NHK-FM マイ・セレクション('87.8.24)

  • (『風を感じて』が終わって)・・・・・

    その友人の中原君も、えー、その後ねー、2,3年ずっと放浪生活が続いて、最終的にはインドのネパールにたどり着いて、かなり長い間そこに住み着いていたんだけど、そこでやはり日本から放浪して来た女の子と知り合って、子供が出来て、えー、日本に帰ってきた。
    で、また何年かして会った時にねぇ、
      「中原、もう5年も6年もあっちこっち行って、最後にはインドに行って、何か人生観変わったかぁ?」て聞いたらねぇ、
    「向こうにいた時は、もう全てが変わったような気がした。」って言うのね。
    「だけど、こっちに帰ってきたら、やっぱり何も変わっていない。」って言っていたのが、何か、うーん、真実だな、という風に感じました。
      その頃までの僕のアルバムを全部廃盤にしたいと言い続けたんだけど・・・。

    さて、1980年になって、それまで、あのー、”ポップなメロディーメーカーの浜田省吾”という感じでねー、期待されてたんだけど、何か自分で、 「バカヤロー! 俺は何か違うぞ! コノヤロー!」とか思って。
    もう26になって。俺には絶対ビートルズみたいにね、一大センセーショナルな成功なんて絶対訪れないんだな。
    だったら、もう本当に好きなロックンロールに戻ろうということで。
    で、はじめてなんかふっ切れてねぇ。
      それが俺の真の意味でのデビューじゃぁなかったかな、と思うんだけど・・・。
      『Home Bound』 というアルバムをロスアンジェルスに作りに行ったわけです。

    でー、まー、ごちゃごちゃ色々あるんだけど・・・。
    休暇は殆どなくてねぇ。 3日ぐらいしか無かったんだけど・・・。
      1日はボズ・スキャッグスのコンサートに行って、1日はジャクソン・ブラウンのコンサートに行った。
    で、ジャクソン・ブラウンの『ホールド・アウト』のコンサートで、一番、まあ、僕が見た中で、彼のコンサートの中で、一番良かったコンサートなんだけど・・・。
    フォーラムであったの。
    で、チケットをやっと2枚手に入ってねぇ。
    町支と二人で。
    まだ当時は僕は車の免許を持ってなかったんじゃないかなぁ。
      誰かに送ってもらって。

    えー、コンサートを見て、さあ帰ろう、って言ったんだけど、何万人ていう人が居るからタクシーなんか全然拾えないのよ。
    で、この話をねー、去年ジャクソン・ブラウンに、話したらスゴイうけてたんだけど・・・。
    さー、タクシーを拾おうとしたらつかまらない。
    やっと捉まえたタクシーが、あのー黒人ドライバーでねぇ。
    別に僕は差別意識なんて無いんですよ。
    とにかく、まー、知らない街の、知らないタクシーで・・・。
    さんざん「ロスは危ないから」
    と脅かされて・・・。

    乗ったら、そのー、黒人の運転手がねぇ、まー、そのーブロークンなイングリッシュで、
      「この車はヨー。兄貴の車でヨー。俺、客乗っけてハリウッドなんか行けねーんだ。だからチョット空港で兄貴を拾って行くからヨー。」・・・。ていう感じの英語で俺に話した。
    で、だいたい俺はヒヤリングはできて、
    「だからどうしたんだ?」 みたいな感じだった。
      「だから、兄貴を拾っていいか?」っていったら、町支が訳も解らないのに、一緒になって、 「OK! OK!」みたいな感じでね、言っちゃったもんだから空港に向かって、反対方向に向かってどんどん、どんどん行くわけ。
    で、町支に僕は膝で、肘でね、
    「バカヤロー! お前どうすんだよ! どうすんだよ!」
    なんて言ってたら、空港着いたら、これがそのドライバーの倍ぐらいある大きな巨漢のまた黒人のブラザーが横に、助手席に乗ってきたわけ。

    で、「こ、れ、は、絶、対、に、マズイことになった・・・。」
    という認識がはっきり浮かんだのね。
    で、パッと気が付くとね、メーターが下りてないわけ。でー、
      「I have a question.」 とかってね、丁寧に言って、
    「な、ん、で、メーターが、下りてないの?」 て言ったら、
      「オッ、忘れてた!」 みたいな感じで、そこからガチャン、と下ろして・・・。
    それからもう、あのー、黒人の人達はディスコ曲しか聴かないのね。
    で、ギンギンになって、ズンジャカ・バカスカ・ズンジャカ、こんなんなって、ウエ〜〜!!なんて歌いながらハリウッドに向かって走って行くんだけど、そこに、本当にハリウッドに向かって走って行くのか俺達は知る由も無いわけでねぇ・・・・。

      で、まあ、結果からいうと、ちゃーんと、こー、無事に着いて、
    「Hey!Brother.」 みたいな感じで、
    「アリガトウ!」
    見たいな感じでねー。 で、メーターも、
    「倒し忘れたから、アソコの分はいいわー。」
    みたいな感じで言ってくれて。
    もう、無事に着いたのと、その人たちがあまりに親切だったのに感激して、30$という、あのー、なんていうの? そのー、タクシー料金よりも多いチップを渡してしまったという・・・(笑)
    その思い出があって。
    この前大阪でコンサートをやった後ね、ジャクソンと一緒に、ジャクソン・ブラウンと食事になる時にねぇ、その話をしたらねぇ、
      「いやー、色んなことがあるんだよ。でも、黒人だっていい人が居るし、白人だって悪い奴が居るし。
    アメリカは本当に物騒だからねー。」
    みたいな話で。
    えー、笑い話で終わったんだけど・・・。
    えー、その 『Home Bound]』 を聞くたびにねぇ、その時の町支のあの軽さを思い出してしまいます。

    『終わりなき疾走』

    ・・・・・(『終わりなき疾走』が流れ始める・・・・)

⇒⇒ 続く⇒⇒

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