第4章 エプロン


第1節 エプロン概説

メイドさんをメイドさんたらしめる重要な要素、エプロンですが、世に数多あるメイドさんの絵で一番間違いが多いのもここです。

まずは図4-1を御覧下さい。これは、ありがちな間違いを集めて絵にしたものです。このエプロンのどこがどう間違っているのか、順を追って説明していきます。

図4-1 ありがちな間違い

図4-1 ありがちな間違い

まずはエプロンの構造を知ることから始めましょう(図4-2)。まず、ウエスト部があります。これには腰ヒモも含まれます。これに、前だれ部がつきます。そして、上半身には肩ヒモが。最後にフリルやレース等の装飾と胸あてをつけて完成です。

図4-2 エプロンの構造

図4-2 エプロンの構造

上半身のパーツと下半身のパーツが一体化しているエプロンも見かけますが、実際には問題が多いと思います(図4-3)。一体化しているということはそれを1枚の布から取らなければならないということで、布の無駄が多く発生すると思われます。

図4-3 上半身のパーツと下半身のパーツが一体化しているエプロン

図4-3 上半身のパーツと下半身のパーツが一体化しているエプロン

ウエスト部のデザインでよくあるのが、エプロンとは異なる色の布を巻くってヤツですが、これもいろいろと問題があるデザインです(図4-4)。

図4-4 エプロンとは異なる色の布を巻く

図4-4 エプロンとは異なる色の布を巻く

メイドさんのエプロンというのは、汚れたら取りかえる物ですから、日に何度も交換します。腰に布を巻いていると、エプロンの交換がとても面倒だし、洗濯物も増えます。

だいたい、腰ヒモと布とで背中の結び目が2つになるんじゃないでしょうか?描いた人に是非とも聞いてみたいところです。腰ヒモはなくて布のみだとすれば、エプロン単体では身につけることができなくて、常に布とワンセットということになり、管理が面倒なことこの上ないような気がします。

絵的なことで言えば、ウエストのあたりに何かアクセントが欲しいってのはわからないでもないんですけどね。でも、布を巻く以外にもアクセントをつける方法はいろいろあるぞ。

第2節 前だれ部

前だれ部は、一見簡単そうに見えて、実は正確に描けている絵は殆どない、意外に難しい部分です。

私自身もそうだったんですが、想像だけで描くとつい図4-5のように体の前面だけを覆うように描いてしまうんですね。

図4-5 体の前面だけを覆う前だれ部

図4-5 体の前面だけを覆う前だれ部

スカート丈がミニだとこれでもなんとかスカートと前だれ部のバランスがとれるんですが、スカート丈が長くなるととたんに困ったことになります。実際に描いてみるとわかるんですが、ノーマルよりも長い丈のスカートの裾のあたりまで前だれ部が覆うようにしようとすると、前だれ部の縦の長さが横の長さに比べて長くなってしまって、まるでふんどしみたいになってしまうのです。メイドさんにふんどし…いやあああっ!!

では、実際のエプロンではどうなのか?

まず、前だれ部の形状は円ではなく長方形です。そして、前だれ部が覆う範囲は体の前面だけでなく背面にまで及びます。ウエストのサイズよりも少し狭い幅の長方形の布を体に巻きつけたような感じです。

前だれ部とウエスト部が接する部分にはギャザーを入れましょう。ウエストからスカートの裾にかけてのふんわりしたラインを作ることができます。また、ウエストのあたりが絵的に間延びしてしまうのを防ぐ効果もあります。

正面から見ると図4-6-(1)のようになります。前だれ部の裾のラインはほぼ水平です。スカートが見えるのは前だれ部の裾のラインより下の部分のみです。

背面から見ると図4-6-(2)のようになります。前だれ部がかなり背面まで回り込んでいるのがわかります。フリル等の装飾は通常前だれ部のサイドにはつきません。

図4-6 前だれ部の正面と背面

図4-6 前だれ部の正面と背面

ですが、装飾が裾のみというのは、後ろから見るとあんまりかわいくないんですよね(図4-7-(1))。サイドにも装飾をつけるとぐっとかわいさが増します。この場合、角の部分はまるくカットします。これで完璧(図4-7-(2))。シャーリィ・テンプルラ・マーレ・ド・チャヤのエプロンがこのタイプです。もうヤバイくらいにかわいいです。

図4-7 前だれ部のサイドの処理

図4-7 前だれ部のサイドの処理

第3節 ウエスト部

ウエスト部は、腰ヒモが別パーツになっていることが多いようです。別パーツにしておくと、腰ヒモを結んだときにウエスト部にシワが入ってしまうのを防げます。前だれ部の幅は、腰ヒモを除いたウエスト部の長さとイコールです。

特に工夫のしようがなさそうな腰ヒモですが、先端の形状を工夫するだけでも随分違います。シャーリィ・テンプルのエプロンなどは腰ヒモの部分にふちどりが施されています(図4-8)。おそるべしシャーリィ・テンプル

図4-8 シャーリィ・テンプルのエプロンの腰ヒモ

図4-8 シャーリィ・テンプルのエプロンの腰ヒモ

腰ヒモの結び目がリボンみたいになっている絵もときどきありますが、やはりこの部分は腰ヒモの結び目なのだ、ということを念頭に置いて描きたいところです。新品のときやプレスがしっかりかかっているときは結び目は左右に広がりますが、たいがいは下にたれていることが多いでしょう。

大きさも、正面からでも見えるほど大きいってことはまずないと思います。結び目がそんなに大きいとあちこちにひっかけたりして危険でしょう。描くと見栄えがするんで、結び目が見えないような局面でもつい描いちゃうんですけどね。

第4節 肩ヒモ

肩ヒモは、一端がウエスト部に縫いつけられており、背面で一度交差させた後、ウエスト部にあるボタンホールにボタンで留めるののが一般的です(図4-9)。背面で交差させるのは、肩ヒモがずり落ちるのを防ぐためです。それに、交差させた方が絶対にかわいいと思います。肩ヒモにボタンが複数ついていて肩ヒモの長さをある程度調節できるようになっているエプロンもあります。

図4-9 肩ヒモの構造

図4-9 肩ヒモの構造

上半身のフリル等の装飾は、肩ヒモについています。肩ヒモで特に多い間違いが図4-10です。本来上半身の側面にはエプロンはないんですが、そこにエプロンを描いてしまったために、装飾が行き場を失ってなんともヘンなつき方になってしまっています。だいたいこれ、背面はどうなってるんでしょうね。描いた人に是非とも聞いてみたいところです。

図4-10 肩ヒモで特に多い間違い

図4-10 肩ヒモで特に多い間違い

装飾がつく範囲は、前面はウエスト部と接する部分から、背面は肩ヒモが交差する部分まで、というのが一般的なようです(図4-11)。装飾の端の部分の処理については図4-12を御覧下さい。

図4-11 装飾がつく範囲

図4-11 装飾がつく範囲

図4-12 装飾の端の部分の処理

図4-12 装飾の端の部分の処理

肩ヒモにつく装飾は、あまり硬い感じにならないように、幅を広くしすぎないようにするのが肝要かと思います。図4-13のようなエプロンを見かけることもあるんですけど、ここまでくるともう布じゃなくて金属ですな。気分は巨大ロボ。

図4-13 幅が広すぎる装飾

図4-13 幅が広すぎる装飾

肩ヒモと装飾の角度にも注意が必要です。横から見たときに図4-14-(1)のようになっているエプロンを見たことがありますが、これ、正面から見ると図4-14-(2)みたいになるような気が。既に巨大ロボ。

図4-14 角度が急すぎる装飾

図4-14 角度が急すぎる装飾

肩ヒモにはフリルを装飾としてつけることが多いのですが、レースというのも悪くないと思います。シャーリィ・テンプルのエプロンなどはゆるいギャザーの入ったレースで、フリルとレースのいいとこどりって感じです。おそるべしシャーリィ・テンプル

あと、肩ヒモについて特筆すべきこととしては、図4-15のようなアンナミラーズの制服的処理、というのがあるでしょうか。ブラウスとスカートが共布じゃない場合はともかく、ワンピースでこういう肩ヒモにするのってどうもなあ。だいたい媚が過剰すぎる気がするし。…と思ってたんですけどね、ずっと。同人誌即売会に行ったときにこのタイプの肩ヒモのメイドさんのコスプレを見たんですが、それがかなりイイ感じだったんですよ。だから今ではそんなにキライじゃないです。スタイルのいい人が着ると実にかっこいいんですよ、これ。

図4-15 アンナミラーズの制服的処理

図4-15 アンナミラーズの制服的処理

第5節 胸あて

胸あては肩ヒモと一体化している場合もあります(図4-16)。胸あてに比べると特に工夫のしようがなさそうな肩ヒモですが、シャーリィ・テンプルのエプロンなどは肩ヒモの部分に細かい刺繍が入っています。おそるべしシャーリィ・テンプル

図4-16 肩ヒモと一体化した胸あて

図4-16 肩ヒモと一体化した胸あて