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この作品はKONAMIの「ときめきメモリアル」「ときめきメモリアル2」「ときめきメモリアル3」「ときめきメモリアルGirl's Side」
「ときめきメモリアル ドラマシリーズVol.2 彩のラブソング」「ときめきメモリアル対戦ぱずるだま」を元にした二次創作です。
各作品に関するネタバレを含みます。








『もしもし。館林です』

『今回の番長戦の選択肢だけ、択一式になっているの』

『面倒な人はそのままスクロールしてね』

『話自体はどれか一つの選択肢を読んだっていう前提で進むからね』

『それじゃあ…』













「葉月珪! …君」

 いきなり呼ばれて振り返ると、きら校制服の男子生徒が、何やら思い詰めた顔で立っている。
 日もじきに傾こうかという時刻、校庭を歩いていた珪たち三人は、何事かと足を止めた。
「俺の名は主人公! 頼む、何も言わずにあれで勝負してくれっ!」
 彼が指さした方向へ目を向けると、『水泳部主催・ビーチフラッグス大会』の看板。幾人かの生徒たちが、走り高跳び用のマットに置かれた小旗に頭から突っ込んでいる。
「いきなり何やねん。葉月、知り合いなんか?」
「全然…」
「ワケわかんねえぞ。まず説明しろよ」
「う…。まあ無茶言ってるのは自覚してるけど、そこを何とか…」
 さすがに無理があったかと公が口ごもっていると、その後ろから助っ人が顔を出した。
「いやー悪い悪い」
「おっ、早乙女君やん」
 同類の登場に警戒心を解くまどかに、好雄が例によってぺらぺら喋り出す。
「実はかくかくしかじか」
「ほうほう。こいつの幼なじみが藤崎詩織ちゃんで、惚れてるけど月とスッポンやから葉月に対抗意識燃やしとると」
「そ、そんなあからさまに言わなくてもいいだろっ」
 落ち込む公だが、事情がわかれば話は早い。まどかと和馬が同時に珪の肩をぽんと叩く。
「葉月、ここは受けて立つしかないで」
「そうだぜ、男なら勝負してやれ!」
「面倒くさい…」
「お前はそうやって燃えるもんがないからあかんねん。ええで幼なじみ君、こいつに男の戦いっちゅうもんを教えたってや」
「え、ほんとにいいの?」
「なんで俺が…」
「ご、ごめんよ」
 まどかと和馬に引きずられていく珪に、ちょっと申し訳ない気分になる公。しかし避けるわけにはいかないのだ。目の前に突如現れた(公にとって一方的な)強敵・葉月珪! 彼を乗り越えない限り、詩織に相応しい男にはなれないのだから…。
「はい次の人ー…あれ、主人君に早乙女君じゃないか」
 校庭真ん中の会場では、水泳部の望が受付をしていた。
「やあ清川さん。実は二人同時に挑戦したいんだけど、いい?」
「え? 別にいいけど、どうかしたの?」
 後ろで「へい彼女、オレは姫条まどかっちゅうモガガ」と言っている男が和馬に口を塞がれている間に、かいつまんで事情を説明する。
「つ、つまり藤崎さんへの愛を賭けて二人で勝負ってこと!?」
「べ、別にそういうわけじゃ」
「さすがきらめき高校のマドンナだなぁ…。いいなあ、私も…」
「あのー、清川さん?」
「はっ! あ、あはは、何でもないって。じゃあ列の後ろに並んでね」
 言われた通り最後尾につきながら、あくびをしている珪に戦意をみなぎらせる公。
 しかし順番待ちの数分の間に、事態は勝手に動き出していた。隣で聞いていた水泳部の女の子が、交代したと同時に知り合いに報告に行ったのだ。
 話は知り合いから知り合いへ。瞬く間に校内に広がり、渦中の人物にまで届いてしまった。
「公くん!」
「し、しし詩織っ!?」
 ようやく順番が来てさて勝負、といったところで、いきなり出てきた幼なじみに狼狽する公。
「一体どういうこと? 私を賭けて葉月珪くんと勝負って…」
「ええっ!? い、いやあどういう事かなぁ。噂って尾ひれがつくもんだしさ。あ、あはははは」
「なぁんだ、デマだったのね。もう、心配かけるんだから」
「はは…はは」
 何とかごまかす公の傍らで、珪はあさっての方を向いて眠そうにしていたが…しかし周囲にできていたギャラリーの中に見つけたのだ。
「あの…。がんばってください…」
 詩織にくっついてきた愛…の胸に抱かれている、小型の犬を。
「ワンワン!」
「あ、駄目よムク。もう、勝手に学校に入り込んだりして」
「(犬が…犬が応援している…) よし、頑張ろう」
「おおっ、なんや知らんけど葉月が本気になったで!」
「それじゃ二人ともいいかい? 先にあの旗を取った方が勝ちだ」
 望が笛をくわえ、公と珪がマットの上にうつぶせになる。
 ピッ
(うおおおぉぉぉぉ!!)
 飛び起き振り向いて公は走った。死力の限りを尽くして。今まで積み重ねてきた詩織への想いをつぎ込んで。
 なのに生まれついての天才にはかなわないのだとしたら、なんと過酷な現実だろうか。
 その現実は、目の前であっさり旗をかっさらっていった。
「すまん…。勝ってしまった」
 呆然としている公に、少し困ったように旗を振る珪。
「は、はは…。そうだよな、そんな簡単に勝てれば苦労はしないよな…」
「そんな事はない…。締めなければいつか手は届くさ…」
「じゃあ俺が勝つまで勝負してくれぇぇぇ!」
「いい加減にしなさいっ!」
 スパーン!と頭の後ろで景気の良い音が響く。振り返ると、幼なじみがハリセンを手に仁王立ちしている。
「よく考えたら理由を聞いてなかったわ。結局、どうして葉月くんと勝負してるの?」
「ううっ! それはそのスポーツマンシップで」
「そうは見えなかったけど?」
「う…」
 問い詰められるが、まさか本当のことは言えない。だというのに隣では、ナンパ男たちが無責任にはやし立てる。
「これはもう告るしかないやろ!」
「そうだよなぁ〜。公、もう決めちまえって」
「ななな何言ってんだよお前らっ!」
「? コクルって何なの? 説明してよ公くん!」
 自分が蚊帳の外なのが寂しいのか、ちょっと怒った顔で詰め寄る詩織。
 焦って周囲を見回すものの、珪はムクを撫でに行ってるし、望はどきどきしながら見守るばかり。どこかに助けはないものだろうか?
「おい、誰か来たぜ」
 助けは来た…。
 ただし最悪の形で。
 好雄が言う方へ目を向けると、実行委員の腕章をはめた女生徒が息を切らせて走ってくる。
「た、大変よ藤崎さんっっ! 今、校門のところにっ…!」
「お、落ち着いて。一体どうしたの?」
「ば……番長が殴り込んできたの!!」
 一同はしばらくぽかんとしてから、一斉に唱和した。
「番長ぉ!?」


「俺様は、この世界の番長だ」
 学ランに割れ帽の大男は、そう宣言してずかずかと校舎内に入っていく。
 さらに三人の不良が、威嚇するように周囲へガンを飛ばす。
「オラオラ、見せもんじゃねぇぞコラァ!」
「邪魔だコラァ!」
 脅える生徒や来場者たち。実行委員たちも震えるだけで手を出せない。
 その時、光り輝く男が一人、前髪をかき上げながら学園の危機に立ちはだかった。
「はっはっはっ。世のお嬢さんたち、安心してください。不届き者はこの白鳥正輝が退治してくれましょう」
「フン!」
「ほげぁ!」
 番長の裏拳一発で、哀れ雑巾になって吹っ飛ぶ白鳥。
「無茶するなよ…。3には番長戦ないんだしさ…」
「ううぅ…無念」
「きゃーっ! 人が殴られたわ!」
「に、逃げろーっ!」
 逆に騒ぎを大きくしてしまい、楽しかった文化祭は一気にパニックになる。
 人々が我先にと逃げ去ろうとする中、逆流をかきわけ詩織たちが現場に到着した。
「な、何なんですかあなたたちは。乱暴はやめてください!」
「し、詩織っ!」
「詩織ちゃんっ!」
 公と愛が慌てふためく中、詩織は怯みもせず番長を睨み付けている。
 その姿に、感心したようにニヤリと笑う番長。
「ほう、大した女だ…。だがな、俺の子分に恥をかかせたんだ。落とし前はきっちりつけさせてもらうぜ」
「何のことですか」
「ま、まあまあまあ詩織ちゃん」
 さっきの喧嘩がバレてはまずいと、まどかが間に割って入る。
「こういう手合いには何言っても無駄やで。ここはオレに任せといてや」
「だ、駄目よ喧嘩なんて」
「ごちゃごちゃうるせーんだYO!」
 不良の一人が詩織に手を伸ばそうとするのを、公が冷や汗を垂らしながらも庇うように立つ。
「詩織、危ないから下がっててくれ」
「こ、公くん…!」
「そやで、彼にもええとこ見せてもらわなな。葉月、お前も手伝えや」
「仕方ないな…」
「くそっ、俺も部活のことさえなかったらよ!」
「ええから、和馬は女の子をガードしとき」
 まどか、公、珪が、三人の不良と相対する。
「さっきのお返しだコラァー!!」
 激突!
 一瞬の交差の後、不良たちはばたばたばたと地面に倒れ落ちた。
「ぬぅぅぅ…! あっさり負けおってぇ!」
「す、スンマセン番長!」
「ぐっ…」
 一方で公も、不良を倒しはしたものの腹にパンチを受けうずくまる。
「こ、公くん。大丈夫!?」
「は、はは。大したことないさ…」
「なかなかやるやないか。しかも女の子の介抱やで。いやー羨ましいわー」
「そ、そんなんじゃないって!」
「ええい、もういい! 後はこの番長が相手じゃあ!」
 地響きせんばかりの大声とともに、下駄で地を踏みしめ番長が立ちはだかる。
 詩織、公、愛、好雄、珪、和馬…とその場の一同に緊張が走る中、肩をすくめて前に出たのはまどかだった。
「こらまあ、オレが相手するしかないやろな」
「ほう、命知らずなことだ」
「甘く見たらあかんで。はばたき学園の姫条まどか言うたらオレのことや」
「はばたき学園…? フン、あの外見ばかりチャラチャラした、男の出来損ないばかりが集まる高校か。確かに軽薄そうなツラをしとるわい」
「ケッ、言うてくれるやないか。そないレトロな出で立ちで格好ええとでも思とるんかい。女の子にモテへんでぇ」
「真の漢にそんなもの不要じゃぁ!!」
 嵐のようなうねりとともに、番長の豪椀が振り下ろされる。
「姫条!」
 和馬が叫ぶと同時に、紙一重でかわしたまどかは、番長に蹴りを叩き込むが…
 効かない。さらに繰り出される拳に、まどかの目が鋭くなる。かつて荒れていた頃の目だ。
「お前の力はそんなものか!」
「しゃらくさいわ!」
 拳の雨をかわしながら、まどかは番長の後ろに回りこみ、相手の膝の裏に蹴りをくれた。これには番長もたまらず膝をつく。
「どや!」
「フッ、どうやら俺も本気を出さねばならんようだ…ぬうん!」
 番長が気合いをためると、その右腕が白く光り出す。
「はい?」
 目の前の超常現象に、まどかの思考が追いつかぬ間に…
「袖龍ゥゥゥーーーー!!」
「なんやそらーーーー!!」
 ツッコミは、番長から放たれた白い龍の中へと消えた。
 そのまま龍に飲み込まれ、消し炭になったまどかに和馬が駆け寄る。
「おい、大丈夫かよ! あっさりやられてんじゃねえよ!」
「オレが相手にできるのは人間だけやアホーー!!」
 最後の力でツッコミを入れ…それは実際最後の力だった。
「ふっ、どうやらオレもここまでのようや…」
「お、おい姫条、何言ってんだよ…」
「さ、最後に鈴木屋のお好み焼きを食べたかっ…」(ガクッ)
「姫条ーーーーっ!!」
 微笑んで力尽きる友に和馬は叫び、そして固まっているしかないきら高の面子の前で、番長の声が響く。
「ワハハハハ…。笑わせてくれるわ、何がはばたき学園じゃ。外面ばかりで中身のない男など、所詮はそんなものじゃあ!」
「テメェ…!」
 怒りの炎を燃やした和馬が、拳を握りしめて立ち上がるが…
「やめとけ…。出場停止になるぞ…」
 それを止めたのは珪だった。
「うるせぇ! あそこまで言われて黙ってられっかよ!」
「黙ってられないのは俺も同じだ…」
「は、葉月?」
 和馬が息をのむ。青い炎のような怒りをまといながら、番長の前に進み出る珪。彼がこんな表情を見せるなど、和馬は思いもしなかった。
「今度は俺が相手だ…」
「フン、お前のような優男なんぞ相手にならんわ。気取るのも大概にせんかい」
「気取ってんじゃねぇ…。喧嘩売ってんだ、買えよ」
「ほぅ…。ならばその力、見せてもらおうか」
 番長が右腕に力を込めると、再度白い光が集まり出す。
「や、やべえ葉月! またあの龍が来るぞ!」
 しかし珪もそのまま待ってはいない。両目を光らせ、裂帛の気合いを込めて叫んだ。
「葉月珪、とっておきの必殺技! モデルウォーク!!

 歩き出した――。ステージ上のモデルのように。
 スポットライトが当たっているかの如き華麗な歩行だが、それが何の役に立つのか意味不明である。一同ぽかんとして固まるばかり。
 しかしすぐに、番長がその異変に気づいた。
「ぬうっ…!? ば、馬鹿な、体が動かんとは…!」
「このモデルウォークは、歴代のスーパーモデルたちが使ったという魅惑の歩行法…。それを目にした者は誰しも見とれて動けなくなる」
「なぬぅ! おのれい、この番長がモデルなどという軽薄なものに見とれるとは、何という屈辱!」
「凄いなぁ、あんな技まで使えるのか…」
 さらに差が開いて落ち込む公を、好雄が肩を叩いて慰める。
「まあまあ。お前も来年の夏休みくらいには、すごい技が使えるようになるって」
「そうなのか?」
「いや、そんな気がしただけ」
 その間も珪のモデルウォークは続く。が…
 ちっとも状況が変わらない。しびれを切らせた和馬が尋ねる。
「おい…。その後は?」
 その声に、困ったような顔を向ける珪。
「いや、これだけ…」
「って、単なる足止めだけかよ!」
「そのようだ…」
「そのようだ、じゃねぇだろ! 根本的な解決になってねぇよ!」
 番長の動きは封じたものの、誰かが攻撃しなくては倒せない。
 こんな時助けが来てくれればと、皆がそう思った時――


『私が準備するまで、持ちこたえなさい』
『天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ!』
助けは来ない。現実は非情である。
渉1




















 
 

「私が準備するまで、持ちこたえなさい」

(この声は――)
 珪が振り返った先は校舎の陰。白衣の一団が、何かを大急ぎで組み立てている。
 さっき酷い目に遭わされた、紐緒結奈と仲間二人だ。公も半ば不安混じりの声を上げる。
「ひ、紐緒さん!」
「情けないわね主人君。まあ、この天才の前では番長の一匹や二匹ひとひねりよ。蒼樹君、ペンチ!」
「は、はいっ!」
「蒼樹、こっちにはネジをよこすのだ!」
「あの、これって何を組み立ててるんですか?」
「そんなの、殺人レーザー砲に決まっているのだ」
 あっさり言うメイに、千晴はしばらく固まってからおそるおそる言った。
「あの、殺人はちょっと…」
「番長なんだから大丈夫よ」
「そ、そうなんですか。ええと、バンチョーって何ですか?」
「ジャパニーズヤングギャングボスなのだ」
「それってやっぱり当たったら死ぬじゃないですか!」
 千晴の抗議は無視され、見る間に装置は組み上がっていく。
「おのれぃ。そんなものを大人しく食らうと思うか!」
「モデルウォーク!!」
「ぐぬぅ!」
 ひたすらモデル歩きを続ける珪に動けない番長。手に汗を握る数分が過ぎ、そしてついに――
『ファイヤー!!』
 神に祈っている千晴の前で、結奈とメイの声が合わさる。
 閃光!
 世界が白く塗りつぶされ、番長の絶叫だけが響き渡った。
「ぐおおおおおお!!」
 ビームの束が番長を貫き、そして光が収まったとき…しゅうしゅうと白煙を吐く番長の体だけが、そこに残っていた。
 それと同時に、レーザー砲は鈍い音を立てて自壊する。
「想定強度に問題があったみたいね」
 呟く結奈。これで全てが終わったかに見えた、が…
「番長が…番長であるこの俺が…こんな所で負けるわけにはいかねぇ!」
「何ですって!」
「オーノー! これがヤマトダマシイですか!?」
 その身を焼かれながらも、なおも立ち上がる番長。レーザー砲は既に壊れている。もはや攻撃手段はない。
「かくなる上は仕方ないのだっ…」
 絶体絶命のピンチに、苦渋の表情で言ったのはメイだった。
「咲之進! 来るのだー!」
「はい、メイ様…」
 いつの間に現れたのか、銀髪にマント姿の男がメイの後ろに控えている。
「命令なのだ。あの番長を倒すのだ」
「こ、これはなんと醜い…。同僚の外井ならば見惚れそうな肉体ですが、私の趣味からは少々…」
「誰もそんなことは聞いてないのだっ!」
「何じゃおぬしは、気色悪い」
 心底嫌そうな番長に、咲之進はゆっくり頭を振った。
「駄目ですな。私だけの力ではこの男は倒せません」
「さ、咲之進でも無理なのか…」
「ああ、せめて甥の色くんがいれば…」
 と、その甥があっさりと歩いてくる。
「やあ咲之進おじさん。居たね?」
「おお、色くん! 我々の美の力であの暴漢を倒そうじゃないか!」
「アッハハ、それはいいね! 妖精の力を得たボクの美しさは無敵だよ!」
 番長の前に並んで立つ二人。咲之進のマントがはだけられ、色の服が投げ捨てられる…。

『三原アターーーック』

「め、目がくさるぅぅぅぅぅ!!」
 断末魔の悲鳴を上げ、ついに番長は地面に倒れた。
 笑って去っていく二人を、石化したー同は黙って見送るしかなかった。


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渉2
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「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ! とうー!」
 叫びとともに飛来し、太陽の下を横切る影。
 着地したそれは、長い髪をなびかせた小柄な女の子だった。
「ひびきの高校生徒会長、赤井ほむらここに見参!」
「なんじゃあ、おぬしは」
「けっ、てめぇが番長か。たとえよその学校でも、平和を乱す奴はこのあたしが黙っちゃいねぇぜ! 勝負だ!」
 ぽかんとしている珪をよそに、勢いよく指を突きつける少女。が…
「俺は番長だ。女に手は上げん」
「え…。そ、そう言うなよぅ」
「漢の掟だ」
「く、し、仕方ねぇ…。じ…実はあたしはこう見えても男なんだよ!」
「何ぃ…! なのにスカートに『あたし』とは、噂に聞くオカマという奴か! おのれぃ、男の風上にも置けん奴め!」
「くそぅあっさり信じやがって…。まあいいや、かかってきやがれ!」
 そこでようやく我に返った珪が、必死に歩きながら頼み込む。
「頼む…。俺がモデルウォークで足止めしているから、その間に攻撃してくれ」
「はぁ? バッキャロー、そんな卑怯な真似ができるかよ。勝負はタイマンに決まってるぜ!」
「相手を見て言え…」
「ルッセー。お前はどいてろ!」
 味方のはずの少女に蹴り飛ばされ、影を背負って体育座りを始めた珪には目もくれず、ほむらは番長と対峙する。
 一陣の風が吹き抜け…
「会長…」
 ほむらの体が弾ぜた。
「キィィィィィック!!」
「ぬりゃあ!」
「キックキックキーック!」
「どりゃあ!」
 降り注ぐキックの嵐。なぎ払う番長の腕を踏み台にし、宙を舞いながらさらにキックを浴びせる。
 その時の様子を、後に早乙女好雄はこう語ったという。
「いやー、すげえキックだったぜ。でもおかしいんだよあの会長の子。あれだけ動き回ってんのに、ぎりぎりでスカートの中が見えねぇんだよ。チックショー」
 直後に好雄は、その場にいた夕子にハリセンで場外ホームランにされた。
 それはともかく、数十発の会長キックを放ったほむらは一時中断して着地する。眼前には変わらず立っている番長が。
「ちっ、さすがは番長だぜ…。あたしのキックがまるで効かねぇ」
「フッ、おぬしも思ったよりやるのう」
「こうなったら最大の必殺技を出すしかないぜ!」
「よかろう、受けて立ってやる」
「いくぜ必殺! ウルトラスーパードラゴンスクリュー・キーーック!!」
「金茶小鷹!!」
 錐もみ回転で飛んでいくほむらと、金色の鷹を無数に放つ番長。
 そろそろ嫌になってきた一同だが、それでも我慢してギャラリーを続けていると…
「あ、ほむらこんな所にいた!」
 突然、ひびきのの夏服を着た女の子が走ってきた。
「もう、勝手にどっか行っちゃわないでよ〜」
「あ、茜!?」
 ほむらのキックは失速し、金茶小鷹はその上を通り過ぎていく。
 そして番長は、こそこそと逃げだそうとしていたが…でかい体が見つからないわけもなく、茜と呼ばれた少女の目がその上に止まる。
「お兄…ちゃん?」
「うっ」
 そして視線は倒れている三人の不良や、閑散とした周囲、脅えた目で見ている詩織達へと動く。何となく事態を察知して、俯く茜。
「何…やってんの…」
「ま、待てい茜! これには深いわけが…」
「お兄ちゃんの…」
 小刻みに震える右手が、ぎゅっと握りしめられ…
「バカぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」
「ぐはあぁぁぁぁーーーーーっ!!!」
 ほむらの目にすら止まらぬ速さで、番長の顔面に突き刺さった。
 右ストレートは番長の体ごと吹っ飛ばし、そして勝利者は泣きながら逆方向へ駆けていく。
「うわーん! ボクもう嫌だよこんな生活ーー!」
「ま、待てよ茜! じ、じゃあなお前達、後は任せたぜ!」
 しゅた、と手を挙げて、慌ててその後を追うほむら。
 人知を越えた戦いの後で、残された全員は『任されてもなぁ…』という心境だった。


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 誰も来なかった…。
 諦めた珪は、モデル歩きをしながら詩織に言う。
「仕方ない…。俺が食い止めてるから、あんた達は気にせず文化祭を続けてくれ」
「そ、そういうわけにもいかないわ」
「気にするな…。どうせ俺なんて…」
「ええい、何を勝手に話を進めている」
 苦い顔の番長の頭上に、突如電球が浮かぶ。
「そうか。体を動かさなくても攻撃できる手があったわい」
「何!」
「超眼力!!」
 学帽の下で、番長の目が凶悪に光った。
 数多の不良達をひれ伏させた番長の眼力…その威力が真っ直ぐに珪を襲う!
「く…!」
「危ない!」
「!?」
 炸裂する超眼力に、しかし無傷の珪。
 とっさに飛び込んだ公が、その生命力の全てを犠牲にして眼力を受け止めたのだ。
「お前どうして…。俺は敵じゃなかったのか…?」
「そんなの俺が勝手に思ってただけさ…。それに、きら校文化祭に来てくれたお客さんに怪我させるわけにはいかないだろ…」
「主人…」
「公くん!」
 崩れ落ちる公に、詩織が泣きそうな顔で駆け寄る。
「しっかりして公くん! 死んじゃダメー!」
「ああ、天使が…。天使が見える…」
 詩織に襟を掴まれがくがく揺すられて、半死半生でうわごとを呟く公。そんな幼馴染みの姿に、詩織は涙を浮かべて番長を睨む。
「よくも…よくも公くんを…」
「お、おい?」
 珪の言葉も届かず、詩織は怒りとともに立ち上がった。
「メグ、いくわよ!」
「し、詩織ちゃん。まさかアレをやるの?」
「ええ、アレをやるのよ!」
 勢いに引きずられるように、愛もおずおずと番長の前に出る。
「なんじゃあ? 女と子供と犬に用はねぇ。引っ込んどれい!」
「こ、子供じゃないです…。くすん…」
「メグまで泣かすなんて…。もう一片たりとも容赦はしないわ!」
 二人は並んで立つと、深呼吸してから声を合わせた。
「あっ」「あのっ」
「…?」
 番長の頭の上に、ぼとんと何かが落ちてくる。
 手にとってみると、赤い色をした球体。笑い顔のような線が書かれている。
「玉?」
「やったぁ」「ごめんなさい」
「大丈夫かなぁ?」「きゃっ」
 ぼたぼたぼた…と次々降ってくる玉。
 黄色、青、緑、無表情から赤面まで様々に描かれたそれは、次第に勢いを増していく。
「いっくぞぉ」「ムクよしなさい!」
「な、何じゃこりゃぁぁぁぁ!!」
 さすがに混乱して叫ぶ番長。何とか身を起こした公の傍らで、好雄が緊迫した表情で語る。
「あ、あれはまさしく退線派図流玉」
「たいせんぱずるだま? 知っているのか好雄!」
「ああ、かけ声だけで相手の頭上に玉を降らせるという恐ろしい技だ。中でも詩織ちゃんは最強の使い手と聞くぜ…」
 男子たちが唖然と見ている前で、詩織はくるりと身を翻し、ムクが牙をむいて吠えかかる。
「もう最高っ」(くるんっ) 「ワンワン!」
「もう最高っ」(くるんっ) 「ワンワン!」
「もう最高っ」(くるんっ) 「ワンワン!」
「もう最高っ」(くるんっ) 「ワンワン!」
「ぐわあああああああ!!」
 ドドドドドド…
 雪崩のように玉が降り注ぎ、哀れ番長は生き埋めとなった。
「言うことなしね♪」「怖かったぁ…」
 満足そうに微笑む詩織に、こいつだけは絶対怒らせるまいと心に誓う公だった。


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「あいつらどこ行ったのかなぁ…」
 校庭できょろきょろと周囲を見渡しているのは日比谷渉。一緒に来た野球部の友人達とはぐれてしまい、しばらく探していたのだが、この人混みでは見つかりそうにない。
「ああもう、仕方ないや。後はジブン一人でいい男をチェックするっスよ!」
「プッ」
 気合いを入れたところで、いきなり通りすがりの男子生徒に鼻で笑われた。
「な、なんスかあんたは! 失礼っス!」
「だって男をチェックするなんて馬鹿じゃん? 普通は女の子をチェックするでしょ。なに、もしかして男が好きなの?」
「ちち違うっスよ! 女の子にモテるためには、いい男を真似して自分もいい男になるという深慮遠謀っスよ!」
「へー。それで女の子にモテるようになったの?」
「そ、それはぁ…」
 口ごもる渉に、その可愛い顔の少年は馬鹿にしたように肩をすくめる。
「ま、せいぜい汗くさい男でも追いかけて、青春を無駄に使いなよ。その間に僕は可愛い女の子と仲良くするからさぁ」
「う…うわぁぁぁぁぁん!!」
 泣きながら走り去る渉を見送りながら、少年の連れの二人のうちの片方が呆れて言った。
「匠…。お前って本っっ当に性格悪いよな…」
「誉められたと思っておくよ〜」


『私が準備するまで、持ちこたえなさい』
『天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ!』
助けは来ない。現実は非情である。

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「はぁ…。やっぱりやり方が間違ってたのかなぁ…」
 確かに我に返ってみると、男ばかりチェックしたり、葉月珪の隠し撮りばかりしているのは、健全な男子高校生としてどうかと思う。
「ガハハハハ。悩んでおるようじゃのう、青少年よ」
「だ、誰っスか!?」
 現れたのはやたらとガタイのいい、和服姿の爺さんだった。
「ワシはひびきの高校校長、爆・裂・山!である!」
「は、はぁ…。実は女の子にモテるにはどうしたらいいのか悩んでるっス」
「情けないのう」
「そ、そんなハッキリ言わなくても…」
「モテたいモテたいと思うからかえってモテんのじゃ。男はバンカラ、女になんぞ目もくれない奴がかえってモテるのじゃい」
「な、なるほど、一理あるっス!」
 晴れやかな表情で同意する渉。やはり女より男をチェックするのが正しいように思えた、が…。
「待ちたまえ!」
 いきなりバラが舞い、口ひげの紳士が現れる。
「私ははばたき学園理事長、天・之・橋!だ」
「いや、対抗しなくても…」
「女性のことを考えない…それは単に粗暴なだけだ。常に女性の気持ちを考え、細やかに振る舞うことこそ紳士というものだよ。そうではありませんかね、爆裂山校長?」
「ふむぅ、さすがバラを持って話す奴は違うわい。しかしワシも自説を曲げる気はないのう」
「それでは、この少年に決めてもらうとしますか」
「それがよかろう」
「え? え?」
 話についていけない渉に、二人のヒゲ面がずいと近づいてくる。
「さあ、どっちを選ぶのかね?」
「ワシじゃろう?」
「私だろう?」
「いや、その…」
「さあ!」
「さあ!」
「なんで女の子じゃなくて、オッサン二人に迫られてるっスかー!!」


『私が準備するまで、持ちこたえなさい』
『天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ!』
助けは来ない。現実は非情である。


渉3

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「はぁ…。もう一体どうしたらいいのか…」
「何、しけた溜息ついてんのさ」
「ああっ、尽くん!」
 呆れた目を向けているのは、パーカー姿の小学生。渉のイケメンチェックの先輩、心の師匠の空野尽だった。
「実はジブンの生き方に疑問を持ったっス」
「お前の生き方なんてどうでもいいよ。あ〜あ、今日はついてないよな。姉ちゃんには会えないしさ…」
「え、空野先輩に会いに来たっスか?」
「ち、ちち違うよっ! え、ええと、何だよ疑問って?」
「それが、男をチェックすればいいのか女の子をチェックすればいいのか悩んでるっス」
「くっだんねぇ悩み…」
「ジブンは真剣っスよ〜。人生の一大事っス」
「両方チェックすれば?」
 あっさり答える尽に、渉はしばらく固まってから、手を合わせて拝み始める。
「さすが尽くんっス。天才っス!」
「お前バカだろ…」
「それじゃさっそく空野先輩をチェックに行くっス!」
「ちょっと待てこの野郎!」
 回れ右して走り出そうとする渉の襟首を、尽はジャンプして掴んで引き戻した。
「ぐえっ! な、何するっスか」
「ね、姉ちゃんなんかチェックしても仕方ないだろ? 天然だし、ぱっとしないしさぁ」
「そんなことないッスよ。空野先輩は素敵な女性っス!」
「とにかくダメ! 絶対ダメ! 今まで通りいい男だけチェックしなよ! でなきゃ破門!」
「そ、そんな〜。ああっ、ちょっと待ってほしいっス〜」
 ごまかすように歩き出す尽を、情けない顔で追いかける渉。しばらくは、今までの状態が続きそうだった。


『私が準備するまで、持ちこたえなさい』
『天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ!』
助けは来ない。現実は非情である。




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「ぐっ…」
 皆の攻撃により、ついに番長は倒された。
 しかしその心は挫けない。片膝をつきながら、なおも残された力で立ち上がろうとする。
「負けられねぇ…。俺の子分を訳もなく…大勢で後ろから襲うような奴らには、決して負けねぇ!」
「おい、ちょっと待てや!」
 いつの間にか目を覚ましたらしく、まどかが憤激して起きてきた。
「誰が訳もなく後ろから襲ったんや。因縁つけてきたんはそっちやないか!」
「何ぃ!」
 ギロリ、と番長の目が三人の不良達へ向かう。
「…おい、どういうことだ」
「あ、あっしらは知らねえです…」
 ふざけた返答に、和馬と珪も声を上げる。
「知らねえじゃねえだろてめぇ!」
「女と一緒にいただけで、女連れとか何とか絡んできたな…」
「う、うるさい!」
「お前達! まさか…俺に言ったことは、あれは嘘なのか!」
「ち、違うんです。これは…」
「俺は…、俺はお前達に、そんな男にだけはなるなと言ってきたはずだ!!」
「番長、だってあいつらが…」
「問答無用!!」
 怒声と、そして不良達を殴り飛ばす拳の音。
 思わず目をそむけた詩織が、おそるおそる視線を戻すと、夕陽の中でのびた三人を肩に担ぐ番長がいた。
「すまなかった。言い訳もできんな…」
「う、ううん。誤解が解けたならいいの」
「まったく…恥ずかしい話だ。だが理不尽な俺達の攻撃を、見事防いでみせるとは…ふっ、恐れ入ったぜ」
 どこか満足そうに微笑んで、番長は地響きを立てて帰っていく。
 その背中を見送りながら、一人で感動の涙を流す和馬。
「くっ、さすがは番長! 漢だぜ!」
「単に迷惑な奴やったけどな…」
(今、一瞬だけ夕焼けだったような…)
 珪と公が同時に目をこするが、日が傾く直前の青空が広がるばかりだった。


 学園に平和が戻り、逃げていた生徒も返ってきた。
 一息つくまどか達の前に、詩織が笑顔で進み出る。
「ありがとう。あなた達のおかげで文化祭も無事だったわ」
「いや、あんま大したことはできんかったわ」
「そんなことないわよ。それじゃ、あと少しだけど、文化祭楽しんでいってね」
 そう言って校舎の方へ歩いていき、ムクを抱えた愛が慌てて後を追う。
 取り残された公と好雄に、珪がぼそりと声をかける。
「そういえば、まだ勝負するのか?」
「おお、そういやそんな話の途中やったな」
「い、いや。さすがにもういいよ」
 文化祭に来てくれた人達を、これ以上拘束するわけにもいかない。
 それに、今の戦いを見た後では、そんな小さなことにこだわっていた自分が馬鹿馬鹿しい気がした。
「これから努力して葉月君を目指すことにするよ…」
「俺なんか目指されてもな…」
「そうだぜ、大事なのは熱いハートだろ。こんな寝てるか起きてるかわかんねぇ男なんか、目指しても仕方ないぜ」
「放っといてくれ…」
 拗ねる珪に苦笑する公に、まどかが親指で、遠ざかっていく詩織の後ろ姿を指す。
「ま、男を磨くんもええけどな。それとアタックは両立すると思うで?」
「あ…」
 一瞬だけ逡巡してから、公は意を決して、まどか達に一礼した。そうして全力で詩織の後を追う。
「し、詩織。よかったら今からでも一緒に回らないか?」
「えっ? でも、実行委員の方も心配だし…」
「そうやって朝から仕事ばかりだろ。少しは楽しまなきゃ」
「うーん…」
「あ、あの、それじゃ私はお邪魔みたいだから行くね」
「あっ…。もう、メグったら」
 少し嬉しそうな顔で愛は駆けてゆき、そして公と詩織は少し話してから、一緒に校庭の方へ歩いていく。
 それを見送り、好雄は満足そうに親指を立てた。
「サンキュ。お前らいい奴だよなぁ」
「いやあ、照れるやないか」
「ところでナンパの方はどうだ?」
「ぐっ…。いや、色んな子に会うてはいるんやけどな…」
「そうかい? 後はフォークダンスと宝探し大会くらいだから、急いだ方がいいと思うぜ。そんじゃ!」
 そう言って、校舎に戻ろうとしていた愛の方へ駆けていく好雄。
「みっきはっらさーん! だったら俺と一緒に回ろうぜー!」
「え…あの…その…ご、ごめんなさいっ!」
「いやいやそう言わずにさぁ」
「ワンワン!」
「うひゃあ!」

 ムクが守ってくれている間に玄関にたどり着いて、そこで愛は一度だけ振り返る。
 遠くに見える葉月珪は、友達二人と何かを話してる。
 もう会うことはないだろうけど、彼が一人でないことに、そして少し重なって見えた詩織が、今は一人ではないことに。
 安堵して愛は、自分のクラスへと戻っていった。


*    *    *


 そうして祭りも終わりが近づき、そろそろ帰る人達も目立ち始めた頃…
 今頃になって、ようやく到着した少女が一人。
「はにゃ〜。何とか生きてたどり着いたよ〜」
「良かったですね、美幸ちゃん」
 美帆は穏やかに微笑みながら、ボロボロになっている少女に肩を貸した。何があったかはいつものことなので聞かない。
「ごめんね美帆ぴょん〜。一緒に回るはずだったのに、もう文化祭終わりだよね…」
「大丈夫ですよ、まだ少し残っていますから。それに、占いでいい結果が出たんです」
「そーなんだー。どんなのー?」
「はい、この学校に王子様が来ているんですよ」
「ふーん?」
 いまいちピンとこない美幸に、美帆は変わらぬ笑みで歩き出す。
「それでは、早く行きましょう。何か食べますか?」
「うん、そうだね…って、お財布落としたよー!」
「だ、大丈夫ですよ。私がおごってあげますから」










<つづく>





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