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「おーい、みんなー」

 来賓玄関で手を振るのは、着物姿の小梅である。

「田舎から都へようこそおこしやす!」
「そういうのええから!」
「冗談冗談。さっ、入って入って」

 部室に案内されると、既に天之錦の面々が着物で待っていた。
 双方の部長が挨拶する前に、喜色満面の勇魚が胡蝶に抱き着こうとする。

「胡蝶先輩! 今日も会えて嬉しいです!」

 が、その小さな手が届く前に、胡蝶の品のある手がぴたりと制した。

「今は競い合う身。馴れ合いはあきまへん」
「え……」
「ち、ちょっと胡蝶。そんなガチ勝負とちゃうって言うたやろ」
「それはそれ。私たちには引退公演や。当然、本気でやらせてもらいます。
 勇魚はん。あんたの全力、見せてもらいますえ」

 凛とした胡蝶の態度に、勇魚も気を取り直して背筋を伸ばす。

「はいっ! うちのデビュー、どうか見届けてください!」

 勝敗が目的ではないイベントとはいえ、むろんWestaも手を抜くつもりはない。
 立火も内心で気合いを入れながら、持ってきた包みを胡蝶と葵に差し出した。

「勇魚のこと、改めておおきに。これ、うちの店のたこ焼きや」
「わざわざ、えらいすんまへん」
「お好み焼きは京風もあるけど、たこ焼きは大阪に限るからねぇ」

 受け取った葵が時計を見て、一年生に指示を出す。

「竹緒、皆さんを更衣室へ」
「はぁい。こちらですぅ」


 予算がそろそろ厳しくなってきたので、今回の衣装はSupreme Loveの使い回しである。
 一緒に着替えながら、花歩は今日のパートナーに話しかけた。

「あの時、練習用に作っておいて良かったよね」
「そうやね! 余りの布やから色はバラバラやけど」
「汐里ちゃんとおじさんおばさんは来られなくて残念やね」
「幼稚園のお遊戯会やからしゃあないで! いい土産話ができるように頑張る!」

 とにかくライブに出られて嬉しそうな勇魚は、緊張のきの字もなさそうだ。
 花歩も嬉しくなりつつ、自分のことを考える。

(デビューライブは大体みんな甘くしてくれる。私の真価が問われるのは今回からや)
(屋上で姫水ちゃんに言われた通り、何度だって輝ける!)
(……言うても一曲目はあんまり練習できてへんし、三曲目は勇魚ちゃんを立てないとなあ)
(二曲目で目立つで!)

 一方でつかさはリボンを留めながら、先ほどの胡蝶のことを考えていた。

(さすが京都の人、プライドが天まで高そうやったなあ)
(けど、あれがいい意味でのプライドや)
(あたしが本気になってから初めてのライブ……)
(絶対! 姫水よりも上を行く!)


 *   *   *


「燃やすで、魂の炎!」
『Go! Westa!!』

 体育館の舞台裏。唱和する中でも、勇魚の声が特に大きく響く。
 入部した日以来の、八人での円陣だ。
 勇魚が感慨にひたる一方で、桜夜は赤くなって隣を見た。

「これ、近くで見られてるの恥ずかしいんやけど!」
「あはは、ええもん見せてもろたで」
「言うても、こっちも割と恥ずかしいんやけどね」

 笑う小梅と葵を含め、天之錦の八人が流れるように円陣を組んだ。
 着物の胸に扇子を当て、目を閉じた葵の口が吟じる。

「花揺らす――」

 続いて胡蝶の唇が動く。

「四季折々の 都風みやこかぜ――」

 最後に全員で下の句を。

『吹きて流れて 我が舞となる――』

 全員が目を開け、うなずき合う。
 その雅な円陣に、立火をはじめWestaの面々も思わず拍手した。

「いやあ、風流なもんやなあ!」
「うう、やっぱり恥ずかしい」
「部長、これもちゃんと受け継いでいきますから」

 そう言った天之錦の子は、おそらく次期部長なのだろう。
 葵たちには、これが最後の円陣なのだ。
 少ししんみりする両グループの中、勇魚が明るい声を張り上げる。

「今日は最高のライブにしましょうね!
 ほな、うちは挨拶に行ってきます!」


 一方の晴は舞台の下で、配信と体育館内の確認を行っていた。
 現場スタッフは葵の友人たちが行ってくれているが、客入りはWestaのファーストライブより少ない。
 天之錦のライブは熱く盛り上がるようなものではないので、悪いけどあまり集客力は……とは事前に葵から言われていた。

(せやけどネットの方はかなりの視聴者数や。京都大阪のネームバリューやな)
(贅沢を言えばもう一押しほしいが……)

 その間に時間になり、トリまで出番のない勇魚が舞台袖から飛び出した。

「皆さんお待たせしました!
 スクールアイドルバトルロード、京都vs大阪! これより開演します!」

 館内から歓声と拍手が上がる。
 そして勇魚の目が嬉しさに見開かれた。
 一年三組の友達が何人か、わざわざ京都まで来てくれていた。

「勇魚ちゃーん! ファイトー!」

 声援に、思わずぶんぶんと両腕を振る。
 MCを入れていいと言われているので、テンションの上がった勇魚は一気に喋り始める。

「うちは大阪から来ました、一年生の佐々木勇魚っていいます!
 四月に入部してからなかなか上達しなくて、今日ようやくデビューです! えへへ。
 でもこの前、こちらの胡蝶先輩に指導してもらって、ようやくステージに立てました!
 やっぱり京都と大阪は仲良しなんや!
 うちが出るのは三曲目なので、できれば最後まで見ていって……」
(勇魚! 勇魚!)

 気付けば晴が、そのへんで!というジェスチャーをしている。
 慌てて話を中断して、照れ笑いを浮かべながら曲を紹介した。

「まずは一曲目の対決です!
 Westaは『Western Westa』、天之錦は『萩の戸』。
 張り切ってどうぞー!」

 勇魚が引っ込むと同時に、Westaの七人が勢いよく現れる。

『Welcome to Western Westa!』

 いよいよバトルロードが始まった。
 ファーストライブでは三人だった軽快なステップが、倍増以上の人数で繰り広げられる。

『ようこそ花咲く新天地へ!
 ここは大阪 西のパラダイス
 愉快な出会いがきっとある!』

 京都の人に住之江と言っても通じないので、歌詞は大阪に直してある。
 自分たちから訪問しておいてウェルカムもないが、そこまで直すと別の曲になるので致し方ない。

(お、落ち着いて、練習ではできたんや……!)

 曲が決まったのが先週だったので、花歩の練習時間は十分だったとはいえない。
 しかし他の一年生も同じなのだ。
 昨日部長にも心配されたが、やれます!と答えてしまった。

(いきなり一曲目から失敗だけはあかん)
(ここは目立たなくてええから、安全第一で!)

『娯楽の殿堂 食い倒れの街大阪!
 君らの前途に笑いあれ!』

 ポーズを決め、鳴り響く拍手に花歩は心底ほっとする。
 掴みは上々。
 笑顔で袖に引っ込むWestaに代わり、すぐさま天之錦が舞台に出た。
 三味線を弾ける竹緒が横に座り、残る七人が舞い手として広がる。

『秋萩の 花咲にけり 高砂の
 尾上おのえの鹿は今やく』

 これはオリジナル曲ではなく、昔からある伝統的な上方唄だ。
 散る紅葉のように、扇子がはらりはらりと宙を舞う。

『ただ散りやすき紅葉葉もみじばを 風にまかせて見るよりも
 はかなきものは命なる』

 響く三味線に、全員の歌声が調和する。
 地区予選では眠くなった桜夜だが、ここまで近ければ話は別だ。
 部員たちの、たおやかに微笑みながらも真剣な気迫が、舞台袖にも伝わってくる。

『あさ露消えし世の中も 御法みのりの山に独りゆくらん』

 見事な舞を終え、拍手の音はWestaより大きい。
 当然ながら現地は天之錦のファンが多いようだ。
 立火たちもステージに戻り、部長同士でMCが始まる。

「いやあ、あまりの風流に見とれてもうたで。
 初めてのお客さんは初めまして、Westa部長の広町立火です!」
「天之錦の部長、寿葵ですぅ」
「寿さん。この勝負、受けてくれてほんまおおきに!」
「いいええ。これで三年生は引退やから、ええ舞台を用意してもらいました」

 がしっと握手して、配信カメラに仲良しをアピールする。
 他の部員たちは、とりあえずニコニコしながら話が終わるのを待つ。

「まあ京大阪の関係は色々言われますけれども!
 基本的に私たちは京都を尊敬してんねんで。伝統を守ってて立派やなあって」
「あれまあ、お上手やねぇ。
 大阪は高いビルがぎょうさんあるやないの。景観条例のある京都からしたら羨ましいわぁ」
「えっ? 『大阪はちっとは景観に気を使えやボケ』って意味?」
「ちゃうから! 別に裏とかないから! 本心からええなぁと思てるんやで」
「あはは、なら素直に喜んどくわ!」

 ここのやりとりは事前に葵から、どうしてもと頼まれて入れたものである。
 いつも裏があるわけではないとアピールしたいらしかった。
 そう言われても、立火にはある時とない時の区別はつかないのだが……。

 客席が温まる中、ライブ後の投票についての説明も済ませる。

「では続いて二曲目……」
「ちょーっと待ちやあーー!!」

(!?)

 後ろの方にいたフードにサングラスの人物が、人をかき分けステージに近づいてきた。
 立火もライブ中から、怪しいやつがいるなあとは思っていた。
 が、フードを脱ぎ捨てた瞬間、客たちの不審の目が驚きに変わる。

「タエラさんや!」
「何でここに!?」

 止める間もなく、そのグラサン少女はステージによじ登った。
 Westaの面々も地区予選で見たのを思い出す。夏の京都府予備予選一位、北山女子高校――

「『KYO-烈』部長、松ヶ崎妙良まつがさき たえらさん! これはどういう事や!」

 困惑する葵の詰問に、妙良はフンと鼻で笑って返した。

「どういう事とはこちらの台詞。
 何で京都四位ごときが、トップのうちを差し置いて代表面してるんや。
 おい、大阪人!」
「なんや!」
「YO YO! なぜ私たちに勝負を挑まない?
 ナニワの四位に勝ち目はない?
 涙が出るほどミジメじゃない?」
「天之錦の小梅は、元々うちから転校してったって縁があるんや! それに……」

 立火はひるまず言い返す。
 今は勝てそうにないのは事実だが、もっと大きな理由がある。



「これは京都vs大阪の勝負や! お前ら京都のきの字もないやんけ!」
「そうやそうや! 京都とラップに何の関係があるんや!」

 桜夜も抗議するが、ラッパー集団の部長は再度馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

「新しいものを常に取り入れ、進化してきたのが京都や。伝統にしがみつくばかりでは未来はないで」
「はぁ……ほんま、騒々しいお人やねぇ」

 さすがに我慢しきれなくなった胡蝶が、扇で口を隠して溜息をつく。

「北山のおしゃれな人が、こないな古くさいところにいたらあきまへんえ。早うお帰りやす」

 北山通は北大路通のさらに北。昭和60年に全線開通した、カフェや洋食店が並ぶおしゃれな通りである。
 そこからやって来た妙良は、何代も続く京都人の胡蝶を忌々しげに見た。

「洛中の人間はすぐそうやって見下す洛外! 偽る悪態!」
「誉めてるんやないの。被害妄想もたいがいにし」
「というか、要するに松ヶ崎さんはどうしたいん?」

 小梅の素直なツッコミに、妙良は一瞬ためらいつつも正直に言った。

「私にも一曲歌わせろ!」
「ええー……」
「それはええと思います! みんなで楽しく歌いましょう!」
「い、勇魚ちゃん。私たちは口挟まんとこね」

 小都子が勇魚の口をふさいでいる間に、部長たちの後ろに回った晴が、小声で何か話す。
 いつもは晴と一心同体の立火も、今回ばかりは眉をしかめた。

「よそ様にお邪魔しておいてやることとちゃうやろ……」
「でも知名度はさらに上がります。本気で全国へ行きたいなら、利用できるものは全て利用すべきです」
「参謀ちゃん、えげつない子やったんやなぁ。
 ……ま、そういうことはホストの役目やな」
「ちょっ、寿さん!?」

 立火の制止を振り切るように、葵は一歩前に出て大声を上げた。

「松ヶ崎さん、そこまで言うんやったら歌ってもろても構しまへん。
 せやけど見ての通り、体育館の後ろの方が結構空いてる。
 あんたに歌ってもらうには、少々寂しいかもしれへんねぇ」
「んなっ……」

 言葉の意味を理解した妙良は、サングラス越しに苦虫を噛み潰した。

「私の人気で今から客を呼べということか……」
「あらぁ、京都トップって威張ってたんや、それくらい簡単やろ? 自信がないんやったら結構やけど」
「くそっ、こんなセコい奴とは思わんかったで!
 ええやろ! すぐに集めてやる!」

 妙良はヤケ気味に叫ぶと、どこかへ電話をかけに出て行った。
 ようやく落ち着いた館内で、立火が後ろから小さく言う。

「すんまへん、寿さん」
「……まあ、京都人は嫌われるのには慣れてるんや」

 苦笑いして舞台袖に下がる部長を――今日を最後に部長でなくなる友人を、胡蝶も小梅も誇らしく思いながら追いかけた。
 Westaがこの恩に報いるには、ライブに全力を尽くすしかない。
 まだざわめいている観客に向け、立火は最大級の笑顔でイベントを再開する。

「はいはい気を取り直して!
 次はこのバトルロードのテーマソングとして作った曲や!
 つまりは本邦初公開。浪花の魂、よく耳に焼き付けたってや!」

 待たされていたメンバーたちも、一気に臨戦態勢に入った。
 客席に降りた晴と勇魚が、心の中で共に発表する、その曲名は――

『なにわLaughing!』
『うーーーー マンボ!』

 会場の空気が一気に弛緩する。
 アホで気楽で笑える曲調に、先ほどまでの緊迫感はどこかへ吹き飛んだ。
 特に配信で見ている全国の視聴者には、これこそが期待する大阪像なのだ。

わろてや! 浪花の女子の心意気
 ここは水の都大阪 細かいことは水に流して
 ノリとツッコミでゴーゴー!』

 他のメンバーが普通に手の甲を振る中、立火と桜夜だけが一回転して盛大にツッコんだ。

『”何でやねん!”』

(ああ……ようやく、ここまで来た気がする)

 眼前で楽しそうに踊る先輩たちを見て、小都子の胸にそんな想いが去来する。
 もちろん今までの曲も大事だし好きだけど、でもやっぱりこういう曲こそが、二人の本領発揮に思えた。
 小都子が入部を決意した時の、明るく笑えるWestaの姿だ。

 花歩の助けを得て、ここへ到達した夕理の笑顔が、小都子の視界の隅へと映る。
 心から嬉しくなりながら、自分も今だけは頭を空にする。

『苦しいときには見上げてや! 天にそびえる通天閣
 ビリケンさんが空から笑うてはるで~』

(姫ちゃん、楽しそう!)

 最後の観客席となる勇魚も、下から見ていて嬉しさを抑えられなかった。
 本来ならこういう曲は似合わない姫水が、自分のイメージなどお構いなしに笑っている。
 脳天気で、何の裏もない底抜けの笑顔――の演技。
 晴ですら、それが本物であると錯覚してしまいそうだ。
 姫水のパートに送られる歓声が、客も錯覚していることを如実に語る。

(くそっ、やっぱり勝たれへんの……?)

 つかさも全力でやっているが、どんどん離される感覚を味わう。
 だって本気になってからまだ一週間ちょいやし……この曲はそんなに練習してへんし……と浮かんでくる言い訳を、慌てて追い払う。
 今はとにかく必死で食らいつくしかない。

(うう……やっぱりつかさちゃん、すごいなあ)

 その後方から、さらに花歩が追いかける。
 一週間ちょいなのに、そんなに練習してないのに、目の端に映る彼女は華やかでダイナミックだった。

(って、この曲で落ち込んだらあかんやろ!)
(自分で作った歌詞やないか! Laugh! Laugh!)

 笑顔を呼び起こしながら、曲は超特急でサビへと到達する。

『Laughing! Laughing! なにわLaughing!
 笑うあなたに福きたる
 打ちましょ(パンパン!)』

 察した観客が、自分たちも叩くべく手を上げた。

『もひとつせ(パンパン!) いおうて三度でパパンがパン!』

 体育館全体に柏手が響き、そして大歓声に上書きされた。
 大人しかった西陣今宮の生徒も、伝統を重んじる天之錦のファンも、今だけは満面の笑顔を浮かべている。
 感動が爆発しそうな勇魚の隣で、晴は冷静に配信の様子を見た。

(こちらもかなりの好反応や)
(問題は、これでWorldsに勝てるかどうかやな……)
(まあ、気が早いか。まだ勝負を受けてくれるかも分からへんのや)

 そして舞台袖の天之錦たちは、拍手しつつも困り笑いを浮かべていた。

「ここまで盛り上げられると次が大変やなぁ」
「一曲目と二曲目、逆にした方が良かったやろか」

 小梅と葵がひそひそ語る一方、胡蝶はじっと次期部長に目を向けている。
 向けられた側は、首を横に振って毅然と顔を上げた。

「いえ、これでいいんです。この熱気を継続させましょう!」

 再びステージは交代し、京都の面々が出てくる。
 観客は少し意外そうだ。
 葵たちでなく、二年生が前面に立っていたのだから。

「次期部長の浄寺福枝きよでら ふくえです。
 先に宣言します。次の曲は和ロックです!」

 天之錦が現代曲を!?
 意外から驚きに変わる客たちに、福枝は事情を説明する。

「私たちは日舞が好きです。いつも静かに耳を傾けてくれるファンの皆さんにも感謝しています。
 でもやっぱり普通の女子高生ですし、キラキラしたアイドルや、先ほどのWestaさんのような盛り上がるライブにも正直憧れます。
 胡蝶先輩が引退して、今までのような日舞ができなくなった時……
 私たちはどこへ進めばよいのか、ずっと迷っていました」
(浄寺さん……)

 小都子としてはかなり身につまされる。
 いずれ自分にも降りかかる問題に、今は真剣に耳を傾ける。

「でも結局のところ、やってみないと分からへん!
 一回だけ、とにかくやってみようという案に、先輩たちも乗ってくれました」
「早蕨流の跡継ぎとしては、最初で最後やと思うけど……。
 芸のうちに貴賤なし。これも肥やしにさせてもらいますえ」

 何だか楽しそうな胡蝶に、葵と小梅も微笑んでいる。
 二年生二人がうなずき合い、高らかに曲名を名乗った。

『京洛 Shadow&Bright!』

 着物のままなので激しい動きはできないが、それでも袖を振り乱してロックが始まる。

『光と影が歴史を紡ぐ Millennium Castle Kyoto
 華やかな源氏物語の裏 魑魅魍魎の跋扈する平安!』
(なんや、最後にまた壊されてもうたねえ……)

 初めてのステージに浸りながら、胡蝶の脳裏に浮かぶのは入部する前のことだった。



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