「なんだか客層が独特やね?」
「ちっちゃい子も来てるんやなー」
講堂に着席し、花歩と勇魚は前後を見渡す。
Number ∞に客を取られたのか、女子高生は思ったほど多くない。
一方で最前列には、近所の幼稚園から来たらしきチビっ子たち。
そして後方では、帝塚山あたりに住んでそうなマダムたちが、にこやかに会話を交わしている。
「アイドルというと、どうしても風紀的に好ましくない印象やけど……」
「聖莉守だけはほんま別やねえ。子供にも安心して見せられるわあ」
後ろから聞こえるひそひそ声に、立火は渋い顔である。
「とまあ、あんな感じで保護者ウケのいいのが聖莉守や」
「保護者に評価されているなら良いことじゃないですか」
「けっ! 大人が眉をひそめるような無茶もやるのがWestaやで!」
立火の極論に、姫水は困り笑いを返す。
きっと去年のWestaはそうだったのだろうけど、今年はそんな無茶ができるのかどうか。
特に姫水自身が、体制に刃向うロックな自分を想像できない。
時間になり、舞台の幕が開く。
拍手もどこか上品な中、聖莉守のメンバー十名がその姿を現した。
白を基調にした天使のような衣装。
その中心には和音と凉世が寄り添い、同時に揃ってお辞儀をする。
「皆様、本日は聖莉守のライブへようこそお越しくださいました。
今年度は部長としてこの私、小白川和音と――」
「副部長として、剣持凉世が務めさせていただいております」
「我が校の歴史と伝統を汚さぬよう、しっかりと進んでいきたいと思います」
「短い時間ですが、お楽しみいただけますと幸いです」
拍手の音が大きくなる中、さっそくライブが始まった。
一曲目は聖莉守の十八番である聖歌。
『黄昏静かに いと更けし夜
祈るは嬉しき 君の御心』
多少アイドルソング風のアレンジはあるものの、やっぱり聖歌である。
もちろんサイリウムを振る者などいるはずもない。
一応はダンスもあるが、派手さのない落ち着いたものだ。
(うーん、聖歌隊のコンサートを聞きに来た気分……)
子供たちは飽きるのではないか、と花歩が要らぬ心配をするが、そこは強豪校。
二曲目の前に、凉世が爽やかな笑顔で声を張り上げる。
「次の曲は元気に行きたいと思います!
小さなお友達のみんなも、良かったら一緒に手拍子を頼むで!」
一転して明るい雰囲気の中、エンタメ側に振った曲が披露される。
『Twinkle Twinkle さあ踊りましょう
手を取り軽やかに 心ごと跳ねるように!』
これもアイドルソングというより童謡という感じだったが、子供たちは笑顔で手を打ち鳴らした。
勇魚も大喜びで参加している。
終わった後は簡単なメンバー紹介と、今後の予定について。
そして和音の口から、スクールアイドルへの想いが語られた。
「私たちはラブライブでの勝利は求めていません。自分たちらしいライブができれば、それでええんやと思っています。
その点にご批判の声もあるでしょう。
ですが全てのスクールアイドルは、神の御前に等しく尊いもの。
それをどちらが上だ下だなどとは、私は決め付けたくはないのです」
「はわわ……なんて立派なお人なんや! 全くもってその通りや!」
小声で感動している勇魚を見て、こいつ怪しい宗教に簡単に引っかかりそうやな、と心配になる立火である。
「立火先輩! うちらも別に勝たなくていいと思います!」
「いいわけあるかボケェ! 全国行かれへんやないか!」
「うう……やっぱり行かなあかんですか?」
「あかん! 頼むでホンマに!」
ちょっと悲しそうな勇魚を、姫水と花歩がまあまあと慰める。
そうこうしている間にMCも終わり、和音の静かな声が響く。
「お名残惜しいのですが、次が最後の曲です」
(え!? 三曲しかやらへんの!?)
立火が内心で大いに突っ込む。
わざわざ遠出してきた客にその曲数は、不満を残すのではないか?
これは今年の聖莉守は恐るるに足らずか?……などと侮る気持ちさえ生まれたが。
ステージ上の聖女と騎士は、自信に満ち溢れた表情だった。
「私たちは年明け以来、この一曲に全てを懸けてきました」
「どうかお聞きください。『明星のオラトリオ』」
沈むような静寂の後、圧倒的な音楽が始まった。
(――これはっ……!)
すぐさま立火は、自らの不明を恥じた。
オペラ歌手と思わんばかりの声量が、二人の口から大河のごとく流れていく。
ダンスもまた一流のバレエと遜色なく、白い姿が縦横無尽に舞う。
この一曲のために、どれだけの練習を重ねてきたのか――。
曲自体も四分間と長めで、不満の残る客などいるはずもなかった。
最後の一音が消え、少しの間の後、万雷の拍手が鳴り響いた。
「皆様、本日はありがとうございました」
終演の挨拶に、さらに大きくなる拍手の中、立火は打ちのめされて動けない。
やはり聖莉守は強い。
彼女たち自身には勝つ気がないというのが、なおさら腹が立つ。
隣では勇魚が感涙にむせび、花歩が不安そうにしている。
「うち、今日から聖莉守のファンになります!」
「こんな凄いとこで芽生はやっていけるんやろか……」
そして姫水は、特に感慨もないように、ただ考察を語った。
「ああいう曲が評価されるのですから、天名さんの新曲も評価してもらえるのでは?」
「どうやろなあ……聖莉守の客は、元からああいうのが聞きたくて来てるんやし」
いくら技巧を凝らした懐石料理でも、ラーメン屋の客に出して喜ばれることはない。
Westaの客に求められているものをお出しできるのかどうか……。
とはいえ、今回の見学で大いに示唆を得られたのは確かだった。
「みんなもいい経験になったやろ!」
『はいっ!』
「挨拶していきたいけど、忙しそうやな。今日は大人しく退散しよか」
ステージ上では、高そうな服を着た大人が和音に花束を渡している。
それを遠くに眺め、立火たちは講堂を出た。
どのみち来月の予備予選で、直接顔を合わせるのだ。
校門に向かっていると、後ろから誰かが追いかけてくる。
「おーい! 丘本姉ー!!」
振り返ると、芽生の仲間のポニーテール少女だった。
確か熱季といったその子は、花歩たちの前へ来てふんぞり返る。
「どうや、私たち聖莉守の実力は! 恐れ入ったやろ!」
「え、わざわざそんなこと言いにきたの……」
「うん、ほんまに恐れ入ったで! 感動した!」
呆れ気味の花歩の一方で、勇魚は素直に絶賛を返す。
少し引いた熱季に、いつものように距離を詰める勇魚である。
「うちは佐々木勇魚! あなたは何ていうん?」
「け、
「あっちゃんやな! 同じスクールアイドル同士、これから仲良くしようね!」
「うんよろしく……って何で敵と握手してんねん!」
勝手に握ってきた勇魚の手は振り払われ、姫水が少しむっとした。
それに気付かず、熱季は立火へと人差し指を突きつける。
「おいWestaの部長! お前なんて、うちのねーちゃんがコテンパンにしたるからな!」
「剣持いうてたな。自分、あの副部長の妹か」
立火は平然としていたが、無礼な態度に花歩の怒りに火がつく。
「ちょっと! 敬語くらい使ったらどうなんや!」
「まーまー。他校の奴に細かいことはええやろ」
鷹揚に応じた立火は、腕組みして熱季に話しかける。
「お前みたいにイキのいい奴は嫌いやないで。けど、姉の威光をかさに来てるようではまだまだやな」
「う……や、やかましいわ! 今に見とき!」
痛いところを突かれた熱季は、勝手に敗北して校舎へ逃げ帰っていった。
それを見送りながら、一年生たちが言葉を交わす。
「何やったんや……芽生、あんな子と友達なんやろか」
「勝敗にこだわらないはずが、ずいぶん好戦的だったわね」
「でも元気でええやん! うちは好きやで!」
そんな様子を、立火は温かい目で見守っている。
花歩と勇魚にとっては、あの子は三年間を過ごすライバルになるのだろう。
自分と和音、鏡香がそうであるように。
さて帰ろう、と歩き出そうとしたところで、立火のスマホが鳴った。
* * *
チラシ配りを終えた桜夜たちは、構内へ足を踏み入れる。
ここは難波大学附属高校――ではなく。
少し離れた場所にある、難波大学のキャンパスだ。
ここの大ホールが、本日のライブ会場となっている。
「大学の施設使えるってズッルイなー。なんか不公平やない?」
「環境に文句を言うても仕方ないでしょう」
愚痴っている桜夜に、夕理が上から説教を始める。
「そもそも大阪のような都会で活動できる時点で、私たちも恵まれてるんです。田舎のグループの苦労も考えたらどうですか」
「ふーんだ、田舎なんかに住んでるのが悪いんやろ」
「あ、あなたって人は……」
先輩の暴言に夕理は開いた口がふさがらず、二年生二人は足を止めて相談を始めた。
「やっぱり桜夜先輩を連れていくのは心配やねぇ」
「ここから強制送還するか?」
「ごめんなさい! 自重します!」
涙目の桜夜に、つかさがケラケラ笑いながら先へと進んでいく。
今日は姫水にやきもきせずに済むので、足取りも軽やかだ。
ホールが近づくにつれて、周囲は賑やかになってきた。
「さあさあ! サービスしまっせ!」
「お客様は神様や!」
「サービスサービス!!」
Number ∞の部員らしき生徒が、法被を着て待ち構えている。
浪花の商人魂に満ちた女子高生が、すぐさまつかさ達に駆け寄ってきた。
「いらはいいらはい! ライブへお越しでっか?」
「そーでーす。五人ですけど入れます?」
「はい五名様ご案内~! こちらへどうぞ!」
この過剰なまでのサービス精神が、ナンインの人気の一因でもある。
ホールに入るところで記念グッズをもらった。
スクールアイドルらしく原価を安く抑えた、手作りの栞だ。
「部員たちが! 心を込めて作りましたので! どうぞ記念に!」
「は、はあ、どうも……」
(恩着せがましい連中やなぁ……)
小都子と桜夜が困惑する中、五人はスペースを見つけて着席する。
さすが全国常連なだけあって、ホールは大盛況だ。
開演時間になり、まだ私語が聞こえる中、それを打ち伏せるような大声が会場に響いた。
「みんなー! 盛り上がっていくでー!」
『おおー!』
そして始まったライブに、夕理は案の定というか乗り切れなかった。
哲学も何も感じられない、ただ人気を得るためだけの商品的なライブ。
こんなものに夢中になるなんて、よほど意識の低い人間ではないのか。
などと考えている夕理の近くで、意識の低い桜夜が夢中で腕を振っている。
「はーいはーいはいはいはいはい!」
「うー! はい! うー! はい!」
(この先輩、嫌いや言うてた割にノリノリやないか……。ほんまいい加減やな)
小都子とつかさもそれなりに楽しんでいて、晴は何かメモを取っている。
自分一人だけが会場から浮いている気がして、夕理は来たことを後悔し始めた。
二度目だったとしても、天王寺へ行くべきだったかもしれない。
ナンイン独自の展開を見せたのは三曲目だった。
それまでのメンバーは舞台裏へ消え、代わりに二軍がステージに飛び出てきたのだ。
「二階堂純奈です! 先日の投票で二軍に落とされましたが、この屈辱をバネに頑張ります! 投票お願いします!」
「大塚アリサです! 入学したばかりの一年生ですが下剋上大好きです! よろしくお願いします!」
次々とアピールしていく二軍たちに、つかさがぞっとしない顔で晴に尋ねる。
「え、一軍二軍って投票で決まるんですか?」
「一軍で最低の奴が落とされ、二軍最高の奴と入れ替わる」
「うっわ、えげつな……高校の部活でそこまでやりますかね」
「まあ、他の部みたいに顧問の一存で決まるよりは民主的やろ」
その二軍のパフォーマンスはしょせん二軍なりという感じだったが、推している人には切実なようで、そこここから必死の声援が聞こえる。
四曲目。二軍は退場し、衣装を着替えた一軍が再登場する。
スクールアイドルのライブで、時間がかかる衣装替えは滅多にない。
二軍を持ち、観客を飽きさせずに済むナンインならではの趣向だ。
「ここから一気にいくでぇ! みんな最後までついてきてやー!」
『うおおおおお!』
もうええわ、と夕理が渋面を作っている間に、怒涛の勢いで最後の二曲が終わった。
計五曲。さすがのサービス精神である。
小都子が満足そうなのが、夕理には少し悲しかった。
「いやあ、大盛り上がりやったねぇ。夕理ちゃんはどうやった?」
「私はあんまり……小都子先輩は意外と雑食なんですね」
「ま、まあこういうのは楽しんだもの勝ちやから」
ホールを出ると投票を受け付けていたが、あまりメンバーの区別がつかないので、五人ともスルーする。
ファンたちには一大イベントのようで、あの子の演技が良かった、いやあの子が可愛かったと、方々で激論が交わされている。
「みんな暇人やなぁ……」
「暇人が夢中になれるほどの暇潰し。それが娯楽ってもんやで木ノ川はん」
「げっ、戎屋」
嫌味な声に顔を向けると、去年さんざん見たニヤニヤ顔がこちらへ歩いてきた。
Number ∞部長、
自らはステージには上がらず、全体を統括する支配人的な立場だ。
その後ろには二人の二年生が、侍従のごとく付き従っている。
「情報班からWestaが来てるいう報告があってな。広町はんは逃げたの?」
「聖莉守の方に行ってるだけや! わざわざ日程ぶつけよって、ほんま性格悪いな!」
「いやいや、誤解やって。聖莉守の邪魔しようとか全然思てへん。ほんま偶然」
わざとらしく手を振ってから、鏡香は頬に指を当て残念そうに言う。
「ああでも、これなら来週にぶつけた方が良かったなあ。あんさん達が会場ガラガラで涙目の姿、さぞ見ものやったろうになぁ。ほんま惜しいことをした」
「こ、この性格最低クソ女……。みんな! こんな奴放っておいて帰るで!」
「お待ちください。一言挨拶させてください」
後ろに控えていた二年生の一人が、すっと前に進み出る。
クールな印象を発するその女生徒は、桜夜ではなく小都子に相対した。
「橘さんですね。私はNumber ∞次期部長の及川です。以後お見知りおきを」
「は、はあ、ご丁寧に。でもちょっと気ぃ早いんとちゃいます?」
「目先のことに捕らわれず、長い目で商いをするのが大阪商人なので」
「おいこら! 何勝手なこと言うとんねん!」
と、もう一人の二年生が不満顔で割り込んできた。
明るい雰囲気のその女生徒は、自分の胸に手を当て宣言する。
「次期部長はこの私、早乙女や! 橘さん、勘違いせんといてな!」
「引っ込め早乙女。お前のようなアホに組織の運営が行えるわけがないやろ」
「何やと及川!? やんのかこの根暗女!」
「とまあこんな感じで、今から競わせて次期部長を育ててるってわけや」
「ただの蠱毒やないですか。趣味のよろしいことで」
「はっはっは」
晴の皮肉を笑って流した鏡香は、小都子へ皮肉を投げ返す。
「そっちはどうなんや橘ちゃん。広町のやつ、ちゃんと育成してくれてんの?」
「立火先輩の頑張る姿を見て、いつも学ばせてもらっています。どうぞご心配なく!」
「はいはい精神論精神論」
「も、もうええからさっさと帰ろ!」
小都子の額に青筋が浮いているのを見て、桜夜が話を打ち切ろうとする。
鏡香もこれ以上の話はなかったが、最後に構内の一角を指さした。
「できれば帰る前にあれ頼むで」
指さした方を見ると、ナンインの部員たちが募金箱を持って並んでいる。
「善意のご寄付を受け付けてまーす」
「活動資金にご協力をお願いしまーす」
夕理は苦虫を噛み潰したような顔で、鏡香を睨みつける。
「スクールアイドルがお金集めはどうかと思いますが!」
「しゃあないやろ。うちの部、図体でかいから食費もかさむんや。ま、気い向いたらでええから」
今度こそ話を終えて、ナンイン部長たちはきびすを返した。
確かに今日の衣装だけでも出費が大きいことは、Westaの面々にも予想はできた。
鏡香としても不本意なようで、後輩たちにブツブツ言っている。
「はあ……全国常連なんやから、もうちょっと学校側も補助してくれてもなあ」
「学校経営は今どこも厳しいですからね」
「世知辛いですねー」
それを見送りながら、小都子が少し気の毒そうに言う。
「大きいところは大きいところで悩みがあるんやねぇ。ええもん見せてもろたのは確かやし、募金していきます?」
「冗談! 私は出さなくていい金はビタ一文出さへんからな!」
「まあ、わざわざ強敵に塩を送ることもないやろ」
桜夜と晴が拒否の姿勢だったので、他三人が一応百円だけ入れに行く。
夕理が義務感の百円玉を手にすると、募金箱を持つ女生徒がいい笑顔を見せてきた。
「五百円入れてくれたら、私と握手できますよ!」
「アンタそれでええんか!? そんなことやりたくてスクールアイドルになったんか!?」
「え? ええと、なんかすいません……」
結局最後まで、夕理にはストレスしか溜まらない場だった。
帰り道、つかさが正直な感想を言う。
「ぶっちゃけウチに勝ち目ないですよね?」
「う……」
上級生たちは何も言い返せない。
どちらの実力が上かはともかく、『どちらが票を集めそうか』については議論の余地すらなかった。
桜夜が引きつった笑顔でわずかな希望を言う。
「で、でもほら。四位以内に入れば全国行けるから!」
「一位はどうせ滋賀の学校なんでしょ? どんどん門が狭くなるやないですか」
「もう、弱気なことばっか言わない! 立火があれだけ行きたがってるんやから、絶対行くんや!」
「はいはい。ま、あたしはどっちでもいいですけどー」
つかさの態度に渋い顔をしながら、桜夜はスマホで電話をかける。
とりあえず現実逃避でもいいので、楽しいことをして帰りたかった。
「もしもし立火ー? こっち終わったけど、みんなでお茶でもしてくー?」
(え、藤上さんとお茶!?)
急にそわそわし始めたつかさを、夕理が複雑な目で見ている。
* * *
「え、熱季そんなこと言うてたの」
その日の晩。
無事ライブを終えた芽生は、自室で姉から感想を聞いていた。
「あの子あんまり聖莉守っぽくないよね」
「とにかくお姉さんと一緒の高校に通いたくて、死ぬ気で勉強したみたいやからね。授業についていくのに苦労してるけど」
「そ、そうなんやー」
芽生が天王寺福音を受けると聞いたとき、花歩は『あ、私は無理』と早々に諦めてしまった。
今のような話を聞くと、少しくらいは頑張ってみても良かったのかもしれない。
「なんというか、根性のない姉でごめん……」
「何言うてんの。お互い、自分に合った学校に進めたやろ」
「まあ……せやね」
住之江女子に入学して以来、多くの素敵な人たちに出会えた。
天王寺福音に行けば別の出会いがあったのだとしても、今の気持ちとしてWestaのメンバーが好きだ。
目の前で微笑む妹も、同じ気持ちのようだった。
「来週は、そっちのライブを見に行くからね」
「うん、期待しててええよ!」
他力本願で何だが、部長たちがきっと芽生を感動させてくれるはず。
いよいよあと一週間!