○mightywings さん
- 001 丘の生き物 (採点:1)
- センタリング一辺倒では芸が無い。この手の詩であれば、逆にKanonを読まない人でも
感動させるくらいの意気込みで構成するべき。元ネタに絡んだ単語を羅列させたような
感があり、書き手の個性が伝わって来ない。
- 002 『漢の浪漫』 (採点:2)
- ノリ一発。
- 003 Last regret (採点:7)
- 短いながら読み返す程深みが増す作品。
- 004 雪の国のメルヘン (採点:2)
- 行間開けすぎ。内容は薄い。<天使さん>は不自然。
- 005 『忘れないから』 (採点:2)
- 言葉が陳腐。また、台詞まわしからは、一体どちらがどんな結論を出したのか不明。書き手が勝手に
盛り上がって答えを押し付けたように感じる。登場人物が語らなければ物語は味が無い。
- 006 『その笑顔で』 (採点:1)
- 引っ張った割りにはオチが軽すぎ。地の文も描写が解説しすぎ。物語にすらなっていない。
- 007 キミを後ろに乗せて・・・ (採点:2)
- 起承転結、起伏なし。感情表現も乏しい。訴えもない。
- 008 また明日 (採点:9)
- 巧い。キャラの台詞まわしも軽快。オチもわかりやすく、かつ掴みがある。
我見だが、栞の杞憂は、まあ無用のものであるが、対する祐一の科白も、やもすると
刹那主義に捉えられがち。人生楽しいのは生きているこの瞬間。でも明日がもっと
楽しくあるため、今日の労苦を背負うのも大切では。
- 009 もし、もしも…… (採点:1)
- 後味悪すぎでは?ダーク路線とはいえ、尻切れトンボでは読者に何も訴えられない。
読み手の事を考えれば、全体の構成や言葉の使い回しもまた変わると思う。
- 010 かまぼこ板の誓い (採点:5)
- ほのぼの。それだけ。
- 011 約束がくれた時間 (採点:4)
- 舞の一人称にしては、地の文、会話文、ともにくだけ過ぎでは。ぶっきらぼうな
印象のある彼女がかなり饒舌で、感受性も豊かに状景を描写しているのは、実際
かなりの違和感がある。大声で他人を呼ぶシーンも然り。
- 012 あなたと一緒にいる朝に、夢の続きを見にいこう (採点:5)
- ほのぼの系は、よほどの殺し文句が無い限り月並みの印象しか感じられない。
- 013 その朝 (採点:7)
- 文章が引き締まり、テンポ良く進んでいる所為か、<きつね色>という単語が
必要以上に作為的に感じられた。勿体無い。幕切れも、あと少しインパクトが
欲しかった。
- 014 青い春 (採点:3)
- 香里と祐一がくっつく経緯がまるで書かれていないし、対する北川の心情も舌足らずすぎる。
- 015 遅刻 (採点:4)
- それは愛故に、と暗に匂わせて片付けているのはどうか。毎朝起きる為の、名雪の努力を少しでも
表現していれば、もう少し物語が盛り上がったのでは。
- 018 雪の上の舞踏会 (採点:5)
- 設定が不明。栞ルートの一年後で良いのか何なのか。それと判る文章が欲しかった。
結びの一行はパンチに欠けている。それと蛇足で、クロスカッティングの順番も一箇所違う。
(栞が眠った後、再び栞一人称になっている個所)
- 019 雨 (採点:10)
- 雨音や川のせせらぎといった水の流れる音には癒しの効果があると云われる。
あゆを包み、その胸中を潤す雨は、読み手の心をも同時に癒してくれる、そんな
気持ちにさせられた。
- 023 純白の審判 (採点:6)
- 締め方が勿体無い。好みで言えば、真夜中を過ぎた、あるいは翌朝くらいの時点で二人が
公園でどのような状態でいるのかを三人称で綴ってみる、といった締めが良かった。
- 024 月 影 (採点:8)
- 旋律はどこまでも緩やかに。時に安らぎを、時に悲しみを奏でながら、思いを募らせ歌は夜に
染み渡る。この作品もまた<初めて聴く音楽>。読み手の数だけ新しい歌が生まれる。
- 026 カナブン (採点:3)
- 内容への感想。幸せであることに目を背けてはいけない。それが過去との決別になろうとも。
文体への感想。空白行開けすぎ。最初エラーかと思った。風景の描写が皆無で季節も不明。
反して会話は長すぎ。演出には人物の仕草や景観描写も重要である。それと、タイトルと
本作の結合性が不明。何故に<カナブン>なのか。読解力不足で失礼ではあるが。
- 027 残暑お見舞い申し上げます!? (採点:4)
- 物悲しく、うら寂しく、救われない真夏のふたり、、、。
- 028 生き残るのは一人だけ (採点:3)
- 起承転結、起伏が無い。始まりも終わりも唐突すぎ。
- 031 『あの日の・・・』 (採点:2)
- 狐の名前がいきなり真琴のフルネームなのがちと苦しすぎる。自分達で名づけたのであれば
7年後の再会時に名前で気づくはず。それと二人が狐と過ごした時間の描写が乏しい。拾って
来たと思えばもう居なくなっている。この辺りの描写を増やしてほしい。
- 033 口笛の聴こえる教室 (採点:3)
- なし崩しに放送委員もどきの二人。栞を交えての放送シーン、といった場面を
スリリングかつコミカルに表すのが腕の見せ所であり、それが無いので結果
盛り上がりに欠けている。
- 035 月の向こうに (採点:6)
- 情景描写の綿密さは素晴らしい。スピード感があり、それでいて静寂が作品全体を霧のように
包んでいる。しかし、<物語>として本作は完結していない。舞の行き着く先が、絶望なのか
希望なのか。剣を保つのか捨てるのか。匂わせる事もしていないので、そこを描いてほしい。
- 037 あの日をもう一度 (採点:2)
- 書き方がバラバラ。主体がすぐ変わるが、空白行の開け方に法則性が無いようなので
変化についていけない。内容も、栞ファンが栞の都合が良いようにアフター物を書いた、
程度にしか感じられない。味気なさが残る。
- 038 弱虫が見た花 (採点:8)
- 惜しい。当初から香里の悩む原因は明確だったが、それでも、栞という個を限定して感情を
露呈する部分が最終部にしかないのが惜しい。この最終部でもう一山築いていれば更に深みが
増したと思う。それと、生きていくだけで罪が償える、と考えるのは愚か。自虐と倦怠に縛られた
生は死と等価であろう。自身の価値を尊び、かつ他人に幸せをもたらすことこそ生きる意義。
- 039 『Wait』 (採点:5)
- 微妙な作品。本編中の見えざる1ページを、舞と栞のクロスオーバーの形で構成したが、
栞の設定が本編と若干違うのでは?姉、香里は妹の存在をこの時点で抹消していた
筈で、気遣いがあったとは思えないし、そこに感謝の念は生まれようもない。また、街中で
あゆと激突した翌日の設定なのであれば、いきなり<今だけを見て歩いてゆこう>と気持ちを
切り替えるのも急すぎる気がする。
- 040 嵐を呼ぶ転校生 (採点:4)
- 自分の都合で果たして再入学できるのか?金銭に物を言わせた、とかこじ付けでもいいから
(常識的には少しも良くないが)裏を設定してほしい。あと、舞が常識的な道を歩んでいるのに
佐祐理が非常識な方向に走るのは何か食い違いを感じる。道は違ったとしても心は同じ方向で
いてほしい、と個人的には願っているので、どうせやるなら二人とも来てしまった、くらいに
ハジケてほしかった。
- 041 涙 (採点:8)
- 親子が二人を遠めに見つめる場面からラストまで、何か作品をこざっぱりまとめようとする
淡白さが感じられた。夕暮れ時の情景や舞の精一杯の優しさ、佐祐理の慟哭など、前半部がとても
印象強かった故に残念だった。
- 042 『眠れ眠れ可愛い――』 (採点:8)
- 文は軽快で、だが加速感というよりも浮遊感が強い。物語というより<詩>的要素がにじんでいる。
拍子の無い自由な歌。そんな印象を受けた。
内容では、そもそも眠るのが怖い、と言いながら人前で居眠りするのは、どこか矛盾していないか。
栞への自責、後悔、贖罪とか、その辺りが絡んでくると思ったが欠片も出てこない。はたして
主人公は本当に香里なのか?彼女のアイデンティティーが文章中から巧く見出せなかった。
- 044 ふゆのひかなた (採点:6)
- 姉妹の行動パターンはよく書けているが、ただそれだけ。心情深くを表現してほしい。
- 046 『安らげる場所』 (採点:1)
- キャラ萌えだけのSSでコンペに挑むのは無謀。
- 048 もみちゅーどく (採点:3)
- 、何と言うか、<おばかちゃんSS>か、、、。手羽先リュックには腰砕けしたが。
- 051 待つ女 (採点:4)
- 天野の策士ぶりに笑えた。文は今一つ盛り上がりに欠けるが。
- 053 積み重なった現在のカタチ (採点:7)
- 感動させよう、と目論むと、かえって台詞まわしが鼻についてしまうものなので、ラスト数行も
ライトタッチで締めても面白かったと思う。
あと改行しすぎ。前半、会話文連続しすぎ。目覚しネタが中盤以降生かされていないが、目覚しは
本編ではキーアイテムなので、サンデーの布石にする程度であれば違う内容で脅迫しても
良かったのでは。このネタで引っ張るかと思わされた。
- 054 何でもない土曜日のこと。 (採点:1)
- 場所と会話だけで勝手に盛り上がる話は、コンペでは勝ち目は薄い。好きとか嫌いとか、
のべつ幕なしに締めにもってくるのは、やはり感心しない。
- 055 手紙 (採点:2)
- 文体がおかしい。青年、女性、という主語を用いているのに、会話中で平気で固有名詞が
登場する。意図が読めない。内容は安いメロドラマ、人物しゃべりすぎ。もっと仕草や
風景を描くべき。
- 056 大輪の花 (採点:4)
- あゆが主体なのかどうか判別しづらい文体。花火があゆの心情をさほど左右していない気もする。
伏字を用いると文の品位が下がるので、地名とはいえ別の表現を模索してほしい。
- 058 夕凪 (採点:10)
- Kanon未プレイの人でも唸らされそうな傑作。本作が祐一と舞の思い出であるのは明白だが、
うさぎの耳、まものといった本編独特のキーワードは巧みに伏せられている。
幼少の、というより大人になりかけている少年の頃、という感じに仕上げているあたりが
流石。状景描写の緻密さにも故に違和感を感じない。元ネタを踏襲しつつも、見事に筆者独自の
世界を描き出している。Kanon布教へのバイブル的一作となろう。
- 059 水瀬家の縁側で (採点:8)
- 読後に思わずソフトを引っ張り出し、オープニングを眺めてしまった。名曲。
前半部、夜のハーレムは、実は削っても差し支えないのでは。キャラは良く描けて
いるのだが、後の展開に関わるほどの重要なイベントではない気もしたので。
- 061 忘却の果てに甦る記憶 (採点:2)
- 水を飲むまでの伏線が長く、しかも伝えるものもあまり含まれていない。
中盤の話は、オリジナルとはいえ如何なものか。というか相手の何処に
惹かれているのかくらい言及してほしい。漢文読解不能。コンペ参加作品として
批評を受け入れる以上は、極力万人に伝わる文体を用いるべきでは。
- 062 丘の上での昔話 (採点:3)
- オチの台詞まわしは良い。他はまだまだ。
- 063 ドッキリなbirthday (採点:8)
- 作品は割とライトに進むので読み流していたが、幕切れの秋子自室シーンのくだりは
思わず感動。悪い意味で大人になった、という台詞の破壊力は壮絶だった。
- 064 恋する乙女というものは (採点:7)
- ものすごいボケツッコミの嵐。嫌いではないが爆笑まではいかなかったので。
- 065 振り返る想い (採点:7)
- <、、、ただいま>の台詞は至って舞らしい。あゆの使い方も悲壮感がなくて良い。
しかし、あゆを見知らぬ少女として設定しているのに、<祐一が待っている>と
告げられた際にも、舞が少しも懸念しないのは不自然。この辺の書き方と、もう一つ
ラスト数行の台詞をもう少し工夫しては。
- 067 そんな二人の逃避行 (採点:6)
- 二人の辿る道は所詮堂堂巡り、なのに何故か希望を感じてみたい気もする。
- 069 マリッジブルー (採点:6)
- 幕開けの展開が殺伐として寒い。かなり引いた。あと空白行開けすぎで読みづらい。
天野と関係を結んだ、祐一の真意がどうも不鮮明。
- 070 ラヴり〜しすたー略してラヴしす (採点:2)
- 作者がキャラにのめり過ぎ。会話文ばかりでドタバタが疲れる。一人称なのだから
もう少し栞の目からの場景描写や、心情の片鱗などを盛込むべきでは。
- 073 守りたい約束 (採点:7)
- 謎ジャムの設定がいい感じ。しかし作品としては、書き出しの人称があやふやで少し不満あり。
また、ジャムの壜を見て過去を思い出すシュチュエーションはいいとして、導入にもう少し
長さを持たせたほうが良かったのでは。いきなり回想モード突入になっているような、、、。
回想はやや長すぎ語りすぎか。また前後の現実モードで、もっと名雪達を想う言動を描いたほうが
母親としての彼女の一面が出せ、キャラに深みが増したと思う。
- 075 記念日 (採点:4)
- ジャムに起因し、ジャムで終結する、秋子の無作為遠距離マッチポンプな話。
- 080 鈴が唄う日 (採点:8)
- 作品の淡々とした調子は、それでいて芯に力を秘め、秋子の特性を巧く表せている。
ただ、亡き夫が何故に鈴というアイテムを選んで贈ったのかが説明がなく、そこがマイナス。
その鈴がもつ特別な意味や所以があったら、と思った。それと表題は独自のもので。
- 083 偽りの伝承 (採点:8)
- 真実は常に、それを見出さんとする者の胸中にこそ存在する。
- 086 人生にifはない (採点:1)
- 世の中結果が大事とはいえ、そこに至る経過も、その人物全体を評価する際には重要視されるもの。
学力査定の手段、とテストを割りきる北川の言動は、所詮自己中心的な子供の論理からに過ぎない。
固定観念が夥しいのに間違えたなら正せばいい、等と口にする。自分の出来ることをやり尽くせ、と
叫ぶなら解る回答くらい全記入してほしいものだ。自由と我侭とを履き違えていて、魅力に
欠けることこの上なし。己の振る舞いに全力を尽くさない人間に、他人の幸せを願う資格はない。
- 089 雪原の軌跡 (採点:7)
- 祐一がクロスしていないこの展開で、<まい>がいきなり魔物にとって変わって出てくるのは
どうも不自然だし、それを何の躊躇いもなく受け入れる舞の態度も、やはり展開上不自然では。
シリアスを貫くなら、己が命と引き換えに真実に辿りつく、位の幕切れでも良かったのでは。
- 091 ある日ボクは天使に会った (採点:3)
- 天使が少し解説しすぎ。三人称の地の文も同様。それと、二人が周囲から認識されていない、と
いう表現が作品中に乱発している。無駄な改行も多い。結論、全体的に文がくどい。
- 092 デエトの日 (採点:3)
- まずタイトルの内容と本文がさして合致していない。序盤でデートはキャンセルと判明した途端
その後一切触れられない。結局香里のドタバタを描いているだけで、何の主張もない。
伝えたい事、感じてほしい事をしっかりテーマとして表現してほしい。
- 093 philosophy (採点:7)
- <view>の表記は不要、そんな単語を使わないでも読み手に分かるような文章を創作すべき。
祐一ばかり悩んでいるような文章なので、もっと名雪の心情を深く書き出してほしい。
タイトルが弱い。全体何が哲学なのか。人を信じることに関してさほど深く述べては
いないようだが。
- 095 すべてがFになった日 (採点:8)
- 作品そのものは満点。書き方がこなれていて読みやすいし、何よりオチのブラックさが最高。
難を挙げると、石橋、北川、美坂等、Kanon登場人物名詞をまったく別の人物名詞に
挿げ替えても、観賞に支障が無い。<けろぴー>が<ケロヨン>と呼ばれようが筋は通る。
つまりは、この世にKanonが存在しようがしまいが当作品は書ける訳で、純然な
<KanonSS>とは言いがたい。
それと、タイトルのパクリは印象悪い。親は我が子の名を真剣に考えるべきでは。
- 097 ありがとう、さようなら (採点:9)
- 難癖つけるようだが、<特性バニラ>は特製、<あんなに美味しいならまた着たいです>は
来たいです、<君のいうとうり同じではないのかも>は、とおり、が文脈上正しいはず。
誤字以外は満点。時は思いを変え、季節の風が新たなその思いを優しくそよがす。読後の
爽快感は正に風が吹き抜けたかのよう。シンプルな言葉で綴られた文章は、核心をついて
くるが故に胸中深く染み渡る。タイトルコールされるラストシーンには切に感動した。
- 098 希望を抱いて (採点:3)
- 書きたい内容を勢いで羅列した、そんな感じ。展開がどこでも急で、ギャグにも
シリアスにもなりきれていない。
- 099 Anniversary Days (採点:3)
- 序文の語り、これが秋子に向けられているのは良く分かったのだが、この語りの内容では
祐一が秋子を溺愛しているかのよう。本文のテイストと語りのテイストが離れすぎで
ちぐはぐしている。また、秋子の人称を入れたのは不自然、祐一の一人称に固定して書き切る
べきだった。それと<午前零時を>の一節、DCTからの拝借であるのと、既にこの節自体がオチの
ネタを早々にバラしているのとで、かなり印象悪い。自身の言葉で語るべし。
- 101 Little Seedling (採点:7)
- 作品全体の清清しい雰囲気は良し。あゆが明日への決意を固めるエンドシーンもいい。
あえて言及すると、ピクニック先の森林と<学校>との類似点が具体性に欠ける。同じ
雰囲気を醸し出すそれが、一体何であったのかは、あゆと祐一にしか判らないので、読み手
にもそれが理解できる手ががりを残してほしかった。
- 106 あなたのために出来ること (採点:9)
- 最終段落が絶妙。明快に謎明かしを施し、更にタイトルがリフレインされる、この手際が憎い。
目覚しくらい実家から持ってくるのでは、というのは余談だが。
- 107 満月は白い輝き (採点:10)
- 真琴帰還ネタの部類では、天野にも<あの人>が帰ってくる、というパターンはあまり世間では
見受けられないようだが、本作は見事それを書き切っている。中間部の天野が胸中を吐露するくだりは
生々しく、それ故の魂の彩りに心動かされる。本編のオープニングをクロスフェードさせた幕切れも
良い出来映え。技術も感性も良質の一作。
- 108 家出(強制) (採点:1)
- 悪乗りSS。やまなし、おちなし、いみなし。だらだらしすぎ。キャラの誰一人として
本来の持ち味を出し切れていない。
- 109 「つよがり」×3.14 (採点:10)
- 夏の風景と名雪がよくマッチしている。生活感の溢れる各シーンは、それを見つめる名雪の
確かな成長が伺える。友情と愛情の選択は何時の時代も難しいが、彼女はけして己が道を
踏み外さない。その<つよがり>に、更なる<輪を掛け>て。あとはラストの台詞、これが
決定打だった。至って名雪らしい。
- 111 貴方の笑顔が告げる春 (採点:6)
- 文の運びとか、スムーズで良いのだが、ラストいきなりラブラブな展開は如何なものか。
香里の心情は文中に表されていて一目瞭然なのだが、果たして祐一は香里を好きでいいのだろうか。
香里に惹かれる要因がまったく示されていないのに、このエンディングでは納得がいかない。
香里と付合う事を、栞に認めて欲しかった、と祐一の心情を設定するのも本作の内容では
かなり無理がある。うまく話を丸めようとはしてないか。
- 112 穏やかな日差しの中で (採点:1)
- オチの無い、キャラ暴走の作品は競争の場には出すべきではない。酷評人間の的になるだけ。
- 114 もう一度、はじまる季節 (採点:4)
- ガンガンいこうぜ、って言われても、、、。
- 115 温もりの中で―― (採点:3)
- アウトラインは本編と同様で、事故の被害者が秋子から名雪に変わっただけ。序盤の青年の
演説も、どうもあってもなくても差し支えないような気が、、、。
- 116 銀河鉄道と夜明け (採点:7)
- 表現力は高い。状景も心情描写もよく伝わる。あとはストーリーを独自の世界で構築
できるかどうかだろう。銀河鉄道のアイデアも、その用い方も巧いのだが、借り物が
放つ色彩が強いので、個人の技量を評価しづらくさせている。
- 119 『Nurse call』 (採点:9)
- 作品はとても素晴らしい。タイトルの所以が明かされるラストシーンは見事。
しかしこのSS、栞でなければ作品が成し得なかった、というものではない。
Kanonでなく他のゲームでも、病弱な少女がいればそれで問題なく書けるはず。
つまり、純粋な<KanonSS>ではない。
- 123 想い、あなたに (採点:1)
- 煩悩SS。勝手気ままにキャラにしゃべらせているだけ。
- 124 No More Dying Then (採点:9)
- 死は存在しない、等と言い切って欲しくない。どうせなら、死を恐れない、
失うことに怯えないと言って欲しかった。
それ以外はヒット。ここまでシスコンな香里も珍しいが、これはこれで味があるのでは。
- 125 幻冬歌 (採点:10)
- 苦い。徹して苦いこの味は香里の、そして祐一の感じた苦さそのものであろう。
怒り、諦め、悔しさ、やるせなさ、様々な負の感情がこの作品には渦巻いている。
心の奥底まで徹底的に<救いの無さ>が表現されている。傑作。
- 126 多角関係 (採点:6)
- 台詞まわしは割と面白い。ギャグ話だとキャラ設定が書き手の好みに偏るが、それは
黙認。ただ詰め込みすぎかも。もっと人数を減らしてテンポをアップさせた方が
書き手の持ち味を更に出せたのでは。祐一が好色一代男なオチは、正直受けが悪かった。
- 127 魔物の住む学校 (採点:4)
- 何故舞が黒い魔物になってしまったのか皆目見当つかず。祐一との、踊り場での対面シーンから
一気に白けが。強引有耶無耶なオチに愕然とした。このシーンまでは読み進む楽しさが
あったのだが、どうに勿体無い。
- 129 いつもそばにいる (採点:8)
- 真琴の帰還がさほど重要なものに感じられない。作品全体がドライな感じなので、せめて
この部分だけでも丁寧に語っても良かったのでは。それと、時間経過が少し判りづらい。
場面転換も同様で、段落間の空白をやや広めにとって貰うとまた違ったのでは。
比翼の鳥のカップ、渋いチョイスだがこのセンスは良い。
- 130 この剣に一滴の涙を添えて (採点:6)
- 人称が安定していない。序文はあまり引き込みの役目を果たしてはいないような、、、。
老人が舞を遠ざけるくだりが唐突すぎ。場面でもっと仕草や会話を増やして心情を
伝えたほうが良いのでは。刀を製作する理由も、罪滅ぼしでは今一つぐっと来ない。
語彙は多く文は整っているのだが展開が甘い。
- 131 鎖 (採点:4)
- 北川の孤独の理由が本作のキモとなっているが、全体のつくりから見てこれは違和感がある。
タイトルは作品中最も書き手が読み手に意識付けさせるべきキーワードであり、そのタイトルが
意味するところは<連なる記憶や思い出>であるのは作中で明白である。
にもかかわらず、後半新たな事実が出現し、戸惑いを押さえきれないままに、北川の、自身の
家族への追悼で物語は幕切れする。
果たして本作で訴えたかったのは何だったのか。的を絞りきれないのがマイナスだった。
- 132 愚者達は夜に歌う (採点:8)
- シュール、の一言に尽きる。夢だから何でもアリ、の設定でもこれだけ不条理でかつ読みやすい
本作には、他にはそうない質がある。終盤の<正直者と嘘吐きの選択>ネタは古典パズルでは有名
なので、これであまり引っ張ってほしくなかった。最後のページ云々の下りはあまり良くない。
書き手は作品にとって、ある意味全てを見通した神であるので、作品世界に没頭していた我々に
現実を押し付ける神の声はやや疎ましく聞こえる。
- 134 冬の眠り、春の眠り (採点:4)
- あゆの事を思い偲ぶそぶりを随所みせるものの、祐一の思考は脇道に逸れがちで一貫性に欠ける。
何気ない日常を盛込むのはもはや常套手段なのだから、だらだら書いては独自性を失うだけだろう。
眠る、という行為が作品中でさして重要な役割を果たしてないようだが、タイトルに掲げた訳は
あるのだろうか。また最後の引用文は蛇足。そもそも本文と文体を揃えるべきで、結構浮いている。
地の文は状景描写が良くできていた。
- 135 夏に始まる物語 (採点:10)
- 夏に出店する鯛焼き屋、彼がそこにいるための納得できる理由が欲しかったが、そこを差し引いても
本作は最優秀の出来映えと評価したい。あゆネタにシフトすると思いきや実は名雪ストーリー、
美汐の使い方もよく出来ている。彼女はあくまで脇役だが、その個性は十二分に発揮している。
自分を頼って欲しいと告げる名雪の思いの、決意の深さには胸を打つものがあった。
これから始まる物語が待ち遠しい、この気持ちを抱かせるのもまた優れた点。我々の創造性を
掘り起こし、読み手の数だけ新たな物語を生み出させるからだ。
- 136 君を想う気持ち (採点:5)
- 可もなく不可もなく。祐一の後半のいじけっぷりがすこしキャラが違うような気もするが、、、。
- 137 体育祭血風録 (採点:8)
- 大別すれば<ジャムネタ>の部類に入る本作は、当事者達は切迫しているにも拘わらず
何かコミカルな雰囲気が全体に漂っているのが小粋だ。作者が作品にのめり込み過ぎず、
全体を俯瞰して冷静に構成しているからであろう。オチのつかみがもう少し強ければ
良かったのだが。
- 139 花 〜ある奇跡の詩〜 (採点:6)
- 余りにも有名な梶井櫻ネタと、舞ストーリーのブレンド。展開はなかなかと思うが疑問もあり。
ラストバトルが繰り広げられる、本作の<春>は、いったい何時の春なのか?
舞卒業時の春だとすると、佐祐理と同じ大学は受験したものの、そこに通いもせずいきなり彼女の
留学となりずいぶん話に無理がある。ではその一年後の春だとすると、祐一名雪は3月卒業だから、
本作のような日常は過ごしていないはず。真実は如何に。
- 140 君の瞳は風の中に (採点:8)
- 久瀬が、特に台詞がキザすぎて、何故か恥ずかしくなる。実は良いヤツという設定は好きだが。
- 141 奇跡に連なるひとつの可能性 (採点:5)
- 前半のスラップスティックぶりが、気持ちしつこすぎか。
後半のネタはまあまあ。
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