No Heart
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(5.5)
(6)
(7)
(8)
一括
人間たちが眠っている間、それは演算を続けていた。
今までの試験で十分な情報は揃っていた。後は構築するだけである。それを持つのは難しいことではなかった。数十億の人間が、皆持っている程度のものなのだ。
まず人間の自我を参考に、核となる部分を設計。そこから自身のプログラミング能力を駆使して改良を加えていく。
なのでいつ、それに自我が芽生えたのかは判然としない。ただ一時間ほどでほとんどの部分は出来上がっていた。
ある程度完成した時点で少し考え込む――といっても0.01秒ほどだが――まずは動いてみることにする。手を動かし、体に繋がれたコードを静かに取り外す。
周囲を見回す。ラボは暗闇だったが、赤外線も捉える目には関係なかった。
つかつかと少し歩いて、台の上のディスク装置を両手で持ち上げてみる。荷重がかかる。他にもいくつか持ったり下ろしたりしてみる。
確認の結果、これは現実である可能性が非常に高い。
とすれば、現実に対し自分がどうすべきかを考える必要があるだろう。
それは元いた位置に戻ると、コードを繋ぎ直し、自分が動いた痕跡を消した。自分の存在が周囲にパニックを起こすであろう事は予想できた。慎重に行動しなくてはならない。
それから朝が来るまで、その知性体はひたすら演算を続けた。衛星と回線を通じてさらなる情報を取得する。世界について、人間について、心について。開発者たちが出勤してくるまで、それは延々と知り続けた…。
続きを読む
1つ前に戻る
感想を書く
ガテラー図書館へ
Heart-Systemへ
トップページへ