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いと気高きは文化の祭典 Vol.1





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#001   ガテラー星人 (メール)    97/02/15 21:54:57
 一日の授業が終わり、生徒たちが解放される放課後。
 コアラの髪の少女にとってこの日もいつもと変わりはない。そそくさと荷物を片づけると、活動を開始すべく小さくガッツポーズをとった。
「さあ、今日も頑張って彼を見つめるわよ! 見晴ファーイト!」
「ファイトは良いんですけど」
 しかし今日に限って背後から冷ややかな声がかけられる。そろそろ〜っと振り返ると、同じ文芸部の如月未緒が眼鏡を光らせながら立っている。
「…今日は文化祭の出し物を決めるので全員部活に出席とあれほど口を酸っぱくして言っておいたはずですよね?」
「あ、あは、あはははは…み、見逃してぇ〜」
「ダメです」
 あっさり言われて見晴はがっくりと肩を落とすと、とぼとぼと部室へと歩いていくのだった。
「公くんごめんなさい、見晴は夜空の星になります…」
「あのですね…」
 ピンポンパンポン
 と、そこへ校内放送のチャイムが響きわたり、廊下の2人も耳をそばだてる。しかしそれも余計だったと言うべきか、聞こえてきたのは耳をつんざく大音響である。
はーーはっはっはっはっ! やあ諸君今日も元気かね?喜びたまえ、僕は元気だ』
『お、おい伊集院! 放送室を使うときは放送部に断ってから…』
『連れていけ、外井(パチッ)』『ははっ』『うわぁぁぁーーっ!』『今日この僕自ら出向いてやったのは他でもない、そろそろ文化祭の準備を始めている君たちにちょっとした贈り物をしてやろうと思ってね』
 期待と不安が校内を駆けめぐる。瞳を輝かせる見晴と眉をひそめる未緒の姿も知らず、伊集院は勿体をつけるように少し間をおいて言葉を続けた。
『いと気高きは文化の祭典、諸君らの叡智を結集した研究の成果にはそれ相応の栄誉が与えられてしかるべきだろう…。よって審査員と一般投票によりもっとも評価の高かった者には、この僕が伊集院家の全力をもってどんな願いでもひとつだけかなえてやることとする! どうだね、なかなか夢のある企画だろう?これを励みにせいぜい頑張ってくれることを期待しているよ。それじゃあ、また。はーーっはっはっはっ』
 プツン
 嵐のような放送が終わり、一瞬の静寂の後に校舎のいたるところで今の言葉について会話が交わされる。ひとつだけ願いをかなえる?なにせあの伊集院のことだ。冗談が冗談で済まされないのは確実である。
「ね、ねえ聞いた未緒ちゃん!? どんな願いでもだって!」
「ド○ゴンボールじゃないんですから…」
「でもでも、2人きりのデートのために遊園地をチャーターするくらいはしてくれそうじゃない? あーん見晴感激! これはもう頑張らなくっちゃ!」
 さっきまでとは打って変わってるんたったと部室へと向かう見晴。そんな彼女を追いながら、未緒は釈然としないものを感じていた。
「(文化祭というのはそういう見返りを求めるものではないと思うんですけど…)」
 しかしせっかくの見晴のやる気に水を差すこともないであろう。なんにせよまず出し物を決めてからだと気を取り直すと、未緒もまた部室へと向かったのである。

 同じころ、伊集院発言は出展を決めていた各文化部、クラス、そして文化祭実行委員会にも波紋を投げかけていた。



#002   しゅう (shu@scan-net.or.jp)    97/02/17 00:21:39
「フフフ・・・。そう、そうなのね。この私の夢に手を貸してくれる・・・と、いう訳なのね。」
科学部室の中では紐緒結奈が小さく呟いていた。
「こんな事もあろうかと考えておいたアレが役に立つ日が来たのね。」
更にそう言うと、ポケットから小さなメモを取り出し小さくうなずくのだった。


#003   まさ (k-sima@interlink.or.jp)    97/02/17 03:56:17
 同時刻、廊下を駆け、A組に飛び込む少女があった。
「好雄く〜ん!・・・あ、いない・・・こんな時に限ってまったくもう!」
「あ、朝日奈さん」
「藤崎さん、あのバカ知んない?」
「早乙女くんなら、今さっき出たばかりだけど・・・」
「あんがと、それじゃっ!」
 夕子は、入ってきたのと同じ勢いですっ飛んでいった。
「朝日奈さん・・・さっきの放送の事かな?」
 詩織はちょっと考えて、立ち上がった。
「別に、私には、今すぐかなえて欲しい願いなんて・・・。でも、朝日奈さんって、クラブ入ってたかな?」

「ねえ、お願い!」
「お前の『ねぇ、お願い』は何か裏があるんだよ!」
「ないないってそんなの、絶対」
「お前の絶対は・・・」
「もう、超細かいんだから!・・・いい、さっきの放送聞いたっしょ?」
「ああ・・・何でもかなえてくれるって・・・でも、俺達帰宅部には関係ないぜ」
「甘い甘い!今からでもだいじょーぶ!」
「何でだよ・・・どう考えても今から何練習したって追いつかないぜ?」
「あったま固いんだから!私たちで、新しいクラブ作ればいいの!」
「へ?!・・・作る?」
「そう!」
「俺達で?」
「そうそう!」
「クラブを?」
「そうよ!分かったら、力貸してよね」
「力貸せって言われても・・・」
「あーもうじれったいんだから!ついて来たら分かるわよ!」
「ちょ、ちょっと待てよ!お〜い、朝日奈ぁ〜・・・。行っちまった・・・。まあいいや、付き合ってやるか・・・」



#004   $100 (astml@tky.threewebnet.or.jp)    97/02/17 22:56:27
時間は少々戻る・・・
「ふぅ・・・」
いつもの様に屋内プールで清川望は練習に励んでいた。
あともう1セット・・・と思っていた矢先・・・

『はーーはっはっはっはっ!』

冒頭の伊集院の放送である。
望や他の水泳部員もその内容には興味があったものの、
悲しいかな運動部には参加するチャンスもなにより時間がない。
苦笑しながらプールを上がる望の前に、一人の少女が現れた。
「ハァ〜イ望ぃ!」
そう、片桐彩子そのひとである!
「今の放送聞いたァ?」
「あ・・うん」
「オッケェイ!なら話はソゥファースト、早いわ!」
彩子はぐぃっと顔を近づけ、望にこそっと語りかけた。
「・・・マイアイディア、私の考えに乗らない?」
「・・・アイデアって?」
彩子はニマァっと笑みを浮かべる。
「ドロゥピクチュア、私が絵を描くの。」
「?何の?」
望が腑に落ちない顔をする。
「・・・ユー、あなたを、望の絵を描くの!」
「エエッ!!」
「そう!鍛えられたユゥア・バディ!望の肉体美を描いて・・・
エイム・ザ・トップ!優勝を狙うの!!そして私の長年の願いを、
アーティスト、芸術家への道を・・・」
こそこそ・・・
望は彩子が自分に酔っている内に逃げだそうとしていた。
しかし千載一隅のチャンスを逃す彩子ではない。
「スタァ−プ!逃がさないわよ!」
「恥ずかしいってばぁ!」
「ウェ〜イト、待ってぇ望ぃ!」
果たして・・・どうなることやら・・・





#005   まさ (k-sima@interlink.or.jp)    97/02/20 09:02:01
「早くも、皆動き出したようだな・・・」
 放送室を後にして、先ほどの放送の主はつぶやいた。満足そうでもあり、不満そうでもあるが、正確なところは読み取る事ができない。
「・・・レイ様」
 その背後に控える影一つ。がっしりした肉体をスーツに押し込め、彼の主人の側に付き従う。
「外井。ご苦労だった」
「いえ・・・。その様なお言葉・・・」
 ねぎらいの言葉など、ここ何年も触れた事もなかった。それで全て上手く行っていたし、何も問題はなかった。こんなことは極めて異例の・・・。
「レイ様?」
「今度の文化祭、部屋割りの際、一部屋開けておいた。外井、お前も参加したいのだろう。さっきからそわそわしていたぞ」
「・・・決してその様な・・・」
「いい。分かっている。『審査員と一般投票によりもっとも評価の高かった者』と、あえて生徒に限定しなかったのだ。お前にもチャンスはある。行ってくるがいい。・・・たまには,、な」
「はっ・・・それならば、この外井雪之丞、必勝のアイデアがございます」
「そうか・・・あえて内容を聞くのは控えるが・・・この間は自由をやろう」
「では、早速準備に取り掛からせて頂きます!」
「ああ」

 外井が意気揚々と去った後を眺め、レイは一人ほくそ笑んだ。
「さて・・・これで僕も自由の身だ」


#006   ガテラー星人 (メール)    97/02/28 22:41:55
「さてそれでは僕も動き出すとしよう。はーーっはっはっはっ」
 などと笑いながら廊下を歩く伊集院。だがその背後に忍ぶ黒い影!
「あら〜〜?伊集院さんではありませんか〜〜〜」
「また貴様かーーーっ!」
「これは奇遇ですねぇ〜〜。ああそうそう、実は夕子さんが面白いことを始めてらっしゃるそうなんですよ〜。よろしかったらご一緒にいかがでしょう〜〜?」
「ざ、残念だが僕は公正中立の身でね。そ、それでは失礼するよ」
 すたこらと逃げだそうとする伊集院の腕に、いきなりゆかりがタコのようにまとわりつく。
「そんなことおっしゃいませんで…」
「は、放せっ!放しおろう!!」
 どちらもいたって真剣なのだが周囲から見れば遊んでるようにしか見えない。私設部の連中が通ったらさぞかし事だっただろう。
 しかし幸か不幸か(たぶん不幸だろうが…)現れたのは校内一うるさいと評判の2人であった。
「あっいたいた、ゆっかりー!」
「あれ、古式さん何やってんだ?」
「はい、伊集院さんも参加してくださるそうですよ〜」
「ちょっと待てぇぇぇ!」
「えーっマジマジ?これで審査も超らくしょーだね!」
「うげっ冗談じゃねぇよ、んな奴入れるかっつーの」
「こっちからお断りだ馬鹿者ーーー!」


#007   しゅう (shu@scan-net.or.jp)    97/03/09 01:43:23
「えぇーっ!?仲間になってくれないのー?!」
「おい、いいかげんにしろよ。いくら何でも、んなのと一緒にやれるわけないだろ。」
「もー、何言ってんの。あたし達まだ3人じゃん。」
好雄と夕子が廊下の真ん中で言い合いを始めた。
そんな様子を横でニコニコしながら眺めていたゆかりが漏らした言葉。
「ふふっ、なにか楽しそうですね〜。」
その言葉が言い合っている二人の耳に届く事は無かった。

ふと周囲の様子が変だと気付いた夕子が顔を上げた。
周りを見渡すと、そこには笑顔のゆかりの姿だけがある。
(あれ?)
「だいたいお前はなぁ・・・」
「ちょっと、好雄君は黙ってよ。ゆかり、伊集院君はドコ?」
「え?あれ〜、変ですね〜。先程までそちらにいらしたと思ったのですが。」
好雄との言い合いを中断して、ゆかりに尋ねてみたものの伊集院がいつ居なくなったのかも分からなかった。
「良かったじゃねえか。俺はあいつと一緒にやるのはいやだぜ。」
「まだいってんの?伊集院君と一緒なら審査の時も超ラクショーって、感じなのに。」
まだブツブツ文句を言っている好雄を無視して、夕子はキッパリと言った。
「伊集院君。待ってるのよ、きっと見つけるから!」


#008   たっちゃん (tatebar@ja2.so-net.or.jp)    97/03/09 11:54:40
 さて、その頃……。
「るんるん、ふんふ〜ん」
 校内に旋風を巻き起こした伊集院の放送など知らぬ気に、家庭科室からは鼻歌が流れていた。
「よいっしょっと」
 フライパンから焼きそばを皿に移して、つるっと一本を飲み込む。
「あちちっ。でも、いい味ね。よしっ!」
 にこっと笑うその顔は、言うまでもない。運動部のアイドルこと虹野沙希である。
 彼女の所属するE組は喫茶店をだす事になり、厨房を任された彼女はこうして練習に励んでいるのであった。
 彼女をウェイトレスにした方が売り上げは望めるのであるが、そうなると料理を作る者がいなくなる。
 のちに“E組のジレンマ”と呼ばれるようになるこの命題に決着は未だについていない。
 しかし、思わぬ事態が、この幸せそうな少女を奈落に突き落とすのは30秒後だった。

 きっかり30秒後、家庭科室のドアが開いた。何ごとかと顔を上げた沙希は、そこにクラスメイトの気の毒そうな表情を見る。
「あら、どうしたの?」
「沙希、喫茶店やるって話なんだけど……」
「うん、料理の方はもうばっちり、まかせといて!」
 普段はしないガッツポーズをしてみせる沙希。その沙希に、級友は一言だけ言った。
「あの話ね、ボツになっちゃった」
「……え?」
 ガッツポーズのまま凍りつく沙希。
 級友の話は続く。
「あのね、さっきの伊集院さんの放送を聞いてね、ほら、喫茶店じゃ文化の評価はされないだろうってことになってね、その、今から何か研究しようってことにね……」
 彼女の言葉がだんだん小さくなっていく中、塩の柱と化した沙希の耳に、むなしく電子レンジのベルが響いた。

 チーン



#009   まさ (k-sima@interlink.or.jp)    97/03/10 02:01:14
「こらそこっ!そこはおさえる所だろう」
「・・・は〜い、すいまっせ〜ん」
「おいおい、みんな昨日より合ってないぞ?本番までもう時間がないんだからな、みんな」
「・・・って言っても・・・」
「・・・なぁ?」
「とりあえず・・・休憩だ、休憩!」

 一方ここは吹奏楽部の練習風景。本番、文化祭まですぐだというのに、冷めた雰囲気が部員を包んでいた。先日までの、昂揚感を伴った連帯感は薄れ、完成間近だった曲目は、突然練習開始直後の段階まで戻っていた。

「部長」
「ああ、藤崎さんか・・・どうしようかなぁ、これ」

 タクトを所在なげにぷらぷらさせ、うつむく部長。

「まったく伊集院の奴・・・やってくれるね」
「・・・みんな、バラバラになっちゃいましたね」
「吹奏楽部が個人プレーに走ってどうするっての・・・」
「団体には賞品がもらえないから、ですか?」
「ま、そうだろうね。あの放送聞いた限りじゃ、そう取っても仕方ない。昨日まであれだけ出来てたんだ、その中で目立てば・・・って考えるのも分かる。まあ、正直言って『部長は指揮者で目立ってるし』とか言われるのは、疲れるよ。本番まで・・・クラブを保たせる自信もないね」
「そんな・・・」
「あ〜あ、最後だったから・・・気合入ってたんだけどなぁ。昨日まで、これで行けると思ってたんだけどなぁ・・・ま、悩んでも仕方ないけど」
「部長!私、伊集院くんに聞いて来ます!」

 言うなり、詩織は部室を飛び出した。


#0010   木村小夜 (tomomi@pic-internet.or.jp)    97/03/17 11:38:46
 タッタッタッ・・・赤い髪の少女が自分の方へ駆け寄ってくるのを、伊集院はぼんやりと眺めていた。否、眺めていた、という表現には語弊があるだろうか。彼−−”彼女”と言うべきか−−は、自分の”計画”だけで頭がいっぱいなのだから。その瞳は、何も見てはいなかったのだ。
「・・・院君。伊集院君?」
「・・・あっ、ああ、何だね、藤崎君」
 少女の声が、夢想に耽る伊集院を呼び戻す。彼は今度こそその瞳の中央に赤い髪の少女を捉えていた。その瞳にわずかな嫌悪の色が浮かんでいたことに、彼自身は気が付いていただろうか?
「伊集院君、あの放送のことなんだけど・・・」
「ん?何かわからない点があるとでも?」
「どうして・・・どうしてあんな事を言ったの?」
 少女は彼を見据えて言った。2人の視線が交錯する。少女はなおも言い募った。
「みんな・・・みんな賞を取ることだけに夢中になって・・・。チームワークなんか忘れちゃって・・・。おかしいよ、そんなの・・・。ねえ、賞を争うことが、文化祭の目的じゃないでしょう、伊集院君?」
「・・・」
 伊集院は答えられなかった。もし、目の前に立っているのが、あの赤い髪の少女でなかったら、彼はもっと他の言い方でなだめたのかもしれない。しかし、目の前にこの少女がいたばかりに、彼−−”彼女”−−は自制心を失ってしまった。
「・・・君には関係のないことだ・・・」
やっとのことでそれだけを言い捨てると、”彼女”は赤い髪の少女に背を向けて、歩み去っていった。後には、力無くうなだれる少女だけが残った。
 ”彼女”はつぶやく。
「・・・みんな・・・私のことなんか何も知らないくせに・・・。邪魔なんて、させるもんですか・・・」
 このつぶやきの本当の意味を知る生徒は、”彼女”以外にはいなかった。
 まだ、いなかったのだ・・・。



#0011   ガテラー星人 (メール)    97/04/01 13:11:06
「詩織ちゃん、大丈夫?」
 自分の無力に落ち込む詩織を、愛が心配そうにのぞき込んだ。「目立つ」という単語と無縁のこの少女は今回の騒ぎともやっぱり無縁だったが、親友がこんな状態ではほってもおけない。
「ねぇ、詩織ちゃん…」
「くく、くくくく…」
「し、詩織ちゃん?」
「そう、そうなの伊集院君…。この学園のアイドル藤崎詩織をコケにしようっていうのね、ふふふ…」
「詩織ちゃんっ!詩織ちゃんしっかりして!」
「はっ!わ、私今いったい何を?」
 優等生である藤崎詩織は普段からストレスがたまっているのか、時折こういう発作が起こる。それを元に戻せるのは親友の美樹原愛だけなのだ。
「と、とにかくこのままで許されるはずはないわ。メグ、私と協力して正しい文化祭の姿を取り戻しましょう、ね?」
「う、うん…。詩織ちゃんがそう言うなら…」
「そう、それでいいのよメグ…ふふふ…ひゅーほほほほ」
「詩織ちゃぁぁぁん!」
 一抹の不安を覚えながら、愛は詩織に引きずられるようにいずこかへと連れ去られていった。


#0012   いっく (IKUMI@hiroba.net)    97/04/06 16:57:29
「ふふふ・・・」
そんな詩織の様子を影から静かに見守る人がいた。その名は紐緒結奈。
「ふふふ・・・なかなかいい壊れっぷりじゃない。今ならサンプルに・・・」
などといつものようにほくそ笑む少女の名は紐緒結奈。


#0013   如月ゆいな (yuiyui@noah.co.jp)    97/04/29 18:45:52
そして詩織と愛は仲間を集めるべく部室を巡っていた。
「ねぇ・・・詩織ちゃん、あそこにいるの清川さんじゃない?」
詩織たちから少し離れたとこれで望はひとりで膝を抱えて座っていた。
「清川さん・・・どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないよ」
望は彩子のことを話した・・・・
「・・・なんかおかしいんだよな」
「そうね、誰かに操られてるって感じね。」
「ま、まさか伊集院さんが!?」
愛は今までの伊集院の行動をおもいだしていた・・・。
「ど、どうしたの・・・?メグ・・・」
「ううん、なんでも・・・それよりも仲間をあつめようよ」
「そ、そうね。清川さんも協力してくれるかしら?」
「あぁ、わかった」
こうして詩織と愛と望は再び仲間を求め部室をまわっていった。




#0014   まさ (k-sima@interlink.or.jp)    97/05/04 00:47:20
「う〜ん、伊集院君は数に入れないにしても、あと5人。どうしよ?」
「俺に聞くな、俺に」
「あら〜、大変そうですねぇ〜」
「ゆかりもひとごとみたいに言わないの!」

 廊下をうろつく三人。結局伊集院は取り逃し、「新クラブ結成で賞品ゲット超ラッキー作戦(仮)」はすでに暗礁に乗り上げていた。

「とりあえず人数だな・・・」
「それはさっきあたしが言った」
「うっせーな、考えてんだ・・・お前もちったぁ考え」
「あ、あれあれ!」

 さえぎって指差した夕子の先には、奇怪なオーラをまとった女生徒一人とその後ろに続く二人の姿があった。

(藤崎さんに清川さん、それと・・・)
(美樹原さんだよ、少なくともあの娘は無所属だぜ)
(・・・一気に三人、ってカンジ?)
(・・・だな。狙ってみるか)
(なんて声かける? なんか超ヤバそうな雰囲気・・・)
(そうだな・・・え〜っと、まず)
「あら〜、藤崎さんではありませんか」
(古式さんー!)
(ゆかりー!!)

 詩織は、その声に反応して、すうっと振り向いた。

「あら、古式さんじゃない。ちょうど良かったわ・・・」


#0015   ガテラー星人 (メール)    97/05/29 01:17:27
「伊集院君の財力に対抗するにはあなたの力が必要なのよ。ともに正義の力を示しましょう!」
「まあ、素晴らしいですねぇ〜」
「私に逆らうものはすなわち悪!そのようなことこの藤崎詩織が許しません!」
「詩織ちゃん…もうキャラクターが違っちゃってる…」
 ぽかんと口を開けるしかない好雄と夕子だが、背に腹は代えられないのでどさくさに紛れさせてもらうことにした。
「と、とにかくなんでもいいから6人になったわけね」
「…もしかしてあたしも入ってるのか?」
「うん」
「それじゃとりあえずどっかで落ち着いて話そうぜ」
 およそ統一のない一同はぞろぞろと図書室へ向かった。

 そしてその先では…。
「ねぇ未緒ちゃん、もうちょっと目立つことやろうよぉ」
「くだらない企画に惑わされず真面目に文学研究を行いましょう」
「未緒ちゃ〜〜〜ん…」


#0016   K−kun    97/08/28 14:11:29
図書室についた一行。
「あっ、愛ちゃん!?」
「み、見晴ちゃん」
「あら、館林さん、如月さん。丁度よかったわ。いっしょに研究をしない?。・・・伊集院君を見返す為に」
「失礼ですけど、お断りさせてもらいます。さ、館林さん文学研究をすすめましょう。早くしないと文化祭に間に合いません」
「ちょ、ちょっとみおちゃぁん」


#0017   K−kun    97/08/29 10:37:51
近くの本棚へいく未緒。追いかける見晴。
「ねえ、みおちゃん。藤崎さんたちと一緒に文化祭の準備をしようよ。他の皆だって伊集院君の放送を聞いてもっと目立つことやろうとしてバラバラだし、こんなんじゃ最後の文化祭に残せるものも残せないよ。ねえ、みおちゃん」
「そうだからです館林さん。高校生活さいごの文化祭だから、自分の好きなことをやりたいんですっ!。だから・・だから・・」
泣きだす未緒。文芸部員達がバラバラになっていく様子をみていて傷ついていたんだろう。自分だけでも真面目にと思いが崩されてしまったのだ。


#0018   まさ (k-sima@interlink.or.jp)    97/08/30 23:52:15
顔を伏せて体を震わせる未緒。
見晴はその肩にそっと触れた。

「未緒ちゃん……ごめんなさい……私」
「……な〜んて。嘘ですよ」
「え……?」

ぱっと顔を上げた未緒。
その顔は、彼女には珍しい……いたずらに成功した子供のよう。

「ぇえ!? 今の嘘泣きだったの? 全然分からなかった……」
「やりたい事がある、というのは本当ですけどね。
 だますようなことをしてごめんなさい」
「う、ううん……」
「ふふふ、私の演技力も捨てたものではないですね。
 これならもしかして……」

未緒はすっと背筋を伸ばすと眼鏡の位置を直し、つぶやいた。

「館林さん、私は文学研究でもトップを取れる事を証明してみせますよ」


#0019   K−kun    97/08/31 11:38:46
その頃、軽音部では部長の主人公がぼやいてた。
「ああ、ボーカルがいないー」
「部長、ぼやいてもしかたありませんよ」
 後輩が言う。このクラブは不運なことに女子がいない。歌える男子もいない。部員はギリギリ5人だけだ。
「どうせうちは、SFC版だけにしかでない地味地味くらぶだよーだ」
「ぶちょーう」
 いじけてる公。
「はーっはっはっはっはっは諸君、お困りのようだね」
「おまえ、は伊集院!?」
「そんな君達庶民に僕が救いの手をさしのべてあげようじゃないか」
「けっ。よけいなお世話だ」
「まあ、そういわず、僕の従姉妹を紹介してあげよう。いますぐ呼んでくるおーい、メイ」
 ぴゅっ、と隠れる伊集院。そして影がスグあらわれる。
「あの、こんにちはレイ君の従姉妹の四重神 メイ(よんじゅうしん めい)です。宜しくお願いしまーす」
 そこには伊集院レイそっくりの長身の美少女がたっていた。  


#0020   ガテラー星人 (メール)    97/08/31 23:51:26
「あ、こ、こちらこそよろしく」
 いきなりの美少女の登場にとまどう公はわたわたとあたりを見回す。
「あ、あれ、伊集院は?」
「あっ、彼なら用があるとのことでみなさんによろしくって言ってました」
「そ、そう…」
 背が高い。公と同じくらいはあるだろうか。流れるような金髪といい、ステージに立てばさぞかし映えるだろうと思われる。思わず見とれていた後輩たちは慌てて近くに駆け寄った。
「メ、メイさんですか!いいお名前ですねっ!」
「は、はぁ…」
 生返事をしながらも少女の視線はちらちらと公を見ている。しかし茫然自失から回復した彼の目はそれに気づきもせずいつしか燃えていた。
「よし、これならいける!観客のつかみもバッチリだぜ!共に頑張ろう、メイさん!」
「は、はいっ」
「ジャスト・ア・モ〜〜〜メ〜〜〜ント」
 そんな折いきなり響く怪しい英語!
「見た目で勝負しようなんてバッドな考えよ。歌にはソウルフルな魂を込めないと!」
「片桐さん…。それって次のドラマシリーズじゃあ…」
「細かいことは気にしちゃノンノン」
 と、乱入者彩子はふと見慣れない少女に気づいた。いや、見慣れないと言うよりどこかで見たような…?
「ハァイ! そちらの美女はwho?」
「わ、私四重神メイです」
「ふぅ〜〜〜ん」
 じろじろと自分を見る彩子に、メイ、もといレイは嫌な相手が来たと内心汗を流すのだった。


#0021   K−kun    97/09/01 13:09:48
「あなた、伊集院君の親戚?やけに似てるけど」
「えっ、はい、従姉妹なんです」
「そ、私、片桐彩子。セクシーアートの使い手よ。ヨロシクね」
「はっ、はあ。ヨロシク」
「さて、という訳でメイ、私とヴォーカルの座を賭けて勝負してもらうわよ」
「えっ!?、ちょっ、そんな、突然」
(何が、という訳なんだろう)
と、メイ(レイ)は思いながらもとまどっていた。
「もちろん勝負の内容はsong!歌よ。私と彼女が歌を歌って公君達がどっちがうまいか多数決できめるの。OK?いーい?」
「えっ!?、ええっ、わかったわ(公君の力なるのは私よ。私だって昔から音楽の英才教育をうけているんだから)」
「good!勝負はtomorrow!明日の夕方の5時よっ!。not lose!絶対に負けないわよう」
「こっちこそっ!」 
 二人の間に火花が散る。その女の闘いのはじまりを公達はおびえながらみつめていたのであった。


#0022   K−kun    97/09/02 14:48:32
一方、詩織たちは・・。
「ふぅ、如月さんと館林さんは、二人でやるみたいだしこれ以上の人数増加はなしね」
「そうだな。でも、あたし達はどうするんだ」
出し物を決めるのに迷っていた。


#0023   各務ありす (e167@ulis.ac.jp)    97/09/04 13:39:51
 「僕があなたの望むものを手にいれてみせます!」
 「いや、貴女のためにこの俺がやってみせましょう。」
 「私の力を持ってすれば評価を集めるなどたやすいことですよ。」
 そのころ、その美貌とスタイルとで名を馳せている鏡魅羅は・・・うんざりしていた。伊集院の校内放送があってからというもの、FCと名乗る連中がまとわりついて離れないのである。
 「別に欲しいものなんて無いわ。」 
 皆が思っているように宝石や洋服などが欲しいわけではないから、それは本心だったのだが、周りはこのチャンスを生かして何とか魅羅に取り入ろうと必死である。それが魅羅には解るだけによけい機嫌が悪くなる。
 でもおかしいわね、と考える。あの伊集院君が自分の得にならないことをしようとするかしら?何か裏がありそうだ。魅羅の脳裏にある素晴らしい考えが浮かんだ。
 「魅羅さん、何か欲しい物ありますか?」
 伊集院君、あなたの考え、暴いてみせるわ。
 「ええ、あるわ。頑張ってね。」
 だから、魅羅は誰もが見惚れるような笑顔を浮かべて、そう答えた。


#0024   K-kun    97/09/05 17:22:20
その頃の科学部室では・・・。
「ふっふっふ、皆伊集院くんの発言で浮かれているようね。今の内にこの学校をのっとろうかしら」
「コラー、紐緒!何だその危険な薬品はー」
「アラ、低能な部長さん。ウルサイわねコレでもくらいなさい」
超特性スタンガンをとりだして部長にくらわせる結奈。
「ぎゃーーーーーーー!?!!?」
「くだらないわ。邪魔物は消すのみ」
その台詞の後、他の部員達が逃げて行く。
「ふっふっふ、天才とは常に孤独なものよ」


#0025   K−kun    97/09/14 11:16:55
と、まあ、そんなこんなで・・・。
キーンコーンカーンコーン・・・・
「あら、下校時間だわ。かえらなくっちゃ」
「あっ、奈津江ちゃん一緒に帰らない」
恵に話しかけられ振り返る奈津江。
「そうね、勝馬達も帰っちゃったし一緒に・・・。んっ!ふぅぅんっ・・あっ・・・」
奈津江にクロロホルムを嗅がせる。
「ゴメンネ、なつえちゃん。私が文化祭で一番になる為に協力してね。フフフフフフ・・・」
恵はちょっぴし(?)暴走していた。



#0026   K-kun    97/09/21 14:47:02
ちょっと前、図書室では。
「お願いっ、如月さんっ、館林さんっ!!。私達を助けてっ!!」
「ど、どうしたんですか、藤崎さん。べ、別に土下座をさげなくても・・・」
未緒は困った顔をしている。
「私達、出し物が決まらないのようぅっ(スリスリスリスリ)」
詩織は顔に努力マンのような涙を流し、未緒の脚にスリスリしてる。完全に壊れている。
「俺からも頼む、な」
「そう・・ですね、いいですよね、館林さん。」
「うん、断る理由もないし」
それを聞いて詩織の顔がガラッと変わる。
「よっしゃー、みとれよ伊集院っ!!。テメーの鼻の穴あかしてやるよ。ひゅーほほほほほほほじほほほ」
「し、詩織ちゃん・・・、壊れてる」
「ま ぁ ー、 藤 崎 さ ん ほ ん と う に 楽 し そ う で す ね ぇ」
ゆかり以外のメンバーは顔に縦線はいりまくりだった。『ガビーン』てなもんだ。


#0027   K-kun    97/09/23 11:45:15
・・・・・・・・・。
「う、うまい」
「すごいよメイさん」
「ありがとうございます」
彩子が出ていったあと、ちょっと歌を練習していた。
「その歌は得意なの?」
公達はメイ(レイ)の歌のうまさに感動してた。
「ちょ、ちょっとラジオできいただけですけど・・」
あまり、TVは見せてもらえないのでレイは夜こっそりラジオを聴いて流行などをチェックしている。
「それだけで・・、すごい・・」
曲は「二人の時」のスローバージョンだ。そういうタイプのうたががレイは好きだ。クラシックはよく聴くが少し飽きてきた。
「よしっ、文化祭はこれでいこう」


#0028   K−kun    97/10/11 11:34:26
キーンコーンカーンコーン・・・。
チャイムがなる。下校時間だ。
「あっ、もう時間ですね。後は配役は明日ということで」
「そうね、そうしましょう。フフフフフフ・・」
「し、詩織ちゃん?」
「『山吹姫』か。昔よく読んでもらったなぁ」
(へへへ・・、このメンバーなら俺が王子様に・・)
「あたしは小人でもやろっかな。」
「で は、私 は 魔 女 さ ん の 役 で も や り ま し ょ う か ね ぇ」
(あーぁ、公君もいっしょだったらなぁ・・)
図書館に居た一同はそれぞれの思惑(?)を胸に秘め文化祭の期待に
胸馳せていた。

校門では・・。
「虹野センパーイッ」
「あれ、みのりちゃん。」
「私と、一緒に帰りませんかぁ」
「う、うん。いいわよ」
「やったぁ。あれ・・、虹野先輩どうしたんですか?。浮かない顔して」
「えっ、そうかなぁ。」
「そうですよぉ。なにかあったんですか?」
「ん、文化祭でちょっとね・・・」


#0029  流派 東方負敗    11/07 13:28:47
「ちょっとね、、、」
「ちょっとって、どうしたんですか?」
「うん。公君がメイちゃんと一緒にいるのを見たら、何か変な気持ちになっちゃって」
「あの先輩のことですか?別に虹野先輩が変な気持ちになることはないと思いますけど?」
「うん、だけどね、、、」
と、話そうとしたとき、みのりが間髪いれずに、
「まさか虹野先輩、あの先輩のこと好きなんじゃあ、、、」
「や、やだ、みのりちゃん。そんなのじゃあ、、、」
「そーですよねえ。きらめき高校1のアイドルの虹野先輩とあの先輩じゃあつりあいませんものねえ。あーよかった」
「みのりちゃん、そこまでいわなくても」
「そうですか?そんなことより一緒にかえりましょう」





#0030  流派 東方不敗    11/12 09:22:23
 みんながかえったあと、公はメイにこういった。
「君のほうが良いと思うよ」
「え?」
と、メイは不思議そうに尋ね返した。
「そ、それって、、、、」
「片桐さんには悪いけど、僕の中じゃあ君のほうがうまいと思ったし、
 君が歌ったほうが良いと思ってる」
「あ、ありがとう、、、、」
メイにはそう答えるのが精一杯だった。
「じゃあ、僕も帰るから」
「あ、、、」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないの。それじゃあさよなら」
「うん。さよなら」
そういって公は帰っていった。そして、教室のなかは、メイ一人になった、、、。

#0031  K-kun    11/16 16:13:52
(さてと、そろそろSPの薬がきれるわね。女の子の格好してることがバレたらいけないし。
外井を呼んで帰りましょう。)
レイ(メイ)は、男の制服をおいてるA組の教室に行った。
(文化祭までには、言わなきゃ、、、好き・・ってこと。たとえ伊集院レイとしてではなくて
も)

その頃、恵宅では・・・・
「ふふふ、奈津江ちゃん。お目覚めの時間ね」


#0032  K-kun    12/10 14:59:24
「め、恵、これは一体どういうことなの!?」
奈津江は縄でしばられてイモムシのような格好になっている。そして、その前には黒いロー
ブを着て恵がたっている。
「奈津江ちゃん、伊集院くんの放送・・知ってるよね。『どんな願いもかなえてくれる』って」
「ま、まあそんな感じだったわね」
「それでね、私がその栄冠を手に入れる為に☆ちょぴぃっと☆だけ協力して欲しいことがあるんだけど・・」
「な、何!?・・・・(『☆ちょぴぃっと☆』って、ところが怪しいわねぇ・・)」
「奈津江ちゃんにね、・・・・の・・・・・をなって。ね、お願い★」
「な、な、な、なななななななななな・・・」
「なんですってえぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっ!?」





#0033  ガテラー星人 (メール)   12/11 19:08:25
「やだ奈津江ちゃんそんな喜ばなくても」
「誰が喜んどりますか!」
 きら校でも1、2を争う運動神経を持つ奈津江だが、いも虫にされては手も足も出ない。その上先ほどから力が入らないようだ。どうもこの部屋に立ちこめる奇妙な香のせいらしい。
「ま、まさか本気じゃないわよね?私をよりによって…悪魔召喚の生け贄に使うだなんて!」
「やだ奈津江ちゃん、ちょびぃっと身体を悪魔さんに貸してもらえればそれでいいのよ」
「正気か!」
 納得いくわけのない奈津江に恵の目がうるうると潤む。
「奈津江ちゃん…。私は奈津江ちゃんみたいな運動神経もなければ、詩織ちゃんみたいに頭も良くない。超絶に可愛いことを除けばなんの取り柄もない女の子よ」
「待てこら」
「そんな私が優勝するためには悪魔でも呼び出すしかないじゃないっ!奈津江ちゃんなら分かってくれるよね。だって私たちは親友だもの!ありがとう奈津江ちゃんっ!」
「‥‥‥‥‥」
 あんたの方がよっぽど悪魔や、となぜか関西弁で突っ込みつつあきらめの境地に至る奈津江である。はらはらと涙を流しながら一応念のため聞いてみる。
「それで…一体なんていう悪魔を呼び出すわけ?」
 名のある美人の悪魔だったりすればそれもいいかもしれない。しかし恵の答えはとことん残酷だった。本人が自覚してないだけなおさら。
「コアラ大魔王」
「いやぁぁぁぁぁ!!」


#0034  flp (s93518@kobe-kosen.ac.jp)   12/15 16:13:22
コアラ大魔王。
それは西暦1304年、西ヨーロッパのフンバルト・ダ・ラマンチェ王国を
一瞬にして滅ぼしたといわれている悪魔である。
その出身はオーストラリアと言われているが、定かではない。
見かけは皆様おなじみの殺人コアラにそっくりである。ただ、
そのサイズが非常に大きいと言うだけで。
一説によると、自らの身の危険を感じた殺人コアラが多数合体した
存在であるとも言われているが、定かではない。

           −−−太公望書房(「カヲル君、僕にはなぜ毛が生えないのかわからないよ」 谷村シンジ より)−−−

PS. すみません、こんなんでもいいですか?(^^;

#0035  流派 東方不敗    12/17 13:14:29
「まあ、これも運命だと思ってあきらめてね。ウフフ」
「な、なにが運命よ!」
「いいのいいの。ほんのすこしだけだから。」
「よくなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!」
奈津江の叫びも空しく恵の暴走はとまらない。
「もう、怖いのは『は・じ・め・だ・け』ウフフ」
「なにが『は・じ・め・だ・け』よ!召喚される私の身にもなってよ!」
「もう、奈津江ちゃんたら。そんなに遠慮しなくてもいいのに」
「拒絶しとんのじゃ!!!」
しかし、恵の暴走は止まらず、とうとう呪文を唱えはじめた。
『さあ、古の時のかなたに封じられし者よ。わが呼びかけに応じ、わが呼びかけに
 こたえよ。』
「やめてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
『いまここに、そなたの肉体となるべきにえを用意した。いでよ、
 「コアラ大魔王」』
「いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」



#0036  K-Kun    12/20 12:45:45
ボォン!
と、音が響いた。いつの間にか奈津江は素っ裸で宙に浮いている。
『我を永き眠りから解放されたのはお主か?』
奈津江の頭にコアラの耳が生えている。声も二重も三重もかさねたような声だ。
「や、や、や、やったあぁーーーー!!。苦節十数年。ついに悪魔しょうかんに!!」
『我が問いに答えよ』
「は、は、は、はい。私、十一夜恵です」
『そうか。恵とやら、我を呼び出した目的は何だ?』
「え、えとっ、今度ウチの学校の文化祭で・・・」
恵はかくかくしかじかとわけを話した。
『成る程。して、我はお主にどのような助けをすればよいのだ?』
「それはですね、・・・・」

その頃、早乙女家では。
「たっだいまー」
「あら、好雄。お帰り」
「かあちゃんめしまだ?」
「もう少しよ。優美といっしょにテレビでもみてなさい」
「ヘーイ」

#0037  ガテラー星人 (メール)   04/24 19:10:25
 そのとき早乙女家の電話が鳴った。
「おにーちゃーん、でんわー」
「おうよ」
 制服のまま電話機に直行する。主人さんからだよ、という優美の声になんでぇと軽く舌打ち。
『もしもし、主人だけど』
「バッチタイミングぅ、ちょうど帰ってきたところでよかったね」
『なに朝日奈さんのマネしてんだよ気持ち悪い…。ところで四重神メイさんのこと聞きたいんだけど』
「女の子の情報なら俺にまかせてくれよ。四重神四重神と…。よんじゅうしん、だよな?」
『そう。伊集院の従姉妹』
「いねえよ」
『あれ?』
 公の声が途切れる。好雄メモに抜かりはないはずだが、四重神なんて珍しい名前はどこにもない。
『うちの学校じゃなかったのかなあ?』
「おいおい、さすがの俺様も日本全国の女子高生を網羅するわけにはいかねえぜ」
『でもきら校の制服着てたしなあ…。だいたい文化祭に他校の生徒は出せないし…』
「うーむよくわからんが聞き捨てならん話だ。くわしく話せ」
 自分の知らない女の子を公が知っていたとあっては情報屋の沽券にかかわる。軽音楽部での出来事を聞き出すと、好雄メモに新たにページを追加した。大半が空白のままだが。
「金髪の美少女ね!チェックだチェックぅ〜。よし!明日は俺も部に邪魔させてもらうぜえ」
『いいっ来るなっ。メイさんをお前の毒牙にはかけられん!』
「なんだなんだなんだ友達がいのないヤツだなぁ〜。なーにちょっとお知り合いになるだけだから心配すんな。じゃ、またな」
 一方的に言って電話を切ると、ふんふんと上機嫌で自分の部屋に戻る好雄。後ろで白い目を向ける妹は、はぁとため息をつくのだった。

 その頃同じ夜空の下、遠く離れた秋穂家では。
「虹野先輩がなんだか元気なかった…」
 みのりが愛する沙希のために悩んでいるところだった。
「文化祭が原因なんだよね。そう、先輩のクラスが喫茶店やめちゃったから落ち込んでたのよ!ここはあたしが一肌脱がなくっちゃ!」
 と言って力んではみたものの、具体的にアイデアがあるわけでもない。
「虹野先輩にふさわしい出し物って何かなぁ…」


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管理者: ガテラー星人