○mightywings さん
- 03 GONSHAN (採点:7)
- 「ご令嬢」と「令嬢」を、使い分けたかったのかそうでないのかが不明。
それと令嬢の白い指が云々の一節を、本編内でもう少しだけ効果的に使ってほしかった。
そして、とか何か次へ誘う要素を前文に組み込むだけでも違ったのでは。
文学的な一節だったので、決め所は大切に。
webで読ませる場合、テキストがどう反映されるのかも推敲しないといけないので
大変だとは思うが、続きを期待出来る腕前なので愈々の精進をば。
っていうかこの作品、もっと長い作品の抜き出しみたいに感じるのですよ。
- 05 ウミに漂う (採点:7)
- 野暮な意識改革にオチをつけない辺りが好感。僕は僕でいいんだ、とか言わせていたら、
まあガッカリだったでしょう。
- 11 準備 (採点:8)
- 急転直下を地で行く作品。オチまでの道筋が絶妙、いや狡猾か。
しかし展望台のガラスに納得がいかず今回は8点。
- 28 腐臭 (採点:6)
- エンディングが不気味。逆に中盤までが弛み気味。序盤で出した友人関係が全然話に絡んでいない。
腐臭の扱い方が適当に思える。仮面の家族関係は今に始まった話ではないので、伏線を張って
おかないと引き立たない。
- 43 そしてお大事に,と殻人は言った (採点:7)
- <地球>という巨大な生命体がどんな状況にあるのかが、どうにも説明が
不親切。なんの動きもない更地らしいが、生命の一つの方向性を示すのならば、ヒトという
個に対して地球という全の対比をもう少し丁寧に設定しても良いかと。
また、NPCが自然界を有効活用するメリットも不明。摂理と言っているが、自然界の管理に
目覚めたか、はたまた天啓でもあったのか。実際、仮想世界を選んだ時点で人類の負けだと自分は思う。
痛みの無い世界に苦難は無いし、努力も無縁だろうから感動も無いだろうし。
設定重くし過ぎで読者に優しくないような。一言で言えば勿体無い。
- 45 八月水晶 (採点:9)
- 構成力が群を抜いている。短く読み易いセンテンス、散りばめられた数多のエピソードは読み手の
存在をよく意識している。子ども特有の無邪気さと無関心さを上手に表現し、水晶を分配する山場の
シーンですら、その熱を拡散させて締めくくる。固有名詞を意図的に排除し、読み手の想像力を
大事にせんとする努力は、正に水晶の様に結束した光を放っている。
だが惜しい!『すごいよ!!マサルさん』は少しばかり喩えが偏っていて、作品の普遍性を最後の
最後で乱してしまった。だもんで1点減ですラバーメン(ゴム人間)。
- 47 光学概論 (採点:10)
- これはプロの仕業だ。モノを綴ることへの覚悟、自負が、端的な描写の向こうに青白く光っている。
息子の写真が取りたかった、の一節は涙が滲んだ。ここへ持ってくるまでの構築力は
相当の精度なのに、そんな狙いをまったく感じさせずに、あの一節で一撃必殺を成功
させたのが驚愕。
- 48 佐竹、飛べ!! (採点:7)
- 問題無い完成度。ツボを上手に押さえている。
でもひょっとして安全圏狙い?危なげ無さすぎに思えて、辛めの配点。
星を目印に渡るも良いが、たまには星を目指して舞い上がってみては。
- 51 野辺送り (採点:7)
- 描写に固執しすぎか。緻密さを追求した結果、現実世界の展開は例の広場の近くで野辺送りを見たくらい。
テンポ感がもう少し欲しかった。また過去への決別を落とし所にもって来たのだが、野辺送りという隔世のアイテムは
正直オカルト的手法で終始用いる方が効果的だと思う。実は遥の復讐劇になると最後まで期待していた。
- 52 夕焼けに彼女はいない (採点:6)
- オリジナルとテンプレートの狭間、程度にしか感じられかったのが残念。
永遠を約束できなかった分の空白はどこでふってくるんだろう、の一節は好きですよ。
でも一人称が統一されてないから差し引き変わらず。
- 53 体育館を燃やす (採点:6)
- キャッチーなタイトルと、結構破天荒に進むストーリーは、青春臭さがいささか
鼻につくものの割と面白かった。
- 59 プルシャの後裔 (採点:10)
- 後を引く後味の悪さは他者の追随を許さない。今日び露骨な女性虐待を描写する、その覚悟すらよし。
(別に女性差別を推奨している訳ではないので)
オチの2歩くらい前で断ち切れる無愛想さ、薄気味悪い世界観と、かなりの腕前。シャレにならない完成度に完敗。
- 60 黒猫侍・片牙小太郎 (採点:10)
- 粋な人情ならぬ猫情噺。足も倍、は最高のテイスト。生粋のエンターテインメント。
ってゆうか小太郎さん、アナタ何歳ですか。
- 61 缶コーヒー (採点:7)
- 缶コーヒーは、タイトルに使う程には作中で活躍していないかと。何かの象徴でもないし。
奈緒の一人称が俺なのも、作品のフィクション性を不必要に際立たせているようで、母校の文化祭という
日常的なシュチュエーションに対しては逆効果だったのでは。
必要以上に語らない文体は好感がもてるので、更なるスキルアップに期待。
- 62 5人以内のごろつき (採点:7)
- もしかして作者は大槻ケンジさんですか?って知らない人もいるんだろうなあ。
- 63 貴方に勝ちは似合わない (採点:9)
- 巧い。自然にせよ計算にせよ、文体の鮮やかな切り口にとても惹きつけられる。
現実と心象のメリハリも効いている。何より斬新さが魅力的。
あの観覧車に単身乗り込む意気込みは相当のモノだとは思う。巡礼ってスゴイ。
色々な意味でマキハラノリユキ。今後を生き残れる質感を本作に感じる。
余談だが、彼にはstar ferryや彗星といった、文学性の高い曲もあるのです。
- 64 花盤 (採点:9)
- うたたねひろゆきの絵が嵌まる気がする。しっかし日本語ってヤツは艶めかしい造りだこと。
ホラーとエロスが密接な関係にある、とこういう作品に触れるとよく解る。ある意味コワい作品。
叶うなら旧漢字を多用してほしかった。古式ゆかしい名前にしたのならば尚更で。
態としなかったのなら、まあそれはそれで構わないかも。二人とも学生さんだしね。
にしては少しばかり露骨なのでは。タチとネコが予定調和だし、そもそも男言葉からしてあざとい。
綺麗な薔薇にも棘は有り 零れる蜜には毒が在る
秘密の園に舞う蝶は 花に溺れて もう戻れない
- 65 ハイブリッドアンビエント (採点:7)
- 分かり合える人と過ごす、に対比する描写が冒頭以降どこにも無い。生物学的に聴覚が過敏だという
説明ばかりで、主人公の人間関係の軋轢などを何処かに仕込んでおかなければオチの効果が
出ないと思う。描写力が高いので、構成次第で更にガツンと伸びそう。
- 67 純 (採点:7)
- 頑張れ、等身大の正直者たち。誰かを好きになることに損得は無いから。
- 72 雨の日の忘れ物 (採点:8)
- 少しばかりもの足りない。バス停をやり過ごす転から、かつての情景を取り戻す結までの部分が淡白。
いっそ終点まで乗車させても良かったと思う。案外主人公の動きが少なくて、筆力高いのに色々勿体無い。
この世界観でハナレグミに歌を作ってほしいと思った。
- 73 あかんぱにい (採点:5)
- 微妙。シュール。
- 75 ムーンサルト・ブルース (採点:10)
- プロレスを生で観たい、と生まれて初めて思わせた本作に10点献上。
スピード感はエントリー中で最速。あと泥臭さも。全力中年柿崎にシュプヒレコールをば。
- 76 シャーベット (採点:8)
- とにかく好きではないから嫌い、という論法が既にぶっ飛んでいる。
双方素直な様で捻りが入り、しかもその捻りにやはり双方気が付いていない!
ラブコメの新境地か?
- 77 ナイチンゲール・メール・サービス (採点:10)
- 冷たく光る世界。小夜鳴鳥の名を作品に与えたのは巧い。
募る不安に主人公が戸惑う後半、メールでなく通話でのやり取りを持ってきたのも巧い。
音声ですら虚ろを越えてはくれない、湖畔には自分独り。この流れがあるからこそ、
ラストのやり取りがじわりと胸にくる。かなりの推敲の基に全体が築かれたと思われる。
難を言えば、メールサービスの部分に結構多くを費やしているので、少しばかりとっつきづらくさせているかも。
現代モノのラブストーリーは「無さそうで有りそうな」設定が必要なので、作者の力量が問われるところ。
その意気込みと、この完成度に座布団全部。
@マークで章を区切る遊び心もいいですね。
- 78 音響室B (採点:6)
- 評価がつけづらいのは何故なんだろう。主人公の起伏が抑え目な所為だろうか。
また、教授の安眠を約束させる為だけに音響室を設定したように思える。話の展開と
理工系学部の設定が、実はそれほどリンクしていないのでは。
- 81 ずっとずっと前から (採点:7)
- まあベタには違いないのだが、風景も心情も丁寧に書かれているので。
- 82 あまいあいまいなあいまに (採点:6)
- 主人公のモノローグ部は緻密な心理描写が評価できるが、ハルとの掛け合いで色々と不自然な点が。
紐で物理的に拘束させても、可愛いところを沢山見たい、との説明だけでは拘束の意図が汲み
取れない。また、30分の拘束で苦痛を感じるヒカルに対し、勿論ヒカルは態度に出してないものの、
その痛みをハルは作中でまったく認識していないのは理解に苦しむ。だから相手の傷を自身も負う、
というその次のやり取りも信憑性が希薄に思える。
そしてハル側には拘束意識は実は無いような書き方なのに、ヒカルは縛られている、と語る、この
様々なズレが心情の共感を妨げた。互いを曖昧に甘やかしているような。以上穿った所感でした。
- 88 探偵は誰だ? (採点:8)
- なかなか入念に仕込まれたオチが良い。
しょっぱなから事件が始まる展開が星新一ぽいかも。
ショートショートをよく研究していると思われる。
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