ゴゴゴゴゴゴ
「よっしゃぁ、いったれ詩織ーーーっ!」
「きらめき高校のマドンナの実力見せたれやーーーっ!!」






魁!! きらめき校

第2話 「紅き髪の誓い!」






 闘場にて対峙する詩織と見晴。スラリ、と詩織が得物を取り出した。
「ほう、ハリセンか…」
「真比呂院流萬才破!如何なる敵にも死角なし!」


 かつて中国宋の時代、希代の拳法家陣張千は敵国の兵士に追いつめられ武器もなく絶体絶命の状態において、そばにあった厚紙を折って即席の武器とし見事窮地を脱することに成功した。その獅子奮迅の闘いは「あんたとはやっとられへんわ」と敵の大将に言わしめたほどであったという。その武器が世間に伝わり、改良を加えられたのが現代のハリセンである。その名が陣張千に由来するものであることは言うまでもない。

民明書房刊「ツッコミ一代記」より



 堂々と構える詩織のハリセンに見晴がと号令を飛ばす。
「ほざけ!ゆけい我が兄弟どもよ、奴の高慢な鼻をへし折ってやれいーーっ!!」
「ニヤリ!!」
「うおーーっ!コ、コアラが四方八方からーーっ!」
「あ、あれじゃいくら詩織でも逃げ場はねぇーーっ!!」
 驚き役が驚いてる間に詩織のハリセンが宙を舞う!
「奥義、位胃加減似品才!!」
「ニヤッ!」
「ニギャァァッ!」
 ズガガガガ! まさに目にも止まらぬハリセンさばき。瞬く間にコアラの攻撃はすべてはたき落とされる。
「す、すげえぞ詩織の野郎ーーーっ!」
「あ、あの凶悪なコアラすら手も足も出ねぇーーっ!」
「どうやらお前の兄弟も大したことはなさそうだな」
 しかし攻め手を封じられたはずの見晴がニヤニヤと薄笑いを浮かべている。
「馬鹿め気づかんのか…。壺亞螺の数が一匹減っていることに!」
「なに!?」
 ズバァッ!
「ニヤリ!」
「ぐっ!」

 あまりに一瞬のことにその場の全員が目を疑う。しかし突然の下からの攻撃に、詩織の胸から真っ赤な鮮血が飛び散った!
「な、なんじゃ今のは!なにが起こったんじゃーーーっ!」
「じ、地面だーーっ!地面の下にコアラが潜んでやがったーーーっ!」
 詩織ががっくりと膝をつく。勝ち誇ったように笑みを浮かべる見晴。
「その傷ではもはや満足に動けまい。どうやら勝負あったようだな」
「そ、それはどうかな…。隠れキャラの貴様にこの俺は倒せやしない」
「馬鹿め、命乞いでもすれば命だけは助けてやったものを!やれい壺亞螺達よ、とどめを刺すのだーーっ!!」
 しーーーん
「なっ…。ど、どうしたお前達!」
「き、気づいていないのはお前の方だ…。よく見てみろ自分の頭を!」
「な、なにーーっ!」ドーーン
 いつの間にやら見晴の髪型が詩織のヘアバンドによって変えられている。先ほどのハリセンは実はヘアバンドを飛ばすためだったというのか…。
真比呂院流地獄部亜番努!容姿や髪型を自在に操ってこそ真のヒロインというもの…」
「フッ、俺があの髪型で壺亞螺達に仲間と思わせていたのをあっさり見破るとはな。だがこんなものはまた結び直せば済むこと」
「そんな暇があるのかな」
「何〜〜〜っ?」
 ギラリ、とコアラの眼が突然見晴を向く。先ほどまでの従順さはなくあるのは動物としての本能のみ!
「み、見ろーーっ見晴の髪型をーーっ!」
「ユ、ユーカリだーーっ!詩織の野郎ヘアバンドを使って見晴の髪をユーカリの葉の形にーーっ!」
 よだれをたらすコアラ達に見晴の顔がさーっと青ざめる。
「ま、まさか貴様は最初からこれが目的で…。ま、待てお前達ーーっ!俺はユーカリじゃないーーっ!!」
 見晴の言葉も所詮畜生には届かず、コアラは一斉に見晴に襲いかかるのだった。
「ぐわぁぁぁ〜〜〜っ!!」
「恨むなら自分の髪の色を恨むんだな」

「そこまで!勝者運動部!」
 早好人の声に詩織がハリセンを振り払う。コアラは大慌てで逃げていき、ズタボロになった見晴が残った。
「ど、どうやら俺の負けのようだ。さ、さあとどめを刺すがいい。お前にはその権利がある」
 しかし詩織はハリセンをおさめると、倒れた見晴に手を差し伸べる。
「もう闘いは終わったんだ。俺たちは同じきら校生、勝っても負けても遺恨はない」
「お、お前…」
「いい勝負だったぜ」
 ぽかんと口を開ける望と沙希の後ろで、奈津江がうんうんとうなずいている。
「ああいう女よ藤崎詩織。ただ可愛いだけではきら校のマドンナにはなれん!」
 一方の文化部サイドでは、スケッチしている彩子の横で参謀の如月未緒が眼鏡を光らせていた。
「ワッハハ、奴らもなかなかやりおるわい!」
「フッ、しょせん見晴は文芸部の幽霊部員、一番の小物に過ぎません。しかし次の戦士こそ我が文化部の切り札。必ずや運動部の全員を血祭りに上げることでしょう…」
 未緒の声にどこからかモーター音が重く響く。いつ現れたのか白衣の女生徒が、対岸を見つめながら薄い笑みを浮かべていた…。

 戻ってきた詩織を運動部の一同は大歓声で迎え入れた。
「よっしゃあまずは一勝じゃーーっ!」
「さすがヒロイン、いきなり快勝だぜーーーっ!」
 しかし味方の陣営にたどりついたとたん詩織ががっくりと膝をつく。
「だ、大丈夫か詩織ーーっ!」
「あ、ああ…」
「詩織にここまで深手を負わせるとは、やはり文化部楽に勝たせてくれそうにはない」
「馬鹿野郎今さら何を言っとるんじゃ!よっしゃ、次はこの俺がいかせてもらうぜ!」
「ア、アホぬかせ望!次はこの俺に決まっとろうが!!」
「先輩達には悪いが…。ここはこの俺に任せてもらおうか!」
「ああ〜〜ん?」
 振り向いた先で拳を打ち鳴らしたのは、鋭い眼光にポニーテールの2号生!
「お、おまえは早乙女優美ーーっ!!」
「この俺の優美ボンバー久々に炸裂させてやるぜ!!」




次号、強敵が遂に宇宙人を召喚!?
「檄!異星人エロヒム!!」の巻だ!



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