○mightywings さん
- 02 黒船 (採点:7)
- 長屋の隠居と粗忽者のやりとり、ボケ倒す粗忽者、落語の王道を行く作品。
オリジナルでこの完成度は割と良い線なのではと思うが、まあ小噺の域かも。
今回ギャグでトンでもないのが幾つかあるので、対しては少し味付けが薄く感じた。
- 04 海神の矛 (採点:10)
- 世界の緊張は、何気ない日常のひと時の中で、こうもあっけなく崩れてしまうのだろう。
アメリカという大国のリアリズムをさらけ出す力作。
- 07 事実上悪真実上正義 (採点:5)
- オチが見えてから長い。一人称は説明的になりがちなので、そこも注意を。
- 08 パースペクティブ過剰 (採点:7)
- 横光利一の「蝿」のような雰囲気を感じた。しかし折角の作品も、一つ一つの文章が
長すぎで、内容を思い描く以前に読み疲れさせる。どうか完読させる工夫を。
- 09 テロリスト長沢 (採点:5)
- テロ(と書いて嫌がらせと読む)は、「人を呪わば穴二つ」の決意が不可欠。
- 10 いろはの森 (採点:10)
- コンペ中の生き死にネタ話ではピカ一かと。エピローグの美しさが圧巻。
- 11 「やっぱりさ、天使っていると思うんだけど」 (採点:10)
- とにかく放課後の教室ディテールが素晴らしい。もしかして現役学生?
- 16 さくら (採点:8)
- 美と醜悪のコントラスト。桜はよくこんな風に生と死の輪廻に絡んでくるが、よもや吸血願望があるとは。
- 17 19140901 (採点:9)
- 京極夏彦を彷彿とさせる描写力はとても素晴らしい。しかし何故だろう、
オチがついたが故に、まとまり過ぎてしまったような。
- 19 エンジェル・サイズ (採点:5)
- 後半に相手を持ち上げるのはフラグが立ってきた時の常套手段です。
- 21 雪国 (採点:6)
- 銀河鉄道雪国版でしょうか。違うか。
自分探しって、人に訊いても旅に出ても見つかるものではないと思う。
- 24 結婚適文句 (採点:10)
- 今回のコンペのギャグはたまーに抉る笑いが来る。堪らない。
- 25 マージアここに在り (採点:7)
- サイファイの形をした昔話なのでは。どこかの国にプロトタイプがありそう。
別に作者がパクリをしたと言っている訳でなく、素朴にそう思っただけで。
- 26 僕らは分かたれたアンドロギュヌス。 (採点:4)
- 「レティクル座超特急」って知ってますか?あれ位の世界観を出せれば良かったかも。最近なら「乗車権」辺りが認知度高いか。
- 29 Blind (採点:6)
- まあ直球な題材。しかし、精神と肉体は不可分だと中尊寺も言っていたが。
誤解は人生を彩るというが、曲解は人生をくすませる。勿体無いなあ彼女。
惚れた相手を抱きしめた時の、この人を護ろうという決意とかを少しでも感じる
ことが出来ていたら、捻くれたプラトニックに奔ることも無かったろうに。盲目。
- 31 正義の味方の悩み (採点:6)
- どうしてストーリーテラーの友人の女の子に破天荒が多いのだろうか。
デレだか萌えだか知らないが、誰かテラーを女子、友人を男子で設定したら
マンネリズムを打開できるのでは。
- 33 射的と祭りと悪党と (採点:8)
- 「大変! お巡りさんが変態っ!!」
「すいません、翻訳すると『大変、お巡りさん! 変態がっ!!』です。
ってシーン最高。翻訳とは言わないだろう、並び換えただけだし。
- 35 西と東、白と黒 (採点:6)
- 貧富の差というのは最も分かり易い格差であろうが、それ以外の要素をうまく盛り込めなかったのが残念。
警察・治安といった要素の対比は、西の国サイドで出ていない。
- 37 零光年先の、彼女 (採点:6)
- きつい。しかし、下とサイファイって割とよく見る組み合わせなのだが何故なのだろう。
- 41 No River to Cross (採点:8)
- 林檎コンペがあったら、そこでも上位に入るだろう。アダルトな雰囲気が素敵。
- 42 焚火 (採点:10)
- 後味悪いのも好きになったのは、ワルイオトナになったからでしょうか。
まあ、もっと強かに考えれば、虐待の真実と己の復讐感を、兄が今後赤裸々に
然るべき相手に語れば、二人は正当な保護下に置かれるのだろうが。
- 44 おかめと天狗とアインスタイン (採点:10)
- 終始変わらない穏やかさが心地よい。己次第で世界の価値を変える姿勢もまた良い。学ぶべき要素の多い秀作。
- 47 ポテト (採点:10)
- ちょっと他に見ない切り口。なんでしょ、これ。
- 48 タクシー (採点:5)
- 逆ハンドル・ノーブレーキでは、現場検証で故意の転落と判断されるのでは。
- 53 瓦礫の森を哀れむように (採点:9)
- テンポ良し。映像映えする展開。オチも良し。
しかし<完全なる自由>を得たのは、彼女だとは思うが少し分かりつらいのでは。
- 55 饗宴 (採点:6)
- 実験的作品なのか。カフカとかポーとかみたいな、デカダンな感じは嫌いではないが。
- 57 エース (採点:10)
- 世界が確実に、この人が動かしていると感じる時がある。
羨望も嫉妬も無く、ただ一途な感動を皆に呼び起こす、夢見た可能性の具現化。
永久に光放て、ファンタジスタ。
- 61 山小屋語り (採点:5)
- 拷問とか、かごめかごめとか、無理に恐怖感を煽る材料で出しているような気が。
語り部の話の展開も不自然で、ラストでは「そりゃアンタが悪い」と普通につっ込んでしまった。
口調が方言なのだが、ただ婆さんが喋っているみたい。でも「私」とか「恋愛」とか言っているし、年齢も時代考証もあやふや。
- 63 未来視の見る夢 (採点:7)
- 残念、今回のコンペが生き死に話にまみれてなかったらインパクトはあったのに。
あと、出会いをラストに持ってくる手法、何かの洋画であったような気が。
離婚した男女の過去をさかのぼる内容だったかな。別にここで減点した訳では
ないのであしからず。
- 65 金曜日のつめきり (採点:8)
- 何というか、やはり距離感に惹かれたようで8点。
- 66 残照の夏、伸ばしたてのひら (採点:7)
- 世界観は「鳥の詩」に通じるものを感じた。
しかし、大切な存在が失われる的展開は今回食傷気味なので、次回は安易に
喪失に逃げない作品を希望。
- 68 両手いっぱいの花を (採点:6)
- 海外の童話、児童文学のような作品。
しかし何度も述べているが、安易に死の喪失で感動させようと思わないように。
瀬名秀明でさえ、その処女作では主人公を最後に殺すのは安易すぎると、巻末批評にバカスカ書かれていた。
- 70 アリス (採点:4)
- 下妻物語風味かと思ったが、下妻の方が正直面白いので。
- 72 月時雨 (採点:7)
- 大正ロマネスク。生き死に話の多い今回のコンペでは筆力高い方では。
でもネタが生き死になのでこれも辛い配点。喪失感を用いたがるコンペ呪縛から
次回は解放されてください。
- 74 魔女の岬 (採点:7)
- この作品、途中までオカルト路線であると勝手に期待していたが、老人登場から
どうも無難にまとめられてしまったように思えた。「猿の手」みたいに引き換えで
祈願成就していたら後味の悪さに酔いしれられたのだが。捻くれた感想で失礼。
- 75 夜の夜 (採点:7)
- 死の影みたいな非日常要素を用いないでも、この筆力なら面白い作品が他にも書けるのでは。
彼女達の生き様は等身大の命に満ち満ちている。
- 76 Another (採点:8)
- よくあるパターンでは序章にしかならないのだろうが、ここでオチにした事に
自分は潔さを感じた。でも大半が続きを期待するんだろうなあ。
- 78 君が星を手にするとき (採点:9)
- 世の中には光を放つ者・ファンタジスタと、熱を放つ者・ロケッティアとがいる。
どちらも人類のエネルギー。小さな星を回していく力。
小さな所で、「いくつになってもハンカチを持ち忘れる私」という表現が
さりげなくも個性的で良い。自身の涙を拭わずにハンカチを差し出す母の
行動もそうで、日常の小さなところに目を向けられる感性が無いとこういうのは
書けないと思う。もっとも作品全体が真っ向ツボなのですが。
しかし、内容が良い時にタイトルにけちを付けるのが自分の悪い癖で、
親子、ないし男と男のスタンスを取った登場人物と、「君」が醸し出す語幹に
僅かなズレを感じてしまった。もっと堅い、ガッチリしたタイトルでも良かったのでは。
- 79 奥の細道 (採点:9)
- 作品は10点。でもタイトルが既存のものなのでマイナス。
重い作品。現実感を揺らがせる全体の中で、織り込まれた幼年期の想い出が恐ろしい位に
生々しく色を放っている。迷路とは彼岸のことなのか。
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