エタメロリレーSS

Melodic Notes Vol.2





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#0030   SkyFox (skyfox@ymg.urban.or.jp)    97/07/30 21:33:47
「…う、う〜ん…あら、私としたことがまた眠ってしまったようですわ」
 意識の戻った若葉は、上半身だけをゆっくりと起こして周囲を見回した。
 気を失ったせいで、先ほどまでどういう状況だったのか頭に残ってないらしい。
「えーと、あの、ここはどこでしょう? …あ、そうでしたわ。確か洞窟の中で…。
 あら、ババロン様はどちらに? それにこの老婦人は一体どなたなのでしょう?」
「まーだ言うかいこの嬢ちゃんは。ええ加減に目を覚ましたらどうなんだい?
 ワシがあんたの言うとるババロンじゃ」
 意識が戻っても相変わらずな大ボケをかます若葉に、半ばムッとした表情でババロンばあさんが答える。
「あら、そうだったのですか。これは大変失礼いたしました。
 はじめましてババロン様。私は紅若葉と申します。実は貴方様に助言を」
「もうそれはええ。大体の話は既にわかっておるでの」
 慌てて自己紹介をしようとする若葉の言葉を、ババロンが遮って話した。
「要は、この青年を元の世界に戻す方法を聞きに来た、そういうことじゃろうて」
「えッ!? ど、どうしてそれを!?」
 今度は来人が慌てふためいてババロンに尋ねる。初対面の来人の素性を一発で見抜くことなど、普通の人間ではありえないはずだ。服は既にこちらの世界のものに替えてある。別の世界の住人であったことなど、外見から判断するのは至難の業だ。それをいとも簡単に見破るとは…。
「なに、ちょっと占いをかじっておっての。たまたまそういう結果が見えただけじゃ」
 ババロンは事も無げにさらりと言ってのける。しかし、いくら占いをしていると言っても、並大抵の占い師ではそこまではわかるまい。別に占いなど信じてはいない来人も、さすがに、
(やっぱりこの婆さん、ただ者じゃないな…)
と舌を巻くのであった。

 後でカレンに聞いた話によると、隠居する前のババロンは、この世界でも1、2を争うほどの占星術師で、その占いの結果の正確さから、世間の人々の信頼も篤かったそうである。魔術に関しての知識も深く、魔術師組合の長を務めたこともあるが、どういった理由からか、若くして隠居生活に入り、今は1人でひっそりと暮らしている、とのことだ。


#0031   SkyFox (skyfox@ymg.urban.or.jp)    97/07/30 22:35:04
 さて。
「ところでリラよ。ワシが頼んでおいた物、ちゃんと買って来てくれたかの?」
 先ほどの洋服屋で買った服が入っている袋を持ち上げ「当然でしょ」とリラがそれに応じる。
「そりゃそうと、たかだか買い物に行っている間に、これだけの人数になるとはのぉ。
 …で? さっきからそこに隠れとる嬢ちゃんたちは何者なんじゃ?」
「あ、あはは…。はじめまして」
 オーガーが出てきたときに猛ダッシュで洞窟を飛び出したメイヤーが、入口の陰から姿を現し、おずおずと中に入ってくる。その両手には、目を回してグッタリとなったフィリーを抱えていた。恐らくさっきのダッシュの勢いで失神していたのであろう。全くとんだとばっちりである。
「私、オーガーとかの怪物関係が苦手なんですよね。しかもさっきのはいきなりだったから、あはは…」
 それでよく古代遺跡に調査に行けるよなぁ、と心の中だけでツッコミを入れた来人だった。

「それから、こっちで倒れてる嬢ちゃんはどうしたのじゃ?」
「あれ、ティナ? 確か俺がおんぶして…あ、そうか。さっき若葉を助けたときの反動で…」
 そこまで気づいて、来人は「しまった!」と焦った。いくら若葉を助けるためとは言え、またティナを気絶させるようなことをしてしまうなんて…。ティナには可哀想なことをしたなぁ、と反省する。…あれ? ティナが気絶してるってことは…。
「ね、ねぇカレン? あ、あのさぁ、ひょっとして、また俺がティナを背負わなきゃいけなくなっちゃったのかなぁ?」
「そりゃそうでしょ。またお願いね、来人クン」
「あ、やっぱり」

 倒れているティナを助け起こし、来人がおんぶする。さすがにまだ恥ずかしいのだが、もうそんな事を言ってる場合じゃない。それに、来人の中には「俺がティナを守らなきゃ」という思いもある。なぜそんな義務感が生じたのか、来人自身はまだわかっていないのだが…。
 カレンの手を借りて若葉が立ち上がる。まだ足元がフラフラしているようだが、カレンに支えられてなら何とか歩けそうだ。フィリーは気を失ったままだが、メイヤーがそのまま抱えていくことにした。
「何とまぁ体の弱い嬢ちゃんたちじゃのぉ。
 さてと、夜も遅くなったことだし、詳しい話はワシの家で聞くことにしよう。こっちじゃ」
 そう言うと、ババロンはさっさと洞窟の奥に向けて歩き出した。
 それにやや遅れて、来人たちも洞窟の奥へと消えていった。


#0032   しゅう (shu@scan-net.or.jp)    97/08/02 02:31:16
 ガサッ!
 洞窟の正面にある薮から音がした。
「ちぃ!もう少しだったというのに。しかし、奴等が来た所は分かったし、それに何といっても・・・」
「なぁ、なぁ。こんなトコでジッとしとっても退屈やんか。何か食べに行こうで
「えぇ〜ぃ、うるさい!だがまぁ、そうだな。あそこに忍び込むのも・・・誰だ!」
 カイルの手から放たれたツブテが、背後の闇に向かって飛ぶ。
 ガササッ!
 だが、ツブテは葉擦れの音を小さく響かせたのみで、他には何の物音もしない。
「・・・気のせいか・・・?」
「なぁなぁ、早よ行こうで!」
「う、うむ。・・・そうだな。」
 カイルはアルザに腕を引っ張られて街の中心部へと向かって行った。


#0033   SkyFox (skyfox@ymg.urban.or.jp/syam@fsinet.or.jp)    97/08/31 21:45:26
「…ふぅ、どうやら行ったみたいね」
 石つぶての飛んでいった方から、女の子の声が聞こえてきた。レミットである。
「それにしても盗み聞きなんて、あいつも魔族のくせにせこい事するわね」
「姫さまぁ、私たちも同じ事をしてたと思うんですけど…」
「うッ、うるさいわねアイリス!私はあいつらに侮辱されたのよ!だからいいのよ!」
「は、はぁ…」
 レミットの無茶苦茶な論法にも、アイリスはそれを否定しようとはしなかった。それがいつもの事だったからである。
 さて、来人やカイルたちと出くわして(強引に)別れたレミットは、その後無事にアイリスと合流できたのだが、その時アイリスには別の連れがいた。
「ねぇ、あいつ――来人とか言ってたわね――洞窟の中に入っていった方が何を話してたのか、聞き取れた?」
「うん、バッチリだよ!だってボクの耳はこんなに大きいからね」
 そう答えながら、頭の上でヒョコヒョコ動く耳を触るのは、キャラットという名の少女である。彼女は、フォーウッドと呼ばれる半獣人族の女の子で、長い毛で覆われた手足と丸い尻尾を持ち、頭の上に兎のような長い耳を持っている。

 アイリスがまだレミットを捜し回っていた時のこと。
 道に迷っていた若葉と何とか別れたあと、アイリスは一軒の花屋の前で、店先に並べられた花を楽しそうに眺めるキャラットに出会った。
「あのぉ、この近くで、女の子を見かけませんでしたでしょうか?」
「…え?どうしたの?誰か捜してるの?」
「はい、背はこのくらいで、金髪の女の子なんですが…」
「う〜ん、そんな女の子はこの街にいっぱいいるから、それだけじゃよく分からないよ。…そうだ!ボクも一緒に捜してあげるよ!」
「い、いえ、そこまでしていただかなくても…」
「いいからいいから!1人で捜すより、2人で捜した方が絶対早く見つかるって!」
「しかし、顔をご存じないでしょうし…」
 そりゃそうだ。レミットの顔なんか、キャラットが知っているはずはない。だが。
「で、でも…ほら!ボク、目はいいし、耳だって大きいから良く聞こえるよ!だから、ボクが金髪の女の子を見つけて、あなたがその子を確認すればいいよ!ね、それだったら早く見つかるよ」
「は、はぁ…」
 そうして無事レミットを見つけることができた、というわけである。ところが…。

「あ、アイリス!どこ行ってたのよ!ずいぶん捜したんだからね!…って、あんた誰?」
 アイリスと合流して開口一番のレミットのセリフである。
「ボク、キャラットって言うんだ。よろしく」
「あ、あたしはレミット…って何で自己紹介しなくちゃいけないの!?
 …そんな事よりアイリス、ちょっとやる事ができたわ」
「姫様、どうかなされたのですか?」
「どうもこうもないわよ!あいつら、このレミット・マリエーナを『嘘つき』だとか『チビ』だとかさんざん馬鹿にしたのよ!許せないわ!」
「はぁ、それで…」
「だから、あいつらの邪魔をしてやる事に決めたわ!このレミットを侮辱した事を後悔させてやるのよ!」
「そ、そんなぁ…」
「つべこべ言わないの!…そうだキャラット、あんたにも手伝ってもらうわよ」
「え?」

 あまりに強引な(書き手の)展開(のさせ方)によって、キャラットもレミット一行に加わることになったのであった。


#0034   SkyFox (skyfox@ymg.urban.or.jp/syam@fsinet.or.jp)    97/08/31 22:09:08
 話を元に戻そう。
 先ほど耳にした来人たちの会話を、キャラットが要約して聞かせる。
「…それでね、えーと、来人さんって言うんだっけ?あの男の人は異世界からやって来たんだって。それで、来人さんを元の世界に戻す方法を聞きに来たんだって」
「異世界?まっさかぁ、そんなものあるわけないじゃない。来人のヤツ、そんなんでよくも私を嘘つき呼ばわりしてくれたわね」
「いえ姫さま、そんな事はありませんよ。実際、異世界からやって来たと言う、有名な冒険者の話とかもありますよ」
「ふ、ふーん、そうなんだ。でも、あいつらが私を馬鹿にしたのは確かなんだから、元の世界に戻りたいんだか何だか知らないけど、それを邪魔してやるわ!」
「ひ、姫さまぁ、やめましょうよ邪魔なんて」
「あーもぉ、うるさいわね。やると言ったらやるの!ほら、アイリスにキャラット、来人たちの後を追うわよ!」
「あ、姫さま、待って下さ〜い!」
 そうして、レミットたちも、来人たちを追うように(実際追いかけているのだが)ババロンの住む洞窟の中へと入って行った。


#0035   しゅう (shu@scan-net.or.jp)    97/09/03 00:38:20
「これから洞窟を踏破して無事ワシの所まで辿り着ければ、助言をくれてやろうかの!ほっほっほっ!」
「え?!」
 ふいにババロンばあさんの発した言葉に来人は、動転した。
 ここに辿り着きさえすれば簡単にアドバイスが貰えると思っていたのが、実際は資格試験の様な物を受けなければならないらしい。
「ここに来たら望みの全てが手に入ると言われているだけの事はあるか。
 ただでは通さないという訳ね」
「そ、そんなに凄い人なんだ。ババロンばあさんって」
 リラの呟きに来人は感心したように応えた。
「嘘か本当か、生まれ変わる事さえできてしまうという噂も聞いた事があるわ」
「ま、まさか!?魔法じゃあるまいし」
「さあ、どうかしら?ババロンばあさんの事だからありえるわよ」
 そういうとカレンは来人にババロンばあさんの事を話して聞かせたのだった。
(#30 SkyFoxさんの最後の方)

「す、凄い!すごいよ!ババロンばあさん」
 来人は背中に炎を背負って燃えている。カレンの話を聞いてすっかりやる気になっている。
 さっきまでの萎みかけていた気持ちが、大きな希望で満たされてきたようだ。

「そんじゃ、あたしも一緒に行く事にするわ。とても一人じゃこの洞窟を突破する気にはならないけれど、こんだけ仲間がいれば大丈夫でしょ」
 リラが言った時だった。
「うわっち〜!」
 突然来人が叫んだ。
 どうやら来人の効果バックを演出する為に、背後でフィリーが焚いていた焚火の炎に炙られたらしい。
 それにしても、忙しい男である。


#0036   しゅう (shu@scan-net.or.jp)    97/09/03 06:13:45
「ちょっと〜、何でまだあいつらがこんなトコに居るのよ。危うく見付かる所だったわ」
 洞窟の入り口にレミット達がコソコソ隠れていた。
「それにしても、まさかこんな所にこんなスゴイ人がいるなんて!正にラッキー!私達もドサクサに紛れて行くわよ!
 アイリス!こんな遠くまで来たかいがあったわね!」
「あのう姫様。ババロン様にお会いする事も目的の一つなんですけど・・・」
「え!?うそっ!?観光が目的じゃなかったの?」
「ひ、姫さま〜」
 アイリスは目の幅涙を流した。・・・この人も苦労しますね〜。
 そのうちに、来人達は奥に向かって行ったらしく静かになった。
 だがレミット達は気付いていない。

「お主達もなんか用かの?」
「うわぁ!」
 不意に近くから話しかけられてレミット達は、飛び上がらんばかりに驚いた。
 振り返って見てみると、そこには笑みを浮かべたババロンばあさんが居る。
「ちょっと!この私を驚かせていいと思ってるの?痛い目にあうわよ!」
「ほう?痛い目とな?どんな目かのう?」
「ひ、姫さま。ババロン様に何て事を!?
 申し訳有りません、ババロン様。私達はマリエーナ王国から参りました。実は・・・」
「ワシに何か用があるのならば、この洞窟を抜けて来る事だの。
 それで無ければ、ワシはどんな相談にも応じぬぞ」
 深々とお辞儀しながら話すアイリスの言葉を遮ってババロンが言う。
「そ、そうでした。では姫さま、私達も参りましょう」
「もう!何でこんな事しないとイケナイのよ!もしこれで凄い事を教えてくれなかったらホントに痛い目見るわよ!」
 レミットはぷうと頬を膨らませながらも、アイリスと共に洞窟の奥に進んで行った。
「ボク暗い所苦手なんだけど、大丈夫かなぁ?」
 キャラットは不安そうに呟きながらも二人の後に付いて行く。
 ババロンはそんな三人が見えなくなるまで見送っていた。そしてその姿が一瞬揺らいだかと思うと掻き失せるようにして消えてしまった。

 一方、その頃のカイル達はというと・・・
「ココやココ。ココの料理がまたウマいんや!」
 アルザの案内で美味い店巡りをしていた・・・


#0037   しゅう (shu@scan-net.or.jp)    97/09/21 00:57:12
 カイルとアルザは嬉々として店の中に入って行った。
「いらっしゃ・・・」
 途端に聞こえた店の主人の大きな声。
 だがその声が途中で途切れる・・・
 そんな事にも気付かず、カイルとアルザは奥のテーブルに腰掛けた。
 店の主人は驚いたような顔でそんな二人を見ていた。
 が、慌てたように近くに居た小僧に耳打ちすると、背中を軽く叩いて店の外へと送り出した。
「おっちゃん!とりあえずココに書いてあるもの全部持って来てな☆」
 そんな主人の様子にも気付かずに、アルザの声が店内に響き渡った。
 どれほど経っただろうか。
 料理の運ばれて来るのが遅く、二人とも多少イラついてきた頃だった。

「ずいぶん探しましたよ。ムフッ!」
 その声は唐突に横から聞こえた。
「誰だ?お前は?」
 カイルは音も無くテーブルの横に立った男に驚きながらも、注意を逸らさぬようにゆっくりと立ち上がった。
 実際その男は、見るからに胡散臭げである。
 厳めしい筋肉質の体に似合わないような灰色がかった赤紫色のシャツに蝶ネクタイ。そして顔にはにこやかな笑みを浮かべながらポージングさえしている・・・


#0038   しゅう (shu@scan-net.or.jp)    97/09/21 01:20:06
「私ですか?私の事はバイト親父とでも呼んで下さい。ただのバイト斡旋人ですよ。
 いやなに、昼間あなた方が食い逃げしたお店のご主人に頼まれましてね。
 あなた達から食事代を取り立てる代わりに、働いて返してもらう事になりました。
 いやあ、あちこちの店にあなた達の似顔絵を持ってウロウロした甲斐がありましたねえ。さっそく見付かりましたから。
 さて、では行きましょうか?ムフッ!」
 カイルの問いに、にこやかな笑みをたたえたまま男はそう答えた。
 「う!そういえば、まだ金を払ってないな。
 まあ、今は金があるから後で払うと言う事で・・・食らえ!」
 いきなりカイルは右拳を繰り出した。
 突然の事に男は動く事も出来ない。

「ムフッ!」
 バイト親父の奇妙な掛け声とともにカイルが崩れ落ちる。
 何と!バイト親父は一瞬のうちにカイルの拳を左腕で受け流すと、右拳でカイルの腹に強烈な一撃を加えたのだ。
 しかし、そんな動きの中でも男の顔から笑みが消える事は無かった。
「おやおや!?あまり手荒な事はしたくなかったのですがねぇ。
 所でお嬢さんはおとなしく付いて来てもらえますよね?ムフッ!」
 今まで成り行きを見守っていたアルザに出来る事といえば、ただ上下にカクカクと首を振る事だけだった。


#0039   しゅう (shu@scan-net.or.jp)    97/09/22 06:37:52
「な、何だこれ?」
 来人達は洞窟の壁が淡い光を放つ為、明かりが無くとも周囲を見渡す事の出来る洞窟を奥に向かい進んでいた。
 やがて不意に広い空間に出たかと思うと、その眼前には地底を流れる河という驚くべき光景が出現したのだった。
 洞窟の横幅はだいぶ広い、そして奥行きともなると見当もつかない程だ。

 河の両岸は百メートル近くはあるだろうか?
 深さにしても底が見通せずどれだけあるのか判然としない。
 洞窟の壁から流れ出て反対側の壁に吸い込まれているようだった。

「まさか、ここを泳いで渡れってか?」
「無理ね!そこのひ弱そうな子達に渡れると思う?それにあんたもね」
 リラにそう反論されれば確かにその通りなのだが・・・では一体どうやって向こう岸に進めばいいというのだろう?
「あそこに何かあるようですね」
 メイヤーが指差す方を見ると、遠いので良く解らないが何かあるようだ。
 仕方が無いので取り敢えずそちらに向かってみる事にした。


#0040   ガテラー星人 (メール)    97/09/22 23:58:07
 ぼんやりとした光の中に浮かぶ河は幻想的な雰囲気をたたえ、音もなく流れ続けている。メイヤーの見つけたものに近づくにつれ、それはだんだんと船の形を取り始めた。
「いや、船というより…」
「イカダ…ですね」
 少し縦に細長いだけで要は丸太を並べて縛っただけである。真ん中には支柱が立っていて、ごていねいにボロ切れまで結びつけられている。オールも装備してあり、これに乗れということだろうか。
「そうそうイカダといえばですね。パゴガラス島の住民はイカダで大陸から渡ったのだという説がありまして、マカラス博士たちがそれを確かめるため実際にイカダを組んで…」
「あーわかったわかった。リラ、動きそう?」
「んー沈みはしないみたいだけどね。でも」
 罠がないかとイカダを調べていたリラが顔を上げて言った。
「ちょっとこの人数は重いかな?」
「おねーさんは軽いから大丈夫よ」
「あそ…。無理そうだったら2往復ね。…来人?」
「来人さん?」
 若葉を見つめる来人の顔がひきつっている。いや、正確には見ていたのは若葉の背後にあるものだった。わなわなと震える指を差されて若葉がゆっくり振り返ると…そこにはよくわからない白い影と、いくつかの蒼い火の玉が浮かんでいた。
「ゆ、ゆゆゆゆゆ…」
「まあ、これが噂に聞く人魂さんなのですね!さっそくご挨拶を」
「乗れッッ!!」
「ああっまだご挨拶が…」
 ひゅーどろどろ、といきなり響く不気味な音に目もくれず、一同はイカダに駆け込むと猛然と河へと漕ぎ出した。フィリーはともかくティナは最初から気絶していて正解だったかもしれない。
 思った以上の急流にオールを取られながら、リラがおそるおそる振り返る。
「ひぃぃ〜追ってくるぅぅぅ〜〜!!」


#0041  しゅう (shu@gigawave.ne.jp)   01/04 23:16:39
「それにしても、お主!一体何を考えておるのじゃ?
 あのように得体の知れぬ輩に」
 薄暗い部屋の中にババロンばあさんの声が響く。
「ふふっ。さあ、どうでしょうか?」
「ならば、ほれっ!見てみぃ、これを!」
 ババロンばあさんがテーブルの上に乗った水晶玉を指差した。
「おやおや!?これは、まあ」
 その水晶玉には、必死の形相でイカダを操る来人達の姿が映し出されていた。
「なんともはや、情けないとは思わんのかえ?」
「まぁ、確かに見た目情けなく見えるのは仕方ありません。
 ですが、見た目通りの人間だとしたら、果たしてこれだけの数の人間が彼について行くでしょうか?」
「うぅ〜む。確かにお主の言う事にも一理あるようじゃの・・・
 ・・・分かった!ではお主の言う通り、アヤツの手助けでもしてやるかの・・・」
「ありがとうございます」
「ふん!お主がそこまで入れ込んでおる、あの若造の行く末。
 このワシも見てみたくなったわい・・・のう、ロクサーヌよ」
 そう。ババロンばあさんと話していた人物こそ、あのロクサーヌだった。
 それにしても、神出鬼没な人物である。

#0042  しゅう (shu@gigawave.ne.jp)   01/16 00:42:30
「ハァッ、ハァッ、ハッ・・・も、もうアカン・・・か、堪忍してぇや」
 ピシッ!
 苦しそうな声に答えるように、鋭い鞭の音が響く。
「そんな事が本当に許されると思っているのですか?
 ねえアルザさん?ムフッ!」

 石造りのうす暗い部屋の中央に巨大な石臼とでも言うべき物が設置されている。
 その石臼から水平に棒が伸び、その棒をアルザが押して石臼の周りを回っていた。
 だが、その体は汗だくで今にも倒れるのではないかと思われる程に、その歩みは弱々しい。
 そして、そんなアルザの前には鞭を持った筋肉質の男・・・バイト親父が、にこやかな笑顔で立っていた。

「それにしても、あの男・・・何時になったら起きるのでしょう?ムフッ!」
「ハァッ、ハァッ・・・そ、それより・・・どうにかしてや〜」
「仕方ありませんね・・・ちょっと手荒ですが起こして交代にしますか。ムフッ!」
 バイト親父は気を失い床に倒れているカイルへと近づいていった。

#0043  ゆうな (yuuna@ps.inforyoma.or.jp)   04/06 15:18:37
「ハア・・ハア・・ハア・・」
「ハア・・・ハア・ハア・・・」
「ったく・・な・・ん・・で・・ハア・・・ひ・非科学て・・的な・・もの・・・が」
来人は追ってくる火の玉を横目で見ながら不機嫌そうな声でそうもらした。
「な・・に愚痴・・いっ・・てん・・の・・よ・・・ハア・・・そ・・んな
 暇・・ある・・・な・・ら・・もっと・・・力・・い・・れ・・て・・
 こ・・ぎ・・な・・さ・・い・・よ・・・。」
それを聞いたリラは来人をにらみながらもっと不機嫌そうに言い返した。
「そうよ、男の子は愚痴なんて言わないんだぞ。」
「カ・・レ・・ンに・・は言・・・わ・・れた・・くな・・い」
「そ・・れ・・に・・は・・同・・・感・・・ね・・」
一生懸命に漕ぐ二人に対しゆったりといかだに腰をおろしているカレンをじと目でみながら
二人は声をそろえていった。
「でも、オールは二つしかないんだからしょうがないでしょ」
「なら・・変わ・・って・・くれ・・」
「男の子でしょ、がんばりなさい」
そうやって言い逃れをするカレンに対し二人は不満をもらし始めた。
「そ・・・う・・やっ・・て自分・・だ・・け楽・・しよ・う・・と」
「だ・・・い・・た・・いカ・・レン・・はバ・・カ・・力・・なんだ・・から
 私が・・やるよ・・り・・ずっ・・と速・・いわ・・よ」 
「カ・・レ・・ンの・・バカ・・力・・・な・・ら一・・人・・で
 俺・・達よ・・りず・・っと・・速い・・よ」
調子に乗っている二人は自分たちが禁句を言っていることに気づかずさらにいいまくる
二人・・・・・が、それも長くは続かなかった・・・。
「うふふっ、リラちゃん?来人君?」
その瞬間二人はやっと背中からくる殺気に気がついた、と同時にもう手遅れだということ
を理解した。
「な・に・か・いっ・た?」
静かに・・異様なまでの静けさを漂わせてこちらをに見ているカレンに対し
蛇ににらまれたカエルのごとく凍っている二人は声をはっすることもできずに
立ちつくすのみであった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
が、彼らは忘れていた、今の状況を、自分たちが追いかけられていることを・・・
「あ・・・い・・・いや・・カ・・カレンそ・・その・・・!カレン!後ろ!」
「!」



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※CGIがエラーを出していたようです。書き込んだのに書き込めなかった方、申し訳ありません。
 もう賞味期限切れなので終了とします。オチは時間のあるときにつけておきます。(2003/04/06)


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管理者:ガテラー星人