○2% さん
- 01 部屋の明かり (採点:9)
- 由起子さんは楽観主義者だと思い込んでいたのですが、このおはなしを読んで認識を改めました。地の語りが多少説明っぽすぎるような気もするけれど、芝居がかった台詞の応酬が印象深い作品です。
>「また、遊びに来て頂戴」
↑この台詞で良作だと確信しました。何というか、映画のような会話。
以下蛇足。「あの馬鹿」や「あいつ」は記憶にない人物を差すにしては不自然な表現ですが、これは由起子さんが元々浩平のことを完全に忘れてしまっていたわけじゃなかった、という暗示だと解釈して良いのでしょうか。
- 02 追跡者 (採点:5)
- くだらなすぎるボケも、ここまで休みなく畳み掛けられると素直に笑うしかなくなります。ただひたすら頭を空っぽにして読める楽しいおはなし。序盤は特に読んでいてわくわくしました。それだけに、「バースデープレゼントを――」という種明かしの意外性のなさが惜しい。最後までしっかり楽しませてほしかった、の一言です。あと、みさきの扱いが酷い……これでカテゴリに「ALL」とあるのは詐欺だよなぁ。
- 03 雨の中 (採点:4)
- どこか不自然な語り口。多分、一人称なのにところどころ神の視点(プレーヤーの視点)からでないと出てこないような表現があるからだと思いますが……とはいえ、茜が詩子に会いに行くという逆転の構図が魅力的な作品でした。
- 04 いっしょに。 (採点:9)
- なんだこれは! と思っても、やっぱりこういうおはなしは好きです。可愛いから。軽快な文体も可愛い。「ふぁんたすてぃっく。」までいくと悪乗りしすぎだと思うけれど。「日記帳が――」って冒頭の夢が素敵だし、ラストの先制パンチも爽快でした。
- 05 また明日 (採点:6)
- おねこん(仮)でこんな直球作品が読めるとは思いませんでした。受け身な折原くんがひたすら可愛い。七瀬お姉さんもやっぱり可愛い。ちょっとだけ懐かしさを覚えるような、ほのぼのする作品でした。
- 06 It's possible to think of you. (採点:5)
- 冒頭の独白を一瞥して「うわ、この電波気味の文章が続くのか」と身構えたのですが、実際にはそんなこともなく次の節からはしっかりした文体になっていてスムーズに読めました。消える氷上の記憶、最後まで明言されない語り手の正体――と、儚い雰囲気が印象に残ります。とはいえ、後半では氷上が語りまくっているわりに彼の話す内容はごく表層的なことばかりで、ちょっと物足りないかも。
- 07 待ち合わせは、傘の中 (採点:7)
- 三人称は三人称なのだけれど、冒頭、作者の視点になったりみさき主体になったりと頻繁に切り替わるので若干読みにくいかも。とはいえ、読みにくいのは冒頭だけ。きっちり「みずか」を連れ出すところまで書き切ってくれたこのおはなしに「読ませてくれてありがとう」と伝えたい気分で一杯です。
- 08 deracine[デラシネ]: エンドロールの後で故郷喪失者の瞳に映るもの。 (採点:10)
- 一読した――ワケが分からなかった。
二読した――深い意味があるようでいて実は内容なんて何もないんじゃないか、と悟った。
三読して、目を閉じた――目蓋の裏に昆布を突つくエビの姿が映った。私は、この作品は昆布の話だったのだ、と思うことにした。
……や、最初、地の文が全体としては割と穏やかなのにスラングっぽい名詞だけ過剰に口語体なのでバランスが悪いなぁ、と感じたのですが。実際のところ述語まで俗語にしたら読めたものじゃないよなぁ、と考えを改めました。deracineの名前通り、全編に渡ってフラフラ/フワフワした(重力を感じさせない)展開で、バレーボールマシーンとかやたら特殊なメカが登場したりしても、きっとそのマシーンは柔らかくて軽いんだろうなぁ、としか思えない雰囲気が絶妙。
四読した――ああ、これは確かにONEのSSだ、と理屈でなく実感して、点数を上げた。このときはじめて、タイトルの「エンドロールの後で――」が腑に落ちた。
- 09 生徒 A (採点:8)
- 最後まで、シリアスで落とすのか、「第二章、完だ」のようなオチを持ってくるのか、ハラハラドキドキしながら読みました。で、結局予想の斜め5°上を行くようなオチになって。この軽妙にくだらない感じが良い。冷静に考えると内容がないような気もするけれど、私はこのおはなしを支持します。
- 10 プラスティックフラワー (採点:5)
- ケンカして仲直りしてワッハッハ、って……少年漫画!? と最初は面食らったものの、MOON.でもラストがそれだったことを考えるとTactics作品と「拳で築いた友情」は相性が良いのかもしれませんね。ただ、七瀬と広瀬を親戚云々で繋げる展開はちょっと安直かなぁ、と。
- 11 なついろとみさきと (採点:5)
- 読んでほっとできる一作でした。何度となく書かれてきた題材とはいえ、やっぱりみさきは可愛いし、こういうストーリーはSSの基本だと思います。
- 12 子供ノ世界ノ速度 (採点:8)
- >オレと一緒に、永遠に往かないか
ここまではっきり言ってくれれば、このラストにも納得――そんな、妙に説得力のある作品でした。いえ、序盤〜中盤の二人に「原作から数年間ですっかり変わったなぁ」という印象を持ちながら読み進めていただけに、ラストで「こっちの方向へ変わってたのか」という驚きはあったのですが。
- 13 憧れの あの女の子は もういない (採点:3)
- 冒頭を読んで「このオチにだけはなりませんように――」と念じた通りのオチになってしまって、なんとも……いえ、おめでたいおはなしに低得点を付けるのは忍びないのだけれど。サプライズが主体の掌編で当のサプライズが滑ってしまうと、やっぱり苦しい。ごめんなさい。
- 14 雨の日の心は千々に乱れて(So,We make friends with...) (採点:8)
- 若干既視感のようなものを覚えつつも、やはり文体が魅力的。言葉の選び方とか、並べ方とか、脂っこくなってしまう直前のかなり危ういところでバランスしている印象。ついでに、シチュエーションもわざとらしくなる少し手前で素敵にコントロールされている感じ(みさきと浩平が手を繋いでいたことで茜が悩む一方、読者はその理由を知っているという構造とか)。忍び込んでコソコソしている二人も可愛いし。
とまれ、ラストの「私は――」の先を具体的に読みたいなぁ……と思うのは私が想像力に欠けた読者だからなのでしょうか、やっぱり。
- 15 桜散る (採点:5)
- 佐織が一回だけ誤字っている謎は考えないことにしつつ。このジャンル表記とタイトルからこのシチュエーションに持っていく感覚がすごく好き。あとは、説明台詞を流しまくる中盤以降の浩平が何とかなってくれれば。
- 16 淡い心だって言ってたよ (採点:7)
- 生活の堕落のせいか口調まで適当に(というか廃人っぽく)なってしまっている二人に当初は若干の違和感を覚えたりしたものの、じきにその違和感も薄れてスムーズに読めるように。ほっとするようなハラハラするような、不思議な作品でした。とはいえ、「永遠」と「堕落」をもっと深く絡ませた展開だったのなら、さらに印象の強い作品になっていたんじゃないかなぁ、と思うと少し惜しい気分になるのですが……
- 17 重ねた手と手の中に (採点:9)
- 作者さんは指点字について元々知識のあった方なのでしょうか。作品のために調査なさったのでしょうか。とまれ、何かきちんとしたバックグラウンドのあるおはなしは読んでいても安定感があって良いですね。ハンデを持つ二人をメインにストーリーを進めていくのが良いのか悪いのかは分からないし、この二人の「頑張る」にどれほどの重みがあるのかも分からないけれど、澪が「歌う」ところまで突き詰めたこのおはなしは大いに有りだと思いました。
蛇足ですが、「役者不足」はあまり一般的な単語ではないので(辞書にも載ってないくらいですし)全体的に言葉遣いの素直な本作の中ではちょっと浮いてしまうような気がします。「役不足」は誤用だぞ、と念じるあまり他の表現の可能性を見失ってしまった――というのは流石に邪推でしょうか。
- 18 玉手箱 (採点:6)
- 不思議ネタは大好きなんですが、これはちょっと「それだけ?」の印象が拭えないかなぁ、と。あと、誤字の類がどうにも。とはいえ、【Endless】に「えいえん!?」と思ってしまったのでちょっと加点してみたり。
- 19 澪の演劇部ブログな日々 (採点:5)
- キャラメルボックスとかル=グゥインとか、それっぽいネタが好ましい作品でした。ただ、みさき視点の中盤が割と印象的だっただけに(舞台の上を連れ歩くのはソリューションとしてどうかとは思うけれど)、ブログ部分の中途半端さが惜しい。もっと「『言葉』が形になって残る」あたりを追求できたら面白いかなぁ、と思います。
とまれ、このような場でもなければ読まないタイプの作品ということもあり、読んでいてインスピレーションを刺激されました。ありがとうございます。
- 20 学生生活は糾える縄の如く (採点:3)
- 髭の台詞は、原作では『担任「んあー」』だったと思います。『髭「んあー」』ではなく(ゲームのシナリオを真似た書き方だとしたら、の話ですが)。
何はともあれ、口語そのままの表記、脈絡なき伏字攻勢、誤字が気にならなくなるくらいに飄々としたノリ、とケータイ世代を思わせる雰囲気が印象的な作品でした。
- 21 シイナロケッツ・ネコゼスタイル (採点:9)
- 二人称きた!! ――と、それだけでも異彩を放つこの作品。組体操でタワーを作る、ただそれだけのおはなしなのに、すごくドキドキしながら読めました。成長したね、と彼女を誉めてあげたい気分。タイトルも輝いてました(シーナ&ロケッツはほとんど聴いたことがないので、深い含意があるのかどうかは分からないのだけれど……)
- 22 Luminous (採点:8)
- 不思議図書館――なぜか、この界隈で良くみかける題材のような気がするのだけれど。これはそのあとの優しい展開が良い。不思議ストーリーには心地良いものと消化不良なものがあるけれど、これは前者です。
- 23 ココロ、道標に。 (採点:7)
- 詩子の舞台裏的な題材が魅力的です。欲をいえば「テル君」たちの行動をもう少し原作の詩子の行動と絡めてほしかったけれど。あと、(当たり前のことですが)浩平や茜と違ってバックグラウンドを持たない彼らには、詩子の突飛なキャラを受け止めるだけの力がどうしても足りない――そう思えてしまうシーンが散在していたのも惜しい点です。
- 24 グリーン・フラッシュ (採点:6)
- 幼い日の冒険! なシチュエーションが魅力的だし、そのシチュエーションと相まって(夕焼けが重要なファクターになるおねSSの中にあって)この河川敷の夕焼けは特に綺麗なんじゃないかなー、と漠然と思ったり。このおはなしの「えいえん」観は独特だけれど、こういうのもありかもなー、としみじみしたり。それだけに、推敲不足の兆候が散見されたのは残念です。誤字脱字の類は気にしなければ気にならないのですが、言葉遣いが総じて上滑りしている感があって……
- 25 ひとつの物語 (採点:8)
- 中盤のかなり重ための回想パートと、序盤・終盤の和やかなシーンとの対比が印象的なおはなしでした。髪形を変えたり舞台が卒業式だったりするあたりは安直かもしれないけれど……たったの30KBでヒロイン3人の成長を描くためにはこのくらいはっきりした書き方が必要なのかな、と。
- 26 トントン拍子 (採点:8)
- タイトルとサイズからの想像に反して、実はかなりの良作でした、この作品(どんなストーリーを想像していたのかは訊かないでください)。すごく真っ直ぐなおはなしだと思います。真っ直ぐすぎて、「澪が無言電話」というストレートなネタに気付けなかったくらい。
- 27 病は気とか雨とか大騒ぎから (採点:7)
- >顔が変形した浩平
↑で、とっさにボコられた浩平を想像した私は明らかに負け組。全体的に「?」の多いおはなしだったけれど、マンドラゴラとか絶好調とか意図せず笑ってしまった箇所もあるので加点します。
- 28 恋色ふたつ、空ひとつ (採点:9)
- こういう作品を読むと、おねSSの王道はマルチヒロインのほのぼのコメディだなーとつくづく思います。後半少しだけシリアスに持っていくあたりも王道の香り。ラストでここに繋げるのか! というちょっとした驚きもあったし。雨上がり、青空、と来たらこの場面だと気付いても良さそうなものだけれど、茜が「誕生日」を口に出すまで気付きませんでした。
- 29 やさしさと しあわせと (採点:4)
- 全体的に、おねっぽくしようとして失敗している印象が残ります。何より、登場人物たちが幼すぎて違和感が。松葉杖ごときでガタガタいうクラスじゃないだろ、と。その幼さ加減がきっかけで進むストーリーなので、難しいところだとは思いますが……
- 30 『packaging replica』 (採点:6)
- 麦藁帽子に白いワンピース、というのは狙ってるんだろうか……狙ってるんだろうなー。
とまれ、停滞しているようにみえてしっかりと成長している瑞佳と浩平の様子が爽快でした。二人を素直に応援してやりたくなります。章題に深い意味が隠されているような気もするけれど、それは考えない方向で。
- 31 指先/nukumori/リフレイン (採点:6)
- あ、中学の話だったのか、とか。結局ドラマってなんだったんだ? とか。「友達の女の子」がいつのまにか「委員長」になってるよ、とか。ところどころ不親切に思える箇所もあったのだけれど。でも、それを除けば爽やかで心和むおはなしでした。委員長が素敵。
- 32 蘇る少年 (採点:8)
- 氷上の視点で語られる「えいえん」は巷のSSにあるものとは少し違っていて、甘美にして耽美。正直、観念的な要素が多くてよく分からない部分もあるのだけれど……というかそれ以前に、この作品がシリアスなのかギャグなのか、それが分からないのだけれど(そんなところも妖しくて魅力的ではありますが)。加えて、「手袋を買いに」を引いてくるセンスが好きなので高得点にします。
- 33 幸福論 (採点:7)
- 実際のところ、舞台設定がよく分からないのだけれど。それでも、みさきと雪見が可愛いから万事OK。なんとなく、SSを読んだという感覚ではなく、短い映像作品を観ていたような印象の残る作品でした。
- 34 time goes by as change (採点:6)
- なんだかちょっと良かった。淡々としていて、これといって目立つ内容はないのだけれど。とはいえ、冒頭のクモのくだりとか瑞佳の告白とか、波乱を予感させるシーンがありながら何も起こらないというのは物足りないかも。でも、やっぱりちょっと良かった。
- 35 それでも生きて (採点:5)
- 観てる映画と舞台設定の年代が……と電波を飛ばしても仕方ないので。ところどころ素敵なフレーズがあって、とても印象深いおはなしでした。ただ、現在のシーンと過去のシーンがうまくまとまってないかなー、と。
- 36 あなたの名前を知っている (採点:4)
- 冒頭の印象からはあまり期待していなかったのだけれど。序盤から氷上登場前まで、すごくわくわくする展開でした。結果的に一年間彼女を苦しませることになる原作の展開は甘美だけれど少し辛い。それを少しバッドエンド寄りにして、彼女も一年間忘れていたという設定からどうおはなしを進行させるのか――と、ドキドキしながら読みました。惜しむらくは、氷上が説明しすぎな点(最初にあっさり名乗ってしまっている点も)、それでいて氷上が「夢の一部」という設定に説明が足りない点、そして、みさきの最後の判断に前振りやフォローがないように思える点。
- 37 Ever Follow ever (採点:5)
- 当たり前のことを当たり前に綴っていく素直な展開に、安心して読むことのできるおはなしでした。あえて難点を挙げれば、語彙が少ないのにワープロ任せなのか漢字が多くて、全体的に読みにくかったことでしょうか。とまれ、ラストの:
>0ではなく1を積み重ねていこう。
はちょっと好きなフレーズです。
- 38 みるく・ろーど (採点:6)
- 良くも悪くも重厚なストーリーの多い出品作の中にあって、砂漠で飲む水のような作品でした……あ、どんな水でも美味しいって意味じゃないです。ほっとさせてくれるオアシスのような小品だった、という意味です。
- 39 あなたはこの世界に必要とされていますか? (採点:7)
- 世界に絶望するみさき(失禁までさせるのは少々狙いすぎかも)、近しい人々の愛情に気付くみさき、復活したその世界が虚構だと悟るみさき――と、ここまでがとても魅力的な展開だっただけに。最後の最後が三流怪談のごとき悲鳴オチになってしまって、個人的にはすごく残念です。
- 40 あの人 (採点:4)
- 申し訳ありません、どうしてもこのキャラが「瑞佳」という枠にはまりませんでした。はまれば新しい瑞佳像を味わえたかもしれないと思うと残念なのですが……とまれ、魔法の言葉「いっぱい話した」で物語の山場を次々と越えていく展開のあっさり感が大好きです。
- 41 はねっかえり娘の恋物語 (採点:10)
- 「〜」で語尾を延ばせば女学生っぽい口調になるわけじゃないんですよ! ――と、第一印象はさておき。なぜかこの作品に満点を付けずにはいられない自分がいます。エピソードが断片的に綴られていく構成が想像力励起系で魅力的、というのが表向きの理由。広瀬が可愛い、というのが本音。
- 42 ありがとうを君に (採点:7)
- 序盤、漢字使いすぎじゃね? とか、いくら浩平でも独りごと多すぎじゃね? と思ったり。とはいえ、ただぼんやりしたり漂ったりするだけじゃなく、目的地に向かって無心に歩みを進める前向きな「えいえん」観が印象的でした。ついでにみずかにも前向きな救済がほしいと思うのは望みすぎでしょうか……
- 43 夢幻譜〜バースディは永遠に〜 (採点:9)
- ぐあっ、やられた。シリアスだと思ったのに……シリアスだと思ったのに……
とまれ、オチが綺麗に決まっていました。浩平が「里帰りするお盆の幽霊」的な扱いを受けているのが少々気の毒だけれど(瑞佳の誕生日が一ヶ月早ければちょうど旧暦のお盆でしたね)、それはさておき。
でも、冒頭数行から閃いた「もしやバニ夫一人称SSでは!?」という淡い期待が裏切られてしまったので満点にはしません。
- 44 髪弄り (採点:8)
- くだらねーギャグかと思いながら読み進めてみると、実は素直な良作だったので少し驚きました。そういえば、原作でも浩平は髪を弄らせてもらえなかったなぁ、と感慨深いものを覚えながら(個人的には、あの大量の髪を行為の最中にも触れずにいられるとは思えないのですが……)。ラストのオチも、ベタながら気が利いています。
でも、結局のところ、この作品に言いたいのは一言だけなのですけれど。
――ポニテも似合うと思うよ!
- 45 いつかあなたの道しるべ (採点:9)
- おねSSとしてはよくあるテーマなのかもしれないけれど。でも、ビデオレターからそのテーマを出してきて、さらにビデオレターで締める構成が巧い。後半の茜の台詞回しも素敵で、心にぐっと来ました。ラストもすごくポジティブで。
ただ、心残りもひとつだけ。瑞佳のビデオレターが観たい。狂おしいくらいに観たい。
- 46 ダイエットで終わる物語――雪見14歳のえいえん―― (採点:3)
- 基本がおバカだからこそ、似非薀蓄の数々は華麗に決めてほしかった、と。それが残念。荒唐無稽なおはなしは好きだし、ちょっとしたロマンもあるのだけれど、さすがに、相手が秀吉じゃなかったり雪見がダイエットに成功していたりするあたりに何のフォローもないのは物足りません。
- 47 雨に祈りを (採点:7)
- 極限状況にあった二人の少女の心情は想像もできないけれど。事件から6年を経た雪見がただ過去に囚われるばかりで真実全く成長していない、という事実が一番の悲劇なのではないか、と。他人に迷惑を掛けまいとした選択の結果がそうなってしまう――その不条理がストレートに伝わってくる作品でした(読み違えているかもしれませんが)。
- 48 エロ本行 (採点:9)
- 安定して、それでいて軽妙な文体。活き活きとした会話。随所に挿入される心憎い情景描写。……しかし、筋書きがくだらねー!! 最高。バカとアホと淡い不思議ワールドの絶妙な配合になっていて、ちょっとマズいくらいに好印象です。
- 49 輝く季節へ (採点:8)
- まずは、このタイトルで真正面から(?)勝負を挑んできたことに拍手を。でも、内容はよく分からなかった……無念。ループというのは単なるSF的な時間の繰り返しなのか、それともバッドエンドとリスタートを繰り返すゲームの暗示なのか? 長森って苗字は、君の何なのか? 魅力的なシーンやフレーズの散りばめられた素敵作品であるだけに、それを素直に読み取れない自分がひたすらもどかしい……
- 50 遠きあなたに (採点:9)
- ストーリーが先へ進むにしたがってどんどん魅力的になっていく作品でした。正直、独特の文体のせいで序盤は読みづらいと思ったことも。由紀子さんの苗字で萎えたりもしました。でも、読み進めるうち次第に茜から目が離せなくなっていきます。当初は日常を続けると決意していた彼女。やがて無意識にその決意を破り、いかがわしいバイトに手を出すようになった彼女。ついには世界から弾き出されるところまで堕ちてしまった彼女。終盤、病室での芝居がかったシーンには思わずゾクゾクしてしまいました。浩平の母を(精神を病んだ状態のまま)肯定的に使ったおはなしは、多分、貴重です。
- 51 アトリエのスノー・ホワイト (採点:7)
- 突飛な設定に最初は面食らったけれど、いったんその設定を受け入れてからは展開にぐいぐいと引っ張られるようにして一気に読めました。何というか、押しの強いおはなしだなー、という印象。ただ、現状では真希と留美との交流という筋書きが「絵描き」という魅力的な題材へ充分に溶け込みきってないんじゃないかと思います。
- 52 演劇部の伝説 (採点:4)
- 改行のせいでかなり読みにくかったけれど、夢があってノリが良くて心地良いおはなしでした。そういう意図があるのかどうか分からないけれど、序盤には古きよき時代のRPGのクエストを解くような雰囲気が漂っていて。
- 53 忘却の青、孤独の白 (採点:10)
- 冒頭でカール・ブッセの引用から杉みき子の引用に繋げる、そのセンスに惹かれました。とはいえ、本文もその豪華な引用に負けてない。たとえ冒頭の引用がなくても満点を付けていたと思います。どこが良いかと問われても「全部」としか答えようがないので心苦しいのだけれど。特に、一読目の衝撃が凄かった。再読すれば「田舎道をバスで30分って、健常者でも徒歩で半日かかるよなぁ」などと重箱の隅を突けるようにもなるのだけれど、やっぱり傑作であることに変わりはありません。
- 54 青ぐらい修羅をゆく (採点:8)
- どこぞの文豪然とした魅惑の言葉遣い――この文体でなければ、「ティツィアーノの髪のひと」に「そんな文学マニアいねーよ!」とツッコミを入れていたに違いありません。内容としては(原作のときにも理解できなった)「彼」の行動について若干の説明があって興味深かったのだけれど、やはり説得力のあるところまではいかず、それが残念といえば少しだけ残念な点です。
ところで、作中で言及されている「戦争もののドラマ」はやっぱり先日のあれがモデルでしょうか……?
- 55 ラブレター (採点:5)
- ラブレターの文章が点字っぽくないのがちょっと惜しいかも。とはいえ、素直に楽しく読めるほのぼのコメディだったと思います。今回は澪‐みさきの交流が人気テーマということもあり、採点が辛めになってしまうのが心苦しいのですけれど。
- 56 “ろまんひこう” (採点:7)
- これどこの氷上だよ! ……と思ったら南だったよ!
――と、素直な感想はさておき。多少強引ながら、飛行夢から現実の七瀬の前進にきっちり繋げてあるストーリーが好印象です。おねこん(仮)では色々な「えいえん」観が読めて嬉しいですね。
- 57 呼び起こせ、眠れる絆 (採点:7)
- タイトルを一目みて、内容が非常に気になってしまった作品。何はともあれ、澪の大活躍が読めて嬉しい。氷上がアドバイスしたり佐織が演劇部員だったりするあたりは安直かもしれないけれど、容量制限を考えれば納得できます。
でも、「舞台を作る」「浩平を思い出させる」どれを取っても困難な目標のはずなのに、何の障害もなく成功してしまう展開はちょっと物足りないかも。浩平が戻ってくるラストのくだりも駆け足気味だし、7KBの残り容量でもっと書き込んでほしかったなぁ、と。
余談ながら、「浩平と交わったことが覚えている条件」という解釈は面白そうですね。
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