魁!! きらめき校

第3話 「先輩と後輩の信義!」






「て、てめえ優美ふざけるんじゃねぇーーっ!」
「お前後輩だろうがーーっ!」
「フラッシュピストン優美ボンバー!」
 詰め寄る2人に優美は無言で近くの岩にラリアット10発を叩き込んだ。粉々に粉砕される岩に望は腰を抜かし沙希は口から泡を吹く。
「し、し、仕方ねぇここは譲ってやるぜ」
「いいか優美、決して死ぬんじゃないぞ」
「押忍!」
 詩織に見送られ登場へ降り立つ優美。しかし文化部の側から歩み出た白衣の少女は、橋の向こう側で腕組みをして立ったままである。
「どうした怖じ気づいたのか。ここへ降りてこなくてはこの俺は倒せないぜ」
「フッ、この紐緒結奈自ら戦うまでもない。貴様の相手はそいつよ」
 そう言って結奈が手にしたコントローラーのスイッチを入れる。
 ゴゴゴゴゴゴ
「な、なにーーっ!あ、あれはーーっ!」
「ロ、ロボットだ!巨大なロボットが飛んできやがったーーっ!!」
 ズゥゥゥン!
 土煙とともにロボットが着地し、優美は思わず手で顔を覆う。
「これは…!」
「やれい世界征服鹵簿!この天才に刃向かうものを一人残らず根絶やしにするのだ!!」
 独裁ミサイルシャワー!
「ぐぅっ!」
「ゆ、優美ーーーっ!!」
 ミサイルの雨にさらされる優美。崖の上では如月未緒が満足そうに眼鏡を光らせる。
「紐緒結奈、敵には回したくない女よ。だが味方にすればこれほど頼もしい奴もおらん」
 その言葉どおりミサイルの次はロケットパンチ、ビームと非常識な攻撃の連続に優美は防戦一方だ。
「ゆ、優美がやられるーーっ!」
「き、汚ねぇぞロボットなんか使いやがってーーっ!」
(まずい、このままでは・・・)
 ロボの攻撃を辛うじて交わしながら、優美はふと何を思ったか足元の石を拾うとロボに向けて思いっきり投げつけた。
「馬鹿め、そんな攻撃など…なにっ!?」
 難なく交わす世界征服鹵簿だが、石はまっすぐ結奈めがけて飛ぶとその手のコントローラーを破壊した!
「おおっ! 優美の狙いはコントローラーだったのかーーっ!」
「や、やりやがるぜ優美の野郎ーーっ!」
「そのコントローラーがなくては巨大ロボも単なるでくの坊。もはや勝負はついた、降参するがいい」
 しかし結奈は眉一つ動かさず、びっと人差し指を立てる。
「愚かな、この天才にそのような隙があると思うか。世界征服鹵簿にはオートモードも搭載済みよ!」
「うっ!」
 油断した優美の不意をつき、鹵簿がその巨大な手で優美を掴み上げそのまま思い切り地面に叩き付けた!
「ぐわぁぁぁーーーっ!」
「ゆ、優美ーーーっ!」

 あまりの衝撃に地面にヒビが入り、優美はピクリとも動けない。
「やれい鹵簿!」
 ロケットを噴射して空高く舞い上がる世界征服鹵簿。そのまま遥か上空から優美めがけ一直線に落ちてくる。
「ま、まずいーーっ! 優美がやられるーーっ!」
「逃げろ優美! 逃げるんじゃーーーっ!!」
(ま、負けられねぇ! バスケ部のためにも、俺を信頼して送り出してくれた先輩のためにも、負けるわけにはいかねぇんだ!)
「優美ーーーっ!」
 ズゥゥゥン!
 凄まじいまでの地響きとともにあたりが土煙に覆われる…。
「や、やられたーーっ! 優美がやられちまったーーっ!!」
「い、いや見るのだあれを!」
 ゆかりの指差した上空に舞うポニーテール。一瞬の差でかわした優美が逆に跳躍していたのだ。
「す、すげえぞ優美ーーっ!」
「そのまま優美ボンバーかましたれーーっ!」
「いや、あれではかえって的です!」
 水晶球で透視した恵が叫ぶ。確かに下では世界征服鹵簿が優美に照準を合わせていた。
「愚かな、無防備に落下してくるなど攻撃してくれと言っているようなもの」
「そ、そうかな。その足場が次の攻撃に耐えられるのか…」
「うっ!?」
 結奈がはっと闘場を見ると地面は幾重にもひびが入り、既に崩れはじめている!
「ま、まさか貴様は最初からこれを狙って…!」
「ゆ、優美の奴死ぬ気だ!」
「な、なんじゃとーーっ!?」
 驚愕の3号生たちに、優美は安らかな笑みを向けた。
「先輩方、短い間だったが楽しかったぜ。く、悔いはねぇ…」
「ま、待てーーっ! 待つんじゃ優美ーーーっ!!」
 先輩たちの声も届かず、加速のついた優美の体がロボットに一撃を叩き込む!
「地獄へ行っても忘れんじゃねぇ、俺の名は早乙女優美!
 きらめき高校2号生、優美ボンバーの早乙女優美だ!!」
「優美ーーーっ!」
「これがこの世で最後の優美ボンバーじゃーーっ!!」
 ガゴォォォォォン!!
 身の毛のよだつような轟音とともに、衝撃を受けた闘場は粉々に崩壊した。
「ロ、鹵簿ーーっ!」
「優美ーーーーーっ!!」
 瓦礫とともにゆっくりと落ちていくロボットと早乙女優美。その姿が激流の中へと見えなくなる。
 結奈ががっくりと膝を突き、沙希と望は声を震わせて地面を叩いた。
「うおおおーーっ! なんでじゃーーっ!!」
「優美ーーーっ! 返事をしてくれーーーっ!!」
 しかし優美の声はなく、聞こえるのは荒れ狂う水の音だけ。普段鉄面皮な詩織の頬を一筋の涙が伝う。
(優美よ、お前は決してガキなんかじゃねぇ。まさしくきら校生の名にふさわしい女の中の女だったぜ!)

 部の誇りを守るため華々しく散った2号生早乙女優美。空に浮かぶ彼女の顔に勝利を固く誓いながら、一同は崩れ落ちた闘場を後に新たな闘いの場へと向かうのだった。





 しかし落下する優美の背後に一瞬謎の人影があったことは誰も気づいてはいないのであった…。







次号、運動部を襲う謎の暗黒舞踏!
「そして伝説へ…」の巻!


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