第10章 メイドさんをめぐる諸問題


第1節 メイドさんとウエイトレスさんの境界

「制服としてメイド服を採用しているメイドさん」という職業がほぼ絶滅している現代日本において、それに近い存在を現実世界に探そうとすると、飲食店のウエイトレスさんに行き当たります。

メイド服風の制服を採用しているお店を探すことを趣味としているメイドさん好きは少なくありません。かく言う私もそうです。衣装に関して言えば、メイドさんと、メイド服風の制服を着たウエイトレスさんとの境界は曖昧になり、明確に区別されないまま取り扱われることが多いのが現状です。

しかし、私はやはりメイドさんとウエイトレスさんとの間には違いが存在すると思います。ウエイトレスさんの制服としてはOKでも、メイドさんの制服としてはNGという衣装はやはり存在するのです。

では、どこに違いがあるのか。私はスリーブとスカートの長さこそがメイドさんとウエイトレスさんを隔てる物だと思います。スリーブとスカートが長ければメイドさん、短ければウエイトレスさんです。

ウエイトレスさんはその職務の内容上、決して広いとは言えない飲食店の通路を頻繁に行き来することになります。したがって、ボリュームのある衣装や、スリーブやスカートが長い衣装は制服に向いていないのです。

これは、長袖、膝丈以上のスカートの制服を採用した飲食店を探すことが非常に困難であることからも裏づけられます。スカートが膝丈以上の制服の存在はいくつか確認されているのですが、スリーブが長袖の制服はほぼ皆無です。長くても七分袖といったところです。飲食店ではないシャーリィ・テンプルの制服が、飲食店の制服以上にメイド服に近いのは必然なのです。

というわけで、私にとってはスカートが膝丈以下のメイド服を着たメイドさんはメイドさんではなくてウエイトレスさんなのです。もちろん、スリーブとスカートの長さだけで全てが決まるわけではないので、膝丈以下のスカートでもかなりメイドさんに近づけることはできるのですが、基本的にウエイトレスさんであることには変わりありません。

第2節 夏のメイド服

夏が日本ほど高温多湿でないイギリスなら、一年中同じメイド服でもいいかもれませんが、日本の夏にはそれに適したメイド服があってしかるべきだと思います。夏にああいう服ではメイドさんがかわいそうですよねえ。

と思ってはいたのですが、では具体的にどういうメイド服ならいいのか、ということについては明確なイメージが湧かないままでした。

そんなある日。いつものようにシャーリィ・テンプルの制服を見に行った私の目に、これ異以上ないくらいの解答が飛び込んできたのです。そう、シャーリィ・テンプルの夏服です。

エプロンは冬服と同じですが、ワンピースが半袖になり(でもスカートの丈は変わってないあたりがさすが)、色も白と青のストライプというなんとも涼しげな色になっています。

シックかつエレガントというメイド服のコンセプトからはちょっと外れますが、メイドさんらしさをとどめつつ、非常にかわいい服に仕上がっています。おそるべしシャーリィ・テンプル

第3節 アンドロイドメイドさん

メイドさんのバリエーションとして、アンドロイドのメイドさんというのを見かけることがあります。「To Heart」のマルチみたいなキャラですね。

私はこのタイプのキャラを見かけるたびに「なんで人間じゃダメなんだ?」という疑問が浮かびます。

メイドさんが人間ではなくアンドロイドであることの利点としては、いかなる命令であっても主人の命令には絶対服従、主人がどんなことをしても絶対に反抗しない、主人がどんなことをしても主人を怨むことがない、人間よりも体が丈夫、兵器を装備させることが可能、等が考えられます。

気持ちはわからないでもありません。私もそんなメイドさんがいればどんなにいいかと思います。

しかし同時に、それはあまりに男にとって都合がよすぎる、とも思うのです。「自分にとっての都合のよさ」をあからさまに表現してしまうことに対して、私はちょっと抵抗があるのです。そういうキャラを描くことがとても恥ずかしく感じられてならないのです。

人間と同じ心を持つ人造人間、というテーマ自体は好きなんですけどね。そういうテーマを扱ったTV版「人造人間キカイダー」や「マップス」で得た感動が大きかっただけに、軽々しく扱って欲しくないのです。心を持った存在を人間の手で作り出すというのがどういうことか、深く考えをめぐらした上で描いて欲しいと思います。