海馬コーポレーション社長室で仕事中の海馬瀬人のところに、書類を持って現れるモクバ。
モクバ「兄サマー。クリスマスパーティの企画書が上がってきたよ」
海馬「フン、各界の名士を集めた馬鹿騒ぎか。例年のこととはいえ、くだらん話だな」
モクバ「そう言うなよ兄サマ。うちの会社は上向きでも日本全体は不況なんだからさー。業界の付き合いも大事にしなくちゃいけないぜぃ」
海馬「…成長したな、モクバ…」
企画書にハンコを押しながら、海馬は例によって余計なことを思いつく。
海馬「(待てよ、大勢が集まるパーティといえば華々しい舞台…。オレと奴の決着をつけるに相応しいではないか!) モクバ、企画変更だ! すぐに全国の決闘者(デュエリスト)共にも招待状を出せ!」
モクバ「え? 何をするの兄サマ?」
海馬「フフ…今年は結局一度も勝てなかったが、要は最後に勝利すればよいのだ。見ているがいい遊戯! 貴様に敗北というクリスマスプレゼントをくれてやるわ! ワハハハハ…」
聖夜のデュエル!
吼えろホーリーナイトドラゴン
ここは海馬コーポレーションイベントホール。あまりに豪勢なパーティー会場に、招待された皆も驚いていた。
杏子「うわ、すっごいご馳走!」
本田「ほ、本当にこれ全部食っていいのかよ? そ、それに見ろよあれ」
御伽「ああ、タレントやら議員やら…有名人ばかりだね」
獏良「さすがは海馬君だねー」
騒ぐ一同に、遊戯もにっこり笑って城之内を見上げる。
遊戯「感謝しなくちゃ。ね、城之内くん!」
城之内「おいおい、油断すんなよ遊戯。前にもこんなことあったじゃねーか。海馬の野郎、何を企んでるか分かったもんじゃねえぜ」
静香「もう、駄目よお兄ちゃん。せっかく招待してもらったのにそんなこと言って…」
城之内「で、でもなあ静香。オレ達は前に…」
その時会場の照明が落ち、一カ所だけスポットライトが当たる中、マイクを持って現れる海馬。
海馬「わが海馬コーポレーションの誇るクリスマスパーティーにようこそ。日頃の現実を忘れてせいぜい楽しんでいくがいい。ワハハハハ!」
城之内「く…。どっかで聞いたようなセリフ言いやがって、海馬のヤロー〜!」
海馬「フン、凡骨か。今日貴様らを呼んだのは、ひとえにオレの勝利の立会人とさせるため。凡骨は凡骨らしく、オレと遊戯の宿命の決闘(デュエル)を指をくわえて見ているがいい」
城之内「てめえ、勝手なこと言いやがって。またDEATH-Tの時みたいに、オレ達を罠にはめようって気じゃねえのか!」
海馬「フ、そんなこともあったか…。まあ連載初期の戯れ言だから忘れてくれたまえ!」
城之内「戯れ言で殺すかぁフツー!」
照明がつく。文句を言う城之内を無視して、遊戯へと向き合う海馬。
海馬「遊戯よ、世間ではクリスマスなどというくだらん催しにうつつを抜かしているようだが…。オレ達の闘いのロードにそんなものは関係ない! 我ら二人が対峙した以上、今日この日も決闘をせねばなるまい!」
海馬の勢いに、両手を肩まで上げて苦笑する遊戯。
遊戯「ま、またデュエル〜? せっかくみんな集まってるんだし、大勢で楽しめるゲームにしようよ」
杏子「あ、さすがは遊戯。そうよそうよ、いつも見てるだけじゃつまんないもん」
本田「ここはひとつ王様ゲームなんてどうだ?」
獏良「本物の王様もいるけどね〜」
海馬「き、貴様ぁぁぁ! M&W以外のゲームに手を出すとは、決闘者の風上にも置けん奴め!」
御伽「おもちゃ会社の社長がそんなこと言ってていいのかい…」
海馬「フン! どうしても決闘を拒むというなら、もはや貴様らに用はない。パーティーに参加することは許さん、帰れ!」
一同『な……!』
あまりの言葉に凍りつく一同。
本田「くそ、これだけのご馳走を目にして食わずに帰るなんて…」
杏子「まさに拷問って感じよね…」
静香「ど、どうしようお兄ちゃん。正月はこれでしのごうと思って、タッパーたくさん持ってきたのに…」
城之内「く…。すまねぇ静香、オレが貧乏なばっかりに…」
落胆する仲間たちに、さすがに遊戯も千年パズルに向かって相談する。
遊戯「どうしよう、もう一人のボク?」
遊戯『相棒、オレ達の仲間のクリスマスを暗くするわけにはいかない。それにどんな状況でも勝負を受けるのが真の決闘者ってものだぜ!』
遊戯「うん!」
千年パズルが光り、遊戯の人格が入れ替わった!
遊戯「海馬! オレは逃げも隠れもしないぜ!」
海馬「フ…そうでなくてはな。クリスマスであろうと死闘の場と化す、それがオレ達の宿命なのだ!」
城之内「お、おい遊戯、いいんだぜ無理しなくても。年越しなんてカップ麺でも十分なんだからよ」
遊戯「おっと城之内くん! 決闘者が一度決めた戦いに口出しは無用だぜ」
城之内「遊戯…。よっしゃあ! ここはひとつオレも参加させてもらうぜ!」
海馬「フン、バカな凡骨がバカなことを…。貴様の出る幕など」
遊戯「ああ! 闘(や)ろうぜ、城之内くん!」
海馬「き、貴様ぁ!」
??「あ〜ら、それならあたしも混ぜてもらいたいわね」
グラス片手に現れたのは、豪華にドレスアップした孔雀舞だった。
遊戯&城之内「舞!」
舞 「ハーイ、メリークリスマス。つまらないパーティーだと思ったけど、来たかいがあったみたいね」
遊戯「ああ、この勝負受けて立つぜ!」
海馬「ぬぬぬぅ、主催者を無視して勝手に話を進めるとは…。許さんぞ! この決闘は」
??「ジャスト・ア・モ〜〜メ〜〜ント!」
海馬「今度はなんだっ!」
頭上に張り出したバルコニーの上から、パチ、パチ、パチ…と拍手の音。
ペガ「グッドイブニーング、決闘者の皆サーン」
一同『ペガサスー!?』
海馬「き、貴様、生きていたとは…!」
トゥーンにボコられた記憶がよみがえり、苦い表情の海馬。
ペガ「オーノー、死んだとは一言も言ってまセーン。それより海馬ボーイ、見れば面白い決闘が始まる様子。ひとつM&Wの製作者であるこの私が、クリスマスに相応しいルールを提案しまショーウ」
海馬「ふざけるな、貴様の考えたルールなどろくでもないものに決まっているわ。帰れ!」
ペガ「OH、それはとっても残念デース。世界に1枚しかないレアカードを持ってきたのデスが…」
海馬「何!! 世界に1枚しかないレアカードだと!!!」
あっさり釣られてペガサスのルールに乗る海馬。
ペガ「ルールはとっても簡単デース。クリスマスに関係するカード、および名前に『聖』『天使』『雪』『冬』が入ったカードの能力が、コストを除いて2倍になる……名付けてクリスマスルール!」
城之内「(能力が2倍…!?)」
杏子「(ってことは攻撃力1400のシャインエンジェルなら、攻撃力が2800になるってことね…)」
ペガ「さらに、私の作ったこのオリジナル『クリスマスカード』をデッキに1枚ずつ入れてもらいマース」
そう言って4枚のカードを見せるペガサス。しかし裏向きなので、内容は分からない。
ペガ「どうデス…。このルール、受けますカ?」
城之内「へ! 面白そうじゃねえか!」
舞 「クリスマスにはもってこいね」
遊戯「ああ!」
海馬「フン…、まあいいだろう。その代わり、勝者は4枚のクリスマスカードを全て手にできる…というルールを追加してもらう!」
ペガ「OKOK」
こうしてルールも決まり、決闘開始は30分後、それまでにデッキを構築することになった。
遊戯たちと別れ、料理を食べながら予想を繰り広げる杏子たち。
杏子「ねえ、誰が勝つと思う?」
本田「そりゃーやっぱり遊戯だろ。城之内にも踏ん張ってほしいけどよ」
静香「舞さんも、自信ありそうでしたよ」
御伽「いや、このルールは海馬君に有利だ。彼のコレクションならクリスマスルールが適用されるカードを山ほど持っているだろうからね……あれ、獏良君は?」
周囲を見回す一同だが、獏良の姿はどこにもなかった。
その頃、別室でデッキを構築する海馬。
モクバ「兄サマ、あんなルールで大丈夫かい?」
海馬「ククク…。モクバよ、あのルールはオレのためにあるようなものだ」
モクバ「そ、そのカードは…!」
『ホーリー・ナイト・ドラゴン』!
ホーリー・ナイト・ドラゴン /光 ★★★★★★★ 【ドラゴン族】
聖なる炎で悪しき者
を焼きはらう、神聖な
力を持つドラゴン
攻2500
守2300
攻2500/守2300の7つ星カード。オークションでも高額がつく超レアカードだが、海馬は当然のように36枚持っていた。
海馬「このカードを場に出せば攻撃力5000、もはや敵はない。悪く思うな遊戯、どれだけのカードを集められるかもTCG(トレーディングカードゲーム)の実力の内! 勝利の鐘は今度こそオレの上に鳴り響くのだ! ワハハハハ」
同じく、別室でデッキを構築する城之内。
城之内「(へへへ…。妙なルールだがよ、こいつを使えば楽勝だぜ!)」
その手にあるのは魔法カード『天使のサイコロ』!
城之内「(能力2倍ってことはサイコロで6が出れば12倍の攻撃力。ランドスターの剣士なら攻撃力500だから、え〜っと…と、とにかくメチャ強くなるわけだ! もう勝ったも同然だな!)」
同じく遊戯。
遊戯『どうしよう、もう一人のボク。クリスマス関係のカードをたくさん入れようか?』
遊戯「いや、あのルールに捕らわれすぎると、かえって自分を見失うことになる。ここは今まで通りのデッキを信じようぜ」
遊戯『うん、そうだね! それと、神のカードはどうする?』
遊戯「フ、今回は外しておくぜ。こんな日に使ったら、キリスト教の神サマが気を悪くしそうだしな」
そして舞のところには客が来ていた。
??「こんにちは…」
舞 「あ…あなたは…!」
褐色の肌をエジプト風の衣装で包んだ3人。マリク、イシズ、リシドである。
イシズ「先日は弟がとんだご迷惑を…。ほら、謝りなさい」
マリク「い、痛いよ姉さん! ご、ごめんなさい…」
舞 「いいわよいいわよ、別の人格だったって話だし。それに決闘に負けたあたしが悪いのよ」
マリク「さすが、綺麗なお姉さんは心も広いんですね!」
舞 「あ、あら。やあねえボーヤ、本当のことを!」
マリク「それで、心が広いついでにお願いなんですが…。今日の決闘、ボクと代わってもらえませんか?」
舞 「え? 何言ってんのよアンタ。できるわけないでしょ」
とたんにわざとらしいほど暗い顔になるマリク。
マリク「そ、そうですよね…。一度でいい、彼らと純粋に決闘してみたかったけど、しょせんボクにそんな資格はないんですね。暗い地の底で何の楽しみもなく生きていくのがお似合いなんだ…」
リシド「マリク様、おいたわしや…」
舞 「うう…。あ〜っもう! 仕方ないわね、そんな顔されたら断れないじゃない」
マリク「本当ですか! ありがとうございます、美人のお姉さん!」
舞 「はあ、しょうがないから審判でもやろうかしら…」
脱力して会場に戻る舞と、後に続くイシズ、リシド。そして最後尾のマリクの口が、不意に邪悪な形に歪む。
マリク「(クク…、こんなに早くチャンスが巡ってくるとはね…。見ていろファラオ! 今日こそお前を倒し――ヘタレの名を返上してやるよ!)」
そんなことを考えている時点でヘタレなことに気づかないヘタレマリクだった…。
その頃、会場の真ん中に据え付けられた巨大クリスマスツリーの枝に、千年リングを下げた少年が腰掛け、下の連中を見下ろしていた。
バクラ「ククク、どいつもこいつも楽しそうだがよ…。クリスマスとあっちゃあ、とりあえず何か悪いことでもしとかねぇとなぁ…」
まったく意味のないあたりがまさに悪。バクラは3枚のカードを取り出すと、リングの力を使って念を込める。
バクラ「オレの心の一部をこのカードに封印した…。名付けて『分身カード』! 行け、最も憎い奴のデッキへ!」
バクラに操られた3枚のカードは会場を飛び、遊戯のデッキに密かに入り込んだ。
バクラ「(遊戯、これで貴様は終わりだぜ! ヒャーハハハハハー!)」
30分が経ち、ツリーの下に設置された決闘場に決闘者が集まってくる。
マリク「やあ、ボクが4人目になったよ。ヨロシク!」
城之内「マリク!?」
遊戯「舞は交代したのか?」
舞 「ま、ちょっと色々あってさ…。代わりに審判をやらせてもらうわ」
四方に決闘盤を腕に付けた4人が立ち、ギャラリーが周囲を取り囲む。
舞 「決闘はバトルシティルール+クリスマスルールのバトルロイヤル。1ターン目は全員攻撃不可。ミラーフォースなど『相手の場』を対象としたカードは、相手3人すべての場が対象になる。隣り合う者へのダイレクトアタックは、自分のモンスターを身代わりにすることが可能。何か質問は?」
特に質問はなかったので、ペガサスが決闘場に上がる。
ペガ「それではクリスマスカードをお渡ししマース。中を見ないでデッキに入れてくだサーイ」
ペガサスが広げた4枚のカードから、それぞれババ抜きのように1枚ずつ引いてデッキに入れ、よくシャッフル。
隣の相手のデッキをカット&シャッフルし、ジャンケンで攻撃順を決めて、準備完了。
攻撃順は遊戯→城之内→海馬→マリク、それぞれの初期手札は以下の通り。
遊戯 磁石の戦士α、磁石の戦士γ、連鎖破壊、遺言状、光の封札剣
城之内 ワイバーンの戦士、鎖付きブーメラン、ランドスターの剣士、魔導騎士ギルティア、ものマネ幻想師
海馬 Y−ドラゴン・ヘッド、ドラゴンを呼ぶ笛、ガーゴイル・パワード、ミノタウルス、攻撃誘導アーマー
マリク ワームドレイク、天使の施し、速攻、封印されし者の左腕、堕天使マリー
舞 「いいわね? それじゃ…」
舞は右手を挙げると、数瞬を置いて勢いよく振り下ろした。
『決闘(デュエル)!!』
遊戯「オレのターン! ドロー!」
遊戯が引いたのは『融合解除』。とりあえず今は役に立たない。
遊戯「磁石の戦士γを守備表示! カードを1枚伏せ、ターン終了!」
城之内「オレのターン! (くそ、天使のサイコロがほしかったのに悪魔のサイコロかよ…) ワイバーンの戦士を攻撃表示、伏せカードを1枚出してターン終了だぜ!」
海馬「オレのターン! ミノタウルスを攻撃表示で場に出し、カードを2枚伏せる! ターンエンド!」
マリク「ボクのターン! 魔法カード『天使の施し』!」
ペガ「OH、さっそくクリスマスルール発動デース」
一同『なに!?』
ソリッドビジョンにより天使が映し出され、クリスマスの会場を舞う。
マリク「フフ、こいつは絶大な効果になるからね…。6枚引き、4枚捨てる!」
6枚ドローという凶悪な効果に、固唾をのんで見守るしかない他の3人。しかし、当のマリクは内心で舌打ちしていた。
マリク「(チッ! 生還の宝札と強制転移は揃ったけど、肝心のリバイバルスライムが来ない…。あの2枚さえ来ればボクの勝利は確定するのに!)」
バトルロイヤルでは、最悪の場合1ターンに3人から攻撃を受けることになる。強い壁モンスターがなければ瞬殺の恐れもあるのだが、マリクの手札で最も堅いワームドレイクでも守備力は1500しかない。
マリク「(クッ、どうする…。ん?)」
自分のコンボにばかり気を取られていたマリクは、そこでようやく見慣れぬカードに気づいた。
雪原 フィールド魔法カード すべてのプレイヤーは1ターンに1体のモン
スターでしか攻撃できない。獣族、獣戦士族、
爬虫類族、ドラゴン族、昆虫族、恐竜族は冬
眠し、攻撃・生け贄が不可となる。
マリク「(これがクリスマスカードか…。へえ、なかなかいいカードじゃないか)」
城之内「何だよマリク、ニヤニヤ笑いやがって」
マリク「ああごめんごめん。ボクはロードポイズン、堕天使マリー、速攻、魔法解除を墓地に捨てる。ワームドレイクを守備表示で場に出し――フィールド魔法発動! 『雪原』!」
マリクの使ったフィールド魔法により、会場すべてが一面の銀世界に覆われた。
静香「わ、きれーい」
城之内「き…気分的に寒ぅ〜!」
遊戯「そのカード、初めて見るぜ。まさかクリスマスカード!」
マリク「フフ、その通り…。このカードにより1ターンに1体のモンスターしか戦闘には参加できず…。さらに獣、獣戦士は冬眠するのさ!」
海馬&城之内『なに!』
マリクの言葉通り、海馬のミノタウルスと城之内のワイバーンの戦士は丸くなって眠ってしまった。
城之内「く…くそ〜。せっかく召喚したのによー!」
海馬「(く、これではホーリーナイトも青眼も何もできん…。恐るべしクリスマスカード!)」
マリク「ターン終了だ!」
これで一巡。次から攻撃が可能になる。
遊戯「オレのターン!」
引いたのは『デーモンの召喚』。磁石の戦士αを召喚する手もあるが、雪原のせいで1ターンに1体しか攻撃に参加できない。
遊戯「(しかしこのフィールド魔法は、使用したマリク自身も大きな制約を受けるはず。何が狙いなのか気になるぜ…)」
遊戯が表マリクと戦ったのは人形戦のみだが、オシリスがない今は参考にならない。あとはマリクに洗脳されたグールズとの決闘くらいしか…。
遊戯「(まさか!) オレはカードを一枚伏せ、磁石の戦士γを生け贄に、デーモンの召喚を攻撃表示!」
6つ星モンスターである『デーモンの召喚』が生け贄1体により召喚される。
遊戯「マリクのワームドレイクを攻撃するぜ!」
『魔降雷!』
ワームドレイクは破壊されたが、マリクは余裕の表情だった。
遊戯「ターンエンド!」
城之内「オレのターン! ワイバーンの戦士を生け贄に…って冬眠してるから生け贄にもできねえ。ターン終了!」
海馬「オレのターン。Y−ドラゴン・ヘッドを召喚し、マリクに攻撃!」
機械族のY−ドラゴン・ヘッドは冬眠せず、マリクに1500ポイントのダメージを与えた。マリクの残りライフは2500…だが、相変わらず表情に危機感はない。
海馬「カードを1枚伏せ、ターン終了!」
マリク「ボクのターン」
マリクはドローカードを見てニヤリと微笑んだ。
マリク「おっと。墓地にある堕天使マリーの効果により、ライフが200回復。いや、クリスマスルールで400かな?」
ペガ「堕天使なので却下デース」
マリク「フン、まあいいさ。このカードに賭ける! 魔法カード『天使の施し』!」
海馬「なに!」
城之内「またかよ!」
そして6枚のカードを引いたマリクの笑みは、高笑いに変わった。
マリク「ハハハハハ! 残念だったね3人とも、これでボクの勝利が確定した!」
一同『な…なんだと!』
マリク「リバイバルスライム、スライム増殖炉、悪夢の鉄檻、地獄詩人ヘルポエマーを捨てる。さあ、見せてやるよ最強無敵のコンボを…。まずは魔法カード『死者蘇生』!」
マリクの死者蘇生により、リバイバルスライムが攻撃表示で場に出た。
マリク「さらに魔法カード『生還の宝札』を発動。もう1体のリバイバルスライムを攻撃表示で召喚! そして――これが新コンボのキーカードだ! 魔法カード『強制転移』!!」
強制転移 魔法カード お互いが自分のフィールド上モンスターを1
体ずつ選択し、そのモンスターのコントロー
ルを入れ替える。選択されたモンスターは、
このターン表示形式の変更は出来ない。
マリク「遊戯! ボクのリバイバルスライムと、貴様のモンスター1体を入れ替える! ま、貴様のモンスターは1体だけだから、選ぶ必要もないけどね…」
遊戯「……」
城之内「な…なんだ? マリクの奴。デーモンを奪ってどうしようってんだ?」
海馬「く…! 生還の宝札が場に出ている。まさか奴の狙いはデーモンではなく…」
マリク「そう…。ボクのリバイバルスライムで、遊戯のリバイバルスライムを攻撃!」
リバイバルスライム同士の戦闘! 攻撃力が等しいので、当然相打ちになる。
マリク「そして――再生する!」
マリク、遊戯それぞれの場でリバイバルスライムが再生した。その瞬間…
マリク「生還の宝札の効果により、カードを6枚ドロー!」
城之内「な…なんだとぉぉお!」
マリク「ハハハハ! これがゴッドファイブを改良した無限ドローコンボさ! リバイバルスライムは一度場から消えたので、再度攻撃することができる! さらに都合の良いところで止められるので、デッキ切れの心配もない!」
海馬「フン、多少は考えたと言いたいところだが…。貴様の場に『無限の手札』はない! 何枚ドローしようが、エンドフェイズで手札を6枚に調整しなければならないのだ!」
マリク「甘いね海馬瀬人! あいにくだが、ボクがエンドフェイズを迎えることはないのさ!」
海馬「な…なんだと」
マリク「わからないのかい? あるじゃないか、ドローだけで勝利が確定するカードが」
海馬「ま、まさか…」
『封印されしエクゾディア』!
その場にいた決闘者全員に戦慄が走る。確かにいくらでもドローできるなら、エクゾディアは必ず揃うのだ。
マリク「(さあファラオ! 恐怖に脅えろ。敗北を前に地に這うがいい!)」
遊戯「フフ…」
マリク「な…何がおかしい!」
遊戯「マリク、お前がエクゾディアの召喚を狙っていたことは分かっていたぜ! 『雪原』という、攻撃以外での勝利を目指すようなカードを使った時からな!」
マリク「へ、へえ…。しかし、分かったからどうだって言うんだい!?」
遊戯「忘れたのか、お前と同じ戦術を使った決闘者が、どうやって決闘に敗れたのか…」
マリク「(な、なに…)」
マリクの目が、遊戯の場に伏せられた2枚のカードに釘付けになる。
マリク「そ、そこに伏せられているのは…。『光の封札剣』と『連鎖破壊』!?」
遊戯「フフ…。だとしたらどうする?」
マリク「く…そんな都合良く揃ってたまるものか! もしそうだとしても、何枚もある手札から封札剣でエクゾディアパーツを射抜けるわけがない!」
遊戯「そう思うならやってみな!」
さっきまでの威勢はどこへやら、冷や汗まみれのマリクだが…どっちにしろエクゾディアで勝つ以外は手がないデッキである。このコンボを続けるしかない。
マリク「リ…リバイバルスライム! リバイバルスライムに攻撃!」
そして6枚ドロー、6枚ドロー…と繰り返し、3回目のドローでマリクの顔色が変わった。その瞬間遊戯も動く。
遊戯「(今しかない!) 伏せカードオープン! 『光の…」
城之内「待ちな、遊戯!」
遊戯「城之内くん!?」
城之内「そんな奴に貴重な伏せカードを2枚も使うこたーねえよ。この際放っておこうぜ!」
本田「な、何言ってんだ? 城之内のやつ」
御伽「寒さで脳が凍ったのかい!?」
外野の声を気にもせず、ちらりとペガサスの方を見る城之内。それを受けて、遊戯も気づいたように強く頷いた。
遊戯「ああ、そうだな城之内くん!」
マリク「……。封札剣を発動しないのか?」
遊戯「ああ」
マリク「ハ…ハハハハ! どうやら負けを覚悟したようだな。見ろ、ここに神の四肢たるすべてのパーツは揃った! エクゾディアは召喚され…」
ペガ「Oh、それは凄いデース!」
マリク「え…」
いきなり決闘場に上がってくるペガサス。
ペガ「『エクゾディア』はほとんど出荷されてないカード。それを5枚も揃えるとは大したものデース。ちょっと見せてもらえませんカー?」
マリク「え、あの…」
ペガ「ムム? どうもホログラムマークがI^2社の正規品と違うようデース。まさか…偽造品?」
マリク「はうあ!」
イシズ「まあ、何ですってマリク!」
あっさりバレて、目を釣り上げたイシズに迫られるマリク。
イシズ「あなたという子は、まだそんなものを使っていたのですか!」
マリク「だ、だってせっかく作ったんだし捨てるのももったいな…」
イシズ「そういう問題ではありません! まったく、少しは反省したと思ったのに…」
マリク「い、痛いよ姉さん! 耳引っ張らないで!」
舞 「え〜と…」
思わぬ事態に迷う舞だが、やがて右手を高く挙げ…
舞 「偽造カードは当然ルール違反よね。マリク君は失格!」
マリク「(ガーーーン)」
かくして、元グールズ総帥の決闘は終わりを告げたのだった。
イシズ「マリク、あなたは1ヶ月間おやつ抜きです」
マリク「そんなあ! 姉さんひどいや!」
リシド「マリク様、人は生きていかなければならないのです。おやつ抜きでも」
イシズに引きずられて会場を去っていくマリクを、一同は呆然と見送っていたが、気を取り直して舞が叫ぶ。
舞 「さ、さあ! 決闘続行よ!」
遊戯「あ、ああ! オレのターン、ドロー!」
マリクが脱落したことで雪原、リバイバルスライムとも消えた。ついでにマリクの場にあった『デーモンの召喚』も消えてしまったので、一番損をした遊戯だが、それでもめげずに勢いよくドローする。しかし…
遊戯「(バ… バカな、このカードは!)」
ドローカードを確認したとたん、その目は驚愕に見開かれたのだった!
<つづく>