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第33話 チョコレートの季節


 何となく、小都子は階段をもう一つ登った。
 三年生の教室は静まり返り、賑やかだった頃の面影はない。
 二ヶ月後、自分たちがこの階に進級するまで、この状態が続くのだ。

「小都子?」
「わあっ!?」

 声に驚いて振り返ると、立火がにやにやと笑っていた。

「なんやなんや、もう最上級生の気分なん?」
「い、いえっ、ただ先輩たちがいなくて寂しいなあって!
 ……あ、二次試験のこと、おめでとうございます」
「それを言うのは受かってからやで。
 まあ、手応えは大いにあった。今日からは部活の方に比重を置くで!」
「は、はいっ!」

 本当に大丈夫ですか? などとは今さら聞かない。
 頼れる部長に甘えられる最後の数週間。
 立火に手招きされて3-5に入り、手近な椅子に腰かける。

「姫水と夕理も上手くいったみたいやな」
「ですねぇ。あくまで友達の第一歩や、って主張してるのが夕理ちゃんらしいですけど。
 でも、疎遠なまま引っ越すことにならなくて良かったです」
「これで人間関係に不安はなくなった。
 桜夜と夕理はまあ、喧嘩するほど何とやらってやつやろ。
 でこぼこな絆やけど、とにかく結ばれて全国大会に突入や!」
「はい……私たちは十分わかり合えました」

 なので小都子はつい思ってしまう。
 これ以上は波乱を起こさなくていいのにと。
 夕理とつかさは、今のままでも素敵な友人関係なのに……。
 が、他に心配事のある立火は、小都子の内心までは気付かなかった。

「問題は桜夜の受験や。今は親御さんが来てて、進路指導室で話してる」
「ど、どうなるんでしょうね」
「ひとまず教育のプロに任せるしかないやろな。
 うちの教師陣、普段は割と適当やけど、さすがに進路指導はしっかりしてて……
 っと、そろそろホームルームやな」
「あ、それでは教室に戻ります。立火先輩はここで勉強を?」
「いや、今日は練習の日にする。ほな、また部活でな」
「はい、無理はしないでくださいね」

 部屋を出る小都子の後ろで、机を寄せてスペースを作る音がする。
 放課後までここで一人、練習の遅れを一気に取り戻すのだろう。
 立火のスクールアイドル生活が、見事な幕を下ろすことをただただ祈る。

 教室に戻ると、夕理からメッセージが来ていた。
 今日のお昼、また部室で三人で食べたいということだった。


 *   *   *


「……というわけで、姫水さんと話して決意しました。
 クールタイムが開けた日、私はつかさに告白します」
「おおー! やったー!」

 花歩はもちろん大喜びだ。立ち上がって拍手までしている。
 小都子は少し息を吸って、にこやかに微笑んだ。

「夕理ちゃんが選んだことなら、何も言うことはないで。全力で応援するよ」
「ありがとうございます。花歩も、気付かせてくれてありがとう。
 花歩の言葉がなかったら、私の気持ちは一生閉じ込められたままやった」
「いやあ、言うてみるもんやなあ。で、チョコは? 渡すんやろ!?」
「まあ、一応……。
 けど蔓延する商業主義にささやかでも抵抗すべく、手作りにするつもりや」
「どんな理由やねん! でもそういうことなら、小都子先輩っ」
「うん。夕理ちゃん、一緒に作ろか」
「よ、よろしくお願いしますっ」

 小都子も部員の分、クラスメイトの分、家の者の分とかなりの大仕事になる予定だ。
 夕理と一緒に作れるなら、きっと楽しい作業になるだろう。
 もう一人の後輩は……既に諦めているのに酷かとも思うが、聞かないのも変なので聞いてみる。

「花歩ちゃんも、良かったらどう?」
「あ、いえいえ私は……本命チョコを渡す相手もいないので。あはは」
「花歩ちゃん……」
「でも勇魚ちゃんと姫水ちゃんと一緒に、友チョコいっぱい作りますので!
 夕理ちゃん、ついでに私の分も期待してるで~」
「図々しいやっちゃな。まあ練習用にいくつか作るから」

 どんなチョコがいいかな、という話で盛り上がりつつ、今日のランチは終わった。
 部室の鍵を閉めている夕理に、不意に花歩が重々しく言ってくる。

「ここ最近つかさちゃんの様子を探ってたけど、夕理ちゃんの恋が叶うかは自信が持てへん。
 万一夕理ちゃんが泣くことになったら、私も煽った責任は取るで」
「何やねん真面目な顔して。責任って具体的には?」
「私が夕理ちゃんを一番好きになる! 部長は卒業しちゃうし丁度ええやろ」
「はいはい、気持ちだけいただいとく」

 あっさり流され、たははとなる花歩に、夕理が向ける目は柔らかかった。

「気持ちは、ほんまに嬉しい。
 でも泣くのも傷つくのも覚悟の上や。どうあっても私は、つかさに好きって言いたい」
「うん……夕理ちゃん、かっこええやん。私は部長に言えそうにないから」
「か、花歩は状況が違うやろ」
「そ、そやなー。私のはただの憧れやし!」
(こういう話、私は入れへんなあ)

 恋する二人の会話に、小都子は少し距離を取る。
 が、廊下を歩きながら、花歩の首がくるんと向いてきた。

「小都子先輩は、誰か好きな人はいないんですか?」
「ええ!?」
「アホか、何でも恋に結び付けない! 小都子先輩の愛は、もっと大きく広いんや」
「あはは、それもそうやね。すみません先輩」
「う、ううん。私も特別な人が現れてくれるとええんやけど、ねえ」

 上手く笑い顔を作れなかったかもしれない。
 後輩と別れ、教室に向かう小都子の、頭に浮かぶのは晴だった。
 恋ともチョコとも無縁で、14日も超然としているのであろう友人。
 自分は彼女と同じ側なのかと思うと、少々複雑ではある。


 *   *   *


「みんな、久しぶりー!」
「桜夜先輩!?」

 満面の笑顔で部活へやって来た彼女に、小都子たちの方がむしろ不安顔だった。
 来てくれたのはもちろん嬉しいが、そんな余裕はあるのだろうか。

「だ、大丈夫なんですか? 部活に出ても」
「へーきへーき、私は可愛いから大丈夫」
「こら、余計に不安になるやろ! ちゃんと進路指導の結果を話す!」

 立火に怒られ、仕方なく座った桜夜の説明が始まる。

「まず、明後日の学校は本命やからちゃんと受けてくる。
 残り二校は偏差値も高めやし、もう捨てて中期試験に賭けた方がいいって先生が」
「うーん、先生がそう言っちゃうんですか」
「けど確かに、一校受けるだけでメンタル削られてましたからね。精神力の配分も大事っすよ」

 姫水の優等生的な疑念を、つかさが現実的にフォローする。
 桜夜は今頃納得したように、うんうんとうなずき話を続けた。

「で、前期が全滅したら中期は数を絞って、うち一つは滑り止めにする!
 実際入るかはともかく、それで受かっておけば精神的に安定するやろって」
「確かに! 万一後期までもつれ込んでも、安心して受験できますね」
「どんな大学でも、入ってみればきっといい所ですよ!」

 花歩と勇魚が明るく言うが、晴が冷ややかに釘を刺した。

「二人とも、あまり楽観的なことを言って油断させるな。その滑り止めすら落ちる可能性もあるんや」
「晴は不吉なこと言うのやめて!?
 てわけで今日からは勉強しつつ、部活は毎日出るで!」

 自由登校期間とはいえ、朝から晩まで勉強していたら精神が持たない。
 桜夜が生きていくためにも、一日二時間の部活は必要なのだ。
 その桜夜の目は、昨日友達になった二人の後輩に、感謝の形で注がれた。

「ほんまは何もかも嫌になって、全部投げ出しかけてたんやけど。
 姫水と夕理が仲良くなったって聞いて、もうひと頑張りしようって思ったんや」
「そうでしたか……夕理さんにアタックした甲斐がありました」
「ま、まあ役に立って良かったです」
「でも見たとこあんまり変わってへんやん。もっと肩を組むとかして?」
「そういう関係にはなっていません!」
「ふふ。ステージでは息の合ったところを見せますよ」

 話は一段落し、立火は久しぶりの号令を下す。

「よし、着替えて練習や! 桜夜、体はなまってへんやろな!」
「三年間も続けてきたんや、ちょっと休んだくらいで!」

 自分たちが不在の間にも、後輩たちはライブを改善してくれていた。
 振り付けを頭に入れ、元気に曲は流れ出す。

『1、2、3、いぇい! ここから始まる楽しいフェスティバル
 私たちはスクールアイ!ドル! すくすくと笑い!踊る!
 今だけ悩みは投げ捨てて みんなも一緒に笑おやないか!』

 抑圧に抑圧を重ねてきた三年生たちは、一気に爆発した。
 魂の底から笑いながら、センターとサブセンターとして縦横無尽に飛び回る。

(ライブってほんまに楽しいで! けど泣いても笑ってもこの曲が最後!)
(やり残したことがないよう、何もかも出し尽くすんや!)

 その笑顔に釣られ、後輩たちも自然に笑い出す。
 間奏中、立火と桜夜の勢いだけのコントが炸裂した。



「東京タワーのモノマネしまーす!」
「おー、通天閣よりシュッとしてはるわー」
「こんな尖ってたら、たこ焼き引っくり返すのに便利やな」
「どんだけでかいの焼くねん!」

 ここはまあ、まだ改善の余地があるが……。
 思う存分練習してから、帰りのミーティングでは衣装の話。
 既に案を完成させた勇魚が、スケッチブックを机に広げる。

「昨日つーちゃんと一緒に、恵方巻き食べながら考えました!」
「汐里ちゃんのアイデアも入ってますよ」
「えっ、可愛い幼女の? どこどこ」
「桜夜先輩が名古屋に去ってくれて、汐里ちゃんも安心っすね」
「どーゆー意味やねん!」

 騒ぐ部員たちの目に入ったのは、三角帽子に大きな襟巻き。
 胴体は二色に分けられた、比較的シンプルなピエロだった。

(年末の私の意見も少しは入ってるのかな?)

 おこがましいかもとは思いつつ、姫水はそう考える。
 衣装についても最近の全国大会は、プロ顔負けで華美になる一方だ。
 手作り感のあるこの道化で、アマチュアならではの風を起こしてみたい。

 部員たちも気に入って、今回は一発OKの結果に、勇魚とつかさはハイタッチする。
 そして大事なことを忘れていない立火は、深刻な表情に変わった。

「さて……晴、部の財布はすっからかんやったな」
「部長、クラウドファンディングで寄付を募りましょう。
 住女七年ぶりの全国進出です。卒業生からも上手く金を集めれば、十万円くらいはストックできます」
「絶対に嫌です!!」

 悲鳴のように拒絶する夕理を、晴の冷血な視線が射抜く。

「うちの財政に余裕が出れば、他の部から予算を奪う必要もない。結果として皆がハッピーになるんや」
「で、でもスクールアイドルは生徒が自分の力で……。この世の何より純粋なもので……」
「晴ちゃんの案も確かに魅力的やけどね。
 けどアキバドームに気持ち良く立つことは、十万円以上の価値があるやろ。
 私には皆のハッピーより、夕理ちゃんのハッピーが大事や」

 言い切ったのはもちろん小都子だ。
 夕理も他の一年生たちも、ただただ尊敬の念を向ける。
 肩をすくめた晴は、一応言ってみただけのようだ。すぐ立火に決断を促した。

「部長、どうしますか」
「寄付もええけど、今回は一番手っ取り早い方法にしとこ。
 みんな、最後の最後でごめん。一人千円頼む!」
『はーい』

 先月にお年玉をもらったばかりで、千円にがたがた言う者はいない。
 夕理が目を潤ませている前で、最後の衣装代九千円は晴に託された。
 桜夜が自分の財布を覗きこむ。

「使う暇がないから、今年はお年玉めっちゃ残ってる。早く受験終わらせて豪遊したいなー」
「桜夜先輩~、部に残してくれてってもいいんすよ~」

 ニヤニヤ顔のつかさに言われ、目を白黒させる桜夜である。

「い、いやほら、寄付は夕理が嫌がるから……」
「部員が出すのでしたら問題ありません」
「基準が分からへんわ!」

 騒ぎながら、今日も九人の活動は終わった。
 帰りの電車の中、夕理につかさの笑顔が向けられる。

「部活やってると、次から次へと色々あるもんやなあ」
「そ、そうやね。つかさが楽しめてくれてるとええんやけど」
「いやいや、今さら何言うてるんや。
 スクールアイドルはともかく、うちの部はほんまに退屈せえへんで。
 改めて夕理、Westaに誘ってくれてありがと」
「うん……!」

 嬉しさが胸に溢れると同時に、後ろ向きの気持ちも湧いてくる。
 このまま一緒に部活を続ける。それで十分幸せなのでは、と。
 でも頭から追い払う。姫水と話して決めたことを、今さら撤回などしない。

『私は未来永劫、つかさのことが好きやから!』
『こんなもので保たれるなら、いくらでもどうぞ! つかさ、大好きや!』

 これまでの言葉は友情か恋か、あやふやにしたものだったけど。
 とうとう明確にする時がくるのだ。当日までにどう言うか考えないと。

(つかさは姫水さんに、なんて告白したんやろ……)

 さすがに尋ねるほど無神経ではないが、つい横目で見ていると、ん?という顔を返された。

「どうかした?」
「な、何でも。つかさはバレンタイン、どうするん?」
「例年通り、適当に買って適当に配る感じやなー。あ、でもファンの人からもらえたりするんやろか」
「どうやろ。広町先輩は山ほどもらいそうやけど。私はゼロやろな……」
「あはは。あたしも花歩たちも友チョコあげるから、落ち込まないの」
「べ、別にチョコの数なんて気にしてへんわ!」

 つかさからは友チョコなのが、いきなり確定してしまった。
 でも分かり切っていたことだ。不均衡を承知で、夕理は本命チョコへひた走る。


 *   *   *


 翌日の部活が始まる前。夕理は姫水に廊下へ呼ばれ、小声で尋ねられた。

「来週告白することは、つかさには内緒よね?」
「う、うん。聞くとつかさは身構えるやろうから」
「なら勇魚ちゃんには黙っていた方がいいわね。うっかり口を滑らせる可能性は否定できないし」
「大事な幼なじみ相手に、隠し事させてごめん……」
「短期間だし別にいいわよ。あと九日ね、頑張って」

 励まされながら部室に戻る。
 つかさを幸せに……できるかは分からないけど。
 どうにかして、姫水が心残りなく引っ越せるようにしたい。

 さらに翌日、今度は小都子に廊下に呼ばれた。

「何とか予定に都合がついて、連休は二日とも空きそうなんや。
 夕理ちゃん。よかったらチョコ作りに、前の日から泊まりにきいひん?」
「い、いいんですか? 貴重なお休みを二日も」
「元祖仲良くし隊として、姫水ちゃんに負けてられへんからね。
 いつか家に招こうと思いながら、気付けばもう二月や。このチャンス、ものにさせてや」
「は、はい。でしたら、喜んで」
「ああ良かった。家の方は選挙の準備で忙しいし、お土産とかは別にええからね」

 そう言われても甘えるわけにはいかないので、お土産を考え始める夕理である。
 この日は桜夜が本命の試験日で不在だった。
 部活が始まって早々、名古屋の本人から連絡が届く。

『今日も全然解けへんかった……』
『でもカフェテリアは噂通り素敵やったで!』
『腐らずに、ここに入れるように頑張る!』

「本命って、まさかカフェテリアで選んだんですかね」

 花歩のツッコミに部員たちは笑う。
 結果は駄目そうだが、桜夜自身は前向きで救われた。

 翌日から桜夜には家庭教師がつき、毎日ぎりぎりの特訓。
 部活前に学校に来て、部活だけして帰っていく。
 立火も後輩たちも、勉強のことはもう何も言わず、ただライブ練習で桜夜の頑張りに応えた。
 とはいえ笑いのアイデアも出尽くし、少々行き詰まりの感もあるが……。

 そんな状態で土曜の活動は終わり、立火が今後について連絡する。

「本番前の日曜は、いつも通り部活をするで。
 つまり明日明後日が最後の休みや。しっかり英気を養ってや!」
『はい!』
「私は部活休みの方が地獄や……チョコ買いに行く暇あるかなあ」

 溜息の桜夜の日祝は、家庭教師にしごかれて終わるのだ。
 姫水が優しく慰めた。

「桜夜先輩からもらえなくても、私たちからはちゃんと渡しますよ。
 先輩は合格してくれるのが、一番のお返しです」
「ほんまっ!? もしかして手作り?」
「はい、つかさ以外は手作りです。つかさは知りませんけど」
「ちょっと、手作り信仰やめてや~。いい店の買いますって」
「うんうん、みんながくれるなら何でもええで!」
(あれ、私まで木ノ川先輩に渡す流れになってる……)

 内心でぼやく夕理だが、それで受験の助けになるのなら……。
 などと考えていると、いきなり勇魚に話しかけられる。

「夕ちゃんは小都子先輩の家にお泊まりなんやね! めっちゃすごいチョコ作りそう!」
「お、お菓子作りなんて滅多にしないし、期待されても困るで」
「ふっふっ。そこはもう私が、手取り足取り教えるからね。夕理ちゃんは大船に乗ったつもりでいてや」
「は、はい! よろしくお願いします!」

 そんな後輩たちを、立火が感慨と、少しの心配をもって見ていた。

(小都子、ほんま幸せそうやな)

 普段は落ち着いている小都子が、今はちょっと浮かれて見える。
 心配というのは、晴が後ろで冷たい視線を送っているからだ。
 経験者の立火としては身のすくむ思いである。

(結局花歩のことでは、最後まで晴に心配かけてばかりやったなあ)
(ま、小都子は私と違って、しっかりしてるし大丈夫やろ)
(今のうちに、いっぱい良い思い出を作るんやで)

 鍵をかけながら見送る先で、帰っていく二人に花歩と姫水も声をかける。

「夕理ちゃん、ファイト!」
「あ、ありがと」
「小都子先輩、夕理さんのことお願いしますね」
「任せといてや!」

 そんな様子を、つかさが不思議そうな目で見ている。
 では明日に、と小都子と別れた夕理へ、つかさは直接聞いてきた。

「えらい気合い入ってるんやな。まるで本命チョコ作るみたい」
「そ、そそそうやろか!?」
「ま、交友が広がって初めてのバレンタインやもんね。夕理にはそれくらい大事なんやな」
「う、うん」
「小都子先輩の家、めっちゃ豪邸やから楽しみにしてええで~」
「うん……」

 隠し事をするのは心苦しいが、今ここで『つかさが本命や』などと言うわけにもいかない。
 当日サプライズで渡すことになる。
 今は呑気な顔をしているつかさが、どんな反応を返すのか……。

 不安が消えないからこそ、頼もしい武器を持ちたい。
 最高のチョコレート。それさえあれば、夕理は怯まず戦えるはずだ。



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