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海馬「オレはカードを2枚伏せ、ターン終了だ!」
 ハリケーンによって手札に戻されたカードを再び伏せる海馬。おそらく片方は攻撃誘導アーマーであろう。
ペガ「(二人ともクリスマスカードはまだ出ていない。遊戯ボーイのデッキにあるのがあの装備カードならば、ホーリーナイトとも互角に戦えマスが…。そうでなければ逆転は不可能デース)」
遊戯「オレのターン、ドロー!」
 城之内たちが見守る中、最後の一騎打ちが始まる。引いたカードは――『聖なるバリア−ミラーフォース』!
遊戯「(ミラーフォース! 能力が2倍になっても意味はないが、安心して攻撃できるぜ!) 魔法カード『サイクロン』!」
海馬「く…」
 二分の一の確率を当て、攻撃誘導アーマーを破壊する遊戯。
遊戯「そして磁石の戦士αとビッグ・シールド・ガードナーを生け贄に捧げ、バスター・ブレイダーを攻撃表示で召喚するぜ!」
海馬「ほう…。オレのホーリーナイトの前で、攻撃表示を取るとはな」
遊戯「フ…、守ってばかりは性に合わないんでな。バスター・ブレイダー、カイザー・グライダーに攻撃だ!」
『竜破壊の剣!』
 ホーリー・ナイト・ドラゴン、カイザー・グライダーの2体のドラゴンが場にあるため、バスター・ブレイダーの特殊能力により攻撃力は1000アップの3600! 攻撃力2400のカイザー・グライダーは破壊され、海馬のライフを1250に減らした。
遊戯「フ。海馬よ、そろそろライフが厳しいんじゃないのか」
海馬「ククク…、笑わせるな。貴様を一撃で葬れるモンスターがオレの場にいる限り、ライフがいくつになろうが関係ないわ!」
 確かに、遊戯のライフは4000から減っていないが、ホーリー・ナイト・ドラゴンの攻撃を受ければ一発で敗北するのだ。
遊戯「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」
本田「おいおい、大丈夫かよ遊戯のやつ。バスター・ブレイダーがやられたら大ダメージだぜ」
城之内「いや、遊戯のことだ。攻撃を防ぐ伏せカードがあるんだろーぜ」
海馬「オレのターン、ドロー!」
 ドローカードを見て笑い出す海馬。
海馬「ククク…ワハハハ! 遊戯よ、貴様もとうとう勝利の女神に見放されたようだな!」
遊戯「なんだと…」
海馬「おそらくは攻撃を無効化する罠を仕掛けたのだろうが…これで貴様の戦術も吹き飛ばしてくれるわ! 魔法カード『大嵐』!」
遊戯「(な…!)」

大嵐
魔法カード
全フィールド上の魔法・罠カードを
全て破壊する。


 嵐が巻き起こり、場の伏せカードをすべて吹き飛ばす。
海馬「(ドラゴンを呼ぶ笛は惜しいが…。ホーリーナイトさえいればもはや伏せカードなど必要ない!)」
遊戯「く…、伏せカードオープン! 『光の封札剣』!」
 どうせ破壊されるならと、伏せたままだった封札剣を発動する遊戯。天から剣が落ち、海馬の手札にあった『青眼の白龍』を場に封じ込めた。
海馬「ちっ…まあいい、今回はブルーアイズには休んでもらうとしよう。遊戯、悪あがきはそれで終わりか?」
遊戯「……」
海馬「ならば受けるがいい! ホーリー・ナイト・ドラゴン、バスター・ブレイダーに攻撃!」
 ホーリーメルティングフレイムによりバスター・ブレイダーは融解。遊戯は1900のダメージを受け、残りライフは2100。
遊戯「く…!」
海馬「ワハハハ、竜破壊の剣士もドラゴンにやられては形無しだな! ターン終了!」
遊戯「オレのターン…」
 遊戯の場にはホーリー・エルフのみ。それもこのままでは次のターンにホーリー・ナイト・ドラゴンの餌食となるだけ。絶体絶命のピンチである。
遊戯「(この引きにかけるしかない! このデッキの一番上から感じる奴の鼓動を…)」
ペガ「……」
遊戯「(鬼が出るか蛇が出るか…) ドロー!」
 シュバァ!
 周囲が静寂に包まれる中、遊戯の口元がニヤリと笑った。
遊戯「ペガサス…確かに受け取ったぜ! 貴様からのクリスマスプレゼントをな!」
ペガ「(まさか、このタイミングであのカードを引いたというのデスか! アンビリーボォー!)」
遊戯「オレはホーリー・エルフを生け贄に捧げ、ブラック・マジシャン・ガールを召喚!」
海馬「ホーリー・エルフを捨てるだと…!」
 守備表示のエルフは昇天し、かわって魔術師の少女が現れる。
遊戯「そして、これが逆転への切り札だ! 魔法カード『サンタ服』!

サンタ服
装備魔法カード
人型モンスターにしか装備できな
い。攻撃力・守備力を500アップ
する。装備したカードはクリス
マスカードになる。

海馬「ク、クリスマスカード…。装備効果によりブラックマジシャンガールの攻撃力は2500になる…」
遊戯「そしてクリスマスルールにより、攻撃力は2倍の5000! 海馬、貴様のホーリーナイトドラゴンと並んだぜ!」
城之内「よっしゃぁぁ!」
本田「やったぜ遊戯!」
 ガールの衣装が赤と白のサンタ服に変わり、杖の代わりに持つのは白い袋。その愛らしい姿に、会場の決闘者たちからも感嘆の声が上がる。
竜崎「おお! やっぱりサンタ服は美少女が一番やで!」
羽蛾「萌え萌えですねー! ヒョヒョヒョー!」
 しかしそれは、硬派な海馬の神経を逆なでするものだった。
海馬「おのれ遊戯! 神聖なる決闘の場に萌えなどという下らんものを持ち込むとは、見下げ果てた奴め!」
遊戯「? 相棒、萌えってなんだ?」
遊戯『え? えーっと、どう説明すればいいのかなぁ。アハ、アハハ…』
海馬「(こ、こいつ萌えとは無関係にこのコンボを行ったというのか!) フ…さすがは遊戯、オレの認めた唯一人の決闘者よ!」
遊戯「さっきと言ってることが違うぞ…」
 とにかく場には攻撃力5000のモンスターが相対したのだった。
遊戯「(ここで相討ちさせては、オレの場は空になってしまう…。ここはハッタリをかますしかないぜ!) オレはカードを1枚伏せ、ターン終了だ!」
海馬「オレのターン!」
 引いたカードは『Z−メタル・キャタピラー』。相討ち後にこれで攻撃すればダメージは与えられるが…。
海馬「(あの伏せカードが相手モンスターを破壊するものならば、一気にオレが不利になる…)」
遊戯「フフ…。どうした海馬、攻撃してこないのか?」
海馬「(フン! 遊戯の手札はゼロ、焦ることもあるまい) 何もせずターンエンド!」
 実は遊戯の伏せカードはここでは意味のない『融合解除』だったが、見事にハッタリの役を果たした。
遊戯「ドロー! (幻獣王ガゼル…。魔術の呪文書か六芒星の呪縛が来てくれれば、局面を打開できるんだが…) ターンエンド!」
漠良「互いに手詰まりが続いてるね」
城之内「ああ。守備モンスターを出したところで、すぐに攻撃力5000の相手に倒されちまう」
御伽「いい魔法か罠がくるまで、どちらもじっと我慢するしかないな…」
海馬「オレのターン!」
 気合いとともにドローする海馬。その気合いが通じたのか、ドローカードは…
海馬「(破壊輪! ワハハハ、これで一気に決着だ!)」
遊戯「おっと、待ちな海馬!」
海馬「何!」
遊戯「『命削りの宝札』を使ってから5ターンが経った。手札をすべて捨ててもらうぜ!」
海馬「ぐ…。し、しまったぁ…!」
 5ターン前のツケで、せっかく引いた破壊輪を捨てる羽目になる海馬。最悪のタイミングだが、これもまた決闘である。
 手札がなくては何もできず、海馬はそのままターンを終えた。
 さらに遊戯、海馬とターンが続くが、やはり何もせずターンを流す。場の上ではホーリー・ナイト・ドラゴンとブラック・マジシャン・ガールがにらみ合ったまま。
城之内「く…。見ているこっちが息が詰まるぜ」
舞 「(けど、そろそろ動き出しそうな気がするわ。根拠はないけど、あたしの決闘者としてのカンがそう告げている…!)」
遊戯「オレのターン、ドロー!」
 ドローカードを見た遊戯は顔色を変えないまま、そのカードを場に伏せた。
遊戯「伏せカードを1枚出して、ターンエンドだ!」
海馬「フン…。遊戯よ、どうやらいいカードを引いたようだな」
遊戯「フフ…、さあな」
海馬「だがそれはオレも同じこと! たぎる血が教えているのだ、次に引くカードこそがオレの運命を切り開くとな! ドロー!」
 ディスティニードロー炸裂! 手にあるカードを見た海馬は……笑い出した。
海馬「ククク…フハハハハ、ワハハハハハハ!!」
城之内「何だ馬鹿笑いしやがって、海馬のヤロー」
ペガ「(引いたのデースね海馬ボーイ。4枚のクリスマスカードの中で、最強の力を持つあのカードを…!)」
海馬「なかなか楽しい決闘だったぞ遊戯! だが! そろそろ決着の時だ!」
遊戯「!」
海馬「戻れ、ブルーアイズ!」
 3ターン経過して封札剣の効果が切れた『青眼の白龍』が、海馬の手札に戻ってくる。
海馬「ホーリー・ナイト・ドラゴンよ、今までよく働いてくれた。あとはオレの勝利の礎となるがいい! 魔法カード『聖者の十字架』!!

聖者の十字架
魔法カード
ライフを1000ポイント払う。場のモンスター
1体を生け贄に、手札からモンスターを特殊
召喚し、生け贄モンスターの現在の攻撃力の
半分をそのモンスターの攻撃力に加える。

遊戯「(手札からモンスターを召喚し、さらに攻撃力をプラスするだと!)」
城之内「何じゃありゃあ! おいこらペガ公、オレのカードと段違いじゃねえか!」
ペガ「そう言われても、4枚の中から選んだのはユー達自身デース」
モクバ「そうだぜ城之内。クリスマスプレゼントだって、子どもによって値段は全然違うだろ」
城之内「ぐ…。納得できるよーなできないよーな…」
海馬「ホーリー・ナイト・ドラゴンを生け贄に捧げ――召喚するモンスターは当然! 『青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)』!!
 聖夜竜は十字架にかけられ天に昇り、その犠牲のもとに白き幻獣が姿を現す。
海馬「ワハハハハ!」
 コストを払った海馬のライフはたったの250だが、もはや気にする様子もない。高笑いに応じるように、咆哮する青眼の白龍。
ペガ「十字架にかけられたイエスの魂が12使徒に受け継がれたように…。ホーリー・ナイト・ドラゴンの攻撃力の半分がブルーアイズに受け継がれるのデース」
城之内「ってことは…」
海馬「攻撃力5500! 遊戯、貴様の魔術師もこれで終わりだ!」
 青眼が巻き起こす突風に、遊戯は腕で顔を覆いながらにらみつけた。
御伽「ま、まだだ。特殊召喚されたモンスターはそのターンには攻撃できない。まだ1ターンあるよ!」
杏子「そうよ遊戯、諦めちゃダメ!」
海馬「ククク…。哀れな雑魚どもがうるさいようだが、その僅かな希望の灯もかき消してやろう。魔法カード『速攻』!」
城之内たち『な…!』
 速攻能力を与えられた青眼の白龍は、ガールめがけて攻撃態勢に入る。
海馬「さらばだ遊戯! 滅びのバースト・ストリーム!!」
 白龍の開いた口から、滅びの爆裂疾風弾が白い閃光とともに放出される。
海馬「ワハハハハ! これで気分のいい新年を迎えられそうだ!」
遊戯「フ…そいつはどうかな!」
海馬「な…なんだと!」
遊戯「海馬…。オレは今まで数多くの強敵と闘ってきた。その闘いで得たものは、すべてオレの中に受け継がれている」
海馬「何を今さら…」
遊戯「分からないようだな。オレのデッキにはその知識と知恵がつぎ込まれているということさ!」
遊戯『うん! あれからカード屋を巡ってようやく手に入れたあのカードがね!』
遊戯「リバースカードオープン!」
 遊戯がカードを開いたと同時に、場に漆黒のカーテンが現れる。
遊戯「これがオレの切り札だ! 魔法カード『黒魔術のカーテン』!

黒魔術のカーテン
フィールド魔法カード
このターンすべてのプレイヤーは
ライフを半分減らすことで
デッキの中から黒魔術師を
1体召喚することができる。

海馬「バ、バカな…。ブラック・マジシャンを呼び出すだと!」
 バトルシティにおけるパンドラとの闘いで知ったカード。黒魔術師デッキの遊戯は持たなければ嘘だろうというこのカードを、遊戯はここで使用したのだ。
遊戯「ライフの半分、1050を支払い――ブラック・マジシャンを守備表示で特殊召喚! ブラック・マジシャン・ガールを守るぜ!」
 カーテンから現れたブラック・マジシャンは、ガールをかばうようにバースト・ストリームの前に立ちはだかった。
『お師匠サマー!』
『……』
 そんな会話があったかどうかは分からない。
 いずれにせよ師匠はフッと微笑むと、バースト・ストリームの閃光の中に消えていった。
海馬「ぐ、ぐぐぐ…。ブラック・マジシャンを壁にするとは…」
遊戯「海馬、お前は真にこのゲームを理解しているとはいえないようだな」
海馬「何!」
遊戯「オレがブラック・マジシャンを壁にしたわけじゃない…。ブラック・マジシャン自身の弟子を想う心が、この行動を起こさせたのさ!」
海馬「く…くだらんことを!」
 叫ぶ海馬だが、手札も伏せカードもなしではターンを終了するしかない。
遊戯「オレのターン!」
 もはやドローカードを確認するまでもなく、師を失って泣いているガールに呼びかける。
遊戯「泣くな、ブラック・マジシャン・ガール! ブラック・マジシャンの分も、お前が頑張るんだ!」
 はっとしたブラック・マジシャン・ガールは、涙をふいて真剣な表情になると、サンタ袋からおもちゃの杖を取り出した。
海馬「ブ、ブラック・マジシャン・ガールには特殊能力がある…」
遊戯「そう。墓地にいるブラック・マジシャン1体につき、攻撃力が500アップする。クリスマスルールによりその能力は2倍! よって――」
 サンタ服ブラック・マジシャン・ガール 攻撃力:6000
遊戯「ゆけ、ブラック・マジシャン・ガール! 青眼の白龍に攻撃!」
 どこからともなく現れたソリに乗って天高く舞い上がったガールは、魔力を込めた杖を振り下ろした。
『降・誕・祭 爆・裂・破(クリスマス・バーニング)!!』
 空から無数の星が降り注ぎ…
 攻撃力5500の青眼の白龍は、500のダメージとともに破壊された!
海馬「ぐわぁぁぁ!」
 海馬 ライフポイント:0
舞 「そこまで! 勝者、武藤遊戯!」
城之内たち『やったーっ!』
 ついに長かった決闘は終了。勝利の栄冠は遊戯の上に輝いたのである。

遊戯『やったね、もう一人のボク!』
遊戯「ああ、みんなの応援のおかげだぜ!」
ペガ「コングラチュレーション遊戯ボーイ。約束通り、4枚のクリスマスカードはユーに差し上げマース」
遊戯「世界に1枚ずつしかないカードか…」
ペガ「ま、次のシリーズで売り出しますけどネー」
遊戯「ただの先行テストかよ!」
 一方、がっくりと床に膝をついている海馬。
モクバ「そ、そんな。兄サマが負けるなんて…」
漠良「いつものことでしょ」
 だが、すぐに気を取り直すと偉そうに立ち上がる。
海馬「フン、しょせんは今年のデュエル! 来年になればチャラだ!」
杏子「…海馬君って…」
海馬「遊戯、オレ達の闘いは無限に続くのだ。オレが勝つまでな!」
城之内「言ってることが無茶苦茶だぞテメー」
遊戯「フ…。いいぜ海馬、いつでもかかってきな!」
海馬「フン…」
 背を向けて大股で歩き去る海馬と、慌ててついていくモクバ。
城之内「おい海馬、パーティーはどうするんだよ」
海馬「勝手に食っていけ!」
城之内「よっしゃあ! 静香、今のうちに食いだめだぜ!」
静香「お、お兄ちゃんってば…」
杏子「ね、ね、みんなでゲームでもしましょうよ」
遊戯「ああ! おっと、最後にこのカードを使っておくぜ。魔法カード『死者蘇生』!」
 そして電源が入れっぱなしのソリッドビジョンには、生き返った師匠の姿と、嬉しそうに抱きつく弟子が映し出されるのだった。





<END>





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