○Longhorn さん
- 001 farewell party (採点:8)
- いいものを読んだあとは無駄な言葉はいらないのです。
- 002 コンクール (採点:5)
- 最後の2段落がちょっと失速気味です。悪くないけどいまいちでした。
- 003 NEVER TOO LATE (採点:6)
- 香里かわいいですね。変にこましゃくれてませんし、泣いてるだけでもないですし。
ただこう……うーん。いまひとつ。
- 004 冬は好き? (採点:1)
- 1点つけるような悪い作品じゃありません。
でも、こと今回に関しては、どうにかブラッシュアップして超短編にできなかったかなぁというネタです。
- 005 恋人(ともだち) (採点:3)
- 三人とも、お仕合せに。
友達で居たいということと愛されていたいということは別かもしれませんが、あゆの中では全く等価で同一なのでしょう。
願わくはこれがあゆが消える前に見た一瞬の幻でないことを。
以下完全に個人的な感想として。一般的な視点かどうかは置いておきます。
どっちも選べないから、どっちも仕合せにしよう。どっちともくっついちゃおう。一緒に居ればいいじゃないか。法的なことなんて愛があれば無関係。
それ自体は祐一の発想として実に有り得るのですが、同時に祐一の発想としては全く有り得ないものであると思われます。
僕のコメントは混乱してますか? そうですね。
あゆ/名雪シナリオの祐一と、真琴/舞シナリオの祐一は全く性格が違うように見えます。
前者の場合、二人のひとを同時に好きになってしまったら、多分祐一は痛みを抱えながらもどちらかに決める、若しくはどちらも選べずにずるずると関係を引き摺ってしまうというイメージがあります。
ですから、ALL-ENDという前提であっても、前者に近い雰囲気の作品に見えてしまう場合は「みんな幸せ」というキーワードで括る場合に、こういう形でなくて別の解決法を探して欲しいというのが僕の我儘なんです。
三人での結婚式、というのはなんというか……うーん。別の組み合わせのほうが「らしい」というか。
思い込みですか? 多分そうでしょうね。
まあしかし、個人的にはそんな違和感を感じてしまったのも事実です。
- 006 スキスキスKiss!! (採点:3)
- ……らぶらぶいいですねぇ。いいですけど、うーん。何か足りない気がする……
- 007 思い出 (採点:1)
- 前半、中盤、最後部分がばらばらです。
このての起伏のないお話は嫌いではありませんが、あまりにも要素を多くしすぎ、その割に繋ぎを付けていないことが気にかかります。
どれか一つ(香里のお泊り、お弁当、告白、同居してること)に絞って、もう少し丁寧に書いてみても良いかと。
- 008 おめでとうを涙と共に (採点:7)
- 行間開け、あんまり好きじゃないんです。
読点で改行するの、嫌いなんです。
行頭くらい、一字空けして欲しいんです。
誤字はともかく、脱字はいけないと思うんです。
最後に、似たようなフレーズをあんまりくどくど繰り返すのは、なんだか見ていて飽き飽きするんです。
でも、こういう話を丁寧に書いてあるのを読むと、悪いところはみんなどこかに飛ばして、ふう……って息をついてしまうんです。
……どうしてでしょうね。
- 009 たったひととき、それでも優しい夢のなか (採点:6)
- ある意味、佐祐理さんのひずんでしまった心理の解決の理想的な形だと思います。
結局、彼女を許して上げられるのは彼女と親御さんだけなんでしょうね。
- 010 歩行者優先 (採点:7)
- 中途半端。
いや作品のことじゃないですよ?
中途半端な役どころ、中途半端な覚悟と姿勢。それが香里だと思います。
対して名雪は、意固地で根に持つタイプかもしれないしいつも茫洋としていますが、芯はしっかりしたものを(それはどうも負の力っぽくもありますが)持っている子に見えます。
この作品はそんなところを再認識させてくれました。
文章の分量としては、前半がちょっと重たいです。少し削ってもいいかもしれないなぁと思いました。
- 011 たった二つの「好き」の条件 (採点:4)
- うーん。カッコつきの台詞の連続でこの書き方は厳しいです。
台詞そのものは工夫されていて、誰が喋ったのかわからないというところまでは行っていませんけれども。
カッコ抜きで書いたり、ちょっとしたしぐさを挟んだりと、もうちょい小手先のテクニックを使ってみると、同一人物の台詞を連続させるときに読み手にすんなり読んでもらえそうです。
文章としてはそれなりに纏っていますし、ありきたりなお話を綺麗に見せている描写も悪くありませんので、後は小技ですね。
- 012 人の思いは常に一方通行 (採点:1)
- 浩之ちゃんのお願いの木の下に埋めた小瓶ですね。
なんというか。もっとどーんと弾けたものだといいのかなぁ。
- 013 名雪のライフスタイル (採点:2)
- らぶらぶ。いいですねらぶらぶ。
その後ろに何かしっかりしたものがあれば、いいSSだったと思います。
- 014 今はまだ靄の中 (採点:5)
- 前振りが長いですねぇ。竜頭蛇尾というのとは違いますが、前半で飛ばしすぎの気味があってちょっと後半寂しいです。
20KBまでという規制で、ダウンサイジングしてもいいわけですから、前半ももう少し軽め(文章量のことです)に仕上げても良かったかもしれないですね。
- 015 in the room (採点:7)
- いろんな意味で、反側です。いや反則です。半側かもしれませんが。
細かく考えるといろいろシュールな部分がありますが、今度のシナリオでの祐一の頑張りには期待したいところですね。
……これが「相沢。」の続きだったら……い、いや、なんでもないですよ? なんでも……
- 016 月色の涙の想い (採点:2)
- 設定は悪くないと思います。
丁寧に書き込まれているとも思います。
ですが……これ、実は元々三人称だったものを無理やり一人称に変えていませんか?
もしそうであっても、誤字がなければ別に不満はありません。が、途中で北川に君づけをしたりやめたり、視点が急に移動したりと、ぼろぼろです。
人称を変えたときなどは、こういったものを一つ一つ確認しながら手直ししていくのも、ものを書くということの一部分なのではないでしょうか。
なお、いくつかのテキストエディタには、選択した語句を確認しながら連続して置換するという機能があります。
もし作者さんがWindows標準のメモ帳などをお使いなのであれば、この機にテキストエディタを変えてみても良いかもしれません。
よい道具は要らない手間をだいぶ減らしてくれます。
- 017 FREE (採点:7)
- や、栞はどうなったんでしょうね?
既に10月ですし、祐一の彼女の方は誰であっても(本編に出てこない別の誰かであっても)構わないのですが、それだけ気にかかりました。
- 018 あいとまこと (採点:4)
- あれ、……落ちてませんよ(涙)。若しくは結句がない。途中までいい雰囲気だったのにもったいない……
続きの公開を待ちたいと思います。
- 019 Hello, Again. (採点:6)
- 思わず、次のページへのリンクを探してしまいました。
続きがぜひ読みたいです。このままじゃ前菜だけでお店を追い出された感じで。
- 020 しあわせのうしろすがた〜輝く季節へ〜 (採点:4)
- あまり好きになれない整形の仕方ですが、これもただのテキストでないWEB上の書き物の表現技法のひとつでしょうから、そのあたりは置きます。
普通のお話ですが、名雪がラストに至るまで次の一歩を踏み出さない(踏み出せない)ところが面白かったです。
こういうお話では、ふられることによって名雪もまた何かを吹っ切って歩みだすものが多いもので。
こういう、どこまでも名雪は子供のままというお話も、たまにはいいかなぁと思いました。
- 021 隠された想い (採点:2)
- 書き方やら何やらについては他の方が触れるでしょうから触れません。
香里の最後の台詞、少し変ですね。言いながら考え直しているわけですから、ちょっと書き方を工夫したほうがよかったと思います。
お節介でした。
- 022 アンバランス (採点:9)
- シリアスものではあまり見ないカップリング……というか、ペアリングですよね。でもほのぼのとした感じが良いです。無駄のない人物配置と構成にも、手練の雰囲気が(苦笑)。
なお、細かいところを見ると、誤字脱字、栞の復学の時期、その時期の気温や積雪のことなど、ツッコミは入れられなくもないのですが、いかにも久弥さん的世界ってことで(美汐は麻枝さんキャラですが)減点するまでには至りませんでした。
- 023 ある少女とある笑顔 (採点:7)
- 妙な注文付けでいいでしょうか。
このSS、最後までヒロインが誰とでも取れるようなバージョン作ってみませんか?
誰が語り手の女性か、ってことは読み手が決めていいということで。
いや、最初はそういうつくりのお話だと思ってたんですよ。だからちょっとだけ、変な感想というか、お願いを書いてみました。
悪くないと思うんですけどねぇ。どうでしょう?
- 024 【大切な時間と笑顔】 (採点:4)
- 香織さんというオリキャラを交えた北川、名雪の3人の輪に、後から来た転校生の相沢君は今ひとつなじめず、知り合った一つ上?の先輩たちと食事を取ることがある。
しかし相沢君の気分に気付いてない北川は今がずっと続けばいいと思ってる……って感じでしょうか。
まあそれは冗談ですけど、誤字やら脱字にはもう少し気を使ってもらってもいいかと思います。
- 025 普通の日常、輝きの灯火 (採点:1)
- 何気ない日常を書くとき、それはなにかしら意味のある場面の切り取りでなければいけないと思うのです。
ただ幸せ、だとちょっと。こんなに数のあるKanonのSSですから、またかぁという気分も読み手に持たせてしまいます。
- 026 曖昧me、終わらせよう (採点:5)
- これが味なのでしょうが、ちょっと読みにくい。しかし上手です。
あとまぁ、あれです。香里、祐一とも、SSなどでのイメージには合いますけれども、本編の彼等の性格からはちょっと遠い気もします。そんなこんなであります。
- 027 冬空のキセキ (採点:8)
- 祐一と美汐。本編のラストの雰囲気では、多分二人がくっつくってことはないんじゃないかなぁ……って思ってます。
もしそれがあるとしたら、それは素敵な小さな奇跡。
きっとこの朝の出来事は、その奇跡の前触れかもしれないですね。なんて。
- 028 再集合カノン (採点:5)
- うーん、難解でした。推理小説慣れしていない僕は沈没。
- 029 幸せなら手をたたこう (採点:8)
- せつないですねぇ。
多分、舞も死んじゃってるのかな……と、ついつい思ってしまいます。
以下は「ピュア」を見てないとわかんない話なので僕の独り言です。
バカの一つ覚えみたいで済みませんけれども。
黄色いダッフルコートの女の子(というには年の行った女性ですが)の言葉を借りれば、この佐祐理さんは、きっと「背中の、かたっぽの翼が折れてる」のでしょうね。
いや、ひょっとしたら、両方折れてしまっているのかもしれない。
死んでしまった一弥(と、死んでしまっているかも知れない舞)は、きっとまだ彼女のこころではなくて、空に居るんでしょうね。
空じゃなくて、こころ。
折原優香はそれを、沢渡を失い、その手紙を受け取って初めて理解することができたわけですが、頭のいい佐祐理さんはどうなのでしょう。
案外、頭では分っていても、それゆえまだこころには届いていなかったのかもしれません。
でも、このことで彼女は進み始めたわけですね。
ただその歩みはまだまだ覚束なくて、何かのきっかけが欲しいようにも見えます。
彼女に元気の出るキャンディを渡してくれる、彼女にとっての黄色いコートを着た女の子がいつか現れますように。
できることなら、その手には欠けていない大きな白い翼を持って。
- 030 12月のアムネジア (採点:6)
- 再生というのか、希望と前進というのかはわかりませんが、全員の前向きな姿勢がいいですね。
美汐も過去を回想してはいますけれども、ちゃんと一歩を踏み出していますし。
美汐エンドというのがあるとしたら、こういう形だと「らしい」のかも知れませんね。
- 031 ただそれだけの日常 (採点:3)
- 何気ない日常のひとこまですが、やはりこういう短編にするにはなにかしらの仕掛けなり、みどころがないとイカンと思うのです。
イベントを作れ、というわけではありません。別の方法も、いくらでもあると思います。何が良いかは作者さん自身で見つけるものでしょうけれども。
それから……浩之ちゃんですか……?(汗
僕の気のせいなら、すみません。ですが、三つ編みをさわさわするのはどうですかねぇ。いまひとつ。
- 032 make bread,eat shorts (採点:7)
- いやぁいいですねぇ。おやぢギャグ。無駄に長くないのがイイです。
- 033 絆〜三人の幸せ〜 (採点:2)
- ギャグかほのラブか、どちらとしてもいまひとつ食い足りませんでした。
複合しているものとしては、もっと食い足りません。
んーむ。ことこれに関してはやっぱりどっちかに絞った方が良かった気がします。
- 034 栞にツノが生えた日 (採点:5)
- 文学性のある話とかって言うのは、僕にとっては外国の歌みたいなものです。
だから、これは、耳で聞く代わりに目で見たこの詩(うた)の、ただ感じたままの「よさ」を点に代えたものです。
考察はしませんし、そういうのが好きな方や、作者さんの解説を見てから二度楽しむことにします。
- 035 終わりのそばに、始まりの兆し (採点:4)
- あゆシナリオ本編の、あゆ視点での補完でしょうか。
前半、少し過去と現在が混乱しているのは、あゆの回想時の状況の反映だと考えて読みました。
本編補完モノとしてはストレートなので、丁寧に纏めてはありますが、それだけ、という感じもぬぐえません。
- 036 もしも祈りが届くなら (採点:6)
- 中盤までは秀逸だと思ったんですよ。なかなか、いわゆるダークものや長編以外で美汐の葛藤を正面から描いたものはあまり見たことがなかったもので。
しかし……いや、これは好みの問題ですが、解決が月並みな方向に向かってしまったなぁ、と。
ただ、そこで唐突に祐一との恋仲にしたりとか、無理矢理幸せそうに見える結末に持っていかなかったのは好感が持てました。
- 037 猫とともに (採点:10)
- 喪失感。または空白感、空虚さ。そういったもの。それが上手に書ける作家さんはすごく少ないと思います。
家族が離れていくのは当然のことであり、多分予約されている出来事のはずですが、残った者はやはりそれを素直に受け取りつつも、悲しさでなくて、哀しさをどこかで感じているものですよね。
Kanon本編というのは、こうした予定された空白感に目を向けない、言うなればピーターパンの世界であり、SSにも当然こういったものは少ないのですが、だからこそ真正面からその部分を描いたこの作品はとても貴重だと思います。
- 038 PLAY (採点:8)
- あららら、悪戯が恋を生んだというか、本末転倒ですねぇ。でもま、いっか、って感じがして心地よいです。
ALL-ENDはどうにも無理が感じられる(話の展開上ALL-ENDにしたお陰で全員出そうと努力してみたり、逆に全然意味がなかったり)ものが多いのですが、これは安心して読めました。
楽しいお話をありがとう。
- 039 さかあがり (採点:7)
- はじめちょろちょろ、中パッパ。
最後が……。
おんなじ展開でいいんです。ただラスト4行。このオチはスカされたみたいで惜しいです。
- 040 青い空を見上げて (採点:5)
- よく纏った短編だと思います。斬新さも起伏も仕掛けもありませんが、お母さんの視線の優しさは伝わってきました。
- 041 Marthaと呼ばれた仔 (採点:9)
- うーん……。いや、悩んでるわけではありません。
高評価なのは点数を見ていただければわかると思います。
祐一が待っていたのは、結局あの日のマーサであって、沢渡真琴という突然現れた女の子ではなかったわけですね。
真琴の方も、飽くまで狐としての彼女があの日の少年に再び逢いたかったからまた帰ってきた、と。
もし僕の思い込みが当たっているなら、(それは何人かの登場人物にとって酷な話になると思いますけれども)この続きも読みたいですね。
さまざまな展開が予想できて、とてもわくわくします。この点数はそちらの期待点でもあります(笑)。
そうでなくて、あの冬の短い時間を共にした娘が、祐一の口にしたキーワードと自分の願いの力によって、遠い世界から帰ってくる……というお話なのであれば、それはそれでいいお話かも知れませんが、ここで終わらせるほかないでしょう。
- 042 覚えたての愛 (採点:5)
- 結句がほしかったですね……厳しいのは分りますが、せめて一行……。
丁寧に来ていたのにもったいないです。
名雪の父親と秋子さんが離婚した、という設定は珍しいですが、いろいろ考え直すと死別よりも離別の方がしっくり来るところもありますね。勉強になりました。
- 043 未来には・・・? (採点:2)
- いまひとつ、です。短編ならもっと余裕があるのですから、もう少し丁寧に行っても良かったと思います。逆にブラッシュアップして超短編にもなりそうです。
容量に関係ない話ですが、全編通して二重の語りにする必要が果たしてあったのか、というところにも疑問が残りました。
- 044 − 光幕 − (採点:9)
- えっちなのはいけないとおもいます。(笑)
- 045 秋空は夕焼け、2つのあか (採点:1)
- おちてないよー。残り半分はどこー? ってところです。
流石にこれでおしまいっていうのはちょっと……
- 046 影 (採点:6)
- 栞を失った直後の香里の様子が、よく描けていると思います。
極端な行動に出ることもできなければ強くも生きて行けない……香里らしいですね。
文法的なことは他の方が書かれるでしょうから僕は書きません。
- 047 あゆの風 (採点:5)
- 難を言えばもう一行、結句として締めくくりが欲しかったです。
全体に纏っていていい雰囲気でした。あゆのお母さんは越中富山の出だったんですねぇ……。いやそのあの。
- 048 Raining (採点:8)
- 素直な優しさを、ありがとう。
- 049 時計の針 (採点:8)
- 目を回したら、ちょっと頼りない王子様に支えてもらうのかな? そのとき、役得なのはどっちでしょうね(笑)。
上手な短編だと思います。やっぱ香里はこうでないと。
- 050 笑顔にすべてを (採点:7)
- 立ち直り。あるいは和解ですか。
何気ない提案にも見えますが、香里にとって栞と同じ大学に通おうというのは大きな言葉でしょうね。
そこに主題を持ってきた作者さんに拍手。
ありきたりな恋愛を絡めなかった、おまけを付けない潔い姿勢もうれしいです。
- 051 むかしばなし (採点:6)
- 淡々としていましたが、最初の、この親子と語り手が誰だか不分明な仕掛けで読者を楽しませようという姿勢が(賛否両論あると思いますが)僕は評価できると思いました。
後半はうーん、ゲーム内で明かされている事実の羅列になってしまうので、失速気味です。
- 052 Verte aile 〜ヴェル・エール〜 (採点:3)
- 大正期以前の小説を思わせる文体、ゲーム本編と大きく異なるストーリイ、少し違った観の有る北川の口調と態度、謎の有る天野美汐の存在と様々の特徴点がありまして、中々に異色の作品であります。
此れもまた一個の不思議小説と謂う物であろうと思われます。読み終えた後でKanonでも斯ういう書き方もあるのだなァと技巧について感心致しましたが、サテ内容はと云われると良くもなし悪くもなし、只あァ斯ういう書き方もあるのだなァという気持ちが残りました。此れも一個の悪意の無い感想であります。
- 053 散葉咲華―another home― (採点:10)
- 最後の最後でこれを読んだんです。素直にやられました。
ええもう、何も言うことないです。Kanonの主題に真っ向からぶつかる主題を正面からきっちり描いていただきました。
最後に読んだものがこれで良かったかもしれません。
すっかり軽い点数になってしまっていますが、ごめんなさいと、ありがとうとを点数に乗せて。
- 054 another grey day in the big blue world (採点:5)
- またこれはえらく物分りがいいというか、寛大な奥様ですね。
旦那さんは随分いい加減なところのある方らしいですし、これからが心配です。
- 055 世界にひとつの私の名前 (採点:4)
- ぶつ切りの書き方は、うーんこの文体だとどうなんでしょう? 僕はちょっと読みづらかった。
とりあえずその部分は置いておいて、ほどよいお話だと思います。
- 056 写真のわたしと今の (採点:6)
- 丁寧に書かれていて好感が持てました。
- 057 miss understand (採点:8)
- 今回のキーワードは「喪失感」ですかねぇ……良編です。
それにしても香里って、書きにくそうで書きやすいキャラなんでしょうか。それとも秋が似合っているのでしょうか。
BGMは、ジブリの「耳をすませば」で使われていたバージョンの日本語版「カントリーロード」が似合うと思います。
読みながら頭の中でエンドレスで回ってました。いやそれだけ。
- 058 カレンダー (採点:9)
- 満点つけたいんです。
文句付けようがないんです。
ただ最後の一行。僕的には、いらなかったかな、と。
大きな改行が入っていなかったら、また感想も変わっていたかもしれませんが。
視覚的にぶつ切りの結句って、たとえばごく普通の一行空きの場合と比べて意味としてすごく重たいでいすよねぇ。その一行だけが切り取られて目に飛び込んでくるわけですから。
この作品の最後の行はその意味をもたせるにはちょっと荷が勝ちすぎたんじゃないかなぁ、と思います。
- 059 相沢祐一のお料理教室 (採点:9)
- がーーーーーーーーーーーーーΣ(゜Д゜;)ーーーーーーーーーーーーーーーーーん。
衝撃の事実発覚! なのですよー。
素直に上手いです。ギャグ短編かくあるべし。
- 060 雪ウサギの憂鬱 (採点:7)
- 個人的な見解としては、Kanon本編の名雪がこういう状態になることはないと思います。
別に名雪が我慢強い良い子だからというわけではなくて、名雪が精神的に極端に依存している対象が祐一ではなく秋子だ、と本編から読み取れるからですけれども。
ですがこの点数は間違いでもなければボーナスでもないです。
名雪というキャラクターの性向というか特徴をよく見ていて、キャラに溺れずによく表現しているなぁ……名雪がもし「お母さん」よりも「祐一」に依存していたら、きっとこうなってもおかしくないよな、と思えました。
美坂姉妹についても、あっさりしてはいますが手は抜かずに描かれていてよいです。
ただ、依存対象である祐一のことも、欲を言えばもう少し丁寧に描写していただいていたら、と思います。
- 061 ばかんす (採点:2)
- 捻りがないのです。
ストレートにどかーんとくる破壊力も今ひとつですし、小技も効いてない気がします。
なんかもうひと工夫ほしいですねぇ。
大威力の武器とかでっかい品物が出てくるだけでは、この手の話は面白くないんですよねぇ。
- 062 さくらのころ (採点:4)
- うーん……丁寧なんですが、丁寧に書きすぎて散漫になってしまったかもしれません。
もっとぎゅっと濃縮してもよかったかな。そんな感じです。
- 063 二人の記念日 (採点:6)
- (−人−)
……食い逃げカップルに合掌。わらかして貰いました。
祐介が祐介らしいSS、耕一が耕一らしいSS、というのはたくさんあります。でも、祐一が祐一らしいSSって実は少なめなんじゃないでしょうか。
その意味でこれは、むちゃくちゃなんですけど、珍しい「祐一が祐一らしい」お話でした。
- 064 お兄ちゃんと呼ばれたいっ!! (採点:8)
- (−人−)祐一、以て瞑すべし。
……い、いや、今思いつきましたっ。むむむむしろこれからスライデイングの練習をして栞ちゃんの下着CGコンプリートを目指すのですよ?
しかし、何処とは思わせず全体に上手いですねぇ。
熱弁を奮うのが北川でも久瀬でもなくてちょいキャラの斉藤という辺りも地味に秀逸です。
ギャグというのはこういう細やかなところまで気を遣って初めて為される物だと、Longhorn刮目致しました。是非貴兄に弟子入りしたく思います。
<ふとじ><ふぉんとさいず=とてもおおきい>明日から<いろ=あか>「おにいちゃん」</いろ>と呼ばせてくださいっ!</ふぉんと></ふとじ>
ちゃんちゃん。
(注:ひらがなタグはブラウザに頼らず、心の中で変換してくださいませ。画像および音声ファイルは付いていませんが、必要なら脳内補完していただいて結構です)
- 065 送り火/狼煙 (採点:5)
- 逃げてますね。メントールの煙草に。
きっと香里の中ではいろいろなことがあったのだなぁ、とは思います。
ですが、この彼女には悪い意味での開き直りというか、過去を全部また(栞編での香里のように)見ないようにしてしまおうという意思がそこはかとなく見え隠れします。
ですが、それは如何にもKanonの香里らしい姿勢にも見えます。一度は死にゆく妹を受け入れたけど、また忘れてしまいたくなったってとこでしょうか。
そういう人生だって「あり」ですよね。
さて、本作が全体的に上記の方向で貫かれているかというと、少し違う気はします。
読み込み不足との指摘は甘んじて受けますが、僕には作者さんの意図が、「再び忘れようとする(その姿勢は汚いけれども人間くさい)香里」を描きたかったのか、それとも「香里のすがすがしい出発」を書いているのかがいまひとつ不分明でした。
こういう短編の場合、あざといくらい書き手の意図を明確にしたほうが、読み手は安心して読めるかと思います。というわけで良作ですがこのくらいです。
- 066 1M (採点:7)
- 名雪、かわいいですねぇ。
このあとどうなるのでしょうね? なんとなくでなく、気になります。
食い足りなくて続きを読みたいというわけではなくて、その後に期待をもたせてくれるのはいいですねぇ。
- 067 ポイズン・キッス (採点:6)
- ありがちな話、ありがちな落ちでしたが、それぞれのキャラはいい味出してたと思います。
- 068 風にドレスを (採点:6)
- 素直にやられました。んーむ、真琴のくせに粋なお返しするもンじゃありませんか。主人公ともども、がんばれ。なにを、ってわけではないのですけれども。
- 069 金魚 (採点:8)
- ううむ。強い香里ですね。ちょっと個人的な想定とは外れましたが、こういう香里もいいですね。
最後の行に「夏」か「夏休み」を持ってきて、その上の行の該当部分を削って(その上でよい形に整形するのは言うまでもありませんが、作者さんには簡単なことでしょう)みても、いいのかも知れません。
妙な感想でした。
- 070 前を向いて (採点:5)
- あっさりした短編ですが、裏には残酷な部分もあるお話ですね。
栞シナリオを頭において読むと香里の振る舞いがずしりと重くなりますねぇ。
- 071 風よ魔法をはこべ (採点:7)
- 優しいお話を、ありがとう。
ほかに何も言うことはありません。
- 072 傷痕 (採点:9)
- ええと、正直言ってこれは個人的にものすごく痛い話でした。点数には多分に思い入れが入ってます(苦笑)。
詳しい話は抜きますけど、病気→手術して痕が残る→回復ってのは、手術の前と後とを比較すると、実は後の方でもいろいろな葛藤を抱えてしまうんですよね。
他人からはそんなこと大したことないって言われるし、実際それをしないでいることは出来なかったわけですから、致し方がないのですけども。
その痛みを持ってるもので、最後の7行にやられました。
- 073 親友体制 (採点:6)
- 変わるきっかけ。それが必要なのでしょうね。
うーんしかし。同じくらいの年の子供ですか。やられました。
- 074 キエナイキモチ (採点:3)
- 途中丁寧調の独白が入り、また普通のものに変わっていますが、僕にはちょっとこの変調の意味が分りませんでした。うーん。読み込み不足か。
また、最後の締めくくり、折角ここまで丁寧に独白を積み上げてきたのですから、安易に三点リーダつきの第三者的視点に頼らないでほしかったです。
ここは格好良い語句や三点リーダに頼るのではなく、ありきたりな言葉でいいから天野さん自身の言葉(台詞というわけではなく)で終わらせてほしかった。
そんな気がします。
- 075 始まりの日 (採点:7)
- ふむう。武田鉄矢が持ち出した特大ナットに負けず劣らず、このリングは価値のある品物ですな。
それはさておき、この祐一はいいですねぇ。なんか頭の先から靴の裏までおはようからおやすみまで(以下略)祐一って感じがします(苦笑)。
「らしい」祐一ってなかなか見られないので、なんとなく嬉しく思いました。
- 076 殺意のプールサイド (採点:3)
- んーむ。いやぁ、最初にオチをたまたま思い当ててしまったもので。
途中ちょこっと祐一の彼女? らしい子の話が出ていたので、Tac-keyの王道「女の子によるいぢめ」かなぁとも思ったんですが、無難に終わってしまいました。
香里の再登場にも「おお、香里が謎解きするんかいな」と思っていたらスカされました。
なんかこう、作品そのものが意外性(笑)に満ちていたなーという感じですが、もちっと捻りが欲しかったデス。
- 077 盲目考察 (採点:6)
- 佐祐理さん、自己解決していましたか。
そこがちょっと好みに合わないと言えば合わないし、「わたし」はこんな人だったかなぁと思わないでもないんですが、短編でもありますし、この展開は文句なしです。
マイナスした部分もあります。やっぱり寝た振り……ですね。
これはちょいと個人的な体験から、無理っぽいかなと感じました。
長時間(2週間程度ですけど)仰向けで寝たままの状態を経験したことがあるのですが、そのせいかやっぱり寝た振りで数年ってのはどうしても無理が感じられてしまいました。根性とかではなくて。
や、確かにそんなことはカノン本編の無理のオンパレードの前には些細なことなんです。でもやっぱり目に付いちゃうんですよねぇ。なんででしょう。
- 078 反転少女 (採点:5)
- オチテネエヨ! ウワアアアアアン!(魂の叫び)
……落ち着いたらまた読ませてください。
つーかトランプマンっていまなにやってんでしょうね。思わずググっちゃいました。
- 079 フワリ (採点:4)
- このボクは幸せなのかな? それとも、もう消えてしまう寸前なのかな?
そう思って何度か読み返しましたが、時系列ともども僕には不分明なままでした。
きっと、それはどうでもよいのだろう、と無理矢理自分を納得させました。
浩平っぽい天使さん、ナイス。
- 080 ガラスの森 (採点:5)
- 今後彼等の関係がどう転んでいくのか少し気になりますが、上手く纏った好編だと思います。
- 081 ボーイフレンド (採点:6)
- いやぁ舞かわいいですねぇ。誤字やらがなかったらもっといいですねぇ。
さて。
Kanonの中で望まれている幸せというのは、ネバーランドのそれであると思います。
それをなぞるのは簡単ですが、そこから(書き手も)一歩を踏み出すのは、なかなかに大変なのかもしれませんね。
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