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○north さん

12 人間の目にまだ見えない (採点:7)
これは単純に面白かったです。ヒューマノイドと言うテーマ、何に「人間」を感じるかというテーマを横糸にしつつ、実際の精妙な人間関係の変化、見えにくいが少しずつ追い詰められるヒロインを二重写しに描いていて、我々に何が見えて何が見えないのか、ということを、淡々と簡潔な文章ながらきっちりと描いている、濃い作品に仕上がっていたと思います。

ツンデレ彼女とクールなヒューマノイド、というキャッチコピーに押し込めて処理してしまうには惜しい作品。

14 猫と祭りと夏の続き (採点:7)
夏の一瞬を切り取っていて、非常にきれいな作品だと思いました。そしてこの広がり、読んでいて非常に気持ちいい。挿話として入る猫の話も、ぼんやりしてしまいそうなお話をきゅっと締めている(その入り方はややイビツな感じがしますが)。

あと、「僕」は少しだけ饒舌すぎる気がします。最後の二行とか。

15 嫁嫁パニック (採点:8)
下品! でもやっぱり笑ってしまう。どーしようもないといえばどーしようもないけど、笑っちまったら仕方ない。もってけ点数っ。

16 手のひらの宇宙船 (採点:7)
美しい想像の世界。幻想的で、具体的なキャラクターや台詞などなくても読ませてしまうのはそれだけイメージが豊かだからだろうと思います。

そしてそれでも、そちら側へ行ったままにならず、しっかり日常へと帰ってくるのにも、やはり好感が持てます。

ただ、その回帰がやや拙速ではなかったか、と思います。特に最後に幼馴染の彼女が出てくるところでやや唐突な感じを受けます。お話が少しぶれてしまっている・最初の豊かなイメージが無難な場所に回収されているという印象を受けました。

19 猛スピードで触手は (採点:5)
「しょくしゅ」と鳴く触手なら欲しい。

それはともかく、不条理で面白いんだけど、ネタの奇妙さに比して会話の軽快さがやや五月蝿い感じがしました(好き好きかも)。最後の種明かしも面白い。

ただちょっと気になるのは、このタイトル。『猛スピードで母は』(長嶋有)にかなり近いんですが、たまたま被っているのでなかったら、特にオマージュというわけではなく印象的なタイトルをそのまま持ってくるのは反則、と思います。(たまたまだったらここに書いてあることは意味がないです。でしたらすいません)

21 雪見酒 (採点:5)
すんごく面白い、というわけではないけど、違和感はなくきっちり読ませてくれます。主人公の人物造詣が吉と出るか凶と出るか、ですが、分水嶺にある、という感じ。もひとつ何かあると途端に飛び抜けそうな気もします。

25 A manufacturing onigiri line. (採点:6)
前半のラインの描写はフィクションや誇張はあるにしろ躍動感がある描写で、「もしかしたらこんな風かもしれない」と思わせる魅力があります。うんざりしながらも楽しめました。

一方で製塩室に関してはちょっと現実離れしすぎていて、その前段と齟齬を起こしているように思えました。これが本当なら、10点あげると同時に二度とコンビニのおにぎり食べませんが。

26 賢人の恋 (採点:4)
けっこう重いテーマを扱ってはいるんですけれど、描き方としては少し違和感が残りました。障害がどうこうというよりは「魔法で心の成長が止まってしまった女の子」とかそういう趣。ですが、そういうファンタジックな題材も受け入れられる土壌であるのに、それでも自閉症などの障害を持った人として扱って描くなら(もちろんそれが悪いというわけではない)、ある程度、その題材に基づいた描写が必要なのでは……と思います。

29 衛星軌道上のありす (採点:6)
面白かったです、が、ちょっと半端な感じが残りました。ありすやアリスに説明が必要とかそういう野暮くさいことではないのですが、いろんな要素を入れ込んだにしては、ちょっとお話としてシンプルすぎるかも、という感じ。もう少し広げられたのではと思います。

30 はたらくぼくら (採点:3)
描写は軽快で、するする読める。それは心地いい。

のですが、それだけで高得点がつけられるというインパクト・丁寧さ・斬新さではないし、物語があるかと言えば見当たらないという感じで、ちょっとよくわかりませんでした。読み込みが甘かったらごめんなさい。

31 不確定性の彼女 (採点:4)
ちょっとしたお話、という趣。悪くない、のですが、飛びぬけていい点ではない、かも。

タイトルはちょっといただけません。不確定性の彼女、っていうと、どうしても不確定性原理が絡んだどうこう、を期待しちゃうので(という人がそんなに多いとも思えないけど)。いちおうそういう話も出てきてはいるのです……が、どうも。

32 消滅した地球 〜alien cross road〜 (採点:9)

これは、ずるい。途方もない広がりを持った世界で起こった小さな、でも本当は決定的にその価値観を違えてしまったのかもしれない事件。もう覚えているものもほとんどないその事件を軸にして、少しずつカットアップして世界を描いていく。それだけで直撃なのに、にもかかわらず各シーンで出てくる登場人物のそれぞれが匿名の誰かではなくて、ちゃんとそれぞれの人生を生きている。これは絶対感動してしまう(私は)。だからずるい。うつくしいSFを見せてもらった、と思います。10点どころか11点差し上げたい。

でも、これで完成か? というとそうではない気がどこか、します。これはもっと大きなものになるはずではないでしょうか。半分は勝手な期待からかもしれませんがそう思うので、ごめんなさい、9点しか差し上げられません。でも拡散してしまい、母星をも失ってしまった人類にはやっぱり泣きそうになったので、というかちょっと泣いたので、是非とも(お世辞でも励ましでもなんでもなくて、本当に読みたいので)完成版を見せていただきたいな、と思います。

34 Waltz #2 (採点:8)
ロンドンの風景はともかくとして(でも、描写はしつこすぎず書き割りすぎず、バランスがいいと思います)、ほんの少しずつ挿入される彼女との思い出や、互いに変わり果ててしまった後の再開、そして爆発が、とても印象的に描かれていたと思います。ゆさぶられました。

36 もし人生が一篇の掌編だったら (採点:3)
縦書きにする必要があったのかがよくわかりません。したかったのならそれはそれでいい、視覚的な効果もあるし、とは思うけど……にしては、文章それ自体は途中がイベントの羅列になっているので、連続性が薄くなってしまっています。こういうネタはきっちり狙って当てねばと思うので低めにします。

43 そしてお大事に,と殻人は言った (採点:8)
こんな場所でこんなサイバーパンクな世界を見られるとは思いませんでした。攻殻機動隊かマトリックスか、というわけではないでしょう。それらの亜流ではなくて、きっちりとしたサイバネティックスSFであり、ジェンダーSFでもあり、という、贅沢な作品。拡張現実に没入する人類と、そうすることで空白になったニッチに、自分たちを現実世界に存在させることで収まろうとするAIたちとの関係性が非常に面白かったと思います。

46 青空 (採点:7)
ベタな、ちょっといい話という趣。

だがそれがいい。文中の伏線もうまくて、嘘はついていないけど、だまされる。そしてだまされても、がっかりしない。短いけれど寸足らずという感じも無くて、完成されているという感じがします。

49 ゆりかごの歌 (採点:6)
面白い話なのですが、人間に危害は与えられないはずの(だからこそ完璧な母親だった)はずの「ママ」が最後の最後にその安全基準を踏み越えてしまったのが残念です。

57 夏を見逃すな (採点:6)
会話芸なんだけれど、この気だるさが夏休みと言う感じでいい。あるある、という井上陽水のような無意味な時間つぶしの会話がよかったです。

67 純 (採点:4)
性同一性障害もの、ということで、ありきたりなものでないネタという意味ではよかったのかもしれませんが、主人公たちのやりとりが明け透け過ぎてちょっと、と思います。言えない苦しみとかがあるから、こういうのはキツいのだろうと思うし、そういう機微が失われていることで(このキャラの性格だからというのはそうなんでしょうけれど)、お話が教科書じみたものになってしまっているように思います。なのでちょっと下げます。

68 七夕 (採点:7)
読みにくい!でも面白い。

嘘か誠か、語り手は誰か。一人か複数か、そもそもこの文章はいったいどこに書いてあるのか?仮説が正しいのか、それとも別の答えがあるのか。
一見意味不明な2ブロックで(もしかしたら本当に意味がないのかもしれませんが)たっぷり楽しませていただきました。

70 ばべるの図書館だより (採点:9)
お話単体としても、ボルヘスリスペクトとしても、恐らく穴はけっこうあるんだろうと思います。

けれども、この独特のSFっぽさ(SFとは書いていないし、それっぽい道具立ても出てこないのですが、この雰囲気はやはりどこかSF的なものかと思います)にやはり高得点をどうしてもつけてしまいます。

次号も欲しいですが、当館正面玄関スペースにたどり着くまでにどれだけ歩かねばならんのやら。

73 あかんぱにい (採点:2)
二行です。二行が悪いとは言いませんが、どうとでもとれる一発ネタで高得点は差し上げられない。それは読み手にさせる仕事が多すぎる。面白いとすれば、それは作品ではなくて、そこから広がる読み手の想像力とそこから生み出されるものが面白いのでしょうから、作品ではなくてそちらに点数を上げます。

お話のきっかけとして、一行一点で、二点。低得点ですが、一行あたりのコストパフォーマンスは間違いなく一番です。

78 音響室B (採点:3)
するすると読めるんだけど、なんだかよくわからない話でした。

82 あまいあいまいなあいまに (採点:8)
最初の二行に全てが集約されているように思えます。

でもそれを確認するための本文も丁寧に描かれていて良かったです(そこにあっけなさを感じる人もいるかもしれませんが、私は特に気になりませんでした)。同性愛もの、になるけれど、奇を衒った感じではなく、自分が受け入れられないやるせなさと、受け入れられたときの幸せが素直に伝わってくるようでした。ハルとヒカルのあまいあいまいなあいまが長く続きますように。

83 変わった趣味の男 (採点:7)
男の行動はどういう意味だろう。オナニーとセックスの比喩か、とも思いましたが、それだとそのまんま過ぎるか。文学っぽいものとして捉えても、単純に不条理劇として捉えても、どちらにしろ物凄い飛びぬけて面白いというわけではないですが、じわじわと面白いなと思いました。

やすこの自分ルネッサンス三連呼にはつい数十秒笑いが止まりませんでしたので、そこでやすこ点として1点プラス。

84 ちかちゃん、甘えんぼ。 (採点:5)
いい題材だと思うし、いいアイデアだと思うのですが、なんだか最後の流れに釈然としないものを感じます。今の自分の状況についての問題を回避して回避して、ちかちゃんはどこへゆくんだろう?

87 黒揚羽と蜜柑の花 (採点:4)
「生きていると思っていた人は実は死んでいた」というアイデアはベタなんだけどそれが悪いというわけではなく、結局は料理次第で、その料理の仕方でやや難があったのかなと思います。これだけの王道なアイデアに絡ませるのだったら、蜜柑や揚羽の人物像の方は、ややステレオタイプから外れてても良かったかも。

88 探偵は誰だ? (採点:5)
SFといえばSFですが、どっちかというとガジェットを条件にした論理パズル、という趣。オーソドックスな展開ですが楽しめました。

95 何かの間違い (採点:5)
楽しめなくない、こともないけれど、なんだか違和感を感じる部分もあります。妹の心の動きや、兄の動じなさがいまいちよくわからなかった。辻褄はあっているんだけれど。

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