<若葉の話>



「ええと、わたしがパン屋さんで働かせていただいてるのはご存知ですよね?」

「ああ、ほのぼの屋ね。あの店名前変えた方がいいよね」

「そんなことありませんっ。素敵なお名前ですっ!」

「あーはいはい。それで?」

「おじさんは日々新しいパンを研究しては焼いているのですが、わたしも何度も頼んだかいあって先日ついに自分の考えたパンを作らせていただけることとなったのです」

「『無謀屋』って店名に変えろって言っといてよ」

「黙って話を聞け!」

「うるさいわね!これも依頼人をリラックスさせる探偵技術のひとつなのよ」

「どこがだっ!」

「ケ、ケンカはやめてくださいっ!」

「す、すまない若葉」

「あーごめんごめん。で、何パン作ったって?」

「はい、甘口いちごパンです!」

「実はひとつ持ってまいりました!」

「‥‥‥‥。長くないわ、あの店」

「わ、若葉が一生懸命作ったんだぞ!そういう言い方があるかっ!」

「はーいはいはい。で、そのパンが何だって?」

「恐ろしいことに、盗まれてしまったんです」

「今ごろ死んでるわねその犯人…。なるほど大事件だわ!」

「き〜さ〜ま〜は〜!」

「いやわかった、真面目にやるわ。それじゃ盗まれた状況を詳しく話してくれる?」

「は、はいっ」



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