「くっそぉキューティメグめ!」
度重なる敗北に、地団駄踏んで悔しがるPET総帥。既に怪人の数も激減し、このままではPETの世界征服しちゃうぞ大作戦もお先真っ暗真っ黒けである。
「ああっキューティメグを倒す方法はないものか…」
「あのぅ…。正体である美樹原愛を直接襲うとかしたら良いのでは…」
「馬鹿者そんな卑怯なことができるかーーーー!」
わりと真面目なやつだ。
「そうだ、倒さなくても奴を悪の心に染めてしまえば良いではないか。クックク我ながらナイスアイデアよ。ゆけ怪光線魔人!」
「はっ!」
指名された魔人はピカーと目を光らせる。美樹原愛、最大のピンチ到来か!?
魔法少女プリティユミー 放課後の魔法編
「詩織ちゃん、一緒に帰ろ」
愛はいつものようにA組に行くのだが、今日に限って詩織はすまなそうに手を合わせた。
「ごめんねメグ、今日は部活に行かなくちゃいけないの」
「え、でも詩織ちゃんもう引退したんじゃ…」
「もうすぐ試合だから練習見てくれって頼まれちゃって…。ごめんね」
「詩織先輩、早くーーぅ」
廊下の向こうでポニーテールの女の子が手を振っているのが見える。詩織はもう一度謝るとぱたぱたと体育館へと向かう。残された愛は、一人とぼとぼと校舎の外に出た。
「仕方ないよね…。詩織ちゃんはスポーツ万能で、みんなに好かれてて、いつもおどおどしてる私とは大違いで…。でも平気、ムクがいるから寂しくないよ。寂しく…ないよ…」
「クッククク、お悩みのようだねお嬢さん」
「誰っ!?」
はっと顔を上げると全身ローブに目だけ光っている怪しい人物が立っていた。思わず愛は身構える。
「あの、PETの怪人さんですかっ」
「そう構えることはない。君の心の中にある悲しみをこの私が解放してやろうというのだ」
「あの…。私、いいです…」
「そうかいいんだな!それでは目から怪光線!!」
「きゃぁーーーっ!」
訪問販売なみに強引な解釈をした怪光線魔人の目から赤い光が放射される!悲鳴に振り返る生徒たちの前で、愛の体はゆっくりと変貌していった。その栗色の髪がゴージャスな金髪へと、そして大きめの学生服が黒のボンテージファッションへと変わってゆく。
「にょほほほほ〜〜っ!」
頭に羽根飾りをつけた愛は、妙な奇声を上げながら体育館へと跳ねていく。生徒たちが唖然として見送る中、怪光線魔人は薄く笑うと愛の後を追うのだった。
「次は3on3でやってみましょう」
「はぁーい」
1、2年生を相手にバスケットを指導する詩織。本当なら受験勉強に身を入れる時期なのだが、頼られると嫌といえない悲しい性である。
「詩織先輩、今日こそは先輩からゴールを奪ってみせますね!」
「楽しみにしてるわ優美ちゃん。それじゃチーム分けを…」
「そ〜んな必要ナ〜ッシ〜〜〜ング!」
突如体育館に響く謎の声!はっと一同が振り仰ぐと、いかにも危ない感じの少女が体育館の2階席から飛び降りてくるところだった。
グキッ
バタッ
いきなり着地に失敗してその場に倒れ、すぐにがばっと飛び起きる。
「にょほ、にょほほほほっ!ナイストゥーミーチューバスケ部のエッブリバディ!」
「ち、ちょっとあなた。土足で体育館に上がるなんて…」
「んっふっふっふっふ〜。相変わらず真面目こぶりっ子ね詩っ織ちゅわぁん!」
いきなり名前を呼ばれて皆の視線が詩織に集中する。知らない人だ、と首を振る詩織に構わず、謎の少女は羽根に似た魔法のバトンをばっと振りかざした。
「わたぁしの名前は魔法少女ピクシィィィィメグ!ユー達バスケ部をブレイクしにきたのよ!」
「ピクシィメグだかなんだか知らないけど…ピクシィメグ…メグ…」
言われてまじまじと相手の顔を見る。なにやら三井寿ライクなことを言っているが、切り揃えられた前髪といい、小さな胸といい、確かどこかで見たような…
「メグーーーーーー!?」
「あ〜ら、名前でバレバレちゃんだったわねぇ」
「美樹原先輩!?もしかして不良になっちゃったんですか!?」
「シャラーーップ!もはや問答ナッシング。来なさい愛愛モンスター、コーリーーングミスティーーークス!!」
呆然とする一同の前で、ピクシィメグのバトンから一条の光が放たれる。床を転がるバスケットボールが紫色の光に包まれ、にょきにょきと手足を生やしながら巨大化した。
「ダンクダーーンク!」
「にょほほほほっ!さあ愛愛モンスターバスケットボール女、くぉんなバスケ部なんて一気にクラーッシュちゃんよ!」
「ダァァァンク!」
「きゃぁぁぁぁ!!」
体育館の中を縦横無尽に跳ね回るバスケットボール女。そのスピードに部員たちはたまらず逃げ出し、ピクシィメグの高笑いが響き渡った。
「にょ〜っほっほっほっ!これでバスケ部もジ・エーーンド!」
「どうしよう、このままじゃ本当に部がつぶされちゃうよ!先輩、なにか手はないんですか?」
「困ったわね…。困った困ったどうしましょ。メグが不良になりました。困った困った困ったわ♪」
「踊らないでください詩織先輩!!」
錯乱して困ったちゃん音頭を踊る詩織と途方に暮れる優美。しかしそこに一匹のテリアが猛然と駆け込んでくる。
「待つのだワーーーン!」
「あ、ムクちゃん…」
「あ〜〜〜らムク、あなたご主人様にたてつく気?」
「愛ちゃんはPETの手によって悪い魔法少女に変えられているのだワン。早く戻さないといけないのだワン!」
「そ、そうだったの」
「というわけで詩織ちゃん、このバトンで魔法少女プリティシオリーに変身だワン」
「え゛」
自信満々でムクが取り出したのはのし紙のついたピンクの柄に大きなハートのエンブレムというおめでたいバトンで、見たとたん詩織は光速で後ろへ後ずさった。
「なんで逃げるのだワンーーー!?」
「ほーっほっほ、無駄無駄無駄よムクちゅわん。詩織はたとえ幼なじみに誘われようが、噂されると恥ずかしいって理由だけで断るベリーシャイネスガールなのよ!」
「なんかトゲのある言い方ね…」
「ねえねえ、それじゃ優美が代わりにやってあげようか?」
ムクが上を向くと、まだ残っていた優美が興味ルンルンな目でバトンを見ている。その純真すぎる瞳は不安を抱かせるに十分である。
「いや、ここはやはり親友の詩織ちゃんの方が…」
「私はいやよ!魔法少女だなんて恥ずかしくて世間様に顔向けできないわ!」
「優美魔法少女になるんだーーー!」
「わ、わかったワン。それじゃ優美ちゃんにお願いするのだワン」
「うんっ!」
しぶしぶ渡されたバトンを元気に受け取った優美は、そのまま教えられたとおりに呪文を唱える。
「プリティミューテーション、マジカル・リコーーール!!」
ぱっぱっ、ぱーやぱやぱやっぱっぱっやーん、ぱやぱやぱやっぱっやーーん
優美のリボンが花の形の髪留めに変わる。上半身がピンク色の日本調の和服、下半身がミニスカートという、かつてどこぞの星の女皇候補が使ってたお古の衣装。そして額に魔法の力を示す逆三角形のタトゥーが現れる。花びらが舞い、正義の魔法少女が誕生する!
「魔法の事件はユミーにおまかせ。魔法少女プリティユミー、お呼びでなくても参上です!」
叫ぶと同時に鏡を見に更衣室へと駆け込むユミー。しかし数秒後たたたっと戻ってくると、バトンを思いっきりムクに突っ返した。
「…やっぱこれいらない」
「な、なぜだワン!?」
「ヤダヤダ、こんなダサい衣装じゃヤダーー!もっとかっこいいのがいいーーー!!」
「めちゃくちゃわがままーー!!」(ガビーン!)
手足をじたばたさせてわめく優美に、ピクシィメグは肩をすくめて頭を振る。
「フーやれやれ、相変わらずまいっちんぐなお子ちゃまね。もういいわバスケットボール女。次は学校中を破壊しまわるのよ!」
「イエッサーー!」
「にょほほほほっ、グッバーイ詩織ちゅわん」
「ま、待って。私のメグを返してぇぇ!!」
詩織の叫びに耳も貸さず、ピクシィメグとバスケットボール女は飛び跳ねるように体育館を出て行く。このままバスケ部は、そしてきら校はつぶされてしまうのだろうか…?
後に残った詩織とムクは、同時にじろりと魔法少女へと視線を向けた。
「え、だ、だってぇ…。こんな変な格好みんなに見られたら優美恥ずかしくて表歩けないよぉ…」
「大丈夫だワン、優美とユミーは別人なのだワン!」
「うそ!サミーだって正体ばればれだったじゃない!」
「(なぜ知ってるーーー!?)」(ガビーン)
いやいやとあくまで出動を拒否するユミー。戦う前からピンチだ。
「ええい!君が自分でやりたいと言ったのだワン!!」
「う…。そ、それはそうだけどぉ…」
「優美ちゃん、バスケ部の運命はあなたにかかってるのよ!」
「うぅ…」
身から出たサザビーもといサビである。まして先輩命令とあれば仕方なし。ユミーはバトンを下げてとぼとぼと歩き出した。さようなら優美の名誉、さようなら普通の高校生活…。
「ふふふふ〜、落ち込むのは早いわよ」
「誰っ?」
ジャカジャーン!
突如体育館に響き渡る謎のギター!振り返ると白衣を着た一人の少女が、弦をかき鳴らしながら歩いてくる。
ジャンジャンジャンジャン
「ライラライライライ〜〜ラライラライラライ〜〜♪」
「あの…歌はいいですから…」
「歌って踊れるシンガーソング天才科学者、結奈フィッツジェラルド紐緒参上!この私のすんばらしい発明にまかせておけば問題なしよ…って何よその目は」
2人と1匹のジト目を受けつつも天才はちっちっと指を振ると、手のひらサイズのハート型の装置をびしっと取り出した。
「この"紐Tシステム"さえあればあなたの正体はばっちりガード」
「ほんとですか!?」
「天才はウソはつかないわよ」
結奈から受け取った紐Tシステムをバトンにセットすると、低い音を出して作動を始めた。これでユミーの正体はばれなくなった…らしい。
「よぉし、これで準備万全だね!」
「プリティユミー、出動だワン!」
「うん!!」
元気に駆け出していくユミー。詩織もあわてて後を追い、ムクも走りつつ結奈を振り返った。
「いやあ、それにしてもいつの間にかあんなものを発明していたとはさすがだワン」
「ウソよ」
「は?」
「魔法少女の謎…これ以上の研究材料はないわ。私のすんばらしい研究のためにはプリティユミーには全力で戦ってもらう必要があるのよ!ああ、燃えてきたわ!」
「‥‥‥‥‥」
ムクは心で哀しみの涙を流しつつ、別に何もしようとはしなかった。許せユミー、平和のためだ。
「うわーーっ!」
「なによこれぇ!!」
「校則違反よぉ!!」
学校中を暴れまわり、破壊の限りをつくすバスケットボール女。側ではピクシィメグが高笑いをしている。
「にょ〜ほっほっほっ。いいわバスケットボール女、このまま学校をぐっちゃんぐっちゃんにしちゃいなさいっ!」
「そこまでよ!!」
「ホワ〜〜ット?」
メグが振り返ると同時に光が降り注ぐ。その中から現れたのは…
「ボールを持てばウォーウォー。魔法少女プリティユミー、あなたのハートにダンクシュート!」
バトンを掲げ名乗りを上げる魔法少女。右足をちょこんと上げ、小指をほっぺたに当てるおまかせのポーズをとる。ユミー、萌え萌えだぁ!
「出たわねミクロバストガール!」
「ひ、人のことが言えますかぁっ!!」
「フフーン、飛んで火に入るサマー虫。ユーなんてこの一撃であの世行きだっちゃわいやーー!!」
「わぁっ!」
ピクシィメグはバトンを握ると鳥取弁で殴り掛かる!しかしユミーが逃げざまに放ったラリアットをもろに食らい、ぐぇっと絞められたような声を上げるとそのまま後ろに吹っ飛んだ。
「ガ、ガッデ〜〜ム!!」
「弱っちいね…」
「まあ元がメグだから…」
「きーっうるさいっ!バスケットボール女、やぁぁぁっちゃいなさいっ!!」
「ダンクーーー!」
「プリティキック!!」
げしっ! ユミーの蹴りで今度はバスケットボール女が吹っ飛ぶ。さすがメグが生み出しただけのことはある。
「オーノーアンビリーバボーーッ!!」
「さあ、美樹原先輩を元に戻しなさいっ!」
バトンを突きつけて迫るユミー。ピクシィメグは両手を上げながらもじりじりと後ずさる。
「ひ、卑怯よユミー!」
「なんでっ!」
「そ、そーよ、ボールはともだち、ベストフレーンドじゃない!それを蹴るだなんてユーはバスケットマンとして失格だわん!!」
思わずユミーはきょとんとすると、そのまま詩織の方を振り返る。
「そうなんですか?」
「まあ、確かにあまり誉めたことではないような気がしないでもないような気が…」
「にゃ〜はっは、一気に形勢逆転!これでもうあなたはバスケットボール女を攻撃できないのよ!」
「ひ…卑怯ものぉ!」
「メグは卑怯だもーん。人の迷惑関係ナッシング。やりたいことをやればいいのそれがメグの生きる道よ!」
無茶苦茶な理屈でバスケットボール女に攻撃を命じるメグ。バスケットマンの優美はひたすら逃げ回るしかない。ピンチだ!
「紐緒さん、なにか手はないのかワン!」
「データよデータ、データが取れるわ〜!」
「(聞いてないーーー!)」
「ふぇ〜んこんなのってないよぉ!」
「もうやめて…。元の優しいメグを返して!」
たまらずに詩織が飛び出す。しかし返ってきたのはメグの冷ややかな視線だった。
「なんにもわかってないわね。メグは愛で愛はメグ。愛の詩織に対するコンプレックスが魔法によって現れたのが私、ピクシィメグなのよ」
「な…、何言ってるの…?」
「あなたは愛をかばうことで優越感に浸ってたでしょ?愛は内気で可哀想だ、愛を助けてあげる自分はいい子なんだって、そう思ってたんでしょ」
「違…!メグ、違うわ!」
必死に否定して頭を振る。愛はそんな娘じゃない。そんなこと言うわけない。しかし駆け寄ろうとする詩織に、メグの最後の一声が飛んだ。
「そうやってまた助ける…。それが迷惑なのよ!!」
詩織の足が止まり、その場に崩れ落ちる。涙が数滴地面を濡らした。
「詩織先輩…」
思わず動きの止まるプリティユミーのスキをつき、バスケットボール女が特攻をかける!
「危ない、プリティユミー!!」
「え…わあぁっ!!」
「ダンクーーー!」
ムクの声に気づいたときには、すでにバスケットボールが目の前に迫っていた。やられる、そう思って目をつぶった瞬間。
ガシッ!
「フ…ファウル!」
何者かが愛愛モンスターの攻撃を受け止めはじき返す。ユミーがおそるおそる目を開けると、見慣れた姿が目に飛び込んできた。
「はっはっはっ、大丈夫かいプリティユミー」
「お兄…好雄さん!?」
「あらジョニー」
「はっはっはっ、好雄です!」
結奈ちゃんにびしっと親指を立てて答える好雄。あと一歩で勝ちを逃したメグは地団駄踏んで悔しがる。
「きーっ変なお邪魔虫がっ!」
「プリティユミー、ひとりで戦ってはいけない。みんなと一緒に頑張るんだ!」
「みんなと…?」
「それじゃグンナイ!」
「グ…good night」
言いたいこと言って去っていく好雄を見送りながら、ユミーはもう一度バトンを握りなおした。
「あきらめの悪い子ちゃんね!」
「ユミーあきらめないよ。がんばるもん!」
うなだれたままの詩織に目を向ける。
(メグ…。私、メグの友達でいたい…)
友だちを大好きな詩織先輩の想い…。
(愛ちゃん、もう一度散歩に連れてってほしいのだワン…)
ご主人を慕うムクちゃんの想い…。
バスケ部の、学校の、みんなの想い。そして本当は優しい美樹原先輩の想い。気持ち、繋がってる。がんばるから!
「みんなの気持ち、受け取ったよ!あとはユミーにまかせて!!」
「ホ…ホワァット!?」
想いのオーラをまとったユミーの姿が変貌していく。お古のコスチュームではない、真なる魔法少女のそれへと。
「これは!プリティユミーの魔法の数値がぐんぐん上がっていくわ!」
「これがプリティ空間だワン!」
虹色の空間が周囲を包み、ユミーのバトンに白い翼が現れる。魔法の力が集結し、大きなハートの形を取る。
「集まれ、想いの魔法!
プリティ・コケティッシュ・優美ボンバーーー!!」
「ゲームセーーット!」
ユミーの必殺の一撃が炸裂する。魔法の光を浴び、愛愛モンスターは元のバスケットボールになって地面に転がった。
「やったねユミー!」
「そんなフーリッシュ…」
「ちいいっ!」
喜びもつかの間、勝利の瞬間メグの隣に黒ローブの怪しい男が現れる。すぐさまユミーとムクが身構えた。
「PETかワン!」
「PETの求める標準世界を邪魔する愚か者め…。かくなる上はピクシィメグを100%心の底まで悪の標準的な魔法少女に変えてやる!」
「アラ、んなことできるなら最初からしなさいよ」
「そ、そんなのダメだよぉっ!」
「メグ、もうやめて!」
「シャラーップ!詩織の言うことなんて聞かないわ!」
(…やめて…)
バトンをかざしてパワーアップしようとするメグの動きが急に止まる。聞き覚えのあるか細い声…。
「愛!?ホワイ、何言ってるの。私たちの望み通り明るく元気でやりたいことやれるピクシィメグになれたんじゃない。私はあなたの望んだ姿なのよ!」
(そ、そんなこと望んでない!)
「You are liar, 嘘つき!」
(………ごめんなさい、ホントは思ってた……。でもこんなの嫌なの、詩織ちゃんやみんなを困らせたくない。こんなことしたかったんじゃないの……)
メグにだけ聞こえる小さなすすり泣きの声。うつむき気味に立ちつくす彼女を、ユミーたちは黙って見つめている。
「美樹原先輩…?」
「はぁ〜どっちらけ。もう帰るわ」
突然わざとらしく肩をすくめたかと思うと、ピクシィメグはバトンを投げ捨てた。
「お、おいピクシィメグ!?」
「それじゃバハハーーイ!」
最後にちらりと詩織を見て、ピクシィメグの姿は消えていった。金髪の代わりに栗色の髪に、魔法少女の衣装の代わりにきら校の学生服になる。
「メグ…」
ゆっくりと倒れようとする愛の体を詩織がそっと受け止める。愛がゆっくり目を開けた。
「詩織ちゃん…ごめんなさい…」
「謝ったらダメよ…」
「うん…!」
「な…な…」
わなわなと震える怪光線魔人。しかも目の前には、魔法少女と犬がじりじりと迫っている。
「さあ、観念してもらうんだから!」
「ふ、ふははははっ!よくぞここまで私を追いつめた。しかし昔の人は言いました、備えあればうれいなし!この私のローブはどんな魔法も跳ね返すようにできているのだよ!」
「プリティユミー、魔法を内に向けるのだワン!」
「うんっ!」
「え、ちょっとっ!?」
自分の精神に魔法を使い、自らをパワーアップさせる。怪光線魔人の手首を取り、倒れ込むように反転させた。その名も…
「プリティ関節固め!!」
「ぎいやぁぁぁぁ!!」
魔法少女界初の関節技にさしものPETも悲鳴を上げる。そのまま地面に叩きつけ、とどめに俺のこの手を光って唸らせる。その名も!
「当たったら痛いぞパーーーンチ!!」
「すごく痛いーーーーーーーー!!!」
キラン、と光を残し怪光線魔人はお空に消える。かくしてPETの野望は今日も露と消えたのだった。
「やったねユミー!!」
「おまかせ、ね☆」
しかし翌日優美を待っていたのは、クラスメートの大喝采だった!
「優美、あんた魔法少女だったんだぁ」
「もちろん僕は知ってたよ〜」
「優美ちゃん…あれって新しいギャグ…?」
「早乙女さん、校則違反よぉ!」
「ひ…ひ…紐緒先輩のうそつきーーーーっ!!」
同じころ藤崎詩織は、金髪でボンテージファッションの少女ににじり寄られていた!
「あのね詩織ちゃん、私もっと明るくなろうと思ってピクシィメグのコスプレをしてみたの。このかつらと衣装も一生懸命作って…」
「(なんか違うーーーーーーっ!!)」
<END>