に、彼に会えたことが。
「乱ちゃん」

 けど真っ先に抱きついたのは、右京でもあかねでもなく、さっきまでの落ち込みはどこへやらのシャンプーだった。
「あいやー乱馬! やっぱり私に会いに来てくれたか!」
「こらあ! なんちゅー図々しい女や!!」
「シャンプー、そらないだ〜」
「乱馬きさま! あかねさんという人がありながら許さん!」
「うわっ、知るかバカヤロウ。おい、シャンプー離れろっ!」
 大騒ぎの中、我に返ったあかねが、シャンプーを引き離そうとしつつ乱馬に尋ねる。
「…迎えに来て、くれたの?」
「ば、ばっきゃろー。あ、当たり前だろーが」
 シャンプーは聞こえなかった振りをしてしがみつき、右京は少しの寂しさを含んだ微笑みとともに、八人分の生地を鉄板に流した。
「丁度ええわ、乱ちゃん。今日最後のお好み焼きやから、一枚食べてき」
「いいのか? ラッキー」
 ほくほく顔でカウンターに座る乱馬。思い出したように、右京に告げる。
「あ、それから…あかねにケーキ教えてくれて、ありがとな」
 泣きたくなる。
 表情を隠すようにして、代わりににあかねへ。
「あかねちゃん、ちょっと手伝ってや」
「あ、右京さま私が…」
「小夏は座っとき」
「…はい、右京さま」
 あかねも小夏も、少し気づいたようで。あかねだけカウンターの内側の、右京の隣に立った。
 お好み焼きが焼ける音のお陰で、小声なら他の皆には聞こえない。
「なあ、あかねちゃん」
「うん?」
「うち、まだあかねちゃんには負けへんで」
「…うん」
「せやけど…」
 何度考えても、この答えにしかならないのが少し悔しいけど。
「あかねちゃんとは、ずっと友達でいたい」
 そう言って、あかねの顔を見て、笑う。
「虫のええ話やろ」
「ううん…あたしは、そんなことないと思うけどな」
 カウンターの下から、あかねがそっと左手を伸ばしてくる。
 ヘラを左手に持ち替えて、右手を伸ばしてそれを握る。秘密の握手。
 …これで十分。
 十分すぎるほどの贈り物だと、右京は思う。

 焼き上がる、今日最後のお好み焼き。
「乱馬、私が食べさせてあげるね」
「や、やめろって。あかねも見てるんだし…」
「ふんだっ。あ、あたしは関係ないでしょ」
「な、なんだよかわいくーねな!」
「何よ! どーせあたしはかわいくないわよ!」
 相変わらずの二人に、右京はなぜだか可笑しくなって、ごまかすように自分の焼いたものを口へ運ぶ。
 うん、おいしい。この人たちに食べてもらえるのが嬉しい。

 予感がある。この延長戦も、遠くない未来に終わってしまう予感。
 だけどもう少し。終わるまでのもう少しの間は、こうしていられますように。
 こうして楽しくいられますように。
 クリスマスの夜、右京は願わずにはいられなかった。








<END>




P.S.
 なびきの部屋に来たあかねの首には、新品のペンダント。
「おねーちゃん、どうもありがとっ」
「…喋ったわね、乱馬くん…」
「な、なんだよ。喋るなとは言われてねーだろ」
「ほー、そういう態度を取るわけね。ふふ…後で覚えてなさいよ」
「も〜。おねーちゃん照れない照れないっ」
「ちょっと、くっつくんじゃないわよ。ったく、この妹は〜」


 ――この延長戦も、いつかは終わってしまうけど
    どうかもう少しだけ、このままでいられますように――







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