Top Ka1 Ka2短 Ka2中 痕短 痕中 痕長 ONE短 ONE中 家計 月姫 Ka3短 Ka3中 Ka3超短 Ka4小 Ka4本 オリ肉 Ka5短 CLA1短 ONE2 Ka5中 CLA1中 オリ2 オリ3 Ka6小 Ka6本 AIR オリ4掌 オリ4短

○Revin さん

01 にじのむこうのおはなし (採点:2)
 自分はこの物語の対象年齢に入っていない気がした。

02 黒船 (採点:8)
 締め以外全部会話文というのに、全く不満なく状況を把握でき、頭の中にイメ
ージを描くことが容易かった。非常に読みやすい。ウィットにも富んでいて楽し
かった。

03 遵守 (採点:8)
 なるほどなるほど。これは読めなかった(笑)。言い回しが頭に入りにくい箇
所は幾つかあったが、ストーリーとしては完璧に近いと思う。気に入りました。

04 海神の矛 (採点:3)
 少し設定が分かりにくい。艦長の問いかけもあまり重要な意味を帯びておら
ず、受け取りがたい。こうした感情的ドタバタが起こりうる教育・人選に不備が
あると思うが、それを言っては始まらないか。断片的に「六十トンずつ軽くなっ
ていく」のような描写が好きだ。

05 理屈じゃないこと (採点:6)
 その複雑そうな理由を全く公開しようとしないのは大変よい。ただただ自分の
思いを垂れ流し、感傷に浸り、人に見られたらヘタレと称されよう男の私生活を
神の視点でこうして晒すというのは面白い(笑)。
 という見方をすれば最後のフレーズは笑う所なのだが、作者の意図はもしかす
ると男への感情移入なのだろうかという思いもある。序盤の彼女の『茜』的振る
舞い(ノイズ語)を見るとその疑念は強まってくる。はて、どうか。
 という見方をしながら考えているうちに「どうでもいいな。なかなか面白かっ
たので6点」と手が動いてしまった顛末であります(笑)。

06 For tune the rainbow (採点:4)
 とても綺麗な話。ありそうな話なのに少しいいと思ったのは、かつて自分が萌
えたものだからだろうか(笑)。

07 事実上悪真実上正義 (採点:3)
 笑えるぐらいステレオタイプのRPG的ファンタジーが出てきたので、てっきり
ギャグやアイロニーに走るのだと思ったが、そうではなくその路線を突っ走って
いたため、逆に驚いた。ソウルイーターまで出てきたので、どういう方向性で来
るのか先を読めなかった。ひっくり返すのか、このままのノリで行くのか(笑)。
 勧善懲悪へのアンチテーゼと考えるには拙い安直な構造で、何より主人公らの
心理が軽すぎる。あくまで役割に徹しようとする志向性が見え、すごく非人間的
に思えた。

08 パースペクティブ過剰 (採点:7)
 うわー変態的だなぁと思い、その異常さに圧倒され、読み終わるまで緊張感が
絶えることはなかったのだが、クオリティを保ちすぎた(笑)。
 友人と話していたのだが、この種の小説は彼を含む一部の読み手に絶大な麻薬
的快楽を生むらしい。その構造や感性のあり方は大変理解できる。が、俺という
一つの繊毛には生憎だがあまり触れなかった。
 確かに噛めば噛むほど面白いタイプのスルメ的小説ではあるのだが、何らかの
(俺に読解可能な)意味付けは欲しかった。友人の談によれば恐らく全体として
の意味はないという話であるし、俺もそう思った。
 ただその描写手法を捕まえて絶賛するには、俺は文章を読み慣れていないこと
もあってかそのアンテナが欠けているようだ。

09 テロリスト長沢 (採点:7)
 後の展開を考えながら笑ってしまう後味がいい。「書いた人もこんなネガなこ
と考えてんじゃねぇの・・・」という決して事実ではない想像をしてしまう(笑)。
誉めようのない無味な荒廃っぷり満載なのに、きちんとした掌編小説として楽し
めたのだから不思議。
 良かったです。

10 いろはの森 (採点:4)
 言葉づかいにリアリティを感じた(厳密でなくとも少なくとも俺は騙された)
が、それ以上の衝撃はない。「Kanon」というゲームで部分的に似たような設定
を見ている。
 主人公の振る舞いは非常に好感を持てたし、上手いし感性も好きだが、題材が
よくなかった。そうさ俺は悪食!

11 「やっぱりさ、天使っていると思うんだけど」 (採点:3)
 途中、想像したはずのキャライメージが崩れるような語調の乱れを感じた。紋
切り型でないキャラの演出だとしたら失敗なのだろうし、単に俺の誤読かもしれ
ない。

12 フォーカス・レンジ (採点:1)
 食傷しております。

13 僕の後ろに誰かいる (採点:2)
 不発というか煮え切らないというか、とにかく読み終わって気持ち悪さが残っ
た。導入部で位置エネルギーと運動エネルギーを初期化したのはいいが、そのま
ま何の外力も働かずに自由落下し、別段驚くに値しない結果が得られたという感
じだった。

14 ずっとずっと言えなかった言葉なんだけど、この世界で僕は幸せだった。もうこの世界は消えてなくなってしまうけど君は一人でも大丈夫だから、一人でも歩いていけるから、いつでも僕はここにいるから。でも最後にこれだけは言っておきたかった (採点:1)
 長いタイトルは、その特殊性が新しいなら面白かったと思うが、残念ながら過
去の企画において比較的用いられて来た手法であった。もしご存じなければ残念
ということで諦めて頂きたい。
 あと誠に失礼なことを申し上げますが、クサすぎて焦った。展開というか因果
自体もどこかで見たようなものだった。クサさが合わないのは好き嫌いの問題だ
が、鮮度についてはもう少し客観的になる。
 全体として新しさがなかった。

15 打ち上げ花火、下から見た日 (採点:4)
 ガハハ。なんてラノベ的なんだ(笑)。
 面白いことは面白いが、オリジナルの小説というよりは一発キャラもののネタ
を読んだような気分だった。

16 さくら (採点:5)
 なるほど。桜の木の方が主体という訳か。てっきりサイコな女の物語なのかと
思ったが、それよりは納得が行く。
 あくまで桜のせいにする最後の2行がいい。

17 19140901 (採点:3)
 その符合はどうかなぁ。
 そのアナグラムは誰が考えたの、とか考えてしまう。考案者にアポを取って取
材したい気持ちになってしまう。
 鳥の絵を描いてたからその画家の所に行こう、という鳥の意志なのか神の意志
なのか、はたまた意志同士の引力なのか分からんが、なんで画家の所へリョコウ
バト(幽体か実体か分からんが)が来たのかな・・・とも考えてしまう。
 美談にするには想像して補填するべき背景が大き過ぎると思った。

18 生命 (採点:10)
 一人目を流産して、今二人目を身篭っているってことでいいのかなぁ。林檎が
匂わないというのが読み取れなかった(笑)。妊娠している間は嗅覚が鋭くなる
はずだが、一回目によるトラウマの暗喩なんだろか。
 手法としてのタイトル連呼は実によい。何の面白味もないタイトルだなぁ帯も
ないし、と思っていた俺を馬鹿にするようにタイトルは上手かった(笑)。
 流動的な思考をいちいち文章にアウトプットするとこうなるんだろうねって感
じの地の一人称が脱力を誘ってよかった。途中でも何度か『何か黒いものを持っ
てるな』と思わせ、匂わせる所はまさしく文学的で好みだった。

19 エンジェル・サイズ (採点:1)
 これは正しくありがちだと思う。ありがちなのの何が悪いかというと、新鮮で
なく面白くないことがよくない。ありがちな設定をインターフェース・架け橋・
煩雑な主題でない設定を省略するための基盤として用いるのなら構わないのだ
が、テーマ自体をありがちの中に埋め込んでしまうといけないと思う。

20 今日見る明日 (採点:1)
 内容がない。

21 雪国 (採点:4)
 状況がおよそ現実とは思えないので、何らかの寓話であるに違いない。しかし
謎だ。訳知り顔の女も謎だし、主人公も謎だ。人生でも誤ったのだろうか。

22 俺の押しかけサキュバス (採点:1)
 テンプレートそのままという印象。
 これ5年はちょっとヤバい。

23 現状改善系恋愛呪文 (採点:4)
 おお、それで終わるのか(笑)。
 このパターンはまた楽しく朗らかに終わるんだろうな、と思ってただけになか
なか良かった。

24 結婚適文句 (採点:5)
 うはーこれ16000bytesピッタリかぁ(笑)。お見事。
 シチュエーションはありがちだが、ギャグが面白かった。ギャグとオチまでの
流麗さを評価したい。

25 マージアここに在り (採点:3)
 この手の異星人との邂逅を扱った話というのは、少なくとも俺が頭の中で想像
し、いくつかの例を口にすることができている時点で、特異な素材ではないと思
われる。展開もいささか陳腐に思え、読んでいるうちに緊張感のある好奇心が刺
激されたり驚きを感じることは残念ながらなかった。
 小道具が切れないナイフというのも都合のよさを感じた。

26 僕らは分かたれたアンドロギュヌス。 (採点:2)
 見ている方角は好きです。が、世界観が最初から変であるために、どうも落ち
ていくような感覚も衝撃も感じられなかった。
 使っているカッコ記号や文章の配置などにもマイナス要素を感じなかったとい
えば嘘になります。

27 ヤンキー女と美少年 (採点:3)
 笑った。主人公の方が悪い奴じゃねぇか(笑)。

28 Forest Note (採点:1)
 既に似たようなボーイミーツガールを何作か読んでおり、新鮮味に欠けた。

29 Blind (採点:5)
 惜しい。面白そうなテーマだったのだが、深さに満足いかなかった。もっとド
ロドロとした考察の末に、考えて考えた結論を出して欲しかった。レイプの後だ
というのにやけに淡白なのも気になる。そんなものだろうか。

30 限りなき夏 〜A Frozen Summer〜 (採点:3)
 執拗な程に強調される淫らな単語に、文章全体から漂ってくる性臭を感じずに
は居られない。が、それも奇異を狙った故のものかなぁと訝ってしまって熱中度
半減。最終的には家庭事情の縺れという想像に易い結末になって残念だった。

31 正義の味方の悩み (採点:4)
 こういう軽いものは嫌いではない。デジャヴはもちろん甚だしいが、読んでい
てちょっといいなと思ってしまうのだから仕方がない。テンプレートの域は出な
いためにオリジナリティを感じないのではあるが。

32 俺たちいつも仏恥義理だぜ、夜露死苦! (採点:3)
 人物が多くて複雑。
 ノリは好き。

33 射的と祭りと悪党と (採点:2)
 『ひぐらしのなく頃に』というゲームのワンシーンのように思えた。

34 心の無い少年と、美しい夜。 (採点:1)
 よくある登場人物のバランス(クールな女と優しい男の子)、アンドロイドだ
から心が読めなかったという単純なトリック。素朴とは言えるかもしれないが、
面白いとは思わなかった。

35 西と東、白と黒 (採点:2)
 「よかった」と思う根拠となるような物が描かれてはいかなかったと思う。も
っともそれは16KBでは難しいだろうし、きっと途中でオチがバレてしまうだろう。

36 ソラアイ (採点:1)
 俺がこんなこと言うのも何だけど、主人公の倫理観、最悪じゃない?(笑)
 いきなり元カノの唯一の肉親の妹捕まえて、殺すとか赤ちゃんとかを口走る
(しかも事前に話していいことと悪いことを熟考することなく臨んだ上で)なん
て、ちょっと普通の感覚とは思えない。
 しかも相手の生活がかかっている商売をやめろなんて軽々しく言った挙句、
『結婚してくれ、生活は俺が支える』などという無責任すぎる発言を平気でする
クラナド的ありえなさ。考えられんぐらい低い生活水準を相手方姉妹に強いよう
とするその傲慢さは全く理解できなかった。
 養われの身で、バイトの一つも満足にしてないような者が吐くこういう台詞こ
そ、一時の気の迷いだろうと言わざるを得ない。彼がそうでない証拠が作中で一
切説明されていないからだ。

37 零光年先の、彼女 (採点:10)
 最高に馬鹿だがこの上なく純愛だ(笑)。俺も今回はキングオブシモネタを投
稿したつもりだったのだが、この作品の完成度には勝てん(笑)。シモネタと純
愛が両立を見れて嬉しい気持ちです。

38 山田仁の行き先 (採点:4)
 ワンシーンを切り取ったものとしては上質。必要最低限の説明で設定を読者に
理解させ、感動という無粋な要素を意識することなく話を展開させることに成功
している。主人公の行動動機も理解しやすく、キャラクターもそれぞれが特徴的
で理解しやすい。
 難となるのはやはり刺激の少なさ。ぼんやりと読み終えるのではなく、興奮に
打ち震えたいと思う。

39 イケナイ☆化学実験! (採点:6)
 登場人物がウザすぎたが(笑)、バカ理論がかなり面白かった。これほどきち
んと受験的知識を利用している作品はそうなく、密かな著者の知性が見受けられ
て興味深い。

40 不思議な君とのシンパシー (採点:1)
 ネタもオチも陳腐。

41 No River to Cross (採点:3)
 発想は面白い。そんなシステムを待望する。
 だが刺激が足りなかった。

42 焚火 (採点:4)
 題材が陳腐なのを除けば、なかなか面白かった。

43 仮面を忘れた不登校児 (採点:4)
 劣等感から来る益体のないウダウダとした悩みに耽溺し、その葛藤こそが自分
の向き合うべき重要な問題だと錯覚し、自己の正当性を確信しながら平気で恥ず
かしい言葉を羅列してしまう連中というのは、この作品で描写されているように
現実でも意外に多い。
 その辺を扱ったことを俺は評価したいが、一方では凡庸だとも感じた。こうし
たシーンや構造をわざわざ掌編として文字媒体に表現する必要があったろうか
と。例えば聡明な人物による断罪がなければ、話に締まりがないと感じるのは俺
固有の苛立ちだろうか。その役割はゆいかが担っているようでもあったが、彼女
ではいささか弱く、結果として問題の解決に至らせるわけでもなく、メタ的に読
者に納得を与えるでもなく、主人公の自己完結で終わっているのが残念だった。
物語の最初と最後を比較して、動きがない。
 思考の流れ自体は、人間をトレースすることに比較的成功しているように思え
て好感を持てた。

44 おかめと天狗とアインスタイン (採点:9)
 硬質というわけではないが堅い言葉を使った文章は、雰囲気を演出するのに実
に効果的。醜女が主人公という(コンペでは)意外な設定だけで評価しているわ
けではなく、全く違和感なく全パーツが作品に馴染んでいるのがよいと思う。
16000byteのサイズを使い切っていない余裕も、「超過→削る」の工程を思わせ
る他の作品と違って、周到にこの企画向けの掌編として作られている、とさえ思
ってしまうのは流石に贔屓目に見過ぎだろうか?(笑)
 やはり惜しむらくはルビシステム。俺はコンペにぜひともルビを導入して欲し
いのだが、この作品もルビを振ることができればより「美しく」なっていたこと
だろう(笑)。それが少し残念だが、そんなもの作品の所為じゃないよね。
 実にお見事でした。

45 おかえり (採点:1)
 刺激がなかった。

46 ザ・ロケットフィンガーNO.5 (採点:4)
 何がどの時点で進行したかの判断がなかなか付きにくく、話の輪郭がぼやけて
いる印象を受けた。

47 ポテト (採点:2)
 読み終えて特に何も思わなかったのは作品として失敗だろうか。主題のように
社会問題が持ち込まれてはいるが、特に深くない描き方をされているので主題に
もなり切れず、被害者の一ケースの身辺を綴っただけに思えた。

48 タクシー (採点:6)
 情けなさ、不意の展開が楽しめた。

49 バレンタイン事変 (採点:4)
 ギャグが微かに面白かった。

50 2月30日にいたチャコ (採点:3)
 筋は通っている、理解もできる、部分的な共感もできるなあ、と確認するよう
に作品のよい所をいろいろ列挙していてやはり気付く。面白くなかった。合わな
かった。

51 夏の風 (採点:2)
 内容は狙って無くしているのだろうから無くていいんだろう。では面白いかと
言われると、面白くはない。しかし帯に書いていたような爽快感は多少感じた。

53 瓦礫の森を哀れむように (採点:3)
 今回、ハードボイルドはこれが唯一か。雰囲気は非常によいが、面白いとは思
わなかった。ハードボイルドというジャンル自体にそういう感想を抱いている。

54 メルヘン非常口は暖色のライティング (採点:7)
 抽象的だなぁ(笑)。比喩・単語のチョイスが常に意外で刺激的。面白い。

55 饗宴 (採点:5)
 ここまで理解が及ばないともはや清々しい。これ以上書くことが見当たらない
(笑)。

56 Show must go on. (採点:4)
 少し意外な落とし方だった。なるほど、と思った。

57 エース (採点:2)
 スポコンを活字でやるのはやはり難しいのではないか。いやこれはスポコン部
分に重きが置かれているのではないのかもしれないけど。字から絵としての状況
を追うのが苦痛だった。

59 Day after tomorrow (採点:3)
 やっぱりその後で自殺してしまったのだとするなら、女の方を美化する訳には
いかなくなってしまい、男の感傷が不可解になってしまう。それだけ人を巻き込
んでおきながら、結局は自殺した彼女をどうとも思っていないのはおかしい。件
の帰り道に事故に遭ったのだとするにしても、描写が不自然だ。確率的不自然さ
を作者が全く隠蔽しようとしていないし、されていたらされていたで「生きる希
望を見出した矢先に不幸な事故」というありがちな構図になり、やはり陳腐にな
っただろう。やはり自殺したと考えるのが自然だが、それならばアンコの入って
いないタイヤキのようなもので、その辺を読者としての俺は一番知りたく、書い
て欲しかった。何故彼女が自殺願望を持っていたかという理由の説明はぶった切
ってよいのだが、なぜワンスアゲインが発生したのかこそを書くべきだ。むしろ
それを主題にしたらいい仕上がりになっただろう。
 素材としては高得点を差し上げるべき非常によいものを選んだと思うのだが、
調理の仕方によって凡庸になってしまったと思う。

60 「1万2000円は高すぎる」 (採点:4)
 原作に比べると論理性が弱く、+αも今ひとつだった。
 それでもエンターテイメント然とはしていて、楽しむことはできた。

61 山小屋語り (採点:1)
 少々の表現手法的拙さ(技術的ではない)と題材の陳腐さ、何を描いたのかが
今ひとつよく分からない点、[作者の意図したであろう読者への爆撃ショックポ
イント]――[読者としての俺の感覚]間にあるズレ、が作品をつまらなくしてい
ると思う。

62 格闘少女 (採点:2)
 「お前誰だよ(笑)」って言いたくなってしまうほど主人公が無駄に偉そうだ
った。俺が普段叩いている奴がいかにも言いそうなほど嘘と欺瞞に満ちた科白だ
が、これがこう誂えられた作品であるからという作者の設定によって事実と一致
することができたため、主人公は大衆性を何とか得ずに済んだというだけの話
で、つまり作品全体の思想が破綻した博愛主義を基にしているように思えて気持
ちが悪かった。

63 未来視の見る夢 (採点:1)
 好きではなかった。

64 ブランコ (採点:1)
 あまりに内容がなさすぎた。
 待ち合わせて、来なくて、怒ったぞ! やっと来た。こら! ごめーん、奢る
から。しょうがないなぁ。えへへ。
 これでは余りにも面白くない。

65 金曜日のつめきり (採点:5)
 「つめきり」と「ものさし」という二人を象徴するアイテムを上手く使ってい
る。リスカが出てきて少し陳腐コースへの道が見えたが、そう没個性化すること
もなく終幕へ突っ走ることができている。最後のシャレも実によい落とし所だ。
逆に何が悪いかを言うなら、この手の小説の空気自体があんまり好きじゃなかっ
たことだ。

66 残照の夏、伸ばしたてのひら (採点:1)
 デジャヴが過ぎた。

不足→脱却→ささやかな幸せ(思い出作り・・・[A])→逆転・喪失→回顧([A]の確認)

 このパターンの話として今までに様々な作品を見てきたし、このコンペでも見
た。もはや俺は、こういった話が世の中に多いことからいかに人々がこの手の話
を好きであるかを確認する以外に、こうした話に価値を見出せなくなっている。

67 世界一の小説 (採点:4)
 皮肉が弱いかな、と思う。
 馬田と鹿野は笑った。

68 両手いっぱいの花を (採点:1)
 題材的にまともに読むのが非常に苦痛だった。が、これはコンペティションな
ので読んだ。
 綺麗にしようしようという意識が迸りすぎていたのが原因だ。帯は割と合理的
なことを言っているので期待したのだが、内容はヒロイックな人たちによる演劇
だった。残念だ。

70 アリス (採点:5)
 ビジュアル的にはローゼンメイデンの主役の子みたいなイメージ(笑)。楽し
く読めた。
 ただ、メールの問題は結局何だったのだろう?
 その辺のカタルシス部分が気になった。

71 ……動物園に行きたかった (採点:6)
 説明は詳細ではないがとにかく「非常事態」「歴史の分かれ目」とでも言われ
るべき事態に陥っているのは理解できる。それを遠い出来事のようにぼんやりと
受け止めながら買い物に外出し、友人に安いメシを奢らせるために牛丼屋に向か
いながら「動物園に行きたかった」などと考えるのは、国家の騒動と一般人の認
識の間にある溝を描いていて面白い。
 でもどうせなら、オチより前の軽薄なやり取りを持ってくるべきではなかった
と思う。最後のインパクトが相対的に弱くなる。

72 月時雨 (採点:1)
 綺麗なだけだと思った。文章の端々から気取ってる風が見てとれて苛々した。

73 14文字の涙 (採点:2)
 携帯電話というガジェットは面白いのだが、内容が綺麗にまとめようとする意
志を強く感じさせて萎えた。

74 魔女の岬 (採点:5)
 魔女というからにはいかにもファンタジーな空気になるのだろうと思ったが、
やけに平均年齢が高くて堅い話だった(笑)。仕掛けはなかなか考えられてい
る。

75 夜の夜 (採点:9)
 設定を上手に使いこなしている印象。京極堂のような相談役であるおばあちゃ
ん(もっとも、快刀乱麻を断つというタイプではないし、あんまり干渉せずに挿
話的に出てきてるけど)がいい味出してる。幸という名前をつけておいて一番不
幸な役回りにしていたり、夜というまるで能力を象徴するようなネーミングは分
かりやすくていい。しかも記号を感じさせなかった。
 幸の実にむかつく切り返しは、夜の持つ能力によって不親切に対する罰のよう
で皮肉的だった。泰然としているおばあちゃんもよい。だが母親との応酬だと
か、能力の開花を説明する所が話としては無駄に思えた。そこも予断を許さない
ぐらい面白く描いてくれたら、この作品は最高水準たりえた。
 あと、関西人としては関西弁の作品というのは嬉しい(笑)。たとえ俺の地元
の関西弁とは多少ずれていようと(笑)。

76 Another (採点:3)
 よく見て見て見すぎたような情景から始まった為、全く食指を動かされなかっ
た。それでも、二人がどういう間柄なのかを語らない切り出し方がやや凡庸さを
抑えた結果となるのかどうかは分からない。
 最後の最後まで王道というか凡庸だったが、最後で軽く革命的なコペルニクス
的転回を果たちょっwwwwwww禁断の愛モエスwwwwwwギロッポンでシースーwwwwwwwww

77 曇りのち晴れ。 (採点:1)
 結局は色恋沙汰のワンシーンに過ぎない。俺が読者参加することに躊躇する原
因の一つとさえ言えるほど面白味がなかった。恋愛レポートを読んだ感じだ。
 俺なら「伸ばす。かわす。」の連続のところから二人の戦闘オーラを増幅させ
ていき「世界で会おう」と別れる話にする。

78 君が星を手にするとき (採点:6)
 親心の描写がよい。一番最初のインタビューの所などは特に面白く、マスコミ
の求める薄っぺらな表層的イメージ的な絵と、その内実の木目細かさが克明に描
かれている。話題の中心である「サム」など台詞どころか姿さえ見せず、ただ両
親の感情が訥々と述べられているのには好感が持てる。
 しかし内容自体は後半に向けて段々と失速していき、最終的には完全に予想の
範疇内に入ってしまった。そこで何かもっと激しい動きはないのか、と思った。

79 奥の細道 (採点:10)
 何だろうな。
 素晴らしく読ませる文章で、中島らもが示したような無根拠の薬物的狂気的酩
酊状態とはまた異なるような、千鳥足の言葉遊びとでも言うべき不思議な感覚。
 描写の一つ一つが丁寧で具体的。「その拍子に蓋を開き、中から白い煙草を何
本も何本も零れさせた」という記述には少し唸った。
 でも例によって寓意は分からん(笑)。ただただ2回も3回も捻ってる変な切
り返しがいいなぁと思ってこの点。逆に言えばそれだけでこの点。

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